天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第20話『見てぇもんは見てぇんだ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第20話『見てぇもんは見てぇんだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロージェノム軍による銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)強奪未遂というハプニングがあったものの………

 

IS学園の臨海学校は無事終了した………

 

生徒達は皆学園に戻り、残り僅かな1学期を過ごして、そのまま青春の夏休みに突入する………

 

………筈だった。

 

何故か、臨海学校は終わった筈なのに………

 

神谷達グレン団の一同と千冬、真耶は、くろがね屋に残っていた………

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の件で、神谷達は命令違反を犯しており………

 

当初千冬は、学園に帰ってから処罰を下す積りでいたが………

 

神谷の性格からして、学園に帰った途端にバックレると踏んだ千冬は、くろがね屋に残って補習を行う事にしたのだ。

 

一夏達も、ついでと連帯責任と言う事で、補習に付き合わされる。

 

頭を使う補習は神谷には無意味だと悟った千冬は、身体を使う補習で神谷を扱く積りである。

 

ドイツ軍で教官をしていた経験もある千冬は、そりゃあもう軍隊さながらの訓練を神谷達に科した。

 

 

 

 

 

くろがね屋近くの海岸………

 

「1、2ー!」

 

「「「「「「そーれ!!」」」」」」

 

「1、2ー!」

 

「「「「「「そーれ!!」」」」」」

 

迷彩服姿で、本物と同じ重量の装備を持たされ、砂浜を整列して揃ってランニングしている一夏達。

 

「もっと声を出さんかーっ!! 貴様等それでも軍人かぁーっ!!」

 

御丁寧に千冬も鬼軍曹の様な格好をして、腕組みをして仁王立ちのポーズで佇んでいる。

 

「お、織斑先生………軍人じゃなくて、生徒達ですよ………」

 

その横に居た、千冬によって無理矢理迷彩服を着せられた真耶がそう弱々しく言う。

 

千冬の迫力に押されて、強く出れない様だ。

 

「な、何故………私がこの様な事を………」

 

「コレも全部神谷のせいよ………」

 

只でさえ暑い夏の砂浜を、軍隊のフル装備で走っている為、既に滝の様な汗を掻いているセシリアと鈴が、恨みがましそうにそう呟く。

 

「この感じ………あの頃を思い出す」

 

ラウラは、千冬がドイツで教官をしていた頃を思い出し、懐かしそうな顔になる。

 

「い、一夏………流石にコレはキツイぞ………如何にかならないか?」

 

「無理だよ………千冬姉がああなったら誰にも止められないよ………」

 

苦しいを通り越して青褪めた表情で訴える箒に、同じ様な表情で力無くそう答える一夏。

 

「オイ、如何した!? もっと気合入れろ!!」

 

「神谷は元気だね………僕もう死にそう………」

 

体力馬鹿な神谷はピンピンしているが、隣のシャルは死にそうな表情になっている。

 

「ほう………元気が有り余っているな………よ~し! もう100往復追加だ!!」

 

そんな神谷の姿を見て、千冬はそう指示を出す。

 

「「「「「ええええぇぇぇぇぇ~~~~~~っ!?」」」」」

 

「ハイ! 教官!!」

 

「へっ! 上等だぜ!!」

 

悲鳴を挙げる一夏達とは対照的に、ラウラと神谷はまだまだ余裕そうなのであった。

 

訓練開始時には上り始めていた太陽が………

 

今は水平線の向こうへ落ちかけているのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

くろがね屋の一室では………

 

「あの坊や達は如何してる?」

 

「織斑先生に扱かれてるわ。先生ったら、日頃の恨みとばかりに神谷に厳しい訓練を課してるみたいね」

 

リーロンがパソコンの様な機械を弄りながら、つばさの問いにそう返す。

 

「アハハハ、巻き込まれてる生徒さん達は可哀そうだね」

 

「全くね………けど、何やかんや言って、結局は神谷に付いて行く子達だしね。大丈夫よ」

 

