天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第23話『アイツの中にはシャルが居るんだぞ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第23話『アイツの中にはシャルが居るんだぞ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、日本近海の太平洋に出現した、太古の生物『ドラゴノザウルス』

 

石油タンカーを目の敵の様に狙い、日本に入る筈だった石油を奪い去った。

 

自衛隊の攻撃も寄せ付けないドラゴノザウルスの討伐に………

 

福音事件での功績を買われ………

 

神谷や一夏達、グレン団が駆り出される。

 

しかし、そんな中………

 

ドラゴノザウルスに襲われそうになったクルーザーを助けようとしたシャルが………

 

ドラゴノザウルスに食べられてしまった。

 

救出を試みた神谷達だったが、無情にもドラゴノザウルスは………

 

シャルを飲み込んだまま、海底深くへと姿を消してしまった。

 

現在、海上自衛隊と航空自衛隊が懸命な捜索を続けているが、未だにその姿は発見出来ていない………

 

 

 

 

 

神奈川県・横須賀市………

 

海上自衛隊の横須賀基地………

 

その会議室にて………

 

「「「「「…………」」」」」

 

一夏達が、沈痛な面持ちで沈黙している。

 

皆、ドラゴノザウルスに飲み込まれてしまったシャルの事を思っているのだ。

 

「まさか………デュノアさんが………うっぐ………」

 

真耶も悲しみの表情を浮かべ、溢れる涙を拭う。

 

「チキショウがぁ!!」

 

神谷は苛立ちを露わにして、会議室の壁を殴り付ける!!

 

「………何時までも悲しんでは居られんぞ。ドラゴノザウルスは未だに健在なんだ。対策会議を始めるぞ」

 

と、そんな一同に向かって、千冬が冷静そうな様子でそう言う。

 

しかし、その手は血が出んばかりに握り締められていた。

 

「シャル………オメェの仇は必ず俺が取ってやる!!」

 

ドラゴノザウルスへの闘志を募らせる神谷。

 

と、その時………

 

[ちょっと、神谷ぁ! 勝手に殺さないでよぉ!!]

 

突然会議室に、そう言うシャルの声が響き渡った!!

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

その声に千冬を含めた一同は固まる。

 

「い、今の声って?………」

 

「シャルロット………さん?」

 

「馬鹿な!?」

 

「ま、まさか………」

 

「成仏出来なくて、幽霊に!?」

 

鈴、セシリア、ラウラ、箒、一夏が次々にそう声を挙げる。

 

「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

真耶は悲鳴を挙げて、会議室に在った椅子の下へ潜り込んだ。

 

「落ち着け! そんなワケがあるか!!」

 

動揺を露わにしている一同を鎮める様に、千冬がそう叫ぶ。

 

[だから生きてるんだってば~~っ!!]

 

再び、会議室にシャルの声が響き渡る。

 

「!? 通信端末から!?」

 

自分の傍から声が聞こえた気がした真耶が、通信端末を取り出すと、シャルからの通信を受信している事に気づいた。

 

「貸せっ!!」

 

即座に神谷がその通信端末を引っ手繰る!

 

「シャル! シャル! 生きてたのか!!」

 

[そうだよ、神谷! 僕まだ生きてるよ~!!]

 

神谷が声を荒げて通信端末に向かってそう叫ぶと、シャルの声が返って来た!

 

「! シャルロット!!」

 

「無事だったのか!!」

 

一夏と箒達も、そう声を挙げて、神谷の周りに集まって来る。

 

「デュノア、状況を報告しろ」

 

と一足遅れて傍に寄った千冬が、シャルにそう問い質す。

 

[あ、織斑先生。分かりました………僕は今、ドラゴノザウルスの胃袋の中に居ます。中には石油が充満していて、タンカーの残骸が此処彼処に転がっています]

 

「石油が?」

 

ドラゴノザウルスの胃の中が石油で満たされているという報告に、千冬が首を捻る。

 

「まさか………石油を食ってるワケ?」

 

「まさか!? 微生物でもないのに、石油を食用している生物なんて聞いた事ありませんわ」

 

鈴が思わずそんな事を口走るが、セシリアがそう言って否定する。

 

「だが、そうだとすれば………今までドラゴノザウルスがタンカーばかりを狙って襲っていた理由も納得が行く」

 

しかしラウラが、今までのドラゴノザウルスの行動を顧みてそう述べる。

 

「デュノア。そこから脱出出来るか?」

 

[無理です。胃の中は石油が充満していて、火器やスラスターを使用すれば引火で大爆発してしまいます………!? うわああぁぁっ!?]

 

と、更に千冬に向けて報告を続けていたシャルから悲鳴が挙がった!!

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「!? デュノア! 如何した!?」

 

[そ、装甲が!! リヴァイヴの装甲が溶け始めました!!]

 

「何だと!?」

 

何と!!

 

ドラゴノザウルスの強力な胃液が、ISの装甲をも溶かし始めたのである!!

