天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第12話『僕を誰だと思ってるの?』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第12話『僕を誰だと思ってるの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・研究室………

 

「!? 何だと!?」

 

「親父の………助手を?」

 

リーロンが言った言葉に、千冬と神谷が驚きの声を挙げる。

 

「驚くのも無理は無いわね。天上博士は世間的には、ずっと前に死んだと思われてたんですもの」

 

リーロンは冷静に言葉を続ける。

 

「天上博士………姉さんに並ぶ天才と言われていた人………」

 

天上博士の名を聞いた箒がそう呟く。

 

「なあ、千冬ね………織斑先生。アニキの親父が天才科学者だってのは聞いてたけど………一体何の研究をしていたんだ?」

 

とそこで、一夏が千冬にそう尋ねた。

 

「私も詳しくは知らん。天上博士は他人の研究に協力する事は有っても、自分の研究はあまり語らなかったそうだ………だが、聞くところによれば、天上博士が研究していたのは生命の進化についてだと言う話だ」

 

「生命の………進化?」

 

千冬の言葉を、シャルルが反芻する。

 

「そう、天上博士は人間………いや、生命が進化しようとするのには、何かしらかの力が働いているからだと思っていた………そして突き止めたの。進化のエネルギー………『螺旋力』を!」

 

すると、リーロンがそう言い放った。

 

「『螺旋力』?」

 

真耶がその言葉を繰り返す。

 

「そう。生命が持つ『進化しようとする力』、生体エネルギーの一種………その正体は、“人間の意志”で引き出された銀河のエネルギーらしいわ」

 

「銀河のエネルギー!?」

 

「何だか急に話が壮大になって来たな………」

 

箒が驚き、一夏がそんな感想を漏らす。

 

「それは本当なのか?」

 

「さあ? 残念だけど、私が携わっていたのは、その螺旋力を使用するマシンの開発の方だったから………螺旋力が銀河のエネルギーって事が真実が如何かは分からないわ」

 

千冬がリーロンにそう尋ねるが、残念ながらリーロンはその答えを持っていなかった。

 

「螺旋力を使用するマシン………!? それってひょっとして!?」

 

「勿論、グレンラガンの事よ」

 

「成程………グレンラガンを調べた時、動力らしき物が無かったのはそういう事だったのか………操縦者自身が動力でありエネルギーであると言う事か」

 

リーロンの説明に納得した様な表情になる千冬。

 

「その通り。グレンラガンは装着者の螺旋力によって動く。そして螺旋力が強ければ強い程、グレンラガンの強さも上がって行くわ」

 

「ISと同じく、進化するマシンと言う事か………」

 

そこで千冬は神谷を見遣るが………

 

「ZZZZZZZZzzzzzzzzz~~~~~~~~~~」

 

神谷は器用に、立ったまま寝ていた。

 

「「「「「ダアアアァァァァーーーーッ!?」」」」」

 

そんな神谷の姿を見て、思わずズッコける千冬、真耶、一夏、箒、シャルル。

 

「アラアラ? 話が難しかったかしら?」

 

リーロンはそんな神谷の姿を見てそう言う。

 

「起きんか、貴様ぁ!!」

 

神谷の脳天に拳骨を見舞う千冬。

 

「んあ!? んだよ………俺は難しい話が苦手なんだ。もっと分かり易く言ってくれ」

 

目を覚ました神谷が、リーロンに向かってそう言う。

 

「~~~~~っ!!」

 

その隣では、千冬が殴った手を痛そうに押さえている。

 

「そうね。貴方に分かる様に言うと………要するに、グレンラガンは気合で強くなるって事よ」

 

「おおっ! 成程!! 最初っからそう言えよ!!」

 

リーロンがそう言うと、神谷は理解した表情となった。

 

「そ、それで良いんですか!?」

 

「概念としては間違っていないわ。螺旋力と気合は表裏一体、と言っても良い代物だしね」

 

真耶が戸惑った様に言って来るが、リーロンはあっけらかんと返す。

 

「あの、それで………天上博士はどうしてグレンラガンを開発したんですか? やっぱり、螺旋力の兵器転用を考えて?」

 

とそこで、今度はシャルルがリーロンにそう質問した。

 

「いいえ。博士自身は螺旋力を兵器として使おうなんて思ってはいなかったわ。けど、それを許さない連中が居た………」

 

