天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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※2018年12月9日 午前9時45分追記

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第2話『お、俺を誰だと思ってやがる!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第2話『お、俺を誰だと思ってやがる!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インフィニット・ストラトス………

 

通称『IS』………

 

天才科学者、篠ノ之 束が開発したマルチフォーム・スーツ………

 

当初は、宇宙空間での活動を想定した、宇宙開発の為の発明であったが………

 

ISの発表から1ヶ月後………

 

日本を射程範囲内とするミサイル基地のコンピューターが一斉にハッキングされ………

 

2341発以上のミサイルが発射されると言う事件が発生した………

 

この在り得ない事態に、各国は日本の最期を予感した………

 

しかし………

 

その時現れた謎のIS『白騎士』が、全てのミサイルを迎撃した………

 

その後、その『白騎士』捕獲もしくは撃破しようと各国が大量の戦闘機や艦船を送り込んだものの………

 

『白騎士』はそれ等を全て退けた………

 

しかも、1人の人命も奪う事無く………

 

この事件により、ISは世界最強の兵器として認識された………

 

しかし、強大な兵器は世界のパワーバランスを崩す事となる為………

 

ISの軍事利用を禁止する『アラスカ条約』が締結された………

 

現在ISは、スポーツ競技の一部となっている………

 

だが、それでもISが世界最強の兵器であるという事実は変わらない………

 

更に、製作者に如何なる意図が有ったのか不明だが………

 

ISは女性にしか使えない、と言う特性を持っていた………

 

その為、徐々にながらも男女平等を実現してきていた社会は………

 

一瞬にして女尊男卑の世界となった………

 

そんな中………

 

世界で初めて、ISを起動させた男性………

 

『織斑 一夏』が現れた。

 

世界が彼の謎を知りたいと思う中………

 

当の本人は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・1年1組の教室………

 

「…………」

 

複数の女子の好奇の視線に曝され、冷や汗を流しまくっていた………

 

(どうしてこんな事に………)

 

自問自答する一夏。

 

(私立藍越学園を受験する筈が………間違ってIS学園の試験会場に入ってしまい………偶然間違えて入った部屋にあった受験者用のISを起動させてしまうなんて………)

 

一夏は、IS学園に来る事になってしまった経緯を思い出す。

 

しかし、それで状況が変わるワケもなく、相変わらず好奇の視線が突き刺さって来ている。

 

「織斑 一夏くんかぁ………うん、イケメンだね」

 

「うんうん、ホントホント」

 

「まさか男でISを使えるなんて………何か秘密が有るのかな?」

 

ヒソヒソと小声で話し始める女子達。

 

「でも………何だろう? あの背中のマーク?」

 

と、女子の1人が、そう指摘した。

 

現在一夏が来ているのは、特注されたIS学園の男子用制服である。

 

しかし………

 

その背中に、後付けされたと思われる奇妙なマークが入っていた。

 

そのマークとは………

 

『燃え上がる炎に見立てた髑髏が、V字型のサングラスを掛けているマーク』という物だった。

 

「皆さん、入学おめでとう。私は副担任の『山田 真耶』です」

 

と、そこで………

 

教壇に立った、小柄ながらも豊満なバストをしたグリーンのショートヘアーで眼鏡を掛けた女性………

 

副担任の『山田 真耶』が、そう自己紹介をする。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

しかし、クラス全員の視線は相変わらず一夏に注がれており、ノーリアクションだった。

 

「あ、え………きょ、今日から皆さんは、このIS学園の生徒です。この学園は全寮制。学校でも、放課後も一緒です。仲良く助け合って、楽しい3年間にしましょうね」

 

真耶はそれに戸惑いながらも、挨拶を続ける。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

しかし、生徒達は相変わらずノーリアクションである。

 

「じ、じゃあ、自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で………」

 

真耶は若干泣きそうになりながらも、如何にか話を進行させる。

 

(クソッ! しっかりしろ、織斑 一夏! お前は男だろ!! いや、男だからこそ、この状況が困っているんだが………いや、そうじゃなくて!!)

 

そんな中でも、考えが頭の中を堂々巡りする一夏。

 

(アニキ………俺………如何したら………)

 

「………斑くん。織斑 一夏くん!」

 

「!? ハッ!? ハイッ!?」

 

と、そこで真耶の声が耳に飛び込んで来て、思わず上擦った声を出してしまう一夏。

 

女子達がクスクスと笑い声を漏らす。

 

「あの~、大声出しちゃってゴメンなさい。でも、『あ』から始まって、今『お』なんだよねえ。自己紹介してくれるかな? 駄目かなあ?」

 

「いや、その………そんなに謝らなくても………」

 

真耶にそう言いながら、一夏は席を立ち上がる。

 

「え~と………織斑 一夏です。よろしくお願いします」

 

そして自己紹介をする。

 

すると………

 

クラス全員の視線が、好奇から期待へと変わった。

 

(グウッ!? こ、こんな時………アニキだったら………)

 

それに戸惑いながらも、如何すれば良いのかと頭を巡らせる。

 

そして、準備を整えるかの様に大きく息を吸い込んだ。

 

クラス全員の期待が、更に高まる。

 

「………お、俺を誰だと思ってやがる!!」

 

一夏はクラス中に響き渡る様に、そう叫んだ!!

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

途端にクラス全員が、唖然とした表情を浮かべた。

 

正に、『何を言っているんだ? コイツ?』状態である。

 

「あ、アレ?………」

 

思った反応と違い、困惑する一夏。

 

すると………

 

一夏の脳天に、突如拳骨が見舞われた!