「そうかい………ところで? そいつは何だい?」

 

と、そこでつばさは、今度は先程からリーロンが弄っているパソコンの様な機械に映し出されている『グレンラガンに良く似たマシンの設計図』について尋ねる。

 

「ああ、コレ? グレンラガンを元にした量産機の設計図よ」

 

「ほう………グレンラガンの量産機かい」

 

「ええ。世界とロージェノム軍との戦況は今のところ五分五分だけど………ISの数に限りがある以上、何れはジリ貧よ。ISに代わる兵器を用意しないと」

 

「それでグレンラガンの量産機を………って事かい?」

 

「ええ、そうよ。コレはまだ試作段階だから、神谷程でないにしても螺旋力がある程度無いと駄目だけど、何れは誰にでも使える様にする積りよ」

 

「造ったら造ったでまた面倒な事が起こりそうだけどねぇ………」

 

共通の敵を前にしても、未だに纏まりきっていない世界の情勢を顧みて、つばさは皮肉る様にそう言う。

 

「それでも必要な事よ………もしこの戦いに負ければ、人類の明日は奴隷か絶滅よ………」

 

だが、リーロンは真剣な顔で、グレンラガンの量産機のデータを創り上げて行くのだった。

 

「そうだね………先ずは人類が生き残らない事には始まらないね」

 

と、つばさがそう言った時………

 

ドタドタという、大人数が廊下を走って来る様な音が聞こえて来る。

 

「?」

 

「何だい?」

 

それを聞いたリーロンとつばさが、廊下の方に視線を向けると………

 

廊下の襖が蹴破られ、銃を手にしているウサギ型の獣人達が雪崩れ込んで来た!!

 

「動くな!!」

 

「大人しくしてもらおうか!!」

 

銃をリーロンとつばさに付き付け、ウサギ型獣人達はそう言い放つ。

 

「アララ………」

 

「騒がしいね、全く………」

 

しかし、無数の銃口を突き付けられていると言うのに………

 

リーロンとつばさの顔には………

 

余裕の笑みが浮かんでいたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事態が起こっているとは露知らず………

 

神谷達がくろがね屋へと帰還して来た………

 

神谷と一夏の部屋………

 

「はああぁぁぁぁ~~~~………疲れた~~~~」

 

部屋に帰るなり、一夏は倒れ込む様に畳の上に倒れる。

 

未だに着ている迷彩服は汗でびっしょりである。

 

生徒達は先に帰ってしまったので、現在部屋割りは男子と女子で分けられており、千冬と真耶は女子達の部屋の方で、そちらの方を監視しているという態勢を取っている。

 

補習まで一夏は兎も角、神谷と同じ部屋に居たくないと言う思いも有ったのかもしれないが………

 

「如何した、一夏! 気合が足りねえぞ!!」

 

疲労困憊な一夏とは対照的に、神谷の方はまだ元気そうであった。

 

「アニキ~………体力有り過ぎるよ~………」

 

倒れたまま神谷に視線を向けながら、一夏はそう言う。

 

「男は体力だろ! それぐらいで根を挙げて如何する!!」

 

そんな一夏に向かってそう言い放つ神谷。

 

(………こりゃ明日は今日以上の地獄かも)

 

訓練終了の際に、余り疲れた様子を見せなかった神谷を見て、千冬が悔しそうな表情を浮かべていたのを思い出して、一夏はそう思う。

 

「はあ~~………取り敢えず………俺、汗を流したいから、温泉に行くよ」

 

「そうか。んじゃ、俺も行くとするか………」

 

そう言い合うと、神谷と一夏は浴衣と代えの下着を持ち、温泉へと向かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くろがね屋・温泉………

 

男湯………

 

「アレ? 安さんが居ない?」

 

温泉に入った一夏が、何時も居る筈のイタチの安の姿が無い事に気づいて、そう声を挙げる。

 

「ああ? 何処行ったんだ? アイツ?」

 

神谷もそれに気づいてそう声を挙げる。

 