「許さない連中?」

 

「『亡国企業(ファントム・タスク)』って知ってるかしら?」

 

リーロンは、千冬と真耶に向かってそう言う。

 

「『亡国企業(ファントム・タスク)』………」

 

「裏の世界で暗躍する秘密結社………第二次世界大戦中に生まれ、50年以上前から活動していると言われながら、組織の目的や存在理由、規模などの詳細が一切不明の謎のテロリストですね」

 

「そう。そして博士はその亡国企業(ファントム・タスク)に目を付けられ、拉致されたの」

 

「!? じゃあ、俺を誘拐した連中がアニキの親父の事を知っていたのは!?」

 

と、それを聞いていた一夏がそう声を挙げた。

 

「誘拐だと!? 何の事だ、一夏!?」

 

事情を知らない箒がそう尋ねるが………

 

「篠ノ之、それは後でゆっくり聞け。ああ、そうだ………あの時お前を攫ったのは亡国企業(ファントム・タスク)の一味だ」

 

「そうだったのか………」

 

一夏は怒りの表情を浮かべる。

 

自分を攫い、千冬の経歴を傷付ける事となった原因を作り出した連中が分かったのだ。

 

無理も無い。

 

「亡国企業(ファントム・タスク)は博士に螺旋力を兵器転用しろと強要したわ。博士は最初こそ拒んだけど、無差別テロをするって脅されてね………螺旋力を兵器転用せざるを得なかった」

 

「貴方もそれに?」

 

「そっ。私も元はちょっとは名の知れた科学者だったんだけどね………それで目を付けられて、奴等に拉致されたわけ。そして天上博士と協力して、グレンラガンの開発を開始したの………けど、その後、亡国企業(ファントム・タスク)の連中にとって、予想外の出来事が起こったの」

 

「予想外の出来事?」

 

「アタシや天上博士の他にも、亡国企業(ファントム・タスク)内には世界中から拉致されて来た科学者やエンジニアが居たんだけど………その中に1人、危険な野心を持つ男が居たのよ」

 

「危険な野心?」

 

「そう………『世界征服』って野心をね!?」

 

「!? まさか!?」

 

『世界征服』と聞いて、とある考えが頭を過る千冬。

 

「お察しの通り………その科学者の名はロージェノム………今まさにその『世界征服』を実現しようとしている人物よ」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

全員が驚きを露わにした。

 

まさかロージェノムの正体が、亡国企業(ファントム・タスク)に拉致された科学者であろうとは………

 

誰が予想出来ただろうか?

 

「天上博士とアタシから技術を奪ったロージェノムは、それを元に戦闘兵器『ガンメン』を製造………更に専門分野だったクローニング技術を使って『獣人』を生み出し、亡国企業(ファントム・タスク)に反旗を翻したの」

 

「と言う事はつまり………ガンメンに使われている技術は元は天上博士の技術だったって事ですか?」

 

「そう言う事になるわね………」

 

「それで、その後どうなったんですか!?」

 

一夏がリーロンにそう尋ねるが………

 

「ゴメンナサイ。私はその時、他の科学者やエンジニアと一緒に天上博士がドサクサに紛れて逃がしてくれたから………その後の事は分からないわ」

 

「親父が、アンタを?」

 

「そう。まだ未完成だったグレンウイングを託してね。けど、天上博士はこう言っていたわ………『恐らくこの覇権争いはロージェノムが勝つ。だが、それは世界に地獄が訪れるという事になる。奴の作ったガンメンに私の技術が使われているのなら、私はそれを止めなければならない』ってね」

 

「そうか………あの時、親父が言っていた償いってのは、そういう事だったのか………」

 

手に持ったコアドリルを見ながら、神谷はそう呟く。

 

「そして天上博士は完成したばかりだったグレンラガンで、ロージェノムに戦いを挑んで行ったわ。多分、天上博士は自分が無理だった時には、誰かにその意思とグレンラガンを託そうと思ったんでしょうね………それが自分の息子になるとは夢にも思わなかったでしょうけど」

 

「親父………アンタはアンタなり………男としてのケジメを着けようとしたんだな………」

 

そう言って、神谷はコアドリルを握り締める。

 

「神谷………」

 

シャルルが、そんな神谷に視線を送る。

 

「………以上で、アタシの知ってる事は全部かしら」

 