 

「ぐふっ!?………イツツツツ………!? げえっ!? 千冬姉!?」

 

激痛を感じながら一夏が視線を挙げるとそこには、彼の唯一の肉親である姉、『織斑 千冬』の姿が在った。

 

しかし………

 

千冬は今度は出席簿(角)で、一夏の脳天をブッ叩いた。

 

「~~~~~っ!?」

 

悶絶しそうになる痛みが一夏を襲う。

 

「学校では織斑先生だ………全く………あの男から要らぬ影響ばかり受けおって………」

 

そんな一夏に向かってそう注意する千冬。

 

「先生。もう会議は終わられたんですか?」

 

「ああ、山田くん。クラスへの挨拶を押し付けてすまなかったな」

 

真耶とそう会話を交わすと、彼女と代わる様に教壇に立つ千冬。

 

「諸君! 私が担任の織斑 千冬だ! 君たち新人を1年で使い物にするのが仕事だ」

 

そして、生徒達全員に向かってやや高圧的にそう言い放つ。

 

「「「「「「「「「「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

途端に、クラス中から黄色い悲鳴が挙がった。

 

「千冬様! 本物の千冬様よ!」

「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです! 北九州から!」

 

「私、お姉様のためなら死ねます!」

 

「毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ………私のクラスにだけ集中させてるのか?」

 

そんな黄色い悲鳴を挙げる女子達に、千冬はうんざりしているかの様にそう言葉を続ける。

 

「きゃあああああっ! お姉様! もっと叱って!! 罵って!!」

「でも時には優しくして!!」

「つけあがらないように躾をして~!!」

 

しかし、黄色い悲鳴は収まるどころか益々強くなる。

 

(千冬姉が………担任?)

 

そんな中で一夏は、姉が担任になるという事実に困惑していた。

 

「………で? 挨拶も満足に出来んのか、お前は?」

するとそこで、千冬は一夏に向き直り、拳を握りながらそう言って来た。

 

「い、いや、千冬姉。俺は………」

 

それに対して、一夏が何か言おうとしたところ………

 

「!? うがっ!?」

 

思いっきり頭を机に叩き付けられた。

 

「織斑先生と呼べ」

「………ハイ、織斑先生」

 

(え? 織斑くんって、あの千冬様の弟?)

 

(それじゃあ、世界で唯一男でISを使えるっていうのも、それが関係してるって事?)

 

その光景に、またも生徒達はヒソヒソ話を再開する。

 

「静かに!!」

 

と、千冬がそんな生徒達を一喝する。

 

「諸君等には、これからISの基礎知識を半年で覚えてもらう。その後実習だが………基本動作は半月で身体に染み込ませろ。良いか? 良いなら返事をしろ! 良くなくても返事をしろ!!」

 

「「「「「「「「「「ハイ!!」」」」」」」」」」

 

千冬の有無を言わせぬ迫力の前に、生徒達は反射的にそう返事を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、少し時間は流れ………

 

1時間目が終了し、休み時間に入ると………

 

世界で初めてISを動かした男性である一夏を見ようと他のクラス、そして上級生までもが、1年1組へと詰めかけていた。

 

(誰かこの状態から助けてくれ………)

 

一夏にしてみれば、この状況は苦痛以外の何ものでもなかった………

 

と、そんな一夏の前に………

 

最前列の窓際の席に座って居た長い黒髪とポニーテールが特徴で、平均的な女子の身長でありながら長身を思わせる少女………

 

『篠ノ之 箒』が立った。

 

「ちょっと良いか?」

 

「えっ?」

 

一夏は戸惑いながらも、箒に連れられて、好奇の視線が突き刺さってくる教室から抜け出し、屋上へと向かった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・屋上………

 

「何の用だよ?」

 

「うん………」

 

一夏の問いに沈黙する箒。

 

「6年ぶりに会ったんだ。何か話があるだろう」

 

そんな箒に、一夏はそう言葉を続ける。

 

「…………」

 

しかし、箒は何やら照れ臭そうにしており、何かを話そうとしては止めると言う仕草を繰り返す。

 

「ふう~~………そう言えば」

 

「な、何だ?」

 

一夏は後頭部を掻きながら、自分の方から話を始めた。

 

「去年、剣道の全国大会、優勝したってな………おめでとう」

 

「!? 何でそんな事知ってるんだ!?」

 

「何でって………新聞で見たし………」

 

「何で新聞なんか見てるんだ?」

 

「ああ、後………」

 

「!?」

 

箒の頬が朱に染まる。

 

「久しぶり、6年ぶりだけど、箒ってすぐ分かったぞ」

 

「えっ………?」

 

その言葉に、箒は一瞬、嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「ホラ、髪型一緒だし」

 

「よ、よくも覚えているものだな………」

 

「いや、忘れないだろ。幼馴染の事ぐらい」

 

「………!!」

 

一夏の言葉に、照れている様な仕草を見せる箒。

 

「そ、そう言えば………神谷は如何した? 元気か?」

 

と、そこで箒は照れ隠しの様に、もう1人の幼馴染で、一夏が最も慕っている人物の名を挙げる。

 

「ん? ああ、アニキなら、1年位前に旅に出て行ったよ」

 

「!? 何っ!?」

 

箒は、一夏のその答えに、驚きの表情を浮かべる。

 

「何か父親が生きているかもしれないって言うから、探しに行くんだって」

 

「探しにって………当てはあるのか?」

 

「無いさ。当てが有ろうが無かろうが、1度決めたら突き進んで行く………アニキはそう言う人だったろ」

 

まるで自分の事を自慢するかの様に箒に向かってそう語る一夏。

 

「………そうだな」

 

その様子に、箒は一転して不機嫌そうになる。

 

「今頃………何処で何をしてるのかな………アニキ」

 

