天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第26話『勝手に決めんじゃねえっ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第26話『勝手に決めんじゃねえっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神谷と謎のISを装着した少女との戦いから数日が経った………

 

一夏達はあのISを装着した少女は誰かと神谷に問い質したが………

 

当の神谷も、正体を知らないので分からないとしか答えようがなかった。

 

千冬や真耶が何か知っている様子だったが、機密事項だと言い、答えてはくれない。

 

様々な謎を残したまま、一夏達はSHRと1時間目を使っての全校集会の場に居る。

 

今月中頃に行われる学園祭について、生徒会長から話があるらしい。

 

「ふわああああぁぁぁぁぁ~~~~~………ったく、メンドクセェーなぁ、オイ」

 

生徒達が生徒会長が現れるまでの間に喧しく話し合っている中で、こういった事が苦手な神谷は、気怠そうに欠伸をする。

 

「まあまあ、アニキ。仮にも生徒会長の話なんだから、聞いておいた方が良いよ」

 

一夏が神谷を宥める様にそう言う。

 

「それでは、生徒会長から説明をさせていただきます」

 

と、生徒会の一員らしき生徒がそう言うと、檀上に1人の生徒が上がる。

 

その途端に、生徒達は今までの喧しさがウソの様に静まり返る。

 

「!? あっ!?」

 

「アイツは!?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ニャアッ!?」

 

その生徒会長の姿を見た一夏、神谷、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、そしてティトリーが驚きを露にする。

 

何故なら、その生徒会長こそが………

 

数日前に神谷と激戦を繰り広げた、ISを装着した少女その人であったからだ。

 

「やあ。皆お早う」

 

そんな神谷達の驚きなど露知らず、生徒会長は生徒達に向かってそう挨拶をする。

 

「生徒会長………あの人が?」

 

一夏がそう呟きながら、生徒会長の姿を見遣る。

 

「ふふっ」

 

「!?」

 

と、目が合ったと思った瞬間に微笑まれ、一夏は動揺する。

 

「…………!?」

 

「…………」

 

しかし、その傍に居た神谷の姿を見た瞬間には、口元を開いた扇子で隠し、敵愾心の籠った目で見据えた。

 

「ヘッ」

 

だが、そんな敵愾心が宿った視線を受けた神谷は、怯むどころか笑い飛ばす。

 

「!!………さてさて、今年は色々と立て込んでいてちゃんとした挨拶がまだだったね」

 

それを見た生徒会長は一瞬苦々しげな表情を浮かべたが、すぐに気持ちを切り替え、生徒達への話を始める。

 

「私の名前は『更識 楯無』。君たち生徒の長よ。以後、よろしく」

 

生徒達全員に向かって、生徒会長………『更識 楯無』は、微笑みを浮かべてそう挨拶をする。

 

その様を見た生徒達の多数から、熱っぽい溜息が漏れる。

 

「では、今月の一大イベント学園祭だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。その内容と言うのは………」

 

と、楯無がそう言葉を続けたかと思うと、空間投影ディスプレイが展開した。

 

「名付けて、『各部対抗織斑 一夏争奪戦』!」

 

楯無がそう言った瞬間、展開したディスプレイに、デカデカと一夏の姿が映し出される。

 

「え?………えええええっ!?」

 

一夏が驚きで大声を挙げる。

 

当たり前だ………

 

この企画、一夏絡みのクセに当の本人には一切知らされていないのだ。

 

だが、そんな一夏の叫びは、生徒達全員の叫び声で掻き消されてしまう。

 

「静かに。学園祭では毎年各部活動ごとに催し物を出し、それに対して投票を行って、上位組には部費に特別助成金が出る仕組みでした」

 

騒ぎ出した生徒達を鎮めると、楯無は更にそう説明を続ける。

 

「しかし、今回はそれではつまらないと思い………織斑 一夏を1位の部活に強制入部させましょう!」

 

そう言って、楯無は一夏を閉じた扇子で差した。

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

「素晴らしい! 素晴らしわ会長!!」

 

「こうなったらやってやる………やぁぁぁってやるわ!」

 

「今日からすぐに準備を始めるわよ! 秋季大会? ほっとけ、そんなん!!」

 

その言葉で、生徒達のテンションは最高潮に達する。

 

「ちょっと!? 俺の意思は!?」

 

一夏がそう叫ぶが、その叫びは喧騒に掻き消される………

 

しかし!!