「分かった。ありがとうございます………リットナーさん」

 

「リーロン、若しくはロンで良いわよ。あ、なんだったら、ビューティフルクイーンでも良いわよ」

 

「いえ、それは止めて下さい………それでリーロンさん。貴方の処遇なのですが………」

 

「分かってるわよ。この学園に居てもらうってんでしょ?」

 

千冬の言葉を察したリーロンがそう言う。

 

「ええ、グレンラガンの事を知る人を、どの国の政府にも渡すワケにも行かないので………待遇と身分は保障致します」

 

「OKよ。私もその積りで来たんだからね。一応、ISの事もある程度は整備や改造ぐらい出来るから………じゃあ、コレからもよろしくね。と・く・に」

 

と、リーロンが不意に一夏に近寄った。

 

「!? な、何ですか?」

 

「貴方とは仲良くやりたいわ、織斑 一夏くん。男の子なのにISを動かせるなんて、すっごく興味深いわ。それに良く見ると好みかも」

 

「あ、あの………貴方、男の人ですよね?」

 

「男の様な女の様な………何だったら確かめてみる?」

 

「ヒイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?」

 

一夏は思わず、壁に張り付くほど後ずさった!!

 

「一夏に近づくな! 変態!!」

 

箒も、何処からか真剣を取り出し、リーロンに斬り掛かった。

 

「いや~ね~、冗談に決まってるじゃな~い」

 

それをクネクネとした動きで躱しながら、リーロンはそう言う。

 

(目が一瞬本気だった様な………)

 

そう思いながらも、口には出さない真耶だった。

 

「はあ~………取り敢えず、今日はもう解散とする。VTシステムの事については機密事項に付き口外禁止を言い渡す。それからトーナメントは中止するが、個人データ収集の為に1回戦だけは行う。準備はしておけ」

 

千冬が呆れた様に溜息を吐き、済し崩し的にその場は解散となったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーロンの話が終わった頃には、日はすっかり暮れており………

 

神谷達は食堂で夕食を取る事にした。

 

「(ガツガツガツガツ!!)美味い! おばちゃん!! カレーライスとカツ丼! それからエビフライとオムライス追加で!!」

 

カウンター席に座り、ハヤシライスときつねうどん、お好み焼きと焼きそばを平らげた神谷が、食堂のおばちゃんに向かってそう追加注文する。

 

「あいよ! 良い食いっぷりだね~! 作ってる方としても嬉しいよ!」

 

「よ、よく食べるね………」

 

食堂のおばちゃんから威勢の良い声が返って来ると同時に、右隣に座って居たシャルルが、神谷の食いっぷりを見て額に冷や汗を浮かべながらそう言う。

 

「色々あって疲れたからよ~。たっぷり食っとかねえとな」

 

「アハハハハ………」

 

「…………」

 

あっけらかんと答える神谷に、左隣に座って居た一夏が乾いた笑い声を漏らし、その一夏の隣に座って居る箒は、何故か沈んだ表情になっていた。

 

「………ん?」

 

とその時、後ろから視線を感じた神谷は振り返る。

 

シャルルと一夏も、釣られる様に振り返ると………

 

そこには、数人の女子達の姿が在った。

 

「優勝………チャンス消えた………」

 

「交際、無効………」

 

「うわああああぁぁぁぁぁ~~~~~~んっ!!」

 

何やら一夏達の方を見ながら小声で言い合って居たかと思うと、やがて1人が泣き声を挙げ、それに続く様に他の女子達も泣きながら走り去って行った。

 

「んだ?」

 

「さあ………?」

 

わけが分からず、首を傾げるしかなない神谷とシャルル。

 

「………ん?」

 

と、そこで一夏が、隣に座って居た箒の表情が沈んでいる事に気づく。

 

「………あ、そうだ、箒。この前の約束だけど」

 

「!? ふえっ!?」

 

突然言われて、箒は珍妙な声を挙げてしまう。

 

「付き合っても良いぞ」

 

「!? 何っ!?」

 

「おっ?」

 

箒が驚きの声を挙げると、神谷達もその様子に気づき、注目する。

 

「だから、付き合っても良いって………」

 

「本当か!? 本当に、本当なのだな!?」

 

そこまで言った瞬間、箒は一夏の制服の上着の襟元を引っ摑み、自分の方に引き寄せた。

 

