天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

19 / 137
第19話『俺らしく行動で示させてもらうぜ』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第19話『俺らしく行動で示させてもらうぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くろがね屋………

 

玄関前………

 

「作戦完了!………と言いたいところだが、お前達は独自行動により重大な違反を起こした」

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)達との戦闘から帰って来た一夏を迎えたのは、千冬の説教だった。

 

「「「「「「ハイ!!」」」」」」

 

「帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを用意してやるから、その積りでいろ」

 

「「「「「「分かりました!!」」」」」」

 

千冬の姿を真っ直ぐに見据えながら、一夏達は揃って返事を返す。

 

その様には、反省の色は見えているが間違った事をしたと言う様な様子は無く、全員が堂々と胸を張っている。

 

「………ハア………悪びれた様子も無しか」

 

「あの~、織斑先生。もうそろそろこの辺で………皆、疲れてる筈ですし」

 

とそこで、横で様子を見守っていた真耶がそう言って来た。

 

「………まあ………良くやった………と褒めておいてやるよ。全員、良く帰って来たな。今日はゆっくり休め」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

そこで一夏達が一斉に驚いた顔をする。

 

「? 何だ?」

 

それに気づいた千冬がそう言うと、一夏達は後ろを向いて円陣を組む。

 

(あの千冬姉が人を褒めるなんて………)

 

(オマケに妙に優しいわ………)

 

(これは何か起こるしれん………)

 

ヒソヒソとそんな事を話し合う一夏達。

 

しかし、その声は千冬に丸聞こえだった。

 

「何だその態度は!? 私だって褒めるぐらいの事はする!!」

 

「「「「「「すいませんでしたーっ!!」」」」」」

 

千冬の怒りの声が挙がり、一夏達は一斉に頭を下げる。

 

「クウッ! ホントにお前等は………天上から要らん影響ばかり受けおって………ん?」

 

そこで千冬は、一夏達の中に神谷の姿が無い事に気づく。

 

「オイ、天上は如何した?」

 

「ま、まさか!? 傷が開いて、また病院に!?」

 

真耶が心配の声を挙げたが………

 

「………アニキは………『腹が減った』って言って、朝飯を食べに行きました」

 

一夏が気まずそうにそう言い、シャル達も千冬から視線を逸らす。

 

その瞬間に真耶はズッコけ、千冬は怒りで身体を小刻みに振るわせ始めた!!

 

「………アイツはあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

その神谷はと言うと………

 

「(ガツガツガツガツ!!)御代わり!!」

 

「ハイハイ、ただいま………」

 

差し出された神谷の茶碗を取ると、新たに御飯をよそい始める菊ノ助。

 

(天上くんって確か………入院してたんじゃ?)

 

(それが、もう退院したらしいよ。お医者さんも驚いてたって………)

 

(気合があれば怪我も治る、って言ってたけど………もうそれ人間じゃないよぉ)

 

そんな神谷の姿を見て、同じく朝食を摂っていた生徒達は、そんなヒソヒソ話を交わす。

 

と、その時。

 

廊下を何者かが走って来る音が響いて来た………

 

「神谷ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そして怒声と共に大座敷の襖が開いて、怒りの形相を浮かべた千冬が姿を見せた。

 

「よう、ブラコンアネキ。何やってんだ? 早くしねえと、オメェの分も食っちまうぞ?」

 

常人ならば裸足で逃げ出すところだが、神谷はそんな千冬の姿を見ても、堂々としながらそう言い放つ。

 

「貴様はああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「お、織斑先生!!」

 

「千冬姉! 落ち着いて!!」

 

今にも暴れ出しそうになった千冬を、後から追い掛けて来ていた真耶と一夏が止める。

 

「「「「「「…………」」」」」

 

箒やシャル達は、大座敷の襖からトーテムポールの様になって、その様子を覗いている。

 

「お前はいつもいつもぉ!!………!? うっ!?」

 

と、千冬がそう叫んだ瞬間………

 

突然糸が切れた操り人形の様にガクリとなった。

 

「!? 織斑先生!?」

 

「千冬姉!?」

 

真耶と一夏が、慌てて千冬の状態を調べる。

 

千冬は白目を剥き、ピクピクと小刻みに痙攣している。

 

如何やら、怒りのあまり気絶をしてしまった様だ。

 