 

「勝手に決めんじゃねえっ!!」

 

そんな生徒達のけたたましい喧騒も吹き飛ばす程の大声が響き渡った!!

 

あまりの声量に、校舎の窓ガラスが次々に割れ、近くに居た生徒達が木の葉の様に宙に舞う!!

 

「ぐああっ!?」

 

「こ、鼓膜が………」

 

「あ、あの………馬鹿………」

 

神谷の凄まじい大声を真面に聞いてしまった箒、セシリア、鈴がダメージを受けている様子を見せる。

 

「か、神谷………」

 

「何と言う声量だ………」

 

「にゃ~、耳がキンキンする~」

 

辛うじて耳を押さえたものの、少々のダメージを受けたシャルとラウラ、ティトリーがそう呟く。

 

「………天上 神谷」

 

と、生徒会のメンバーが吹き飛ばされている中で、唯一平然としていた楯無は、神谷の姿を見て、今度はハッキリと苦々しい表情を浮かべる。

 

「…………」

 

すると、神谷がザッと前に出て行く。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

行く手に居た生徒達がスーッと道を譲る。

 

その光景はモーゼの十戒の様だった。

 

「…………」

 

更に、楯無も檀上から飛び降りると、神谷を待ち構えるかの様な態勢を取る。

 

「「…………」」

 

やがて2人は、目と鼻の先と言う程の距離までに近づく。

 

「「…………」」

 

既に激しいメンチの斬り合いが始まっている。

 

「おう!」

 

「!」

 

「おうおうおう!」

 

「貴方………」

 

ドンドン険悪な雰囲気になって行く2人。

 

生徒達も教師陣もただ困惑するばかりだ。

 

「あわわわわわわ………」

 

「全く、アイツは………アイタタタタタ………」

 

完全に狼狽えている真耶と、その隣で胃痛がする胃を押さえている千冬。

 

「………勝手に決めるな、って如何いう事かな?」

 

「一夏はもうグレン団のメンバーだ。それを俺に何の断りも無しに強制入部させるたぁ、気に入らねえな」

 

「織斑くんが部活に入っていない事で各部から生徒会には苦情が来てるの………コレは公平に決めさせる為の平等な提案よ」

 

「何が平等な提案だ。部活なんざやりてぇ奴がやりゃ良いんだ! 人に言われて無理矢理やるもんじゃねえだろ!!」

 

遂に楯無と神谷は舌戦を始める。

 

いや………最早啖呵の斬り合いと言ってもいいだろう。

 

「これは生徒会として決定よ!! つまり生徒会長権限なの!!」

 

「何が生徒会長権限だ! テメェがそんなに偉いのかよ!!」

 

「当たり前よ! 私を誰だと思ってるの!?」

 

「テメェこそ俺を誰だと思ってやがる! IS学園に悪名轟くグレン団! 男の魂、背中に背負い! 不撓不屈の! あ! 鬼リーダー! 神谷様たぁ、俺の事だ!!」

 

「私はIS学園生徒会長! 更識 楯無なのよ! 分かってるの!!」

 

「………子供の喧嘩ね」

 

と、その様子を見ていた鈴がそう呟く。

 

箒やシャル達も、呆れた視線を、神谷と楯無に送っている。

 

結局その後………

 

お互いに1歩も引かずに主張をぶつけ合い、そのまま時間切れで全校集会が終わったのだった………

 

ところで………

 

この騒動の中心に居る筈の一夏は………

 

