天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第22話『このくらげの出来損ない野郎! シャルを放しやがれ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第22話『このくらげの出来損ない野郎! シャルを放しやがれ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の夏休みも中頃まで過ぎた頃………

 

太平洋側の日本近海で、異常事態が発生していた………

 

日本に輸入する予定だった石油を積んだタンカーが、次々に原因不明の事故に遭ったのである。

 

そのどれもが、船体が粉々に成る程の強い衝撃を受けており、乗組員の多くが死傷した。

 

しかし、不思議な事に………

 

運ばれていた筈の原油が海に漏れた形跡は無く、綺麗さっぱりと無くなっていたのである。

 

そして、生き残った僅かな乗組員は、皆口を揃えてこう言っていた。

 

『怪獣に襲われた』………と。

 

この怪事件に、日本政府は首を捻るばかりである。

 

しかし、手を拱いているワケには行かず、海上自衛隊と航空自衛隊が共同で、日本近海の太平洋の徹底調査に打って出たのだった。

 

 

 

 

 

太平洋側の日本近海………

 

海上自衛隊の海洋観測艦隊と音響測定艦隊が、護衛艦隊に護衛されて、海上及び海中の調査を行っている。

 

上空には、空自のF-15とF-4の編隊が飛び交っており、海上でも海自の哨戒機及び対潜哨戒機が飛行している。

 

更に海中にも潜水艦隊が居り、正に蜘蛛の子1匹見逃さない調査が行われていた。

 

「こちら護衛艦ひゅうが。各艦、定時報告を行え」

 

艦隊の指揮をしていたひゅうがの艦長が、通信機で全艦にそう呼び掛ける。

 

「こちら海洋観測艦わかさ。異常無し」

 

「音響測定艦はりま。同じく異常は見られず」

 

「こちらは潜水艦おやしお。異常無し。本日も海は穏やかです」

 

「哨戒ブラボー1。全く異常は見受けられず」

 

「対潜哨戒機アイダホ1。レーダー及びセンサーに影は見られず」

 

調査を行っている艦艇や哨戒機から、次々に異常無しの報告が返って来る。

 

「艦長。航空自衛隊も、異常は発見出来ていないそうです」

 

「うむ………」

 

通信士の報告を受けて、艦長は唸る。

 

(アレだけの事件が起きて………コレだけの調査をしているのに何も発見出来ないとあっては、自衛隊どころか日本政府のメンツは丸つぶれになってしまう………)

 

そんな危惧が、艦長の心に生まれ始めていた。

 

と、その時………

 

「まきしお! まきしお! 如何した、まきしお!? 応答せよ!!」

 

通信士が突然声を荒げる。

 

「!? 如何した?」

 

「ハッ! 潜水艦まきしおとの連絡が取れません!」

 

「何?」

 

「まきしお、応答せよ! まきしお! まきしお!」

 

艦長に報告すると、応答が無い潜水艦まきしおに向かって更に呼び掛ける通信士。

 

「1番近くに居る潜水艦は?」

 

「あ、ハイ! あらしおが1番近くに居ます!!」

 

「すぐにまきしおを確認に向かわせろ!!」

 

「了解!!」

 

すぐに艦長の命令を潜水艦あらしおに伝える通信士だった。

 

 

 

 

 

海中………

 

潜水艦・あらしお………

 

「ただいま深度1500………間も無く、まきしおの反応が途絶えた地点です」

 

「うむ、ソナー手。音に気を配れ」

 

「了解!!」

 

あらしおが、まきしおの姿を探し求める。

 

すると………

 

「!? 左前方30キロ地点に金属反応探知!!」

 

ソナー手が、そう声を挙げた。

 

「取舵。反応が在った地点に向かえ」

 

「と~りか~じ!!」

 

艦長の指示に、操舵手は復唱すると同時に取舵を取る。

 

そしてそのまま30キロ地点に差し掛かる。

 

「反応があった地点です」

 

「うむ………海底の映像を出せるか?」

 

「水中カメラを起動します」

 

艦長の声に、レーダー手が水中撮影用のカメラを起動させ、海底の様子を映し出す。

 

合わせてサーチライトも点灯され、暗がりの海底が鮮明に映し出される。

 

現在あらしおが居る場所の海底は巨大な岩礁が多く、下手をすれば接触してしまう危険もあった。

 

「岩礁が多いな………」

 

「まきしおは岩礁に衝突したんでしょうか?」

 

「その可能性もある」

 

艦長と副長がそう言っている間にも、まきしおの捜索は続く。

 

すると………

 

「!? 発見しました!!」

 

ソナー手がそう声を挙げた瞬間、海底を映していたモニターに、座礁しているかの様なまきしおの姿が映し出された。

 

「おおっ!!」

 

艦長が思わず声を挙げる。

 

あらしおが座礁していると思われるまきしおへと近づく。

 

………と、その時!!