 

[た、助けて! 箒! 鈴! セシリア! ラウラ! 一夏! 神谷あああああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!………]

 

シャルは最後の神谷の名を思いっきり叫び、通信端末からノイズだけが返って来る様になった。

 

「シャル! シャル! 返事しろ!! シャル!! コンチキショウッ!!」

 

神谷は、ノイズしか返って来なくなった通信端末を、思いっきり床に叩き付ける。

 

「わ、私の通信端末~~!!」

 

通信端末はバラバラになり、真耶が涙目で声を挙げた。

 

………合掌。

 

「待ってろ、シャル! 今俺が助けに行くぞ!!」

 

「神谷、待………」

 

「待ってよ、アニキ!」

 

飛び出して行こうとした神谷を、千冬が止めようとしたが、それよりも先に一夏が止めた。

 

「何で止めやがる!? 一夏!!」

 

「落ち着いてよ! シャルロットを助けたいのは俺も一緒だよ! けど!! 皆の力を合わせなきゃ、あのドラゴノザウルスは如何にか出来ないよ!!」

 

「ええいっ!!」

 

一夏のその言葉で、神谷は押し止まる。

 

「…………」

 

神谷を止めそこなった千冬は、行き場の無い怒りに不機嫌そうな表情を浮かべる。

 

と、そこへ………

 

「皆、ドラゴノザウルスについて分かった事があるわ」

 

グレンラガンに付着していたドラゴノザウルスの身体の一部を分析していたリーロンが、そう言いながら会議室へ姿を現した。

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

その言葉に千冬が反応し、神谷達もリーロンに注目する。

 

「ええ、細胞を調べた結果………奴は石油を常食として成長している事が分かったわ」

 

「やっぱり石油を食べていたのか………」

 

「そっ。んで、コッチが重要なんだけど………如何やらこのドラゴノザウルス………何者かに遺伝子操作を受けているわ」

 

「!? 何だと!?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

リーロンの口から語られた意外な言葉に、一同は驚きを露わにする。

 

「自然界の生物であんな生命力や戦闘力を持ったものが生まれ出るとは考え難いわ。ましてや、石油を常食に成長するなんてね………そして、そんな事を考える輩と言えば………」

 

「! ロージェノム!!」

 

「ピンポーン! 正解!!」

 

ロージェノムの事を思い浮かべた神谷を指差し、リーロンはそう言う。

 

「また奴等の仕業か………」

 

「狙いは恐らく、日本の石油を断って、エネルギー問題を引き起こす事でしょうね」

 

千冬が苦々しげに呟き、リーロンがそう推察した瞬間………

 

横須賀基地に警報が鳴り響いた!!

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

[ドラゴノザウルスが浦賀水道に出現! 現在、東京湾を目指して北上中!!]

 

一同が驚いた瞬間、そう言うアナウンスが流れる。

 

「!? 東京湾だと!?」

 

「如何やら、タンカーだけでは飽き足らず、東京湾付近にある石油コンビナートにも目を付けたみたいね」

 

「そんな事をされたら、日本は本当に干上がっちまう!!」

 

「皆さん! 此処でしたか!!」

 

と、慌てる一同の元に、今度はひゅうがの艦長が現れた。

 

「艦長さん!」

 

「自衛隊の動きは!?」

 

「既に航空自衛隊が先行してドラゴノザウルスへ攻撃を開始しています。我が海上自衛隊も東京湾に集結中。更に沿岸部にも陸上自衛隊の部隊が展開し、ドラゴノザウルスを東京湾で撃滅する作戦です」

 

「ちょっと待てよ! アイツの中にはシャルが居るんだぞ!!」

 

と、自衛隊の作戦を聞いた神谷が、艦長へと食って掛かる。

 

「………IS1機と1人の人命で日本が助かるなら安い犠牲だ………政府はそう判断した様です」

 

「!! テメェ! ふざけんじゃねえ!!」

 

艦長のその言葉を聞いた途端、神谷は艦長の胸倉を摑み上げた!!

 

「アニキ!! 駄目だ!!」

 

慌てて一夏が神谷を羽交い絞めにする。

 

「何が安い犠牲だ!! んな考えクソ喰らえだ!! 俺はシャルを助ける!!」

 

一夏に羽交い絞めにされたままそう言って暴れる神谷。

 

「………10分です」

 

「あんっ!?」

 

「えっ!?」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

と、不意に出た艦長の言葉の意味が理解出来ず、首を傾げる神谷達。

 

「10分間だけ、私が何とか攻撃を遅らせます。その間にアナタ方の仲間を救出して下さい」

 

制服を正しながら、艦長はそう言葉を続けた。

 

「!? 艦長さん!!」

 

「アンタ………」

 

「私は自衛官です。自衛官の使命は………国を守り………そして人を助ける事です」

 

驚く一夏と神谷に向かって、艦長は芸術的で色気すら感じられる見事な敬礼を送る。

 