しかし、一夏はそれに気づかず、屋上の手摺りに寄り掛かり、思い出に浸るかの様に遠くの景色を眺めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃………

 

IS学園を目指して進む、1人の男の姿が在った………

 

その男の姿は、異様と言って良かった………

 

180近くは有ろうかと言う長身に、一昔前のロボットアニメの主人公の様な彼方此方がとんがった黒髪の髪型………

 

上半身は裸で、腹の部分には晒を巻いており、裾がボロボロの紅いマントを羽織っている。

 

そしてそのマントの背中には、一夏と同じ『燃え上がる炎に見立てた髑髏が、V字型のサングラスを掛けているマーク』が入っていた。

 

長刀を肩で担ぐ様に持ち、V字型の赤いサングラスを掛けている。

 

………と、男は刀を持っていない方の手に握っていた新聞の1面の記事を見やる。

 

そこには、世界で初めてISを起動させた男………一夏がIS学園に入学したという見出しが出ていた。

 

「ちょっくら日本に帰って来てみれば………一夏の奴………こんな事になりやがるとはな………ど~れ、ちょいと挨拶しに行くとするか」

 

男はその記事を見てそう言うと、更にIS学園への道を進んで行った。

 

………その首からは、金色に輝く親指大の小さなドリルが、ペンダントの様に掛けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・1年1組………

 

授業中………

 

「ではココまでで質問のある人~」

 

滞り無く授業が進み、真耶が質問は有るかと生徒に尋ねる。

 

(このアクティブなんちゃらとか、広域うんたらとか、如何いう意味何だ!? まさか全部覚えないといけないのか!?)

 

全員が質問は無いと言う表情をしている中、一夏は大量の脂汗を顔中に浮かべていた。

 

「織斑くん、何か有りますか?」

 

と、真耶がそんな一夏に声を掛ける。

 

「あっ!? えっと………」

 

「質問が有ったら聞いて下さいね。何せ私は先生ですから」

 

自信満々にそう言う真耶。

 

「………先生」

 

「ハイ、織斑くん」

 

「殆ど全部、分かりません」

 

「えっ!? 全部ですか?」

 

しかし、一夏のその言葉で、戸惑いの表情を浮かべる。

 

「い、今の段階で分からないっていう人は、どのくらい居ますか?」

 

真耶は他の生徒にもそう尋ねるが、返って来たのは沈黙だった。

 

全員分かっている様である。

 

「織斑………入学前の参考書は読んだか?」

と、その様子を見ていた千冬が、一夏に近づきながらそう問い質す。

 

「え~~………あっ! あの分厚いやつですか?」

 

「そうだ。必読と書いてあっただろう?」

 

「いや~………古い電話帳と間違えて掃除の際に捨てました………グハッ!?」

 

と、その言葉を聞いた途端、千冬の出席簿攻撃が、一夏の頭にクリーンヒットした。

 

「後で再発行してやるから、1週間以内に覚えろ。良いな?」

 

「いや! 1週間であの厚さはちょっと………それに参考書なんて見なくたって、気合で!!」

 

千冬に向かってそう反論しようとした一夏だったが………

 

「………やれと言っている」

 

「うう!?………ハイ、やります」

 

殺気すら感じられる千冬の鋭い視線を受けて、頷かざるを得なかった………

 

「全く………そんな所まで『あの男』に似なくて良い。そもそもお前は………」

 

千冬が一夏に、更に説教をしようとしたところ………

 

「失礼します。織斑先生、ちょっと宜しいですか?」

 

守衛をしている職員が、そう言いながら教室へ入って来た。

 

「? 如何かしたんですか?」

 

「何ですか? 授業中ですよ」

 

首を傾げる真耶と、凛とした態度を崩さない千冬。

 

「すみません………ですが、今学園の入り口に奇妙な男が来ていて………織斑 一夏に会わせろって騒いでいるんです」

 

「奇妙な男?」

 

「大方、何処かの国の機関のエージェントか、企業のスカウトマンでしょう………IS学園は如何なる国家や組織の干渉も受けません。追い返して下さい」

 

「それが………そう説明したんですけど、頑として聞き入れないんです」

 

「しつこい奴ですね………一体どんな奴なんですか?」

 

千冬は呆れた様な様子を見せながら、騒いでいる男について尋ねる。

 

「えっと………結構な長身の方で、昔のアニメの主人公みたいなツンツンした髪型をしていて………上半身裸で、お腹に晒を巻いて、ボロボロの紅いマントを羽織った格好をしています」

 

「………何………だと………?」

 

男の風体を聞いた千冬は、彼女を知る者からすれば、珍しく驚愕の表情を浮かべ、手に持っていた出席簿を落とした。

 

そんな千冬の姿に、生徒達もざわめき立つ。

 

「それって………まさか………」

 

一方、一夏も………

 

男の風体を聞いて、1人の人物を思い浮かべていた。

 

「それから、片手に長刀を持っていて、V字型の赤いサングラスを掛けて………そうそう、『俺を誰だと思ってやがるっ!!』って口癖みたいに言っていました」

 

その言葉を聞いた途端………

 

一夏は椅子を蹴り飛ばす様に立ち上がり、教室から飛び出して行った。

 

「!? 織斑くん!?」

 

「オイ! 一夏!!」

 

真耶と千冬が呼び止めるのも聞かず、一夏は学園の入り口を目指して全力疾走する。

 

(間違い無い! そんな恰好でそんな事を言うのは………俺の知っている限り、世界に只1人だ!!)