 

海底に無数に存在していた岩礁と堆積していた泥を押しのけて、巨大な『何か』が、姿を現した!!

 

「!?」

 

「な、何だ、アレは!?」

 

突如出現した巨大な『何か』に驚く艦長と副長。

 

『何か』の姿は、出現した際に舞い上がった泥で、良く確認出来ない………

 

すると、その泥の中に居る『何か』から………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!×7

 

龍の様な姿をした怪物が、7匹飛び出して来た!!

 

「!? か、怪物だ!!」

 

「まさか! コイツが一連の事件の犯人か!?」

 

と、艦長がそう声を挙げた瞬間………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

龍の様な姿をした怪物の1匹が、座礁していたまきしおに、体当たりを喰らわせ、破壊した!!

 

「!? まきしおが!?」

 

「クソッ!! 魚雷発射!!」

 

艦長がそう命ずると、あらしおは怪物の1匹目掛けて魚雷を放つ。

 

しかし、発射された魚雷は怪物の身体に減り込み、そのまま飲み込まれてしまった。

 

「!? 魚雷が爆発しない!?」

 

「艦長! 怪物がコッチに!!」

 

ソナー手の悲鳴の様な声が挙がり、あらしおは怪物の1匹に巻き付かれる。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

そのまま怪物は身体を締め、あらしおを押し潰しに掛かる。

 

深海の水圧にも耐えられる筈の潜水艦の頑強な艦体が、ペットボトルの様にへこんで行く。

 

「こ、こちらあらしお! 海中に!! 海中に巨大な怪物が!!」

 

艦長が通信機を引っ摑み、海上の艦艇へそう連絡を送った瞬間………

 

あらしおの艦体は完全に捻り潰され、爆散した!!

 

 

 

 

 

一方、海上………

 

護衛艦・ひゅうが………

 

「あらしお如何した!? 応答せよ!! あらしお!! あらしお!!」

 

まきしおに続いて連絡が途絶えたあらしおに、通信士が慌てて呼び掛ける。

 

「海中に怪物だと?」

 

艦長はあらしおの艦長が最後に送って来た通信の意味が分からず、首を傾げる。

 

「か、艦長! アレを!!」

 

とそこで、望遠鏡を持って海上を観測していた観測員が、驚きの声を挙げながら海上の一角を指差した。

 

「? 如何した?」

 

そう言いながら、艦長が観測員が指差した場所を見遣るとそこには………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!×7

 

海面を激しく波立たせて顔を出す、龍の様な怪物達の姿が在った!!

 

「!? アレは!?」

 

艦長が驚きを示した瞬間、怪物の1匹が海洋観測艦すまに体当たりを喰らわせた!!

 

すまは艦体中心部から真っ二つになり、轟沈した。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!×7

 

気を良くした様に咆哮を挙げる怪物。

 

「!! 調査艦隊は緊急退避!! 護衛艦隊前へ!! 怪物に対し攻撃開始!!」

 

その咆哮で我に返った艦長は、即座に全艦隊にそう命令を下す。

 

それを受けて、調査艦艇達が後退を始め、それを守る様に護衛艦隊から怪物へ、速射砲やミサイルでの攻撃が見舞われる。

 

哨戒ヘリコプターSH-60Jに、SH-60Kからも魚雷やミサイルが発射される。

 

しかし、放たれた砲弾やミサイル、魚雷は怪物の身体に減り込み、そのまま飲み込まれてしまった。

 

「攻撃! 効果ありません!!」

 

「何て奴だ………」

 

ひゅうがの艦長が戦慄しながらそう呟いた瞬間、SH-60J1機が怪物に噛み潰され、護衛艦すずなみが体当たりを喰らって轟沈する。

 

「クッ! 全軍撤退! 撤退しろ!!」

 

艦長は通信回線を通じてそう命令を下し、護衛艦隊は退避行動に入る。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!×7