「………ありがとよ。良し! 行くぞお前等!!」

 

「「「「「おうっ!!」」」」」

 

艦長にそう礼を言うと、神谷は会議室から飛び出して行き、一夏達もそれに続いた。

 

「い、良いんですか?」

 

真耶が心配そうに艦長にそう尋ねる。

 

確かに、艦長がやろうとしている事は明らかな命令違反であり、良くて降格………

 

下手をすれば免職処分も有り得る事である。

 

「私も昔はやんちゃでしてね………ああいう若者を見ると、つい応援したくなるのです」

 

それに対し、艦長は制帽の唾を下げながら、フッと笑ってそう言った。

 

その顔に、後悔や躊躇いの様なものは見えない。

 

「………ありがとうございます」

 

そんな艦長の顔を見て、千冬は頭を下げる。

 

「さて………後はあの子達次第ね………」

 

そしてリーロンは、飛び出して行った神谷達を見ながらそう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾内………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

[クソッ! 駄目だ!! ミサイルが効かない!!]

 

[弾薬が尽きる………止むを得ん! 一旦退却だ!!]

 

航空自衛隊の攻撃を物共せず、ドラゴノザウルスは東京湾内を驀進。

 

真っ直ぐに海岸近くの石油コンビナートを目指している。

 

その横暴を止める者は居ないのか………

 

「見つけたぜ! ドラゴノザウルス!!」

 

いや!!

 

此処に居た!!

 

グレンラガン率いる、グレン団が!!

 

「一夏! 俺がシャルを助けに行く! その間、お前達は奴を足止めしておいてくれ!!」

 

「分かった! 気を付けて、アニキ!!」

 

「任せておけ!!」

 

一夏達にそう言うと、グレンラガンがドラゴノザウルス目掛けて突っ込んで行く!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

それに気づいたドラゴノザウルスが、本体の大口を開けて咆哮を挙げる。

 

「今だ! ウイングオフッ!!」

 

とその瞬間!!

 

グレンラガンはグレンウイングを分離させ、ドラゴノザウルスの口内へと飛び込んだ!!

 

「!? 飛び込んだ!!」

 

「アニキ!!」

 

相変わらず無茶苦茶な行動に出た神谷に、箒と一夏が驚く。

 

「一夏! 神谷の奴を信じなさい!!」

 

とそこで、鈴がそう言って、連結した双天牙月を投擲し、龍の様な姿をした触手を1本切断する!!

 

「あの方は何時、どんな状況でも、必ず何とかして来た方です!!」

 

続いてセシリアがそう言い、ドラゴノザウルス本体の顔面にスターライトmkⅢを撃ち込む!!

 

「今はアイツに言われた通りに、コイツを足止めするんだ!!」

 

最後にラウラがそう言い、ワイヤーブレードで龍の様な姿をした触手を2本纏めて斬り落とす!!

 

「そうだな………任せたぞ、神谷!!」

 

「アニキ! 頼んだよ!!」

 

それを受けて、箒と一夏も、雨月・空裂と雪片弐型を構えてドラゴノザウルスへ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

ドラゴノザウルスの体内へと飛び込んだグレンラガンは………

 

「おわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

食道内をゴロゴロと転がりながら、ドンドンと胃の方へと近付いて行く。

 

「おわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」

 

やがて胃へと到達し、食道の出口から胃の中に溜まっていた石油の中に落下する。

 

「プハッ!! あ~、クソッ! ヌルヌルしやがる………」

 

油面の上に出ていたタンカーの残骸の上に攀じ登り、身体に着いた石油を払いながら、愚痴る様に神谷はそう言う。

 

「此処がコイツの胃の中か………油臭せぇなぁ、オイ」

 

胃の中に充満する油の臭いを嗅ぎながら、シャルの姿を探すグレンラガン。

 

「シャルーッ! 何処だーっ!? 何処に居やがるーっ!!」

 

大声でそう呼び掛けるが、シャルからの返事は返って来ない。

 

「まさか溶かされちまったって事はねえだろうな………冗談じゃねえぞ、オイ!!」

 

一瞬嫌な想像をしてしまい、神谷は焦りながら、油面から出ているタンカーの残骸から残骸へと跳躍し、シャルの姿を探し出す。

 

「シャルーッ!! 返事しろーっ!!」

 

「神谷っ!?」

 

するとそこで、グレンラガンが居る位置から右前方のタンカーの残骸の中から、シャルの声が聞こえて来た。

 

「! そこか、シャル!!」

 

すぐさま、グレンラガンはその残骸へと跳躍する。

 

「シャル!! 無事か!?」

 

「だ、駄目! 来ないで、神谷!!」

 

神谷がそう言うと、残骸の陰に居ると思われるシャルから、そんな声が返って来た。

 

「ああ!? 何言ってんだ!? 早く脱出するぞ!!」

 

そう言ってグレンラガンは、残骸の陰を覗き込もうとする。

 

「だ、駄目ぇっ!!」

 

「シャル!!」

 

シャルの制止も聞かず、残骸の陰を覗き込んだグレンラガンが見たものは………

 

「み、見ないで~~っ!!」

 

悲鳴の様な声を挙げて縮こまっている、全裸のシャルの姿だった!!