「………まあ良いや。アニキ、俺が背中流すよ」

 

「おう! んじゃ頼むぜ!!」

 

しかし、他の仕事の手伝いをしているのだろうと思い、一夏と神谷は互いに背中を流し合いながら身体を洗うと、湯船に浸かったのだった。

 

「ああ~~~………生き返る~」

 

「年寄りくせぇぞ、一夏」

 

「ううっ!? 言わないでよ、アニキ~」

 

気にしている事を指摘された一夏が、抗議の声を挙げる。

 

「…………」

 

しかし、神谷はそんな一夏の抗議の声など聞こえていないかの様に、湯船の縁に寄り掛かり、天を仰いでいた。

 

すっかり日は暮れ、空には満月と無数の星々が浮かんでいた。

 

「? アニキ?」

 

「キレーなもんじゃねえか………なあ、一夏」

 

首を傾げた一夏に、神谷はそう言う。

 

「えっ? ああ、うん………確かに、此処だと星が良く見えるね………」

 

神谷の言葉に、一夏は同じ様に星空を見上げながらそう答える。

 

「なあ、一夏………何時かあの星の向こうまで行きてぇな」

 

「? 星の向こうに? 宇宙に? 幾ら何でも、それは………」

 

「馬鹿野郎!!」

 

と、神谷はそう言って湯を波立たせながら立ち上がると、湯船の縁に片足を突いて仁王立ちした。

 

「無茶を通して道理を蹴っ飛ばすのが、俺達グレン団だろうが。その俺達が、今まで行くと言って行けなかった所が在ったか?」

 

「アニキ………」

 

そんな神谷の姿を見た後、再び星空を見上げる一夏。

 

「そうだね………うん! 行こうよ、アニキ! 何時かあの星の向こうまで!!」

 

「おう!!」

 

男2人が、まだ見ぬ果ての景色に思いを馳せていた。

 

………と、その時!

 

「あン!」

 

「「!?」」

 

隣………女湯から聞こえて来た色っぽい声に、一夏と神谷は反応する。

 

「ふぁ、凰さん! ヘンなところに触らないで下さい~!」

 

「オノレェ! このデカチチが! デカチチがぁ~!」

 

「教官………どの様にすれば、教官の様な素晴らしいスタイルになれるのでしょうか?」

 

「ラウラ、落ち着け………目が据わってるぞ………」

 

「………メロン」

 

「いえ、スイカですわ………」

 

「!? おま、お前達! 何処を見て何を言っている!?」

 

それは、女湯に入っている真耶、鈴、ラウラ、千冬、シャル、セシリア、箒の男にとって非常に悩ましい声だった。

 

「ア、アニキィ!?」

 

「おおおおお、落ち着け一夏ぁ!!」

 

顔を真っ赤にしている一夏と鼻息の荒い神谷。

 

「も、もう許しませんよぉ! えいっ!!」

 

「キャアッ!? ちょっ、ちょっと! 何処揉んでるのよ~!!」

 

「教官、まさか………一夏との所謂禁断の愛で………」

 

「貴様! 一体何処からそんな知識を仕入れて来るんだ!?」

 

「僕も結構あると思うんだけどなぁ~………」

 

「わ、私だって!!」

 

「だから何処を見て言っている!!」

 

そんな一夏と神谷の思いなぞ知らず、更に悩ましい会話が女湯から聞こえて来る。

 

「ブフッ!? ア、アニキ………コレ以上はマズイよ! 退散しよう!!」

 

耐え切れなくなった一夏が鼻血を噴くと同時に、神谷にそう呼び掛ける。

 

しかし、その隣に神谷の姿は無かった………

 

「? アニキ?」

 

神谷の姿を探して、一夏がキョロキョロとすると………

 

「クソッ! 足りねえ………オイ、一夏! もっと桶と椅子を集めろ!!」

 

風呂桶と座椅子を集め、高い敷居を超えようとしている、腰にタオルを巻き付けた神谷の姿が在った。

 

「な、何してるの!? アニキ!?」

 