 

そんな護衛艦隊を逃がさんとばかりに、怪物達は咆哮を挙げて追いかけて来る。

 

するとそこで、航空自衛隊の戦闘機部隊が、怪物に向かってミサイルを放つ。

 

やはり爆発せずに身体の中へ吸い込まれてしまったが、怪物の注意が戦闘機部隊へ向いた。

 

「今の内に退避を!!」

 

戦闘機部隊から、ひゅうがにそう通信が送られる。

 

「すまない! 全艦反転180度! 緊急離脱!!」

 

艦長はそれを受けて、全艦に退避を命じる。

 

「偵察機隊! 怪物の写真を撮れ!! 恐らくコイツが一連の事件の犯人だ!!」

 

「了解!!」

 

戦闘機隊の隊長が、偵察機隊にそう命令する。

 

偵察機RF-4EとRF-4EJ部隊が、偵察用のカメラで怪物の写真を撮り始める。

 

と、その時………

 

7匹の龍の様な怪物達が姿を見せていた海面が大きく盛り上がり………

 

まるで巨大なクラゲの傘の部分の様な姿をした、凶悪な顔つきの怪物が姿を現した!!

 

良く見れば、龍の様な怪物達の身体は、その巨大なクラゲ状の怪物に繋がっている。

 

「!? あの龍の様な怪物は触手だったのか!?」

 

偵察機のパイロットが驚きの声を挙げながらも写真撮影を続ける。

 

やがて自衛艦隊が退避完了すると………

 

怪物は逃げる様に海底に姿を消したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

日本の防衛省では………

 

日本近海の太平洋に出現した怪物に対しての緊急会議が開かれていた。

 

「如何ですか? 教授?」

 

防衛大臣が、偵察機隊が撮影した怪物の映像を生物学者の博士に見せている。

 

「コレは………間違いありません。『ドラゴノザウルス』です」

 

「『ドラゴノザウルス』?」

 

「古代に海中に生息していた恐竜の1種です。とっくの昔に絶滅したと思っていましたが、まさか生き残りが居たとは………」

 

海上自衛隊幕僚長にそう答えると、生物学者は興味深そうにドラゴノザウルスの写真を眺めている。

 

「古代の恐竜が生き残っていたなんて………そんな事があり得るんですか?」

 

「確かに驚きの事ですが、あり得ない事と断ずる事も出来ません。あのシーラカンスでさえ、現代に生きている事が発見されたのですから」

 

今度は陸上自衛隊幕僚長の問いにそう答える生物学者。

 

「その疑問はこの際措いておくとして………問題は何故、ドラゴノザウルスは石油タンカーばかりを狙って襲っているか、という事です」

 

「残念ながら、その辺の事は私にも分かりかねます………ただ、個人的意見ですが、ドラゴノザウルスが出現した事と何らかの関係があると考えています」

 

最後に航空自衛隊幕僚長がそう尋ねるが、その質問は生物学者にも分かりかねるものであった。

 

「それでドラゴノザウルスは今は?」

 

そこで防衛副大臣が、幕僚長達にそう尋ねる。

 

「ハッ! 調査艦隊を攻撃した後、姿を消したドラゴノザウルスは三陸沖に出現し、航行中だったタンカーを襲撃しました」

 

「駆け付けた我が航空自衛隊が攻撃を行いましたが、残念ながら目標にダメージを与える事は出来ませんでした」

 

「このままでは被害が増える一方ですな………」

 

海上、航空、陸上の幕僚長達が口々にそう言う。

 

「もしこのまま石油が日本に入って来なければ、何れ日本は燃料不足で干上がってしまう。何としてもドラゴノザウルスを撃破しなければ………」

 

そう言うと、防衛大臣は頭を抱えて考え込む。

 

ドラゴノザウルスを放置すれば、日本の死活問題となる………

 

しかし、自衛隊ではドラゴノザウルスには歯が立たない………

 

そのジレンマが防衛大臣の背中に重く圧し掛かる。

 

すると………

 

「大臣………私から1つ提案があるのですが」

 

今まで会議の成り行きをジッと傍観する様に黙っていた統合幕僚長が、不意にそう言って口を開いた。

 

「提案?」

 

「ハイ………IS学園にドラゴノザウルス討伐を依頼すると言うのは如何でしょう?」

 

「IS学園に?」

 