 

「!? ブホッ!?」

 

思わぬサービスシーンに、グレンラガンの鼻から血が噴き出す。

 

「お、オメェ! ISとISスーツは如何したんだよ!?」

 

グレンラガンは鼻血を流す鼻を押さえながら、シャルにそう問い質す。

 

「エ、エネルギーが無くなっちゃって………装甲も溶かされる一方だったから、コアが溶かされる前に解除したんだよ~。そしたら今度はISスーツが溶かされちゃって………」

 

シャルは顔を真っ赤にしながらそう説明する。

 

「と、兎に角、脱出するぞ!!」

 

そう言いながらシャルに近付くグレンラガン。

 

「駄目! 近付かないで!!」

 

シャルは近付いて来たグレンラガンの顔を手で抑える。

 

「むぐっくっ!? んな事言ってる場合か!? 大体、寮の風呂で散々見せただろうが!?」

 

「あの時とは違うんだよ~!!」

 

「ええいっ! 埒が明かねえ!!」

 

と、グレンラガンがそう言った瞬間………

 

その姿が緑の光に包まれて、神谷の姿に戻った。

 

「神谷? うわっ!?」

 

首を傾げたシャルに、神谷がいつも羽織っていたマントが掛けられる。

 

「そいつで隠しとけ! それなら良いだろう!」

 

「う、うん………」

 

神谷に渡されたマントを、身体を隠す様に巻き付けるシャル。

 

「よっし! 脱出するぞ!!」

 

そう言って神谷は、再びグレンラガンの姿となり、シャルをお姫様抱っこで抱き上げた。

 

(………神谷の匂いがする)

 

抱き上げられたシャルは、コッソリとマントに染み込んでいた神谷の香りを堪能している。

 

「確り捕まってろよ、シャル!」

 

「!? う、うん!! でも、神谷。一体如何やって脱出するの?」

 

「決まってんだろ!! ブチ破るんだ!!」

 

と、シャルにそう答えたかと思うと、グレンラガンの額の部分にドリルが出現。

 

「行くぜぇ、シャル!!」

 

「うん!!」

 

そう答えると、シャルはグレンラガンに確りとしがみ付く。

 

「ギガドリルトルネエエエエエェェェェェェーーーーーーードッ!!」

 

それを確認すると、グレンラガンは大跳躍!!

 

そのまま、ドラゴノザウルスの胃の壁にブチ当たり、体内を掘り進んで行った!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

外でドラゴノザウルスを足止めしている一夏達は………

 

「チェストオオオオオオォォォォォォォーーーーーーーーッ!!」

 

気合の縦一閃で、ドラゴノザウルスの龍の様な姿をした触手を1本、唐竹割りにする。

 

「ハアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

箒も、雨月と空裂からレーザーとエネルギー刃を飛ばし、ドラゴノザウルスの本体に喰らわせる。

 

[聞こえるか、お前達。ドラゴノザウルスを東京に上陸させてはならない。何としても海上で食い止めろ]

 

とそこで、漸く駆け付けたひゅうがのCICで指揮を執っていた千冬から、一夏達全員にそう通信が送られて来る。

 

「了解。でも、織斑先生………!? うわっ!?」

 

それに答えていたところで、龍の様な姿をした触手に襲われ、慌てて逃げる一夏。

 

「一夏! 危ない!!」

 

とその瞬間、一夏を追っていた龍の様な姿をした触手を、鈴が連結した双天牙月を投擲して斬り落とす。

 

「ハアッ!!」

 

更にセシリアが、ドラゴノザウルス本体に向かってスターライトmkⅢを発砲する。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

怯んだ様子を見せたドラゴノザウルスだったが、次の瞬間には斬り落とされていた触手を再生させる。

 

「クッ! また触手が………コレではキリが無いぞ!!」

 

それを見たラウラが、愚痴る様に叫ぶ。

 

「も~う! 神谷の奴は何をグズグズしてんのよ!?」

 

と、鈴がそう声を挙げた瞬間………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

突如、ドラゴノザウルスが苦しみ出した。

 

「!? 何だ!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その只事ではない様子を感じ取った一夏達は、一旦ドラゴノザウルスから距離を取った。

 

その次の瞬間!!

 

「おりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

威勢の良い叫び声と共に、ドラゴノザウルスの背中を突き破って、シャルを抱き抱えたグレンラガンが飛び出した!!