 

一夏の胸には、高まって行く期待感が溢れていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・正門………

 

「だ~から、一夏に会わせろっつってんだろうが!!」

 

「ですから! 許可無く部外者を学園内に入れるワケには………」

 

「部外者じゃねえ! 俺を誰だと思ってやがるっ!!」

 

「それが分からないから困ってるんじゃないですかぁ!!」

 

正門で守衛の職員と押し問答を繰り広げている紅いマントを羽織った男。

 

騒ぎが大きくなったので、念の為に警備用のIS部隊も展開しているが、男が一切怯まないので、如何すれば良いのかと対応に苦慮している。

 

と、そこへ………

 

「アニキッ!!」

 

正門の向こうの方から、そう言う声が聞こえて来た。

 

「おっ?」

 

守衛の職員達が困惑しながら振り返る中、男はその声の主を見て、笑みを浮かべる。

 

「やっぱりアニキだ! アニキだよな!?」

 

その声の主は一夏だった。

 

教室から全力疾走して来たので、息は上がっており、大量に汗も掻いているが、それでも嬉しそうに男の姿を見ていた。

 

「一夏ぁ! 久しぶりじゃねえか!!」

 

男の方も、一夏を見て、嬉しそうな声を挙げる。

 

「アニキ!!」

 

一夏はそう言い、更に男に近づく。

 

守衛の職員達は状況が分からず、困惑するしかなかった。

 

「…………」

 

そんな中、男は目の前に立った一夏の姿を、笑みを浮かべたままジッと見据えている。

 

「アニキ、俺………うわっ!?」

 

すると不意に、一夏の頭に手を置き、ガシガシと乱暴に撫でた。

 

「背ぇデカくなったじゃねえか………良い面構えしてるぜ………兄弟!」

 

男は一夏に向かってそう言った。

 

「ア、アニキ………」

 

その言葉に、一夏は嬉しそうな表情を浮かべる。

 

と、その時………

 

「かああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーみやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」

 

雄叫びと表現しても良い叫び声が、その場に居た一同の耳に飛び込んで来た。

 

「「「「「!?」」」」」

 

一夏と守衛の職員が驚きながら振り向くと、そこには………

 

ISのブレードを生身で持ち、男に向かって突撃して来る千冬の姿が在った。

 

「ち、千冬姉!?」

 

「お、織斑先生!!」

 

その迫力に慄く一夏と守衛の職員。

 

「何だ、ブラコンアネキ! お前もこの学校に居たのかよ!?」

 

しかし、男だけはそんな千冬に向かって、挑発するかの様な言葉を投げ掛けた。

 

「問答無用!! 死ねええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

千冬はそう叫ぶと跳躍し、男に向かってブレードを振り下ろした!!

 

「「「「「キャアアアッ!?」」」」」

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

巻き込まれると思い、慌ててその場から離れる守衛の職員と一夏。

 

「へっ………」

 

しかし、男だけはそんな千冬の姿を見て、不敵な笑みを浮かべていた。

 

そして、千冬のブレードが男に叩き込まれた瞬間!!

 

凄まじい衝撃波で土煙が舞い上がり、2人の姿を覆い隠した。

 

「ア、アニキ!?」

 

「織斑先生!?」

 

一夏と守衛の職員は、惨劇な光景を想像する………

 

だが………

 

段々と土煙が晴れてきたかと思うと、そこには………

 

「………久しぶりの再会だからって、随分と情熱的な挨拶じゃねえか」

 

長刀を僅かに鞘から抜き放ち、千冬のブレードを受け止めている男の姿が在った!

 

「貴様………」

 

そんな男の姿を見て、千冬は苦々しげな表情を浮かべる。

 

「お、織斑先生!?」

 

「見て! 千冬お姉様が誰かと戦ってる!!」

 

「誰!? あの男!?」

 

とそこへ、千冬を追いかけて来た真耶と生徒達が姿を見せる。

 

「!? あの男は!?」

 

その中に居た箒は、千冬のブレードを受け止めている男の姿を見て、驚愕の表情を浮かべる。

 

「ほらよっ!!」

 

と、そこで男が千冬を弾き飛ばす。

 

「チイッ!!」

 

弾き飛ばされた千冬は、後方宙返りを決めて着地すると、ブレードを男に向けて構える。

 

「どら! 久々に一戦………交えてみるかぁ?」

 

男はそう言いながら、長刀を完全に鞘から抜き放った。

 

鞘を背中に背負う様にしまうと、左手で千冬に挑発を送る。

 

「舐めるなぁ!!」

 

千冬は叫びながら、男に向かってブレードを振るう。

 

「おっと!!」

 

男は千冬の1撃を、長刀で受け止めた。

 

「あらよっ!!」

 

そして力任せに弾き返す。

 

「ぐうっ!?」

 

「おりゃああっ!!」

 

そのままがら空きになった千冬の胴に、横薙ぎの一閃を繰り出す。

 

「何のぉ!!」

 

しかし千冬は跳躍してそれを回避。

 

そのまま男の頭上を飛び越えながら前方宙返りをし、男の背中を斬り付けようとする。

 

「シェアッ!!」

 

だが男は素早く反応し、背中に向かって来ていたブレードの刃を、長刀で防いだ。

 

「クッ!!」

 

千冬はブレードを振った際の反動で距離を取る。

 

「せええいりゃああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

すると今度は、男の方が千冬に仕掛けた。

 

かなり長い長刀を、まるで小枝でも振るうかの様に軽々と扱っている。

 

その太刀筋は、型の無い喧嘩殺法ではあるものの、非常に洗練されており………

 

言うなれば実戦慣れしている太刀筋だった。

 

「くううっ!! 更に出来る様になったな!!」

 

予測不能な太刀筋に苦い顔を浮かべながらも、次々に捌いて行く千冬。

 

「へっ! テメェーが鈍ったんじゃねえのか!? こんなとこで燻ってやがるからよぉ!! ブラコンアネキ!!」

 