「ああん? 決まってんだろ! 女湯を覗くんだよ!!」

 

悪びれた様子も無く、神谷は当然の様にそう言い放つ。

 

相変わらず自分に正直な男である。

 

悪い意味でも………

 

「だ、駄目だよ、アニキ! 覗きは犯罪だよ!! それに後でどんな目に遭うか………」

 

当然止めようとする一夏だったが………

 

「馬鹿野郎!! 良いか、一夏! 星の向こうも良いが、その前によ………男が辿り着かにゃならねぇフロンティアが在るだろう?」

 

そこで神谷は、一夏と肩を組み、そう言って来た。

 

「男の道ってのはなぁ………何だ、一夏? 山あり谷あり………ロマンありだ。違うか? なぁ、見たはねぇのかい? 美しい山やキワどい谷をよぉ」

 

神谷は、真面目なかつ真剣な顔でそう語る。

 

傍から見ればカッコイイのだが、やろうとしている事は結局覗きである。

 

様は純度100%の下心だ。

 

「う、美しい山や………キワどい谷………!? うぐっ!?」

 

思わず想像してしまった一夏の鼻から、またも鼻血が噴き出す。

 

「そうだろ、一夏! 男ならそうだろ!!………で? 誰のが1番楽しみだ? セシリアか? ラウラか? 鈴か? メガネ姉ちゃんか? まさかブラコンアネキって事はねえよな?」

 

神谷は、早口でそう捲し立てる様に言う。

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ、アニキ! 俺は………」

 

「やっぱり箒か!?」

 

「!?」

 

と、神谷の口から箒の名が出た途端に黙り込む一夏。

 

脳裏に、転校初日に箒と同じ部屋にされた際に見てしまったバスタオル1枚だけの姿が思い起こされる。

 

そして注目点は、同年代の女子と比べて豊満に育っている胸に移り………

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

そこで一夏は、慌てて手をバタつかせて妄想を振り払う。

 

「お、俺は!! 俺は!!」

 

葛藤している様子を見せながら、一夏は黙り込む。

 

「良し! 届いたぁ!!」

 

と、その間に更に風呂桶と座椅子を集めていた神谷は、遂に女湯が覗けそうな位の高さに積み上げる事に成功した!

 

「いざ行かん! 約束の地! 男のフロンティアへ!!」

 

そして遂に………

 

神谷は女湯を覗き込む………

 

と、その瞬間!!

 

突如激しい震動が走り、くろがね屋の風呂場が崩壊し始めた!!

 

「な、何だぁ!?」

 

「!? おわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

その震動で足場が崩れ、神谷は湯船へと落下する。

 

「アニキ!!」

 

「お、男のフロンティアが~~~~~っ!?」

 

また言っている………

 

と………

 

やがて震動が更に激しくなり、女湯側の地下から、超巨大ガンメン………温泉型ガンメン『イタミループ』が姿を現した!!

 

「!? ガンメン!! しかもデカい!?」

 

「プハァッ!! 許さねえぞ、ガンメン野郎!! 男のロマンを粉々にしやがった罪!! 100億万倍にして返してやるぁあ!! グレンラガン! スピンオン!!」

 

と、湯船から飛び出した神谷が、恨みの籠った叫びと共に首から下げていたコアドリルを掲げる様に構えて吠えた。

 

その姿が緑色の光に包まれて、グレンラガンとなる!

 

「クッ! 白式ぃっ!!」

 

一夏も白式を呼び出し、白い光に包まれて装着する!!