統合幕僚長のその提案に、防衛大臣と副大臣、陸海空の幕僚長の視線が集まる。

 

「ハイ。IS学園には各国に加え、篠ノ之 束が直接開発した専用機持ちが集結しており、更にはあのグレンラガンも居ます」

 

「うむ………」

 

「何より、コレまであったロージェノム軍の襲撃を悉く撃退しており、先月の『福音事件』を解決したのも彼等と彼女達です」

 

唸る防衛大臣に、統合幕僚長はそう言葉を続ける。

 

「しかしそれでは、日本政府がIS学園に借りを作る事に………」

 

「日本の死活問題と比べれば些細な事と考えますが」

 

「むうっ」

 

更に渋る様な防衛副大臣の言葉をそう言って封じる。

 

「………至急総理に連絡を。日本政府としてIS学園に正式に任務を依頼して欲しい、と」

 

「大臣! しかし」

 

「事は一刻を争う。急ぎたまえ」

 

「! ハッ! 了解しました!!」

 

なお渋る防衛副大臣に、防衛大臣はそう言い放つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後………

 

日本政府の依頼を、IS学園側は受諾。

 

福音事件で活躍した、一夏、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラの専用機持ち。

 

そしてグレンラガンの装着者である神谷。

 

更に、指揮官と補佐役として、千冬、真耶、リーロンの3人を加えた一行は、海上自衛隊の輸送用ヘリコプターMCH-101に乗せられ、洋上に居る護衛艦ひゅうがへと向かっていた。

 

「………まさか怪獣退治の依頼が来るとは思わなかったな~」

 

ローター音がけたたましく響く機内で、一夏がそう呟く。

 

これまでロージェノム軍と何度も交戦したが、まさか怪獣の退治をする事になるとは、流石に予想出来なかった様である。

 

「面白れぇじゃねえか! 我が物顔で暴れ回るその怪獣野郎に見せてやろうじゃねえか! 日本にゃあ、俺達グレン団が居るって事をなぁ!!」

 

戸惑いの色を浮かべている一夏とは対照的に、神谷はまるで子供の様に燥いでいた。

 

「怪獣じゃなくて恐竜の生き残りでしょ、全く………」

 

「しかし、また私達がこんな任務に関わる事になるとは………」

 

「恐らく、福音事件での功績を評価しての事ですわ。まあ、私の実力なら当然の事ですが」

 

燥ぐ神谷にツッコミを入れる鈴と、再びの軍事作戦参加に若干戸惑っている箒。

 

そして、何故か自慢げな言葉を吐いているセシリアだった。

 

「ワンダバ、ワンダバ、ワンダバダバダバダ」

 

「ラウラ? 何口ずさんでるの?」

 

「日本では怪獣を対峙しに向かう時、『ワンダバ』と口ずさむのが恒例らしい」

 

「………またクラリッサさんって人から聞いたの?」

 

「そうだ」

 

そう言って再び『ワンダバ』を口ずさみ始めるラウラに、シャルは苦笑いを浮かべる。

 

「お前達! 遠足に行くのではないぞ!!」

 

大事な作戦前だと言うのに、緊張感が見られない神谷達を見た千冬がそう叱り付ける。

 

「お、織斑先生! 穏やかに! 穏やかに!」

 

「良いじゃないの。下手に緊張されてるよりは事が進め易いわよ」

 

真耶が千冬を押さえるが、リーロンの方は今の方が良いと言う。

 

「クッ! 全く………」

 

「間も無く、護衛艦ひゅうがに到着します。降りる準備をお願いします」

 

千冬が愚痴る様に呟いた瞬間、ヘリの操縦士がそう告げた。

 

「おおっ! スゲェ!! 本物のひゅうがだ!!」

 

と、窓の外を覗いて、ひゅうがの姿を確認した一夏が歓声に似た声を挙げる。

 

ミリオタというワケではないが、やはりああいう物は男の子の心を擽る様だ。

 

「ふむ………アレが日本の自衛隊のひゅうがか………」

 

現役ドイツ軍人であるラウラも興味を示す。

 

やがてヘリは、ひゅうがの甲板へと着陸した。

 

ローターの回転が収まって行くと、後部のランプ・ドアが開き始める。

 

ドアが完全に開くと、千冬、真耶、リーロンの教師陣が先立って降り、続いて神谷と専用機持ち達が降りる。

 