「それを言うなああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

男の言葉に怒りを露わにする千冬。

 

そのまま2人は、更に激しく斬り結ぶ。

 

「織斑先生と互角に戦っている!?」

 

「嘘! あの第1回モンド・グロッソの優勝者、『ブリュンヒルデ』のお姉様と!?」

 

「何なの、あの男!?」

 

千冬と互角に立ち回る男の姿に、在り得ないモノを見る目で男を見る真耶と生徒達。

 

「スッゲェ………相変わらずスゲェぜ、アニキ!」

 

一方の一夏は、その光景を見て、まるで少年の様に目を輝かせている。

 

しかも、肉親である筈の千冬よりも、アニキと呼ぶ男の方に肩入れしている様だ。

 

「オイ、一夏。あの男は………」

 

とそこで、一夏の傍に立った箒が、一夏にそう問いかけて来た。

 

「ああ………天上 神谷(てんじょう かみや)………魂の絆で結ばれた………俺のアニキだ!!」

 

すると一夏は、箒に向かってまるで自慢するかの様にそう語った。

 

と、その瞬間!!

 

ガキィンッ!!という甲高い音が響いたかと思うと………

 

千冬の持っていたブレードと、男………神谷が持っていた長刀が互いに弾かれ、宙に舞っていた。

 

回転しながら舞い上がって行ったブレードと長刀は、やがて重力に引かれて落下を始め、2人が居る場所からやや離れた地面に突き刺さった。

 

「クッ!」

 

「チイッ!!」

 

千冬と神谷は、互いに手が痺れている様な様子を見せている。

 

「あ、相打ち?」

 

「嘘………」

 

「千冬お姉様と互角なんて………」

 

真耶と生徒達は、またも在り得ない光景を見る様な目で2人を見やる。

 

「「…………」」

 

得物を失った2人は、互いに睨み合いを始める。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その緊迫した風景に、一夏と箒、真耶と生徒達も釣られる様に沈黙し、辺りは緊迫の空気に包まれる。

 

「………フ………フフフ………」

 

「………へへへへ」

 

と、不意に2人の口から笑い声が漏れ始めた。

 

「フフフフフ………ハハハハハハハハッ!!」

 

「ハッハッハッハッハッハッ!!」

 

やがて、互いに高笑いを挙げ始めた。

 

「「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」」

 

突然高笑いを挙げ始めた2人の様子に困惑する真耶と生徒達。

 

やがて2人は、ガッチリと握手を交わした。

 

「変わらんな、神谷………憎たらしい程に」

 

「オメェはちょいと腕が落ちたんじゃねえか? ブラコンアネキ」

 

「だから、それを言うなと言っているだろうが」

 

ブラコンと言う言葉に怒りを示す千冬。

 

「な、何なの………このノリ?」

 

生徒の1人が、そんな2人のノリに付いて行けず、思わずそう呟くと、他の生徒達もそれに無言で同意した。

 

「あのノリを見るのも久しぶりだが………未だに慣れんな………」

 

「そうか? 俺はもう見慣れたけど?」

 

頭を抱えている箒に、一夏はそう言う。

 

 

 

 

 

………と、その時!!

 

 

 

 

 

突如爆発音が聞こえて来たかと思うと、グラウンドの方から火柱が立ち上った!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

「!? 何だ!?」

 

「何事だ! 状況を報告せよ!!」

 

一夏と箒、真耶と生徒達、そして神谷は何が起こったのかと慌てるが、千冬は冷静に通信回線を開き、状況を調べる。

 

[お、織斑先生! 大変です!! グラウンドに、突然謎の集団が現れて、生徒達を襲っています!!]

 

「何だと!?」

 

「そんな!? IS学園を襲撃するなんて!? 一体誰が!?」

 

職員からの報告に驚きを露わにする千冬と真耶。

 

如何なる国家や組織であろうと、IS学園に干渉する事は許されていない。

 

ましてや襲撃する等、以ての外である。

 

そんな事をすれば、その国・組織は、国際テロリストの烙印を押され、全世界を敵に回す事になる。

 

「クッ!! 教師部隊は直ちにISを装着してグラウンドへ!! 私もすぐに行く!! 山田くん! 生徒達の避難を頼む!!」

 

千冬は通信回線に向かって怒鳴る様にそう言うと、グラウンドを目指して走り出した。

 

「あ! 織斑先生!! えっと………貴方達はすぐに避難して! 私が誘導します!!」

 

一瞬戸惑いながらも、真耶は頼る事になるとは思わなかった緊急時のマニュアルに従い、生徒達を避難誘導させ始める。

 

「な、何が起こってるんだよ!?」

 

「一夏! 今は兎に角、避難するんだ!!」

 

突然の状況に頭が付いて行けてなかった一夏がそう言うと、箒がそう叫ぶ。

 

「あ、ああ………アニキ! アニキもすぐに避難を!!………」

 

その言葉でハッと我に返った一夏が、神谷にそう呼び掛けようとしたが………

 

先程まで在った神谷の姿が、何処にも居なくなっていた………

 

「ア、アレ? アニキ?」

 

「神谷!? 何処へ行ったんだ!?」

 

慌ててその姿を探す2人だったが見つからない。

 

「!? まさか!?」

 

不意に、ある予感が頭を過ぎった一夏が、グラウンドを目指して駆け出した!!

 

「一夏!? 待て! 何処へ行く!?」

 

慌ててその一夏の後を追いかけて行く箒。

 

「織斑くん!? 篠ノ之さん!?」

 

真耶が呼び止めるが、彼女は生徒達の避難誘導に手一杯であり、追い掛けられなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・グラウンド………

 

「キャアアアァァァァーーーーーッ!?」

 

「助けてえぇっ!!」

 

悲鳴を挙げて逃げ惑っている生徒達。

 

「へっへっへっへっ! 怖がれ怖がれ!!」

 

「貴様等人間達は、俺達が始末する!!」

 

全身が黒い毛むくじゃらの人間………

 

いや、獣であろうか?