「きゅう~~~」

 

神谷が挙げた大声を至近距離で聞いてしまった為、目を回して気絶してたのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同日の放課後………

 

1年1組の教室にて………

 

特別HRを開いて、クラス毎の出し物を決めに掛かっていた。

 

1組の生徒達が提案したものは………

 

『織斑 一夏のホストクラブ』、『織斑 一夏とツイスター』、『織斑 一夏とポッキー遊び』、『織斑 一夏と王様ゲーム』、etc………

 

等といった具合に、殆ど………と言うよりも全てが一夏絡みの出し物となっていた。

 

「却下」

 

クラス代表として、意見を纏める立場に居る一夏は、当然の様に全ての提案を却下する。

 

「「「「「えええええぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~っ!?」」」」」

 

途端に、1組の生徒達からは精一杯の抗議の声が挙がる。

 

「当たり前だ! 誰が嬉しいんだ、こんなもん!!」

 

「私は嬉しいわね! 断言する!!」

 

「そうだそうだ! 女子を喜ばせる義務を全うせよ!!」

 

「織斑 一夏は共有財産である!」

 

「他のクラスから色々言われてるんだってば! うちの部の先輩も煩いし!」

 

「助けると思って!」

 

「メシア気取りで!!」

 

一夏も抗議の声を挙げるが、生徒達からは次々に不満の声が挙がる。

 

「じゃあ、コレを採用するならアニキにも俺と同じ役割をやってもらう! それでも良い!?」

 

すると、一夏は生徒達に向かってそう叫んだ!!

 

途端に………

 

「あ、えっと………ならいいです」

 

「織斑くんは兎も角、天上くんも一緒だと………」

 

「それは寧ろご褒美より拷問だわ………」

 

「すみません、調子こいてました」

 

「お前等、失礼だな」

 

次々に沈黙し始めた生徒達を見て、神谷は憮然とした表情を浮かべる。

 

「兎に角、もっと普通な意見をだな………」

 

「メイド喫茶は如何だ?」

 

と、一夏がそう言うと、何と意外も意外、ラウラがそんな意見を挙げた。

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

クラスの生徒全員と、一夏の視線がラウラに注がれる。

 

「客受けは良いだろう。それに、飲食店は経費の回収が行える。確か、招待券制で外部からも入れるのだろう? それなら、休憩場としての需要も少なからずある筈だ」

 

淡々と冷静な意見を繰り広げるラウラだったが、キャラ的に似合わない意見に、クラスの一同は神谷を除いてポカンとしている。

 

「え、えーと………皆は如何思う?」

 

一夏は取り敢えずと生徒達に賛否を尋ねるが、生徒達はまだ状況が理解出来ておらず、茫然としている。

 

「良いんじゃないかな? 一夏には執事か厨房を担当してもらえばオーケーだし、神谷も力仕事や客引きなんかについてもらえば良いんじゃないかな?」

 

するとそこで、シャルが援護する様にそう言う。

 

クラスの一同は、その言葉………

 

特に一夏が執事をするという部分に一気に惹かれた。

 

「織斑くん執事! 良い!」

 

「それでそれで!」

 

「メイド服は如何する!? 私演劇部衣装係だから縫えるけど!」

 

先程までの沈黙がウソの様に、1組生徒達は一気にボルテージを上げる。

 

(まあ、変わった衣装の喫茶店だと思えば良いか………)

 

一夏も、自分が中心で無く皆でやる企画の為、妥協を見せる。

 

「メイド服ならツテがある。執事服も含めて貸してもらえるか聞いてみよう」

 

するとラウラが、またもそんな声を挙げた。

 

クラス全員が「えっ?」という表情でラウラを見つめる。

 

「………ごほん。シャルロットが、な」

 

すると、流石に照れ臭かったのか、ラウラは咳払いしてシャルに話を振った。

 

「え、えっと、ラウラ? それって、先月の………?」

 