「織斑先生ええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

「オイ何やってんだ? そんなとこで寝ると風邪引くぞ?」

 

「いや、アニキのせいだから………」

 

思わず叫ぶ真耶、突然倒れた千冬に首を傾げる神谷、それにツッコミを入れる一夏………

 

朝食の場は、一瞬で混沌と化した。

 

千冬はそのまま、神谷と入れ替わる様に緊急入院したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

朝食が終わった後、今日は予定を変更して終日自由行動となった………

 

総責任者である千冬が倒れてしまったので、「止むを得ず」との事である………

 

「ふゃあああぁぁぁぁ~~~~~………」

 

神谷は旅館の屋根に昇り、そこに寝転んで大きな欠伸をする。

 

他の生徒達は再び海へと向かったので、神谷も向かおうとしたところ、全員から泣いて止められたので、仕方なく旅館でのんびりとする事にしたのだ。

 

「今日も空が青いぜ………」

 

神谷は空を見上げながらそう呟く。

 

すると………

 

「神谷………」

 

「ん?」

 

自分を呼ぶ声が聞こえたので、視線を向けると、そこには………

 

「やあ………」

 

屋根の縁から上半身だけ出して、神谷の方を見ているシャルの姿が在った。

 

「おう、シャルか」

 

「そっち行っても良いかな?」

 

「おう、良いぜ」

 

神谷がそう言うと、シャルは屋根の上によじ登り、寝ている神谷の隣に腰を下ろす。

 

「「…………」」

 

そしてそのまま沈黙する2人。

 

暫くその状態が続く………

 

「………オイ? 如何したんだ? 何か用でもあんのか?」

 

やがて痺れを切らした様に、神谷が起き上がってそう尋ねた。

 

「…………」

 

その言葉で、シャルは神谷の方を見るが、まだ口を開かない。

 

「シャル?………!?」

 

再びシャルの名を呼び………

 

神谷は驚愕する。

 

シャルの目から、ボロボロと涙が零れ始めたからだ。

 

「な、何だよ、オイ!?」

 

突然泣き出したシャルに、流石の神谷も慌てる。

 

「!!」

 

と、その瞬間!!

 

シャルは神谷に抱き付いた!!

 

「!? オ、オイ!?」

 

「馬鹿! 神谷の馬鹿馬鹿! 心配したんだからね!!」

 

神谷に抱き付いたままそう言うシャル。

 

「あんな事になって………死んじゃうかもしれないって言われた時! 僕がどんな気持ちだったか分かる!?」

 

「…………」

 

それを聞いた神谷は何も言えなくなる。

 

「ホント………ホントにもう………」

 

シャルは神谷に抱き付いたまま嗚咽を漏らし始めた。

 

「…………」

 

そんなシャルの身体を抱き締める神谷。

 

「その………何だ………スマン」

 

「………もう良いよ………その代わり………」

 

「??」

 

「暫く………このままにさせて………」

 

「…………」

 

神谷は了承を現すかの様に、抱き付いているシャルの頭をポンポンと撫でるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして………

 

「グスッ………ゴメンね、急に泣き出しちゃって………」

 

落ち着きを取り戻したシャルが、赤くなった目を擦りながらそう言う。

 

「全くたぜ、勘弁してくれよ………女の涙ほど苦手なモンはねえぜ」

 

「へえ………やっぱり神谷でも女の子の涙には弱いんだね」

 

気まずそうに後頭部を掻いている神谷に、シャルは笑いながらそう言う。

 

「まあな………特に相手がお前の場合だとな」

 

「えっ!?」

 

その言葉で、シャルの顔が紅潮する。

 

「そ、それって………ど、如何言う意味!?」

 

「そりゃあ、お前………」

 

と、そこで言葉に詰まる神谷。

 

「…………」

 

そしてそのまま、身体がむず痒い様な様子を見せたかと思うと………

 

「………止めだ」

 

そう言ってまた寝転んでしまった。

 

「ええーっ!? 何で!?」

 

途端に、シャルは不満の声を挙げる。

 

「柄じゃねえんだよ、そう言うのは………」

 

「そんな~! そんなのないよ~!! ちゃんと言ってよ~~!!」

 

ぶっきら棒にそう言う神谷だったが、シャルは納得が行かず、寝ている神谷の身体を揺さぶる。

 