 

言うなれば………『獣人』とでも呼ぶべき輩達が、我が物顔で暴れ回っていた。

 

兎に角、目に付く物がアレば手に持っている棍棒で破壊し、人間を視界に入れればしつこく追い回すと言う、獣そのものの暴れっぷりであった。

 

「止まりなさい!!」

 

「貴方達は完全に包囲されています!! 大人しく武器を捨てなさい!!」

 

と、そこでISを装着した教師部隊が現れ、獣人達に向かってそう警告を送った。

 

「何だと! 人間のくせに、俺達に意見するのか!?」

 

「生意気だ! やっちまえ!!」

 

しかし、獣人達は大人しくするどころか、ますます暴れ出し、教師部隊にまで襲い掛かり始めた!!

 

「えっ!? ちょっ!? !! キャアアアッ!?」

 

「く、来るなー! 来るなー!!」

 

教師部隊は止むを得ず応戦するものの、人間では無い獣人を相手に戸惑いが広がってしまい、満足に戦えずに居た。

 

幸いにも、ISには装着者の生命を守る為に、『絶対防御』と呼ばれる防御装置が備え付けられており、シールドエネルギーによるバリアも有る為、怪我こそ負っていないが防戦一方だ。

 

「ひゃはははははっ!! 汚物は消毒だぁーっ!!」

 

と、教師部隊の包囲網を抜けた獣人が、逃げ遅れていた生徒に向かって世紀末のチンピラの様な台詞を言いながら、棍棒を振り下ろそうとする。

 

「キャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

恐怖で縮こまり、悲鳴を挙げる生徒。

 

と、次の瞬間!!

 

「!? グハッ!?」

 

銀色の閃光が走ったかと思うと、生徒に襲い掛かろうとした獣人が、胸に袈裟懸けの傷を出現させて倒れた。

 

「無事か?」

 

その傷を付けた主………ISのブレードを構えた千冬が、生徒に向かってそう尋ねる。

 

「千冬お姉様! は、ハイ! 大丈夫です!!」

 

「なら早く逃げろ!!」

 

「は、ハイ!!」

 

千冬の言葉に、慌てて逃げ出す生徒。

 

「あああああ………」

 

と、その時………

 

千冬が斬り捨てた獣人が息絶えたかと思うと、その骸がまるでコールタールの様な黒い液体に変わり、そのまま白い煙を上げて蒸発してしまった。

 

「!? 何だ………コイツ等は………」

 

その異様な光景に、背筋に冷たい汗が流れるのを感じる千冬。

 

「ああ! 仲間がやられたぞ!!」

 

「オノレェ!! よくも仲間をぉ!!」

 

とそこで、仲間をやられた事に怒った他の獣人達が、教師部隊を押し退け、千冬へと殺到した。

 

「!! クウッ!!」

 

戸惑いながらも、ブレードを振るって、次々に斬り捨てて行く千冬。

 

「ぐあああっ!?」

 

「何だ!? この女、強いぞ!! 人間のくせに!!」

 

「怯むな!! 俺達の方が数は上だぁ!!」

 

しかし、応戦しているのが千冬1人と言う状況に対し、獣人達は数10人近くおり、如何に千冬と言えど、現役を退いて久しい彼女には多勢に無勢であった。

 

(クソッ! 数が多い!! このままでは!!)

 

そう思いながら、目の前に居た獣人に向かって、ブレードを振り下ろす千冬。

 

「おっとぉ!!」

 

しかし、獣人は棍棒でその攻撃を受け止めてしまう。

 

「!? 何っ!?」

 

「隙有りぃ!!」

 

その瞬間、驚いて動きが止まってしまった千冬の背後から、別の獣人が棍棒を振り被って殴り掛かる。

 

「!? しまっ………」

 

慌ててブレードを斬り返そうとする千冬だったが、間に合わない。

 

あわや絶体絶命か!?

 

………と思われたその時!!

 

「俺を誰だと思ってやがるキイイイイイイィィィィィィィックッ!!」

 

と言う叫び声が木霊したかと思うと、千冬に殴り掛かろうとしていた獣人に、神谷の飛び蹴りが叩き込まれた!!

 

「アバアッ!?」

 

「!?」

 

千冬が驚いていると………

 

「そいつを倒すのは俺の役目だパアアアアアアァァァァァァァンチッ!!」

 

更に続けて、神谷は千冬のブレードを受け止めていた獣人にパンチを叩き込む。

 

「おぼあっ!?」

 

ブッ飛ばされる獣人。

 

他の獣人達も、突如現れた援軍の前に、戸惑いの色を浮かべて動きを止めた。

 

「苦戦してるじゃねえか、ブラコンアネキ」

 

「神谷!? 何をしている! 早く避難しろ!!」

 

「馬鹿言うんじゃねえよ! 俺を誰だと思ってやがる!!」

 

神谷はそう言うと、背負っていた鞘から、長刀を抜き放つ。

 

「おうおうおうおう! この人か獣か曖昧野郎共! 耳の穴かっぽじって良ぉく聞きやがれぇ!!」

 

そして、獣人に向かって啖呵を切り始めた。

 

「世界に悪名轟くグレン団! 男の魂、背中に背負い! 不撓不屈の! あ! 鬼リーダー! 神谷様たぁ、俺の事だ!!」

 

「貴様………」

 

「貸しにしとくぜ、千冬」

 