 

「行くぞぉ! ガンメン野郎!!」

 

「待てぇいっ!!」

 

そしていざ掛かって行こうとした瞬間、イタミループがそう声を挙げた。

 

「「!?」」

 

「コイツ等が如何なっても良いのか?」

 

思わずグレンラガンと一夏が動きを止めると、イタミループの頭の上に、檻の様な物が現れ、目から映像が投影される。

 

そこには………

 

身体の部分をモザイクで隠されたシャルや箒達の姿が映し出された。

 

「!?」

 

「箒!? クソッ! 人質か!?」

 

それを見て動きを止めるグレンラガンと一夏。

 

「一夏!!」

 

「神谷ぁっ!!」

 

箒とシャルが2人に向かって叫ぶ。

 

「何でISが展開出来ないよの!?」

 

「この檻から奇妙なエネルギー波が出ている………」

 

「それがISの展開を妨害しているんですの!?」

 

ISを展開しようとしている鈴だが、如何いうワケか展開せず、ラウラが分析し、セシリアが驚きの声を挙げる。

 

「お、織斑先生………」

 

「クソッ! この私が………油断した」

 

完全に狼狽えている真耶と悔しそうな表情を浮かべている千冬。

 

「女共の命が惜しかったらグレンラガンとISを解除してもらおうか!」

 

イタミループが、グレンラガンと一夏を指差してそう言い放つ。

 

「罠だよ!!」

 

「罠だ一夏! そんな話に乗るな!!」

 

「アニキ! 罠だ! 如何するの!?」

 

あからさまな罠にシャル、箒、一夏がそう声を挙げる。

 

「…………」

 

神谷は少しの間沈黙していたかと思うと………

 

「オイ………もし俺が解除したら………」

 

「んん?」

 

「見えそうで見えねぇそのモザモザした奴を外してもらうぜ!!」

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

その瞬間………

 

その場に居た誰もが呆れ返った………

 

「そ、そんなので良いのか?」

 

「おうよ!!」

 

「うん、分かった………」

 

戸惑いの声を挙げるイタミループにも、迷わずそう答えるグレンラガン。

 

「ア、アニキ!? 何言って………ブバッ!?」

 

思わず傍に寄って来た一夏に裏拳を喰らわせて黙らせる。

 

「許せ………兄弟」

 

そしてそう言ったかと思うと、グレンラガンから神谷の姿へと戻った!!

 

「さあ解除してやったぞ! そっちも約束を守りやがれぇーっ!!」

 

イタミループを指差し、神谷はそう言い放つ。

 

「ククク………良いだろう」

 

そして、イタミループがそう言って指を鳴らすと、箒達の映像に掛かっていたモザイクが解除される。

 

そこに映っていたのは………

 

身体にタオルを巻いている箒達の姿だった!!

 

「…………」

 

暫し呆然とする神谷。

 

やがて………

 

「ふざけんなああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

涙まで流してそう絶叫した!!

 

「許さん許さん許さんぞーっ!! テメェ等全員ギッタギタのバッキバキに………」

 

神谷が激怒の様子を露わにしていると………

 

「それはこっちの台詞だ! 馬鹿神谷あああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「そんなのは罠に決まっているだろう!!」

 

「てゆーか! 何で交換条件がアタシ達じゃなくてモザイクなのよ!!」

 

「脳みそが沸いてるのですか! このエロザルモンキー!!」

 

「神谷! 貴様は最低だ!!」

 

千冬、箒、鈴、セシリア、ラウラが、神谷にそう非難と罵声を浴びせて来た。

 

当然である………

 

「て、天上くん! エッチなのはいけないと思いまーす!!」

 

真耶もどっかのメイドさんの様な台詞を口走る。

 

「スマン! お前等!!」

 

すると神谷は、意外にもすぐに箒達に向かってそう謝罪する。

 

「「「「「「「えっ!?」」」」」」」

 

意外な神谷の反応に驚く箒達だったが………

 

「だが! 見てぇもんは見てぇんだ!!」

 

最低な事を一片も恥じる事なく、神谷はそう宣言する。

 

駄目な方向に凄く男らしい………

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

箒達は再び言葉を失う。

 

「き、貴様という奴は………」

 

怒りで握った拳が震え始める千冬。

 

すると………

 

「だったらそう言えば良いじゃないか! 神谷の馬鹿ぁ!! そんなに見たいんだったら何時でも見せてあげたのにー!!」

 