「オイ! 止めろって! 揺らすな!!」

 

「じゃあちゃんと言ってよ!!」

 

両者1歩も譲らず意地を張り合う。

 

「あ~もう! 分かった、分かった!」

 

やがて、神谷が折れたかの様にそう言って身を起こして胡坐を掻いた。

 

「じゃ、じゃあ、言ってよね………」

 

イザとなると、やはり緊張するシャル。

 

しかし………

 

神谷はシャルの予想を上回る事をしでかすのであった………

 

「悪いが、やっぱりそういうのを口で言ったりすんのは柄じゃないんでな………俺らしく行動で示させてもらうぜ」

 

「えっ?」

 

神谷の言葉の意味が分からず、シャルが戸惑いを浮かべていた瞬間………

 

神谷の手が伸び、シャルの後頭部に当てられたかと思うと、そのままシャルを引き寄せ、唇を合わせ合った。

 

所謂、キスである。

 

「!?!?」

 

途端に、シャルは真っ赤になって湯気を上げる。

 

「………如何だ?」

 

そんなシャルから唇を放すと、神谷はそう問い質す。

 

「!? かかかかかか、神谷!! いきなり何するの!?」

 

「嫌だったか?」

 

「い、嫌じゃないけど………」

 

逆に問われて、シャルはモジモジとする。

 

「今のが俺の心だ………で? お前は如何なんだ?」

 

そこで神谷がそう問い質す。

 

「!! 僕は………」

 

シャルは一瞬逡巡した様な様子を見せたが………

 

今度は自分の方から、神谷へと口付けた。

 

「!?」

 

神谷は驚きで目を見開く。

 

「………僕も行動で示させて貰ったよ」

 

シャルは照れながらもそう言って、悪戯っ子の様に笑う。

 

「お前………やってくれるじゃねえかよ」

 

呆然としていた神谷だったが、やがてそう言ってニヤリと笑った。

 

「えへへへ」

 

「フッ」

 

互いに笑い合うと、神谷は再び寝転がり、シャルはそんな神谷を見やりながら、隣に座るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ………

 

夜………

 

くろがね屋からちょっと離れた海に面した崖の上………

 

「最初の試練は突破したみたいだね………箒ちゃんは絢爛舞踏を発動させたし、いっくんは白式を第2形態移行(セカンド・シフト)させた………」

 

そこには束の姿が在った。

 

崖の縁に腰掛け、足をブラブラさせながら、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)との戦いで進化した紅椿と白式のデータを見ている。

 

その表情は、何時もと同じ笑みに見えるが………

 

何処か影が在る様に思えた。

 

「グレン団の皆の結束も固まったみたいだし………何より………」

 

と、束がそう言うと、映し出されていた映像が、グレンラガンとラファールラガンの姿へと切り替わった。

 

「かみやんも、螺旋の戦士としてまた成長した………新しい合体を編み出す程に………」

 

「束………」

 

そこへ、千冬が姿を見せる。

 

「あ! ちーちゃん!!………如何したの? 顔色悪いよ?」

 

千冬が現れた事に喜ぶ束だったが、振り返って確認したその千冬の顔色が悪いのを見てそう尋ねる。

 

「気にするな………と言うか、聞くな」

 

不機嫌そうな様子で、それ以上の質問は許さないと言った雰囲気を出しながら、千冬はそう言う。

 

「そ、そう………」

 

その迫力に押されて、束はそれ以上追及する事はしなかった。

 

「ところで、一体如何したの、ちーちゃん? 私に用事?」

 

何時もの調子に戻ってそう尋ねる束。

 

「………束………お前一体如何した?」

 

しかし、千冬は真剣な様子でそう束に尋ね返す。

 

「ふえ? 何がぁ?」

 

「恍けても無駄だ………私には分かる………今のお前が、私の知っているお前らしくない事ぐらいはな………」

 

「…………」

 

そう言われて束は黙り込むと、千冬から視線を反らし、再び海の方を向いた。

 

「………敵わないなあ、ちーちゃんには」

 

「お前は自分の興味のない事にはとことん無関心になる性格で、それは人間の場合も例外ではない。私と一夏と箒、そして神谷以外に関心を示さなかったお前が、生徒にゴメンなどと言うとは………如何いう心境の変化だ?」