「………良いだろう」

 

そして2人は、並び立って長刀とブレードを構えた。

 

「ぐううっ! 人間のくせになまいきなぁ!! 皆! やっちまえっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

獣人達は、2人の雰囲気に若干気押しされながらも、再び襲い掛かって行く。

 

「舐めるな!!」

 

「俺達を誰だと思ってやがる!!」

 

それに対して、千冬と神谷も、獣人向かって突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ、一夏、待て! 待つんだ!!」

 

「ハア………ハア………アニキ!!」

 

箒の静止も聞かず、グラウンドを目指して走り続ける一夏。

 

そしてとうとう、グラウンドの端まで到着する。

 

「アニキ!!………!?」

 

「一夏!! 如何したんだ!?………コレは!?」

 

そして、グラウンドを見た2人は言葉を失った。

 

「おらおらぁっ! 束になって掛かって着やがれ!!」

 

「目だっ! 耳だっ! 鼻っ!!」

 

そこには、長刀とブレードを振り回す神谷と千冬が、襲い掛かって来る獣人達を片端から斬り捨てていると言う光景が広がっていた。

 

「「…………」」

 

余りの衝撃に、一夏と箒は呆然と佇んでしまう。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

最初に駆け付けた教師部隊も、2人が余りにも強いので手が出せず、如何して良いのかとオロオロとしていた。

 

「こ、コイツ等! ホントに人間か!?」

 

「俺達とココまで戦うなんて………」

 

「クソッ! 話が違うぜ!!」

 

とうとう残った獣人は、3体だけとなった。

 

「さ~て、残るはお前達だけだな」

 

「命乞いでもしてみるか? 許しはしないがな?」

 

その3体の獣人達に向かって、長刀とブレードを向け、そう言い放つ神谷と千冬。

 

「ど、如何するんだ?」

 

「このままじゃヤバいぞ」

 

「しょうがない………『アレ』を使うぞ!!」

 

すると、獣人の1人がそう言いながら、顔の様な形をしたバッジを取り出した。

 

他の2人の獣人もそれに倣う様に、同じ様なバッジを取り出す。

 

「? 何だぁ?」

 

「何をする積りだ?」

 

と、神谷と千冬が首を傾げた瞬間………

 

「「「来おおおぉぉぉぉいっ! 『ガンメン』!!」」」

 

獣人達がそう叫んで、そのバッジを掲げた。

 

その瞬間、獣人達を光が包み込み………

 

その光が弾けた瞬間………

 

そこには獣人ではなく………

 

巨大な顔から手足が生えているという、不格好な姿をしたマシン達の姿が在った!!

 

「!? 何っ!?」

 

「IS!? いや、違う! あのマシンは一体!?」

 

その不格好なマシンを見て驚く神谷と千冬。

 

「覚悟しやがれ! 人間共!!」

 

「こうなったら俺達はもう止まらねえぞぉ!!」

 

「皆殺しにしてやるぜぇ!!」

 

不格好なマシン達………『ガンメン』がそう言い放つ。

 

「喰らえぇっ!!」

 

そして、3体の中心に居たガンメン………ウシ型ガンメン『ゴズー』が、腕の装甲を展開したかと思うと、そこからミサイルを発射して来る!!

 

「!? うおっ!?」

 

「くうっ!?」

 

至近距離に着弾し、爆風で吹き飛ばされる神谷と千冬。

 

「オラオラッ!!」

 

「逆らう奴は殺す!! 逃げる奴も殺す!!」

 

そして、残り2体のガンメン………ドクロ型ガンメン『アガー』と、カエル型ガンメン『ングー』も、教師部隊へと襲い掛かる。

 

慌てて応戦する教師部隊だったが、ガンメン達は殺す積りで来ており、いかに世界最強の兵器のISを装着していようと、実戦経験………『殺し合い』の経験の無い教師陣は、相手の気迫に圧倒される。

 

「チキショー! やってくれるじゃねえか!!」

 

そう言いながら、身体に付いた土埃を落としつつ、ガンメン達を見据える神谷。

 

「全員、一時撤退しろ!!」

 

とその時、千冬が教師陣に向かってそう命令を下した。

 

「!? オイ、千冬! オメェ何言ってやがる!?」

 

「実戦経験の無い教師陣では無理だ。ココは一旦退いて態勢を立て直すのが………」

 

「バッキャロウッ! 男が敵に後ろを見せられるかよ!!」

 

「神谷! お前は!!」

 

思わず言い争いを始めてしまう神谷と千冬。

 

「ア、アニキ! 千冬姉! そんな事してる場合じゃ!!………」

 

「ん~~!? まだ人間が居たのか? お前も死ねぇっ!!」

 

一夏が、神谷と千冬に向かってそう叫ぶが、その行為がガンメンの気を引く事となってしまい、ゴズーは一夏達に向かってミサイルを放った!!

 

「「!?」」

 

硬直してしまう一夏と箒。

 

ミサイルはそんな2人に向かって無慈悲に迫る。

 

「!! 一夏ぁ!!」

 

と、それを見た神谷が、ミサイルと一夏達の間に、己の身体を割り込ませた!!

 

「!? アニキ!?」

 

「「神谷!?」」

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」

 

一夏達の声が挙がる中、神谷は気合でミサイルを受け止めようとする。

 

「馬鹿め! 貴様が先に死ねぇ!!」

 

しかし、そんな事が出来る筈は無い………

 

神谷の人生はココで終わってしまうのか………

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

神谷が首から下げていた小さなドリルから、緑色の光が溢れ、神谷を包み込んだ!!