「うん! あ~~~~っ!! 潮風が気持ち良いぜ!!」

 

長い間狭い機内に閉じ込められていたので大きく伸びをした神谷が、顔に心地の良い潮風を感じてそう言う。

 

「お待ちしておりました。IS学園の皆さん。当艦、ひゅうがの艦長です」

 

とそこで、予め待っていたひゅうがの艦長が千冬達の姿を見て、敬礼を送りながらそう言って来た。

 

「どうも、初めまして。IS学園の教諭の織斑 千冬です」

 

「お、同じく! 山田 真耶です!!」

 

「リーロン・リットナーよ。メカや専門的な事を担当してるわ」

 

それに対し、慣れた様子で挨拶を交わす千冬と、やや緊張している様子を露わにする真耶。

 

そして、何時もと同じ調子のリーロン。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

背後に居た一夏達も、艦の責任者と対峙していると言う事で、全員気を付けをしていた。

 

軍人であるラウラに至っては答礼をしている。

 

「へえ~、アンタがこの船の船長さんか」

 

只1人、神谷だけは不敵な態度でそう言い放つ。

 

「神谷! 貴様!!」

 

「ああ、いえいえ、構いませんよ。今回我々はアナタ方にお願いをする立場なのですから」

 

神谷の不遜な態度を叱りつけ様とした千冬だったが、艦長がそう言って制す。

 

「それじゃあ、早速本題に入りましょうか?」

 

そこでリーロンが、そう話を切り出す。

 

「ドラゴノザウルスの現在位置は?」

 

「ハッ、先程空自から連絡があり、房総半島沖で再びタンカーを襲撃。空自の攻撃を物共せず、再び海中に姿を消した、との事です。現在の詳しい位置は、残念ながら分かっていません」

 

真耶の質問に、艦長はそう答える。

 

「房総半島沖か………」

 

「段々と日本に近づいて来てる感じね」

 

艦長の言葉に、千冬とリーロンが推察する。

 

「教官。進言致します」

 

とそこで、話を黙って聞いていたラウラが、そう言いながら1歩前に出た。

 

「何だ、ラウラ?」

 

「ハッ! コレ以上の被害拡大を防ぐ為にも、我々も哨戒任務に加えさせて頂けないでしょうか?」

 

千冬が尋ねると、ラウラは休めの姿勢からそう進言を行う。

 

「確かに………ISのハイパーセンサーなら、海中に潜んでいるドラゴノザウルスを見つけるのも訳ないかもしれませんね」

 

真耶も、そう言ってラウラの意見を支持する。

 

「確かにな………よし、分かった。早速だが、お前達には任務に就いてもらう。各自ISを展開し、ドラゴノザウルスの捜索に当たれ。ただし、目標を発見しても単独で手出しはするな。連絡を行って仲間の到着を待て。コレは命令だ。良いな!」

 

「「「「「了解!!」」」」」」

 

「あいよ!」

 

決して1人で手出しをするなと言う千冬の命令を聞き、一夏達はISを展開し、神谷もグレンラガンの姿となった。

 

そしてそのままひゅうがの甲板から飛び立つ。

 

「それじゃあ、分かれて捜索しよう。その方が効率が良いし」

 

「そうだな………」

 

「よっしゃあ! 誰が1番最初に見つけるか、競争だな!!」

 

「言っとくけど、神谷。アンタには負けないわよ」

 

「私の事も忘れてもらっては困りますわね」

 

「皆、熱くなるのは良いけど、連絡を取り合う事は忘れないでね」

 

「よし、では行くぞ!」

 

一夏、箒、神谷、鈴、セシリア、シャル、ラウラはそう言い合って散開。

 

其々にドラゴノザウルス捜索へと繰り出した。

 

「頼もしいですな………流石はIS学園の専用機持ち達と言ったところですか」

 

「まだまだ未熟な連中ばかりですよ」

 

その姿を見た艦長がそう言うと、千冬はフッと笑いながらそう返す。

 

「では、こちらへ………本艦のCICへご案内致します」

 

艦長がそう言い、千冬達は一夏達の指揮を執る為、CICへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、神谷達グレン団がドラゴノザウルス捜索に加わって小1時間余りが経過………

 

グレン団の一同が来るまでは、比較的活発に活動していた筈のドラゴノザウルスであったが、突然鳴りを潜めてしまった。

 

まるでグレン団の面々が来た事を感知したかの様に………

 