 

「!! グレンラガン!!」

 

「アニキ!!」

 

「グレンウイーングッ!!」

 

箒と一夏がそう声を挙げると、グレンラガンは上空で待機していたグレンウイングを呼び出す。

 

「ウイングクロース!!」

 

そして空中で十字となり、緑色の噴射を上げて飛翔する。

 

「待たせたな、お前等!! シャルもこの通り無事だぜ!!」

 

「皆! 心配掛けてゴメン!!」

 

一夏達に向かって、神谷とシャルがそう叫ぶ。

 

「シャルロット! 良かった~!」

 

「良くぞ御無事で………」

 

「これで遠慮する必要は無くなったな」

 

それを聞いた鈴、セシリア、ラウラがそう声を挙げる。

 

[神谷! お前はシャルをひゅうがへ連れて来い!! そのままでは戦えんだろ!!]

 

「了解っと!」

 

千冬からの通信にそう答えると、グレンラガンはひゅうがへと飛んだ。

 

「よおし! シャルロットを助け出せたんなら、もう容赦しないぜ!!」

 

「一斉攻撃を掛けるぞ!!」

 

「「「おう(ハイ)!!」」」

 

一夏と箒がそう言い、鈴、セシリア、ラウラは其々に得物を構えた!!

 

と、その瞬間!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

先程グレンラガンに空けられた背中の傷を再生させると、ドラゴノザウルスが咆哮と共に海面から大きく跳躍する!!

 

「!? 危ない!!」

 

「「!?」」

 

「「!? うわあっ!?」」」

 

一夏の声で、セシリアと鈴が退避するが、箒とラウラは回避が遅れ、ドラゴノザウルスの体当たりを喰らって弾き飛ばされる。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

そして何と!!

 

ドラゴノザウルスはそのまま空を飛び、一夏達に襲い掛かって来た!!

 

「!? 何ぃっ!?」

 

「ドラゴノザウルスが!?」

 

「飛んだ!?」

 

驚く一夏達。

 

まさかドラゴノザウルスに飛行能力までもが有るとは、流石に思ってはいなかった。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ドラゴノザウルスは、そのまま一夏達目掛けて一直線に飛んで来る。

 

「!? うわっ!?」

 

「コイツ!!」

 

「喰らいなさい!!」

 

一夏は離脱したが、鈴が龍咆、セシリアがスターライトmkⅢを向かって来るドラゴノザウルスに向かって放つ。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

龍の様な姿をした触手の1本が千切れたが、ドラゴノザウルスは別の龍の様な姿をした触手を2人に向かって伸ばす!!

 

「チイッ!!」

 

「クウッ!!」

 

慌てて離脱しようとする2人だったが、1歩間に合わず、鈴が左足、セシリアが右足を噛み付かれ、摑まえられてしまう。

 

「!?」

 

「しまっ………」

 

するとドラゴノザウルスは、2人を摑んだまま振り回し始めた!!

 

「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

振り回されている鈴とセシリアから悲鳴が挙がる。

 

「鈴! セシリア! うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

一夏は、2人を掴まえている龍の様な姿をした触手を、雪片弐型で斬り裂く!!

 

「「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」

 

振り回されていた2人は、そのままブッ飛んで行き、東京湾の波止場に叩き付けられた!!

 

「2人共! 大丈夫か!?」

 

と、一夏が2人にそう呼び掛けていると………

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ドラゴノザウルスが高度を取り、龍の様な姿をした触手を全て扇風機の羽の様に回転させ始める!!

 

すると、ドラゴノザウルスの下部から、凄まじい爆風が吹き荒れる!!

 

「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

台風以上の爆風に、一夏は飛行を維持できず、そのまま吹き飛ばされて、海面に叩き付けられるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方………

 

シャルを連れたグレンラガンは………

 

戦闘区域からやや離れた位置に居たひゅうがへと辿り着き、甲板へ着地しようとしていた。

 

「デュノア!!」

 

「デュノアさん! 大丈夫ですか!?」

 

艦橋から飛び出す様にやって来た千冬、真耶、リーロンの内、千冬と真耶がシャルにそう言って来た。

 

「は、ハイ、何とか………」

 

グレンラガンの腕から降ろされたシャルが、戸惑いながらもそう答える。

 

「格納庫にエネルギー補給機と予備パーツを用意して置いたわ。そこで補給と整備をして。それとコレ………予備のISスーツよ」

 

そこでリーロンがそう言いながら、シャルの予備のISスーツを差し出した。

 

「あ、ありがとうございます」

 

シャルはそれを受け取ると、神谷のマントで身体を隠したまま着替えを始める。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

と、そこでドラゴノザウルスの咆哮が聞こえて来て、一同が振り向くと、空を飛んで暴れ回り、一夏達を蹴散らしているドラゴノザウルスの姿が飛び込んで来た。

 

「!? と、飛んでる!?」

 

「奴め………飛行能力まで兼ね備えているのか」

 

「マズイわね。アイツの中には石油が充満してるんでしょ? もし爆発でもしたら………」

 

その様を見た真耶、千冬、リーロンが戦慄した様子を見せながらそう言う。

 

すると………

 

「石油?………! それだ!!」

 

神谷が何かを思いついた様に大声を挙げた。

 