シャルがトンでもない事を口走った。

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

即座に反応する神谷と、シャルに視線を集める箒達。

 

「!? あ、いや、その………」

 

自分が口走った事を思い出し、真っ赤になって縮こまるシャルだった。

 

「ええいっ! 何をゴチャゴチャと言っているぅ! とっとと死ねえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

と、そこで痺れを切らしたイタミループが、神谷を踏み潰そうと足を振り上げる。

 

「う………ううん………アニキ! いきなり何すん………」

 

「潰れろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

目を覚ました一夏が見たものは、自分と神谷に向かって足を振り下ろしてくるイタミループの姿だった。

 

「!? うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

「うおおおっ!?」

 

為す術も無く、2人はイタミループの足に踏み潰される!!

 

「一夏ぁっ!!」

 

「神谷ぁっ!!」

 

箒とシャルの悲痛な叫びが木霊する。

 

「アハハハハハッ! やったぞ!! グレンラガンを倒したぞおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

そんな箒達とは対照的に、勝利の雄叫びを挙げるイタミループ。

 

と、その時………

 

神谷と一夏を踏み潰した筈のイタミループの足が、持ち上がり始めた!

 

「!? 何っ!?」

 

「ゼエエエエエェェェェェェーーーーーーットッ!!」

 

イタミループが驚きの声を挙げた瞬間に、そう言う雄叫びが響き渡る。

 

そのまま更にイタミループの足が持ち上がって行き………

 

その下から、イタミループの踏み潰し攻撃を受け止めていたクロスの姿が露わになった!!

 

「!? 番頭さん!?」

 

「クロス!?」

 

「大丈夫か、2人共」

 

クロスは余裕のある笑みで、イタミループの足を支えながらそう言い放つ。

 

「ば、馬鹿な!? 何て怪力だ!? コイツ!? 人間か!?」

 

ゴツイ体格をしているとはいえ、人間が巨大な自身を支えているという事が信じられないイタミループ。

 

するとその瞬間!!

 

イタミループの身体を、何者かが駆け上がった!!

 

駆け上がった誰かは、箒達が捕えられている檻の前に躍り出る。

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

驚く箒達。

 

「…………」

 

それは、口元を布で隠し、和服に袴と言う侍の様な格好をして刀を持った先生の姿だった!!

 

「!!」

 

先生はそのまま、腰に構えていた刀を居合いの様に抜き放ち、箒達を捉えている檻を斬り裂く!!

 

鋼鉄製の檻が、まるで紙の様に切断される!!

 

「!! 今だ!!」

 

「「「「!!」」」」

 

箒がそう声を挙げた瞬間、専用機持ち達はISを展開。

 

千冬と真耶を抱えて脱出した!!

 

「…………」

 

それを見た先生も離脱する。

 

「!? ああっ!? オノレ、逃がすか!!」

 

離脱しようとしていた箒達に、イタミループが手を伸ばすが………

 

ドゴンッ!! と言う凄まじい発砲音がしたかと思うと………

 

箒達に向かって伸ばされていたイタミループの腕に風穴が空き、火を噴いた!!

 

「うわおあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

「そ~うはさせないんだな~」

 

旅館の屋根の上で、対物ライフルを構えたジャンゴがそう言い放つ。

 

「貴様ぁ!?」

 

「ホラホラ、油断してるんじゃないよ」

 

イタミループの視線がジャンゴに向けられた瞬間………

 

凄まじいスピードで接近してきた菊ノ助が、イタミループの左腕に、鋼糸を巻き付けた!!

 

「ホイッ! っと!!」

 

そして菊ノ助がその鋼糸を引くと………

 

イタミループの左腕が、ハムの様に輪切りにされた!!