一夏達の必死の捜索も虚しく、只々時間ばかりが過ぎて行っていた………

 

そんな中………

 

浦賀水道の入り口付近を捜索していたシャルは………

 

「こちらシャルロット。現在浦賀水道入り口付近を捜索中。現在のところ、ドラゴノザウルスの姿は発見できず」

 

一通り哨戒を終えると、シャルはひゅうがに居る千冬へと通信を送る。

 

[了解した。他のメンバーからも現在ドラゴノザウルス発見の知らせは入っていない。引き続き捜索を続けろ]

 

「了解」

 

千冬からの応答を聞き、シャルは更に捜索を続行する。

 

「ん? アレは?」

 

すると、海上に何かを発見したシャルは、望遠を使ってそれを拡大。

 

目の前に映し出す。

 

それは、釣りに来ていたと思われる、個人のクルーザーだった。

 

如何やら、故障を起こしているらしく、燃料が海へと漏れ出しているのが確認出来る。

 

「個人のクルーザーか。故障してるみたいだけど………」

 

放っておくワケにも行かず、助けに行こうとシャルは高度を落とし始めた。

 

すると………

 

故障しているクルーザーを、海中から見据えている巨大な影が在る………

 

その影は、海中からドンドンと浮上して来て、やがて海面にその巨大な姿を現した!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ドラゴノザウルスだ!!

 

「!! ドラゴノザウルス!!」

 

その姿を確認したシャルが、驚いて動きを止める。

 

「こちらシャルロット! ドラゴノザウルス発見! ドラゴノザウルス発見!!」

 

すぐに千冬と神谷達にそう連絡を入れ、到着を待とうとする。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、ドラゴノザウルスは咆哮を挙げ、クルーザーへと襲い掛かろうとした。

 

「!! 危ない!!」

 

それを見たシャルは、ガルムを呼び出し両手に握ると、ドラゴノザウルスに攻撃を加える。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ガルムの弾丸が、ドラゴノザウルスの身体に吸い込まれてしまい、効果は無かったが注意を惹く事には成功する。

 

(クルーザーから引き離さないと………)

 

そのままドラゴノザウルスの注意を惹き続け、クルーザーから遠ざけようとする。

 

だが………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

突如として、シャルの背後の海中から、ドラゴノザウルスの先が龍の様な姿をした触手の1本が飛び出した!!

 

「!? しまった!?」

 

慌てて離脱しようとしたシャルだったが間に合わず、下半身にドラゴノザウルスの先が龍の様な姿をした触手が噛み付く。

 

「うわあっ!?」

 

絶対防御のお蔭で怪我こそしなかったが、捕まってしまうシャル。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

するとドラゴノザウルスは、本体の大きな口を開き、先が龍の様な姿をした触手に噛み付かれたシャルをその口元へと持って行く。

 

「!?(まさか!?………僕を食べる気なの!?)」

 

慌ててブレッド・スライサーを取り出し、下半身に噛み付いている龍の様な姿をした触手に斬り付けるが、龍の様な姿をした触手はシャルを放さない。

 

と、そこへ………

 

「居たぞ! ドラゴノザウルスだ!!」

 

一夏達が駆け付け、ドラゴノザウルスの姿を見た箒がそう声を挙げた。

 

「!? シャルロットが危ないぞ!!」

 

更にラウラが、食べられそうになっているシャルの姿に気づき、そう声を挙げる。

 

「シャルロット!!」

 

「このくらげの出来損ない野郎! シャルを放しやがれ!!」

 

一夏と神谷が、ドラゴノザウルス目掛けて突っ込んで行こうとするが、

 

「ちょっと! 2人共落ち着きなさい!!」

 

「ドラゴノザウルスはその柔らかい身体で、実弾兵器を無力化してしまうのですわ」

 

鈴とセシリアがそう言って2人を止める。

 

「となると、ビームやレーザーでの攻撃。若しくは刃物を使っての切断攻撃しかないか………」

 

「兎に角攻撃だ! シャルロットを助けるんだ!!」

 

ラウラがそう考察していると、箒が雨月から刺突攻撃でレーザーを放出した!!