「うわっ!? 如何したの、神谷?」

 

突然大声を挙げた神谷に、シャルが驚きながら尋ねる。

 

千冬達の視線も、グレンラガンに集まる。

 

「奴の腹が石油で一杯なら、そこを徹底的に叩きゃあ、アッと言う間に大爆発して一気にカタが着く、ってワケだ!」

 

「! 成程、確かに………」

 

神谷のその発想に、千冬も納得が行った様な表情になる。

 

「で、でも! あんな巨大な生物の胃袋が何処に在るのか、外から見ただけじゃ………」

 

「いえ、例えどんな生物でも、基本的な構造は変わらないわ………胃袋は背中には無いわ」

 

「! そう言えば!!」

 

真耶はそう疑問を呈するが、リーロンがそれに答える。

 

「よおしっ! 見てろよ! クラゲの出来損ない野郎め! 今にデッケェ花火を打ち上げてやるぜ!!」

 

神谷がそう叫ぶと、グレンラガンは閉じていたグレンウイングを再展開。

 

緑色の噴射を挙げて、空へと舞い上がった。

 

「あ! 神谷!! 急がないと………」

 

それを見て、ISスーツへの着替えを終えたシャルも、急いでエネルギーの補給と予備パーツの組み立てへ向かった。

 

「山田くん、CICへ戻るぞ。織斑達に作戦の説明をしなければ」

 

「は、ハイ!」

 

「ココからが本当の戦いね」

 

そして千冬達もそう言い合って、ひゅうがのCICへと戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京湾・上空………

 

「このぉっ!!」

 

ラウラが、ドラゴノザウルス目掛けてレールカノンを放つ。

 

普通の弾丸ならば、ドラゴノザウルスの体内に埋もれてしまうが………

 

ラウラはそれの対策として、弾丸を近接信管仕様に変えており、放たれた弾丸はドラゴノザウルスに命中する寸前で炸裂し、爆風を浴びせた!!

 

「ハアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

更に箒が、再び雨月と空裂からレーザーとエネルギー刃を見舞う。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

だが、ドラゴノザウルスは怯むどころか、更に暴れ回る。

 

「クッ! 駄目か!!」

 

「このままではコッチが消耗する一方だ………」

 

苦い声がラウラと箒から漏れる。

 

どれだけの攻撃を加えても、ドラゴノザウルスはその傷を瞬時に再生させてしまい、結果グレン団の方が一方的に消耗させられるという事態になっていた。

 

奴を倒すには、再生能力を上回る程の火力で一気に吹き飛ばすしかないのだが、専用機と言えど、あれほど巨大なドラゴノザウルスを跡形も無く消し飛ばす程の火力を有している者は居ない………

 

手詰まりかに思えた瞬間………

 

「ピアススティンガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

威勢の良い声が響き渡り、ドラゴノザウルスの右目に、グレンラガンの右手から伸びて来た細長い2本のドリルが突き刺さった!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

目を潰されたドラゴノザウルスは、悶え苦しむ様な様子を見せる。

 

「お前等! 俺に作戦が有る!!」

 

そしてその隙に、箒達に合流したグレンラガンがそう言い放つ。

 

「アニキ! 作戦って!?」

 

漸く海から上がって来た一夏が、グレンラガンにそう問い質す。

 

[お前達、良く聞け。これから作戦を説明する]

 

とそこでタイムリーな、千冬からの通信が送られて来る。

 

そして、神谷が考えた作戦が、全員に伝えられる。

 

[………と言うワケだ。ドラゴノザウルスを東京湾上空から海上へ誘き出せ! そこで奴の腹へと集中攻撃を行い、撃破するんだ!!]

 

「「「了解!!」」」

 

「任せとけ!!」

 

千冬の説明を聞き、一夏達と神谷がそう返事を返す。

 

「お待たせ!!」

 

とそこで、エネルギーの補給と予備パーツの組み立てを終えたシャルが駆け付けた。

 

「アタシ達の事も!」

 

「忘れてもらっては困りますわ!」

 

更に、波止場へ叩き付けられていた鈴とセシリアも現れる。

 

2人共ガスタンクを抱えて!

 

「鈴!? セシリア!? 何持って来てるんだ!?」

 

トンでもない物を持って現れた鈴とセシリアに、一夏が驚きの声を挙げる。

 

「ガスタンクよ!!」

 

「コレをドラゴノザウルスに飲ませて、引火力を強め、起爆剤にするのですわ!!」

 

「良いアイデアだぜ、鈴! セシリア!」

 

鈴とセシリアは得意げに語り、グレンラガンもそんな2人にサムズアップを送った。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、ドラゴノザウルスが咆哮を挙げながら、グレン団に迫って来た。

 

「来たぞぉ! 行くぜ!!」

 

「「「「「「おう(ハイですわ)(ああ)!!」」」」」」

 

グレン団はドラゴノザウルスの注意を惹きながら、東京湾から離れた海上へと移動し始めた。

 