「お、おう………」

 

「………何故だ? 理由を聞こうではないか」

 

そこで頭が冷えた箒は、一夏に改めてそう問い質す。

 

「お、幼馴染の頼みだからな。付き合うさ」

 

乱れた襟元を正しながらそう答える一夏。

 

「そ、そうか!」

 

(一夏………オメェ、遂に………)

 

嬉しさを顔中に浮かべる箒と、漸く朴念仁を卒業かと思うと神谷だったが………

 

「買い物ぐらい」

 

「フンッ!!」

 

(んなわけねえか………)

 

続いて出た一夏の台詞を聞いて、箒は一夏の顔面にストレートを決め、神谷も頭を抱えた。

 

「そんな事だろうと思ったわ!! フンッ!!」

 

「ぐほあっ!?」

 

椅子から転げ落ちて、蹲っていた一夏の腹に、箒は追撃の蹴り上げを喰らわす。

 

「フンッ!!」

 

そしてそのまま、一昔前の漫画の様にプンプンと怒りを表しながら、去って行った。

 

「一夏って、態とやってるんじゃないかって思う時があるよね………」

 

「絶対いつか刺されるぞ………後ろからバッサリ」

 

ピクピクと痙攣している一夏を見下ろしながら、シャルルと神谷はそう言い合う。

 

「織斑くん、デュノアくん、天上くん! 朗報ですよ!………って、織斑くん、如何しました?」

 

とそこへ、朗報と言う言葉と共に真耶がやって来たが、痙攣している一夏を見てそう尋ねる。

 

「い、いえ、大丈夫です………気にしないで下さい」

 

一夏は痙攣しながらもそう返した。

 

「そ、そうですか………」

 

「それで山田先生。朗報って何ですか?」

 

戸惑っている真耶に、シャルルが改めてそう尋ねる。

 

「あ、そうでした。何とですね! ついについに! 男子の大浴場使用が解禁です!!」

 

「おおっ! 遂にか!!」

 

神谷が歓声を挙げる。

 

「やったね、アニキ!」

 

復活した一夏も、神谷にそう言う!

 

「おうよ! コレでドラム缶を探してこなくて済むってもんだ!!」

 

「えっ? ドラム缶?」

 

「あ、あの、天上くん? ドラム缶で一体何をする積りだったんですか?」

 

真耶が恐る恐ると言った様子で神谷に尋ねる。

 

「な~に、これ以上風呂が使えなかったら、ちょいとドラム缶風呂でも作ろうかと思ってな。屋上から夜空を見ながらドラム缶風呂も乙なもんだと思ってよ」

 

「止めて下さい~~! 寮で火災を起こす気ですか~~っ!?」

 

涙目になってそう叫ぶ真耶。

 

この時彼女は、心底大浴場を使える様にして良かったと思ったそうだ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・学生寮………

 

大入浴場………

 

「あ~~、生き返る~~」

 

「良い湯だぜ………と、くりゃあっ」

 

一夏と神谷は、大浴場で湯に浸かっていた。

 

「やっぱり風呂は最高だね、アニキ」

 

「ああ、オマケに月も見えるときてやがる」

 

神谷は、大浴場の窓から見えている月を見上げてそう言う。

 

「…………」

 

と、不意に一夏が黙り込んだ。

 

「? どした、一夏?」

 

「なあ、アニキ………リーロンさん言ってたよな………亡国企業(ファントム・タスク)はロージェノムに乗っ取られたって」

 

「ああ、そういやそんなこと言ってたな………」

 

「あの時、俺が誘拐なんかされなければ、千冬姉は大会2連覇が達成できたし、ラウラもあんな事にはならなかった………」

 

無意識の内に、一夏は拳を握り締める。

 

「自分の無力さも許せないけど、あの事件を起こした連中も許せなかった………でも、その連中がもう居ないかもしれないって聞いて………何て言うか………憤りを感じちゃったと言うか………」

 

「一夏………」

 

と、神谷は一夏の頭を片手で摑んだかと思うと………

 

そのまま湯船に沈めた!!