 

「喰らいなさい!!」

 

「コレで!!」

 

更にセシリアもスターライトmkⅢを発砲し、鈴も龍砲を放つ。

 

「雪羅!!」

 

「レーザーアイ!!」

 

更に一夏も左手の雪羅から荷電粒子砲を見舞い、グレンラガンも胸のグレンブーメランを外すと、ボディの目の部分からレーザーを放つ。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

レーザーやビームでの一斉攻撃に、自衛隊の攻撃ではビクともしていなかったドラゴノザウルスが、初めて苦悶の咆哮を挙げる。

 

「クウッ! この! このぉ!!」

 

しかし、それでもまだドラゴノザウルスはシャルを放さず、シャルは噛み付いている龍の様な姿をした触手をブレッド・スライサーで斬り付け続ける。

 

だが、シャルが付けた傷は端から再生されてしまい、ダメージを与えられていなかった。

 

ドラゴノザウルスは、シャルを更に本体の口元へと近付ける。

 

「シャル! この野郎! グレンブーメラン!!」

 

と、そこでグレンラガンが、シャルを捕まえている龍の様な姿をした触手に向かって、グレンブーメランを投げ付ける。

 

シャルを捕まえている龍の様な姿をした触手に向かうグレンブーメラン。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

しかし、その途中で、別の龍の様な姿をした触手が海中から飛び出し、グレンブーメランによって首を切断された!!

 

グレンブーメランの軌道が変わり、グレンラガンの手元に戻ってしまう。

 

「クソッ! シャルーッ!!」

 

神谷は悪態を吐くと、シャルが捕まえられている龍の様な姿をした触手の元へ飛んだ。

 

「神谷ーっ!!」

 

シャルが向かって来るグレンラガンに向かって必死に手を伸ばす。

 

「シャルッ!!」

 

グレンラガンも、そのシャルの手を摑もうと手を伸ばす。

 

だが………

 

「! うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」

 

あとちょっとで触れ合ったと言う瞬間に、シャルは完全にドラゴノザウルス本体の口の中へと放り込まれてしまった。

 

ドラゴノザウルスは、そのままシャルを飲み込む。

 

「!? シャル!!………!? おわぁっ!?」

 

思わず空中で静止したグレンラガンに、龍の様な姿をした触手が叩き付けられる。

 

「アニキッ!? このおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

と、そこで一夏が実体剣状態の雪片弐型で、グレンラガンを弾き飛ばした龍の様な姿をした触手の首を斬り落とす!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

「セヤアッ!!」

 

更にラウラも、プラズマ手刀で別の龍の様な姿をした触手の首を斬り落とした!!

 

「こちら箒! 非常事態発生! シャルロットがドラゴノザウルスに飲み込まれました!!」

 

[何だと!?]

 

[シャルロットさんが!?]

 

箒が慌てて千冬に報告を送ると、通信回線に千冬と真耶の驚きの声が響く。

 

と、その次の瞬間!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ドラゴノザウルスが咆哮を挙げたかと思うと、斬り落とされた龍の様な姿をした触手の先端が、まるでトカゲの尻尾の様に再生した。

 

「!? ウソッ!?」

 

「再生した!?」

 

それを見た鈴とセシリアが驚愕を露わにする。

 

アレほど巨大な触手の先端を、一瞬にして再生させるとは………

 

恐るべき再生能力である。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

と、ドラゴノザウルスは再び咆哮を挙げたかと思うと、一瞬にして海中へと潜ってしまった。

 

「!? あっ!? しまった!?」

 

「シャルゥーッ!! チキショウ!!」

 

グレンラガンが慌ててそれを追って海中へと飛び込もうとする。

 

「アニキ! 駄目だ!!」

 

しかし、一夏がそんなグレンラガンを羽交い絞めにして止める。

 

「放せ、一夏! シャルの奴が!!」

 

「駄目だよ、アニキ! 水中はアイツのホームグラウンドなんだよ!! 下手に飛び込んだらコッチがやられちまうよ!!」

 

一夏がグレンラガンを押さえている間に、ドラゴノザウルスの影はドンドンと薄くなって行き、とうとう海中深くへと消えてしまったのだった………

 

「シャル! シャル! クッソオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーッ!!」

 

穏やかになった海上に、神谷の叫びが虚しく響き渡る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。
平成最後の更新となります。

予告していた東映まんがまつり………
『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦!大海獣』からドラゴノザウルスが登場です!
スパロボで此奴に苦戦させられた人は多いでしょう。

さて、シャルがボスボロットよろしく捕食されてしまいましたが………
果たして無事なのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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