 

「ぬああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

両腕を破壊され、イタミループは悶える。

 

「無様だね………ガンメンさんよ」

 

「人質を取った時点で、貴方の負けは決まっていたのよ」

 

とそこで、旅館の屋根の上に現れたつばさとリーロンが、イタミループに向かってそう言い放った。

 

「!? き、貴様等!? 獣人特殊部隊が始末した筈では!?」

 

イタミループはその2人の姿を見て驚きを露にする。

 

「獣人特殊部隊?………ああ! あのウサギちゃん達ね!」

 

「残念だったね。自慢の特殊部隊とやら、ウチの連中が皆片付けちまったよ………くろがね屋の従業員を舐めるんじゃないよ」

 

つばさがキセルを吹かしながらそう言い放つ。

 

「ば、馬鹿な!? オノレエエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!」

 

イタミループは怒りを露わにして、旅館ごとリーロンとつばさを押し潰そうとする。

 

「………安」

 

「アイヨ! 女将さん!!」

 

そこへ、イタチの安がボールの様な物を持って現れる。

 

「そらっ!!」

 

そのボールの様な物を、イタミループに向かって投げつけたかと思うと………

 

巨大な爆発が発生した!!

 

「ぬああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

イタミループは、大きく仰け反って後退る。

 

「ドチクショウがぁっ!!」

 

「さあ、もう終わりだよ」

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「上を見てみな」

 

「!?」

 

つばさの言葉を受けて、イタミループは思わず上を向いてしまう。

 

するとそこには………

 

満月をバックに、グレンブーメランを構えているグレンラガンの姿が在った。

 

「覚悟しろおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

怒りと逆恨みが混じった神谷の声が響き渡る。

 

「ぬおおっ!?」

 

「男の恨みぃ! 炸裂斬りいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

そして必殺の『男の恨み炸裂斬り』が繰り出された!!

 

縦一文字に振り下ろされたグレンブーメランが、イタミループを脳天から股間に掛けて真っ二つに斬り裂く!!

 

「歯ぁ磨けよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!?」

 

どっかの超有名コメディアンの様な断末魔を挙げ、イタミループは爆発・四散したのだった。

 

「………男のロマンを踏み躙った罪は重いぜ」

 

「何カッコつけてんのよ!!」

 

と、決めながらそう言っていたグレンラガンに、鈴が蹴りを叩き込んで来る!!

 

「おわっ!? 何しやがる!!」

 

「うっさい! このエロ神谷!!」

 

「乙女のピンチに色欲を優先させるなど! 言語道断ですわ!!」

 

「そこに直れ! 斬り捨ててやる!!」

 

「お前を殺す!」

 

「神谷………覚悟しろ!!」

 

ISを装着したままの鈴、セシリア、箒、ラウラ、そして何処からか持って来た真剣を構えている千冬がグレンラガンを取り囲む。

 

「上等!!」

 

だがグレンラガンの神谷は怯むどころか、その一同に向かってフルドリライズ状態となって突っ込んで行った。

 

「あわわわわわ」

 

「こ、コレは如何したら?」

 

「放って置くしかないんじゃないですか………」

 

4人の専用機持ち&ブリュンヒルデVSグレンラガンの戦いに、戦慄する一夏と、その様子を見ておたおたする真耶。

 

そして、呆れながらその光景を眺めているシャルであった。

 

「元気が良いねぇ」

 

「それが取り柄みたいものだからね」

 

くろがね屋の屋根の上に居たつばさとリーロンも、そんな事を言い合って笑う。

 

周りでは、くろがね五人衆も、同じ様に笑い合っている。

 

結局………

 

グレンラガンと千冬達の戦いは夜明けまで続き………

 

日が昇る頃には、全員疲労困憊で倒れていた………

 

こうして………

 

くろがね屋で行われた補習は………

 

グダグダのまま終わったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

宣言した通り、今回はギャグ回………または風呂回です。
ダメな方向への男らしさ全開だった神谷。
今回はいつも以上に勢いで押し切った感じですかね。

さて、原作だとこの後は夏休み編になるのですが………
原作でのエピソードは箒の夏祭りイベントに神谷、シャルカップルをお邪魔させるという形のものだけにして、残りはオリジナルエピソードが入ります。
予めご了承下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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