ドラゴノザウルスはそれを追い、同じ様に東京湾から離れた海上へと移動して行く。

 

「来た来た。今に面白いものを見せてやるぜ」

 

自分達の考えも知らず、ノコノコと追い掛けて来るドラゴノザウルスを見ながら、一夏がそんな声を漏らす。

 

やがて一同は、東京湾から十分距離を取った海上へと到達。

 

「良し! この辺で良いだろう!」

 

「鈴! セシリア! お願い!!」

 

「了解!!」

 

「お任せになって!!」

 

ラウラがそう声を挙げ、シャルが2人に呼び掛けると………

 

鈴とセシリアは、ドラゴノザウルスの方を振り返って空中に静止し、ガスタンクを投げる様に構えた。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ドラゴノザウルスは、動きを止めた2人に迫るが、2人はギリギリまで引き付ける。

 

「1!」

 

「2!」

 

そして2人は、タイミングを合わせるかの様にカウントダウンを始める。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

ドラゴノザウルスが咆哮を挙げ、口が大きく開かれる!!

 

「「3!!」」

 

その瞬間!!

 

鈴とセシリアは、持っていたガスタンクを、ドラゴノザウルスの口の中目掛けて放り込んだ!!

 

そのままガスタンクを飲み込むドラゴノザウルス。

 

「よおし、今だ!! 一気に行くぜぇっ!! グレンファイヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

その瞬間、グレンラガンがドラゴノザウルスの腹目掛けて、胸部のサングラスから熱線を見舞った!!

 

「喰らえっ!!」

 

「ハアアッ!!」

 

「コレで!!」

 

「行けえっ!!」

 

「シュートッ!!」

 

「フォイヤッ!!」

 

更に、一夏が左腕の雪羅から荷電粒子砲。

 

箒が雨月と空裂からのレーザーとエネルギー刃。

 

セシリアがレーザービットのブルー・ティアーズとスターライトmkⅢの射撃。

 

鈴が両肩の龍砲。

 

シャルが両手に構えたガルム。

 

ラウラが右肩の大型レールカノンで、ドラゴノザウルスの腹に一斉攻撃を開始した!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

この一斉攻撃の前に、流石のドラゴノザウルスも苦悶の咆哮を挙げる。

 

しかし、まだその勢いは衰えず、龍の様な姿をした触手を一夏達に伸ばして来る。

 

「散れっ!!」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

神谷の合図で、一斉に散開する一夏達。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

その後、ドラゴノザウルスは神谷達の狙いに気づいたのか、全ての龍の様な姿をした触手で腹を覆い尽くす。

 

「クッ! 駄目だ!! 腹が覆われたぞ!!」

 

「まだそんな元気があるのか!!」

 

「一夏! 合体だぁ!!」

 

ラウラの言葉に、一夏がそう言うと、グレンラガンが一夏にそう呼び掛けた!!

 

「! よっしゃあっ!!」

 

それを聞いた一夏は、グレンラガンに向かって飛ぶ!!

 

「「兄弟合体!!」」

 

そして、グレンラガンと一夏の姿が太陽を背に重なった瞬間!!

 

「「白式ラガン!!」」

 

緑色の光に包まれて、白式ラガンが現れた!!

 

「箒! シャル! お前達は上から攻めろ!!」

 

「その隙に俺達が腹を攻撃する!!」

 

「分かった!」

 

「任せて!」

 

白式ラガンから神谷と一夏の声が響き渡ると、箒とシャルが、ドラゴノザウルスの上面から攻撃を加える。

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

最初は我慢しているかの様な様子を見せたドラゴノザウルスだったが、やがて耐え切れなくなったのか、龍の様な姿をした触手を伸ばし、箒とシャルを追い払おうとする。

 

その瞬間、覆われていた腹が露わになる!!

 

「アニキ! 今だ!!」

 

「グレンブーメランッ!!」

 

その瞬間、白式ラガンは胸に装着されていたグレンブーメランを外し、投げ付ける。

 

更に………

 

「舞えっ! 飛燕の如く!!」

 

一夏がそう叫んだかと思うと、白式ラガンの手に雪片弐型が現れる。

 

雪片弐型が展開して、エネルギーの刃を展開するが………

 

その形が、いつもの剣の刃の様な形でなく、ククリ刀の様な形になった。

 

「雪片! 大! 車! りぃぃぃぃん!!」

 

暑苦しい迄の咆哮と共に、そのククリ刀状になった雪片弐型を振り回し、ドラゴノザウルス目掛けて投擲した!!

 

高速で回転するグレンブーメランと、ククリ刀状になった雪片弐型が、ドラゴノザウルスの腹目掛けて飛ぶ!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!

 

それに気づいたドラゴノザウルスの、龍の様な姿をした触手が1本立ち塞がるが………

 

グレンブーメランとククリ刀状になった雪片弐型が、それを物共せずに両断し、ドラゴノザウルスの腹を引き裂いた!!