 

「…………」

 

「まあ、普通ならば別にそれは良い変化だと思うから問題無い………だがお前は場合は別だ………ISを世に認めさせる為に白騎士事件を起こした様なお前がな」

 

束に向かって、千冬はそう言う。

 

そう………

 

白騎士事件の際、日本に向かってミサイルを放つ様に、各国の軍事コンピューターをハッキングした犯人は………

 

世間一般では、謎とされているが………

 

千冬は、それが束の仕業だと確信していた。

 

何故なら………

 

今でこそ最強の兵器として世間に浸透しているISだが………

 

発表された当初は、宇宙開発用と言う目的もあり、見向きにされていなかったのだ。

 

だから、千冬は束がISの存在を認めさせる為に白騎士事件を起こした………

 

そう思っている。

 

「束………ひょっとして一夏が男でありながらISを動かせた事も、お前が関わっているんじゃないのか?」

 

「………それは私の仕業じゃないよ」

 

「本当にか?」

 

「うん………誓って言うよ………」

 

「そうか………なら質問を変えよう………一夏がISを動かせた事について、何か知っているのか?」

 

「…………」

 

その問いに束は沈黙したが………

 

「………知ってるよ」

 

やがてそう短く千冬に反応を返す。

 

「そうか。なら………」

 

「ゴメン………まだ教えられないんだ」

 

問い質そうとした千冬を制して、束はそう言った。

 

「束………」

 

「ねえ、ちーちゃん………何で私がISを造ったか………覚えてる?」

 

「確か………無限に広がる星の向こうへ行ってみたい………そう思ったからだったか?」

 

「そう………だから………今私は………白騎士事件を起こした事………後悔してるんだ………アレは私の罪………そして罪を犯した者は………それを償わなきゃいけない」

 

「何っ? 如何言う事だ?」

 

それを聞いた千冬が、顔色を変えて束にそう問い質すが………

 

「ゴメンね………」

 

束はそう言うと、何と崖下へと飛び降りた!!

 

「!? 束!?」

 

慌てて崖の縁まで駆け寄ると、断崖を覗き込む千冬。

 

だが、そこに束の姿は無かった………

 

「束………」

 

千冬は断崖を覗き込んだままそう呟く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

くろがね屋近くの海水浴場にある岩場にて………

 

「ふう………」

 

一泳ぎ終えた水着姿(赤褌)の一夏が、岩場に腰掛けて一休みしている。

 

くろがね屋から抜け出し、こっそりと泳ぎに来ていたのだ。

 

「い、一夏………」

 

「ん?」

 

声を掛けられた一夏が振り返ると、そこには水着姿の箒の姿が在った。

 

「箒………お前も泳ぎに来たのか?」

 

「あ、ああ………少し頭を冷やそうと思ってな」

 

「そうか………そう言えば、この間の自由時間の時、見かけなかったけど………」

 

とそこで、一夏は改めて箒が水着姿なのを思い出し、マジマジと見つめてしまう。

 

「あ、あんまり見ないで欲しい………お、落ち着かないから………」

 

「ス、スマン」

 

箒にそう言われて、慌てて視線を反らす一夏。

 

「…………」

 

箒は無言のまま一夏の傍に寄り、その傍に腰を下ろす。

 

「「…………」」

 

そのまま2人とも沈黙してしまう………

 

箒は最初の作戦で足を引っ張ってしまった事で………

 

一夏は神谷が重傷を負った時に箒に当たってしまった事で、気まずくなってしまっているのだ。

 

「「…………」」

 

気まずい沈黙が続く。

 

「あ、あのさあ………」

 

とそこで、一夏の方がその沈黙を破った。

 

「な、何だ?」

 

「そのリボン………してくれたんだな」

 

一夏がそう言って、箒がしているリボンを示す。

 

神谷を助ける際に海に突入した時、リボンを無くした箒だったが、本日7月7日は彼女の誕生日であり、一夏から新しいリボンをプレゼントされたのである。

 

「あ、ああ………お前からのプレゼントだからな」

 

「正直、貰ってくれないかと思ったよ………俺………お前に酷いこと言っちまったからな………すまない、箒」

 

「な、何を言うんだ! 当然の事だ! 私のせいで神谷は重傷を負ったんだ!! 私は………責められて当然だ!!」

 