 

「!? ガボボボボボボボボッ!?」

 

「な~に小難しいこと考えてやがんだ! お前がそんな柄か、オイ!!」

 

「ガボッ! ガボッ!………ブハッ!! アニキ!! マジで溺れるって!!」

 

漸く神谷の手から逃れると、一夏はそう抗議の声を挙げる。

 

「テメェは何だ? その何とかタンスとか言う連中に復讐してやりたかったのか?」

 

それを無視する様に、神谷はそう言葉を続けた。

 

「亡国企業(ファントム・タスク)だよ………別にそう言う訳じゃないけど………」

 

「なら良いじゃねえかよ………なあ、一夏。人は何で前に目があるか知ってるか?」

 

「えっ?」

 

「遠くの景色を見る為にゃあ、前に進むしかないからだ」

 

「前に進む………」

 

「そうだ………後ろに目があると生まれた故郷が離れていくのしか見えねぇ。それじゃあ人は前には進めねぇ。目が前にありゃあ、歩いて行けば遠くの景色が近づいて来る。だから人は前に進める」

 

「アニキ………」

 

神谷の言葉に聞き入る一夏。

 

「今俺達が前に進んでやんなきゃならないのは、あのロージェノムとか言う連中のふざけた野望を阻止する事だ」

 

「………そうだな。ゴメン、アニキ。何かちょっとナイーブになってたみたいだ」

 

「気にすんな。お前が倒れそうになったら俺が支える。だから、俺が倒れそうになった時にはお前が支えてくれ、一夏」

 

「ああ!!」

 

一夏は力強く返事を返した。

 

「じゃあ、アニキ………俺そろそろ上がるよ」

 

「おう。俺はもう少しこの風呂を堪能してから行くぜ」

 

「じゃ、御先に………」

 

一夏はそう言って湯船から上がり、脱衣所に向かった。

 

「ふう~~~」

 

残された神谷は、リラックスした様子で、湯船の端に寄り掛かり、天井を仰ぎ見る様な姿勢を取った。

 

と、その時………

 

脱衣所に続く扉が、ガラガラと音を立てて開いた。

 

「ん? 何だ、一夏? 忘れもんか?」

 

一夏が戻って来たのかと出入り口の方を見やる神谷だったが………

 

「お、お邪魔します………」

 

そこに居たのは一夏ではなく、スポーツタオルを身体の前に当てているだけのシャルルだった。

 

「…………」

 

思わず、シャルルを見たまま固まる神谷。

 

「あ、あんまり見ないで………神谷のえっち………」

 

「…………」

 

顔を真っ赤にしてそう言うシャルルだったが、神谷はシャルルを凝視する。

 

「ううう………」

 

シャルルは恥ずかしそうにして、逃げる様に湯船に身体を沈めた。

 

入浴剤が入っているので、緑色に濁っている湯で、シャルルの身体が薄らとしか見えなくなる。

 

しかし、それはそれで扇情的な光景である。

 

「………オメェも結構大胆な事するな」

 

やっとの事で我に返った神谷が、シャルルに向かってそう言う。

 

「い、言わないでよ………し、死ぬほど恥ずかしいんだから………」

 

「…………」

 

『んじゃ、やるなよ』という言葉が喉まで出た神谷だったが、辛うじて飲み込む。

 

そのまま神谷は前を向くと、窓から夜空を見やった。

 

「「…………」」

 

そのまましばし沈黙が続く………

 

「………んで、如何したんだ? 態々男の居る風呂場くんだりまで来て?」

 

やがて痺れを切らしたかの様に、神谷がシャルルに向かってそう聞く。

 

「ぼ、僕が一緒だと………イヤ?」

 

「寧ろ大歓迎だ!!」

 

シャルルの言葉に、神谷はサムズアップし、『良い笑顔』でそう言い放った。

 

「…………」

 

その言葉と『良い笑顔』に、シャルルは呆れた様な表情を浮かべる。

 

「………フフフ………アハハハハッ! 神谷ってホント、正直だよね!」

 

だが、次の瞬間にはそう言って笑い声を挙げた。

 

「ハア~~、何だか変に緊張してたのが馬鹿らしくなっちゃった………」

 

「ハハハハハッ! んで? 如何したんだ?」

 

緊張が解けた様子のシャルルに、神谷は改めて問い質す。

 

「うん………話があるんだ。大事な事だから、神谷にも聞いて欲しくて………」

 

「…………」

 

シャルルのその言葉を聞いて、神谷は沈黙する。

 

如何やら、聞く姿勢を取った様だ。

 

「前に言ってた事なんだけど………」

 

「ああ………此処に残るって話か?」

 