 

ギャオオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?

 

ドラゴノザウルスが苦悶の咆哮を挙げたかと思うと、頭の部分から貫通したグレンブーメランとククリ刀状になった雪片弐型が飛び出す!!

 

斬り破られた腹からは、石油が噴水の様に溢れ出ている。

 

「今だ!!」

 

「皆! 頼む!!」

 

「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

神谷と一夏がそう叫んだ瞬間!!

 

箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラは、その石油が噴き出している部分目掛けて一斉攻撃を見舞った!!

 

その攻撃で石油が引火!!

 

更に引火させた火が、腹の中まで到達し、先程セシリアと鈴が呑み込ませたガスタンクを爆発させた!!

 

後は爆発が爆発を呼んで連鎖して行き、ドラゴノザウルスの身体の彼方此方が破れて、火柱が挙がる!!

 

やがて、一際大きな爆音を響かせて、ドラゴノザウルスは遂に大爆発!!

 

無数の肉片となって、海中へ没して行った………

 

「「「「「「「ゼエ………ゼエ………ゼエ………ゼエ………」」」」」」」

 

大激戦の後で、誰もが乱れた息を整えるのに、必死になっていた。

 

[やった………のか?]

 

[ドラゴノザウルスの生体反応ゼロ………完全に沈黙したわ]

 

[やった! やりましたよ、天上くん達がやりました!!]

 

ひゅうがCICに居る千冬達からも、通信機のスイッチを入れっ放しなのか、そう言う声が聞こえて来る。

 

沿岸に配置されていた陸上自衛隊、海上の艦に居る海上自衛隊、そして空に居る航空自衛隊の面々からも歓声が挙がる。

 

こうして………

 

石油を食う現代に蘇った怪物………

 

ドラゴノザウルスは………

 

神谷達、グレン団の活躍により………

 

再び海底で眠りに就いたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夕方………

 

神奈川県・横須賀市………

 

海上自衛隊の横須賀基地………

 

護衛艦の係留港に停泊しているひゅうがの甲板にて………

 

「今回、ドラゴノザウルスを倒す事が出来たのは貴方方のお蔭です。本当にありがとうございました」

 

帰りのヘリに乗り込もうとしている神谷達に向かって、ひゅうがの艦長がお礼を言いながら敬礼を送った。

 

「いえ、我々は与えられた任務を果たしたに過ぎません………」

 

「そうそう! 気にすんなよ! ロージェノム軍と戦うのは、グレン団の使命だぜ!!」

 

千冬が改まって答えていると、神谷がそう口を挟んで来る。

 

「神谷………お前は黙っていろ」

 

「………あの、皆さん。実は今回の作戦に関わった自衛官達が皆さんにお礼を言いたいと言っていまして………」

 

と、そんな神谷に千冬が辟易していると、ひゅうがの艦長がそんな事を言って来た。

 

「えっ? いえ、我々は別に感謝されたいから戦ったワケじゃ………」

 

「そう言わずに受け取って貰えませんか? 何分、自衛官と言うのは………堅苦しい連中が多いのですが………」

 

「気をつけえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

ひゅうがの艦長がそう言った瞬間、港の方から声が聞こえて来た。

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

神谷と一夏達が驚きながら港を見やると、そこには………

 

「此度の件に於いて! その身の危険も顧みず! ドラゴノザウルス討伐に尽力を尽くされたIS学園の勇敢なる戦士達に! 敬礼!!」

 

今回の作戦に参加した海上自衛隊と陸上自衛隊の自衛官達が、神谷に向かって一斉に敬礼を送って来ていた。

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

その圧巻と言える光景に、一夏達は言葉を失う。

 

そこで、更に………

 

空の方からも轟音が聞こえて来たかと思うと、航空自衛隊の戦闘機が敬意を示す編隊飛行で飛んで来た。

 

「へへっ………ワルかぁねえな」

 

そんな一連の光景を見て、流石の神谷も少々照れた様な様子を見せながらそう呟く。

 

「本当に………ありがとうございました!!」

 

最後に、ひゅうがの艦長が再び敬礼を送って来た。

 

一夏達は戸惑いながらも、その敬礼に自分達も敬礼を返す。

 

そして、その後………

 

一同はヘリに乗り、IS学園へと帰還して行った………

 

ひゅうがの艦長と作戦に参加した自衛官達は、そのヘリの姿が見えなくなるまで、敬礼を続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ドラゴノザウルスに食われたシャルでしたが、神谷の決死の突入で無事救出されました。
しかし、ドラゴノザウルスは健在であり、その戦闘力は恐るべきものだった。
そこで神谷は、ドラゴノザウルスの胃の中に石油が充満しているのを逆手に取り、大爆破作戦を執る。
作戦は見事成功。
ドラゴノザウルスは葬り去られ、神谷達は自衛官達に見送られて帰路につくのでした。

さて、次回は夏休み編最後のオリジナルエピソード。
ギャグ回です。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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