「うむ」

 

先月のとは、例の白猫の着ぐるみパジャマを買いに行った時の話である。

 

実はその時、シャルとラウラはふとした事からメイド喫茶の女店長と知り合い、1日アルバイトをしたのだ。

 

色々とあった波乱のバイトとなったが、まあそこは今は関係無いので割愛する。

 

「き、聞いてみるだけ聞いてみるけど、無理でも怒らないでね」

 

「「「「「怒りませんとも!!」」」」」

 

シャルの不安げな声に、クラスの生徒達は声を揃えてそう言う。

 

かくして、1年1組の出し物はメイド喫茶改め『ご奉仕喫茶』に決まり………

 

「ちょっと待ったぁっ!!」

 

かに思われたが、そこで神谷がちょっと待ったコールを掛けた。

 

「!? アニキ!?」

 

「神谷!?」

 

まさかちょっと待ったコールが出るとは思わず、一夏とシャルが困惑する。

 

他の生徒達も、空気読めよという視線を送っている。

 

「何だ、神谷? 貴様メイド喫茶に不満があるのか?」

 

提案者であるラウラが、不機嫌そうにそう言うが………

 

「いや、メイド喫茶自体に問題はねえぜ。寧ろ大歓迎だ!」

 

相変わらず欲望丸出しで神谷はそう言う。

 

「じゃあ、何が?」

 

「だがな! 今時只のメイド喫茶なんざぁ、在り来りってもんだぜ!!」

 

ラウラの言葉を遮り、神谷はそう言い放つ。

 

「何?」

 

「それじゃイマイチパンチがねえ! そう此処は………」

 

神谷はそう言って、言葉を溜める様な様子を見せる。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

クラス全員の視線が、神谷に注がれる。

 

その瞬間!

 

神谷はクワッと目を見開いたかと思うと………

 

「プラス猫耳で、猫耳メイド喫茶で如何だぁ!!」

 

お馴染みの天を指差すポーズを決めて、堂々とそう言い放った!!

 

「えっ!?」

 

その提案にティトリーが驚く。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

しかし、他の生徒達は、神谷に冷たい視線を向ける。

 

「いや、アニキ………流石にそれは………」

 

一夏はやり過ぎだと言おうとしたが………

 

「馬鹿野郎! 良いじゃねえか! 猫耳の1つや2つ! 減るもんじゃねえだろ!!」

 

神谷は頑として退く様子を見せない。

 

「で、でも………」

 

何とかして説得を試みる一夏だったが………

 

「わ、私は良いと思うよ!」

 

そこで、ティトリーがそう声を挙げた。

 

「!? ティトリー!?」

 

「か、神谷の言う通り、良いんじゃないかな? 猫耳の1つや2つくらい………」

 

若干挙動不審でそう言うティトリー。

 

(ティトリー………まさか、ティトリーも神谷の事を………)

 

すると、その様子を見て、勘違いを起こしたシャルが………

 

「僕も良いと思います!!」

 

血迷った様に賛成の意見を挙げる。

 

「!? シャル!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

まさかシャルまで賛成するとは思っていなかった一夏と生徒達は一斉に驚きを示す。

 

結局そのまま………

 

神谷と2人の勢いに押されるかの様に、次々に賛同者が増え………

 

1年1組の出し物は、メイド喫茶改め『ご奉仕喫茶』更に改め………

 

『猫耳ご奉仕喫茶』となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室前の廊下………

 

「失礼しました~」

 

出し物が決まった事を、千冬に報告し終えた一夏が職員室から出て来る。

 

なお、千冬は出し物が『猫耳ご奉仕喫茶』に決まった事を、神谷が絡んでいると見抜いたが、クラス生徒が大半賛成していると言う事実もあって反対できず、苦々しげな表情で了承のサインを書いていた。

 

(千冬姉の気持ちも分かるな~)

 

神谷が強引なのはいつもの事だが、今回はいつにも増してゴリ押しであった事を、一夏も僅かに疑問を感じている。

 