そう言って、箒は表情に影を落とす。

 

「もう良いって、箒………結局アニキも大丈夫だったんだし………俺が悪かったんだ」

 

「いや違う! 私が!!」

 

「いや、俺だって!!」

 

「私が!!」

 

「俺が!!」

 

先程までの沈黙がウソの様に、互いに自分がと言い始める一夏と箒。

 

「「ハア………ハア………ハア………ハア………」」

 

やがて互いに言い過ぎて、息を切らせる。

 

「………フフフフ」

 

「ハハハハ………」

 

そして、どちらからとも無く笑い始めた。

 

「何か………馬鹿みたいだな。俺達」

 

「そうだな………神谷の馬鹿が伝染したのかもしれんな?」

 

「あ、箒! そりゃ幾ら何でも………!?」

 

と、そこで一夏が急に固まる。

 

「? 一夏?」

 

「ほ、箒………その………離れないか? 当たってるんだが?」

 

「?………!?」

 

と、そこで箒は、一夏にかなり接近していた為、胸を押しつけていた事に気づき、慌てて飛び退く。

 

「お、お前は!!………」

 

「えっと………スマン」

 

何故だか分からないが、罪悪感を感じた一夏は箒に謝る。

 

「その………何だ………意識するのか?」

 

と、不意にそこで箒がそう尋ねた。

 

「? ハイ?」

 

その質問の意図が分からず、一夏は首を傾げる。

 

「だ、だからだな!」

 

すると箒は、一夏の手を取り、自分の胸の谷間に押し当てた!!

 

「うおっ!?」

 

「私を………異性として意識するのかと、訊いているのだ………」

 

「あ、ああ………まあ、な………」

 

頬を染めばがら、勢いに押される様に一夏は答える。

 

「そうか………そう、なのだな………」

 

箒は、噛み締めるかの様にそう呟く。

 

そのまま2人は再び沈黙した………

 

月明かりが岩場に座り込む1組の男女の姿を、幻想的に映し出す………

 

「…………」

 

やがて、向かい合っていた2人の内、一夏が箒に顔を近づかせ始めた………

 

しかし………

 

「ん?」

 

ゴツンッ、と一夏は、自分の額に何かが当たるのを感じて顔を上げる。

 

そこに在ったのは………セシリアのブルー・ティアーズのビットの方のブルー・ティアーズだった。

 

「!? ぬあああああっ!?」

 

一夏は仰け反った瞬間、ブルー・ティアーズからビームが放たれた。

 

前髪が少し焼き切れる。

 

「姿が見えないかと思えば………何をしている、一夏?」

 

「よし………殺そう」

 

「ふ………ふふふふふ………」

 

何時の間にか、2人の近くの空には、ISを装着したラウラ、鈴、セシリアの姿が在った。

 

全員、一様に殺気だっている………

 

特に鈴とセシリアがヤバい………

 

鈴の方は目のハイライトが消えており………

 

セシリアは不気味な笑い声を漏らしている………

 

「うええっ!? ほ、箒! 逃げるぞ!!」

 

「えっ!? う、うわあっ!?」

 

そう言うや否や、一夏は箒をお姫様抱っこで抱き抱え、逃げ出す。

 

「「「待てえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」」」

 

それを鬼気迫る表情で追う3人。

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

月夜の海辺に、一夏の悲鳴が響き渡ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

神谷とシャルはと言うと………

 

「男の魂完全燃焼! キャノンボールスマアアアァァァッシュッ!!」

 

「何のぉっ!! ラファール(疾風)返しいいいいぃぃぃぃぃっ!!」

 

「そらそら! 兄さんも嬢ちゃんも頑張りなぁ!!」

 

くろがね屋で、仲良くイタチの安に審判をしてもらって、卓球を楽しんでいたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

福音を撃破して帰還したグレン団。
残る臨海学校を楽しむ中………
遂に神谷とシャルが告白し合い、正式に付き合う事になりました。

一方、何やら色々と知っている様子の束。
しかし、多くは語らずに去って行ってしまいます。
今川作品お約束の、『真実を知っていて矢鱈勿体ぶる人』と『罪と罰』です。
この謎は追々明かされていきます。

さて次回はギャグ回です。
神谷の男らしさがダメな方向に発揮されます。
そして遂にくろがね屋の面々が………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。