 

ゴズーが放ったミサイルは、その緑色の光に阻まれて、爆発する。

 

「!? ん何ぃ!?」

 

ゴズーが驚きの声を挙げる。

 

「「!?」」

 

アガーとングーも、驚いて動きが止まる。

 

「アニキ!?」

 

「神谷!?」

 

「な、何が起こっているんだ!?」

 

一夏、千冬、箒も、その光から目を守りながらも、驚きの声を挙げる。

 

やがて、光が弾けたかと思うと、そこには………

 

 

 

 

 

まるで鎧武者の様な姿をした、三日月状の兜を被った、真紅と黒のカラーリングをしたマシンが佇んでいた。

 

良く見ると、本来顔があるべき頭部の他にも、ボディにも顔があり、目の部分に黒いサングラスを装着していた。

 

 

 

 

 

「………ん?………ん?………!? な、何だこりゃあっ!?」

 

すると、そのマシンから、神谷の驚いた声が挙がった。

 

「!? ア、アニキ!? アニキなのか!?」

 

「何だと!?」

 

「神谷!? その姿は一体!?」

 

「んなもんコッチが教えて欲しいぜ! 何なんだ、こりゃあっ!?」

 

戸惑う一夏達だったが、1番戸惑っていたのは他ならぬ神谷だった。

 

「まさか………それはISか!? 一夏の他にもISを使う男が!?」

 

千冬がそう言った瞬間………

 

「あ、アレはガンメン!?」

 

「馬鹿な!? 如何して人間がガンメンを!?」

 

ガンメン達から、そんな声が挙がった。

 

「ええいっ! 兎に角叩き潰すまでだぁ!!」

 

と、考える事が面倒になったのか、ングーがそう言いながら紅い全身装甲(フルスキン)のIS(?)を装着した神谷に向かって行った。

 

「ええい! 何だか分からねえが! やってやらあぁっ!!」

 

神谷はそう言いながら、向かって来たングーに対して、右の拳を突き出した。

 

その瞬間!!

 

その右手が、ドリルへと変わり、高速回転しながらングーを貫いた!!

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

ドリルに貫かれたングーは、そのまま爆散した!!

 

「おおっ! ドリルか!! へっ! いかにも俺向きな武器だぜ!!」

 

ドリルと化した右手を見ながらそう言う神谷。

 

「オノレェ! よくも仲間をぉ!!」

 

「貴様ぁ! 一体何者だぁ!?」

 

と、残り2体のガンメンが、神谷に向かってそう叫ぶ。

 

「ん? そうだな………グレンラガン………そう! コイツの名は、『グレンラガン』だ!!」

 

神谷はそう叫び、見得を切る様なポーズを取った!!

 

「グレン………」

 

「ラガン………」

 

その名前を半分ずつ反復する千冬と箒。

 

「カ、カッコイイ………」

 

そして、そのカッコ良さに痺れている一夏だった。

 

「クソがぁっ!!」

 

と、そこでアガーが、グレンラガンに向かって突撃して行った。

 

「喰らえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!?」

 

そして、グレンラガンに向かって、拳を振るう。

 

「おおっと!!」

 

しかし、グレンラガンはその拳をアッサリと受け止めると、そのままアガーを投げ飛ばした!!

 

「おわああああっ!?」

 

グラウンドの上を、転がる様に滑って行くアガー。

 

「お前にはコイツだぁ!!」

 

すると、グレンラガンは胸に装着されていたサングラスを剥がし、ドリルから戻した右手に持った。

 

そして、アガー目掛けて突撃して行く。

 

「男の情熱ぅっ!」

 

そのままアガーを斬り付け、空中へと打ち上げる!!

 

更に追撃し、空中で両手で構えたサングラスを振り下ろす!!

 

「燃焼斬りぃぃぃっ!!」

 

アガーは空中で真っ二つに斬り裂かれた。

 

「うがああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

断末魔の叫びが木霊する中、サングラスを胸に戻し、再び見得を切る様なポーズを取るグレンラガン。

 

「ぬああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

と、そこでゴズーがグレンラガンに一気に接近し、飛び掛かりながら棍棒を振るった。

 

「無駄無駄無駄ぁっ!!」

 

だが、グレンラガンは棍棒を腕でガードしたかと思うと………

 

何と、棍棒の方が砕けてしまった!!

 

「何ぃっ!?」

 

「お前で最後だ!!」

 

すると、グレンラガンは腕の部分から、細長いドリルを2本出現させる。

 

「必殺! グレンラガン・スーパー・アッパアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

そして、その2本のドリルで、ゴズーを突き刺す様にアッパーカットを繰り出した!!

 

「うぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

ゴズーは身体に風穴を空けられ、空高く舞い上げられたかと思うと、そのまま爆散した。

 

「決まったぜ………」

 

アッパーカットを出し切ったポーズのまま、神谷はそう呟くのだった。

 

「スゲェッ! スゲェよ! 流石アニキだ!!」

 

そんな神谷の大活躍に、一夏は手放しで喜んでいる。

 

(獣人が使っていたあのマシン………明らかにISでは無い………そもそも獣人とは一体何なのだ?………それに………グレンラガン)

 

しかし千冬は、グレンラガンを見ながら、言い様の無い不安を心に感じていた。

 

「一体………何が起こっているんだ………」

 

その千冬の呟きに気づいた者は、誰も居なかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

いよいよ本編開始となります。
原作通りにIS学園に入学させられた一夏ですが、所々に神谷の影響が出てます。
その神谷も満を持して登場。
初っ端から千冬と大バトルを繰り広げます。

そして更にそこへ獣人とガンメンが登場。
この作品では、ガンメンは獣人が使うパワードスーツ的な物と言う事になります。
それを『グレンラガン』となって退けた神谷。
一体グレンラガンとは何か?
そして獣人とガンメンとは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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