すると、そこへ………

 

「やあ」

 

何の前触れも無く、楯無が現れ、一夏へ声を掛けた。

 

「!? 貴女は!?」

 

突然目の前に現れた楯無を見て、一夏は飛び退く様に距離を取ったかと思うと、構えを取る。

 

更に白式を、何時でも呼び出せる状態にまでしている。

 

「………そこまで露骨に警戒されると流石にヘコむんですけど」

 

「…………」

 

楯無はヘコむ様な様子を見せてそう言うが、一夏は警戒を解かない。

 

「ハア~………嫌われちゃってるねえ。お姉さんは悲しいよ」

 

「………何か御用ですか? 生徒会長さん」

 

と、楯無が殺気を見せないので、一夏は警戒したままながらも、そう尋ねる。

 

「え~とね………織斑 一夏くん。今度の学園祭の事なんだけど………」

 

「ああ、俺を景品にするあの話ですか? 別に良いですよ。そっちが勝手にやって、勝手に盛り上がれば良いじゃないですか。俺は一切関知しませんから」

 

「あ~、いやね。流石にそれは悪いかなと思ってるんだよ。だからね………交換条件として、これから当面、私が君のISコーチをしてあげる。それで如何?」

 

「生憎ですが、間に合ってます………じゃあ、失礼します」

 

一夏は楯無の言葉をバッサリとそう叩き斬り、立ち去ろうとする。

 

「うーん、そう言わずに。何せ私は生徒会長なのだから」

 

「はっ?」

 

「アレ? 知らないのかな? IS学園の生徒会長って言うと………」

 

と、楯無がそう言いかけた瞬間………

 

「覚悟おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

一夏が立ち去ろうしていた方向から、粉塵を上げる勢いで走って来た生徒が、手に持っていた竹刀で楯無に斬り掛かった!

 

だが………

 

「迷いの無い踏み込み………良いわね」

 

楯無は余裕の笑みを浮かべて、扇子を取り出したかと思うと、その扇子で竹刀を受け流し、生徒の首元に左手で手刀を叩き込む!

 

と、その直後!!

 

今度は傍にあった窓ガラスが破裂!!

 

楯無の顔に向かって、次々に矢が飛んで来る!!

 

見れば、隣の校舎の屋上に、和弓を射る袴姿の生徒の姿があり、矢は彼女が射たものらしい。

 

「ちょっと借りるよ」

 

すると楯無は、飛んで来る矢を躱しながら、先程倒した生徒が使っていた竹刀を足で蹴り上げ、キャッチすると同時に投擲。

 

割れた窓から飛び出した竹刀は、弓女の眉間にヒット。

 

弓女はそのまま倒れた。

 

「もらったああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

その直後!!

 

今度は廊下の掃除用具入れのロッカーから、両手にボクシンググローブを填めた生徒が飛び出し、猛ラッシュを繰り出して来た。

 

「ふむん。元気だね………織斑 一夏くん」

 

その猛ラッシュを余裕で躱しながら、再度一夏に話し掛ける楯無だったが………

 

「…………」

 

一夏は既に、遠くの方まで立ち去っていた。

 

「!? ちょっ!? 待って! 織斑 一夏くん!! ああ、もう! 邪魔!!」

 

その光景を見て、楯無は初めて慌てた様な様子を見せると、ボクシング女にランスの様なソバットをお見舞いし、再び掃除用具入れのロッカーにボッシュートする。

 

「待って! 待ってってばぁ!!」

 

「………まだ何か用が有るんですか?」

 

一夏はウンザリしている様子を隠そうともせずにそう言う。

 

(うぐっ! 手強い子ね………こんな子は始めてだわ………)

 

楯無は、表面上は冷静を装いながらも、内心で今まで相手にした事がないタイプである一夏を扱い倦ねていた。

 