「そう、ソレ………僕ね………此処に居ようと思う。神谷が居るから、僕は此処に居たいと思えるんだよ。神谷が此処に居ろって言ってくれたから」

 

「そうか………まあ、お前の人生はお前のモンだ! 好きにすれば良い! 生きるなら自分の思う通りに生きてみんのが男だろ!」

 

「ぼ、僕は女の子だよ!!」

 

抗議の声を挙げるシャルル。

 

「おっと。そういやそうだったな」

 

「むう………」

 

神谷のその態度に納得が行かない様子のシャルル。

 

「神谷………ちょっとそっち向いて」

 

「ああ? んだよ?」

 

「良いから向いて!」

 

「!? お、おう………ったく、何だってんだよ………」

 

シャルルがいきなり強い態度に出た為、神谷はブツブツ言いながらも思わず従ってしまう。

 

「…………」

 

一瞬、逡巡している様な様子を見せたシャルルだったが、やがて意を決した様な表情になると、神谷の背中に抱き付いた。

 

「!?」

 

またも固まる神谷。

 

「ど、如何? 女の子でしょ?」

 

神谷の背中に胸を押し当てて、シャルルはそう言う。

 

「………ああ、確かに」

 

神谷はやっとの事でそう返す。

 

「「…………」

 

そのまま2人揃って固まってしまう。

 

暫しの間沈黙していた2人であったが………

 

「あ、あとそれからね………もう1つ決めたんだ」

 

「お、おう! 何をだ!?」

 

神谷は思わず、上ずった声が出てしまう。

 

「僕の在り方をだよ………神谷………僕の事はこれから、シャルロットって呼んでくれる?」

 

「シャルロット?」

 

「うん………僕の名前………お母さんがくれた本当の名前………」

 

「分かったぜ………」

 

神谷はそう言ってフッと笑った。

 

「神谷………」

 

「ま、色々あんかも知れねえが………これからもよろしく頼むぜ! シャルル!!」

 

「ズコッ!?………だからシャルロットだってぇ!!」

 

「ああ、スマンスマン。こっちで呼びなれちまったもんでな。ハハハハハッ!」

 

「もう~~」

 

呵々大笑と言った感じで笑う神谷に、シャルル改めシャルロットは、呆れる様に呟く。

 

しかし………

 

その顔には、屈託無い笑顔が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

朝のHRにて………

 

「アニキ………シャルルの奴、如何したのかな?」

 

「さあな?」

 

間も無く授業開始だが、教室にシャルル………

 

もといシャルロットの姿が無い………

 

神谷と一夏とは、朝食を摂る時までは一緒だったのだが、その後『先に行ってて』との本人からの言葉を受け、神谷と一夏は先に教室へ向かった。

 

そして、未だに姿を見せていない。

 

ラウラの姿も見えないが、こっちは昨日の件での事情聴取だと思われる。

 

「み、皆さん………お早うございます………」

 

とそこで、矢鱈とフラフラしている真耶が姿を現し、教壇に立った。

 

「んだよ、メガネ姉ちゃん? 随分疲れてるみてぇじゃねえか? 風邪か?」

 

そんな真耶の姿を見た神谷がそう言い放つ。

 

「ち、違いますよぉ! え~と………今日は皆さんに転校生を紹介します」

 

神谷にそう反論すると、真耶はそう話を切り出す。

 

「えっ?」

 

「ああ? またかよ?」

 

一夏と神谷がそう声を挙げ、クラスの生徒達もざわめき出した。

 

「転校生と言いますか………既に紹介が済んでると言いますか、ええと………」

 

何やら言葉の歯切れが悪い真耶。

 

「じゃあ、入って下さい」

 

「失礼します」

 

(アレ? この声って………)

 

「ああ?」

 

真耶が入室を促すと、扉の向こうから聞こえて来た声に、一夏と神谷は聞き覚えを感じる。

 

そして、扉が開いて教室に入って来たのは………

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

 

女子用の制服に身を包んだ姿のシャルロットだった。

 

そして、その制服の左胸には、グレン団のマークが縫い込まれていた。

 

「「「「「…………」」」」」

 

一夏と神谷だけでなく、クラス全員が驚きの表情を浮かべた。

 

「ええと、デュノアくんはデュノアさんでした………と言うことです………はあぁ~、また寮の部屋割りを組み直す作業が始まります………」

 