彼女は、天性のカリスマと才能で、他人を自分のペースに巻き込む事が得意な性分である。

 

生徒会長の座に就いているのも、その才能による恩恵が大きい。

 

が、今回ばかりは相手が悪かった。

 

一夏からすれば、楯無より神谷のカリスマが圧倒的に強いと思っている。

 

更には、楯無がその神谷と戦っていた事で、彼女に対し強い不信感を抱いている。

 

オマケに、神谷が唯我独尊な性格な為、弟分の一夏も少なからずその影響を受けていたのだ。

 

幾ら楯無が流れを摑もうとしても、そもそも一夏はその流れに乗っておらず、自分のペースで自分の思う様に進んでいる。

 

会話が成立しないのは、ある意味当然の事であった。

 

「さ、さっきの子達は、何で私を襲って来たのか、知りたくない?」

 

「いえ、別に………」

 

「聞いてよ!!」

 

一夏があんまりにもつっけんどんな態度を取るので、とうとう楯無は地団太を踏んでそう叫ぶ。

 

「ハア~~………分かりました。で? 何でですか?」

 

仕方なく、一夏は楯無にそう尋ねる。

 

「フフフ、それはねえ………生徒会長、即ち全ての生徒の長存在は、最強たれ。つまり、IS学園において、生徒会長という肩書きは、ある1つの事実を証明しているんだよね」

 

「へえ~~」

 

あまり興味が無さそうにそう返事を返す一夏。

 

「それでね。最強である生徒会長は何時でも襲って良いの。そして勝ったなら、その者が生徒会長になるの」

 

「凄いですね~」

 

「………真面目に聞いてる?」

 

一夏の態度があんまりなものであり、楯無は思わずそう言う。

 

「聞いてますよ~………アレ? って事は?」

 

「? 如何したの?」

 

「貴女確か………アニキと戦って負けてましたよね?」

 

「!? うぐっ!?」

 

思わぬ点を指摘され、楯無は言葉に詰まった。

 

「って事は………生徒会長の座はアニキに?」

 

「あ、アレは違うよ! 寧ろ天上 神谷くんは私の仕事を邪魔したんだよ!!」

 

「でも負けたのは事実ですよね?」

 

「ううっ!? わ、私のシマじゃノーカンだから! アレ!!」

 

「貴女は何処のブロンティストですか?」

 

すっかりたじたじの楯無に、一夏は畳み掛ける様にそう言う。

 

「うぐぐぐぐぐ………」

 

「もう良いですか? じゃあ、俺、そろそろ………」

 

一夏はそう言うと、楯無の前から立ち去ろうとしたが………

 

「…………」

 

途端に、楯無はボロボロと涙を零し始めた。

 

「!? ちょっ!?」

 

「うわあああぁぁぁぁ~~~~んっ! 織斑 一夏くんが苛める~~っ!! うわあああぁぁぁぁ~~~~んっ!!」

 

慌てる一夏を他所に、楯無はまるで子供の様に泣き始める。

 

「何? 何?」

 

「アレって生徒会長じゃ?」

 

「傍に居るのは織斑くんじゃ?」

 

途端に、その泣き声を聞き付けた生徒達が集まって来る。

 

「(!? マズイ!!)すみませんでした、生徒会長!! 俺が悪かったです!! 許して下さい!!」

 

このままでは学園内での自分の立場が悪くなると思い、慌てて楯無に謝る。

 

「ヒッグ………じゃあ、ちょっと生徒会に来てくれる?」

 

「行きます! 行きますから泣き止んで下さい!!」

 

涙目でそう尋ねる楯無に、一夏は反射的にそう答えてしまう。

 

「OK! じゃあ行こうか!!」

 

すると、楯無は一瞬にして泣き止み、一夏に向かって笑顔でそう言った。

 

「…………」

 

その様に呆気に取られた様な表情となる一夏。

 

「ん? 如何したの?」

 

そんな一夏を見て、楯無は春風の様に微笑みながらしれっとそう言い放つ。

 

(や、やられた!! クソッ! まさかウソ泣きに掛かるとは!!)