真耶は深く溜息を吐く。

 

「え? デュノア君って女………?」

 

「おかしいと思った! 美少年じゃなくて美少女だったわけね!!」

 

「って、織斑くん! 同室だから知らないって事は………」

 

「織斑くんの部屋に入り浸ってる天上くんも知らない筈は………」

 

「って言うか、あの左胸のマークって、織斑くんや天上くんと同じ………」

 

生徒達のざわめきが大きくなり、一夏と神谷に視線が集まる。

 

「ちょっと待って! 昨日って確か、男子が大浴場使ってたわよね!?」

 

と、クラスメイトの1人がそう言った瞬間………

 

教室のドアが吹き飛んだ!

 

比喩でも何でもなく、本当に吹き飛んだのである!

 

「一夏ぁっ!! ついでに神谷!!」

 

立ち上る粉煙の中から現れたのは、甲龍を装着している鈴だった。

 

「ま、待て、鈴!! 俺は関係無いんだ!!」

 

「死ねえぇっ!!」

 

慌ててそう叫ぶ一夏だったが、鈴は聞く耳持たずと龍咆を一夏と神谷目掛けて放った!!

 

(あ、死んだ………)

 

一夏はまるで他人事の様にそう感じる。

 

と、その瞬間………

 

一夏の間に割り込み、龍咆を防いだ者が居た………

 

「!? ラウラ!?」

 

驚きの声を挙げる一夏。

 

それは、シュヴァルツェア・レーゲンを装着したラウラの姿だった。

 

AICで、鈴の龍咆を防いだ様だ。

 

「助かったぜ、サンキュ………て言うか、お前のISもう直ったのか? すげえな」

 

「………コアはかろうじて無事だったからな。予備パーツで組み直した」

 

「へー。そうなん………むぐっ!?」

 

と、そこでラウラが一夏の方を振り向いたかと思うと、そのまま顔を近づけて、キスをした。

 

「!?!?!?!?!?」

 

混乱する一夏。

 

ラウラは口を放すと、頬を染めた顔で、一夏に向かってこう言った………

 

「お、お前は私の“嫁”にする! 決定事項だ! 異論は認めん!!」

 

「………ハアッ!?」

 

暫し呆然としていた一夏だったが、やがてワケが分からないと言う様な顔になる。

 

途端に………

 

「「「一夏(さん)!!」」」

 

鈴に加えて、セシリアもISを展開し、更に箒が日本刀を抜いて、一夏に襲い掛かった!!

 

「う、うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!? 俺が何をしたってんだああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

一夏は白式を展開し、そのまま教室から飛び出して行く。

 

「「「「待てええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」」」」

 

その後を追って行く箒、セシリア、鈴、ラウラ。

 

一方、神谷は………

 

「ふ~~、危なかったぜ………」

 

床に散乱していた瓦礫を押し退けて、床に空いた穴から神谷が顔を出した。

 

如何やら、龍咆が放たれた瞬間、グレンラガンとなって床に穴を掘って退避した様だ。

 

「大丈夫だった? 神谷?」

 

床の穴から這い出して来た神谷に、シャルロットがそう声を掛ける。

 

「ああ、大丈夫だ………にしても、オメェも思い切ったな」

 

服に付いた埃を払いながら、シャルロットにそう言う神谷。

 

「えへへ、まあね………僕を誰だと思ってるの?」

 

シャルロットはそう言いながら笑った。

 

「…………」

 

神谷は一瞬呆気を取られた様な表情になったが、すぐにニヤッ笑う。

 

「それでこそ、グレン団の一員だぜ」

 

「えへへ………」

 

遠くから聞こえる一夏を追い回す箒達の喧騒を聞きながら、2人は互いに笑みを浮かべてたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

リーロンの口から語られた天上博士の真実と、ロージェノムの正体。
ロージェノム軍は亡国企業を母体としており、この作品では既に組織としての亡国企業は壊滅しています。
しかし、オータムが残党で登場する予定です。
さらに、Mこと織斑マドカも亡国企業とは関係ない役で登場します。
お楽しみに。

そしてシャルル改めシャルロット登場!
ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!!
………失礼しました。
早速次回からイチャラブイベントをてんこ盛りでお送りします。
お楽しみに。
歯磨けよぉ(糖度的な意味で)

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)
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