 

内心で迂闊であった自分を責める一夏だったが………

 

良く見れば、楯無の目が紅くなっていた。

 

(………あ、マジ泣きだったんだ)

 

如何やら、生徒会長殿は切り替えが早い様である。

 

「それじゃあ、行こうか?」

 

そう言って、楯無は歩き出す。

 

(! どちらにせよ、マズイ! このままじゃ、終始この人のペースだ!!)

 

泣かれた手前、素直に付いて行こうとは思う一夏だが、このまま楯無にペースを握られては碌な事にならないと思い、必死に脳をフル回転させる。

 

「あ、あの! 生徒会には行きますけど、1つ条件があります!!」

 

「ん? 何かな?」

 

「えっと………」

 

そして、一夏が思いついた案とは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

お互いにメンチを斬り合ったまま歩いている神谷と楯無。

 

彼是ずっとこのままであり、雰囲気は険悪そのものである。

 

(………何故こんな事に………って言うか、俺のせいなんだけど………)

 

その後ろを歩いていた一夏が、頭を抱えて自己嫌悪している。

 

あの後………

 

生徒会に顔を出す条件として、一夏は神谷も同行させる事を求めた。

 

楯無は渋面をしたが、一夏を引っ張る方が重要だったのか、渋々ながらも承諾。

 

そして、現在に至るのである。

 

「「…………」」

 

2人は顔を合わしてからずっとメンチ切りを続けており、互いに一言も言葉を交わしていない。

 

(く、空気が重いってレベルじゃないぞ、コレは………)

 

この時初めて………

 

一夏は千冬の思いを僅かに理解した。

 

「あ、あの! 此処じゃないんですか!? 生徒会室!?」

 

とそこで、生徒会室の前を通りかかったのに、気づかずそのまま歩き続けそうになっていた2人に、一夏がそう言う。

 

「………そうね。どうぞ、一夏くん………ついでに天上 神谷くんも」

 

「おう………邪魔するぜ」

 

露骨に嫌な顔をしてそう言う楯無に、神谷も露骨に敵対心を見せながら、生徒会室に入って行く。

 

「お帰りなさい、生徒会………長………」

 

帰って来た楯無を、メガネを掛けて髪を三つ編みにしていると言う、一昔前の漫画に出て来る委員長タイプの生徒が迎えたが、神谷と険悪な雰囲気である事を見て、閉口する。

 

「わ~~………おりむーとかみやんだ~………」

 

すると、その後ろに居たのほほんが、2人の険悪な雰囲気など気にせず、そう話し掛けて来た。

 

「アレ?」

 

「んだよ? のほほんじゃねえか?」

 

一夏と神谷は、凡そ生徒会と言う仕事には不向きそうなのほほんの姿が在るのを見て、若干首を傾げる。

 

「まあ、そこに掛けなさい。お茶はすぐに出すわ………貴方にもね」

 

「客に茶出すのは当然だろうが………」

 

そう言って来た楯無に、神谷はそう言い返すと、近くに在った椅子を引いて座り、長テーブルの上に足を組んで投げ出し、腕組みをした!!

 

「!!」

 

神谷の態度に若干怒りの様子を滲ませながらも、如何にか平静を装って定位置に座る楯無。

 

(やっぱり、アニキ呼んだのはマズかったかな?)

 

一夏は2人の険悪な雰囲気を見て、益々自分の判断を後悔する。

 

「ど、どうぞ………」

 

そんな楯無と神谷、そして一夏の前に、メガネを掛けた髪を三つ編みの少女が、おっかなびっくりと言う様子で紅茶を置いた。

 

「あ、どうも………」

 

「サンキュ」

 

畏まってお礼を言う一夏とは対照的に、神谷はふてぶてしい態度のまま礼を言う。

 

「い、いえ………」

 

メガネを掛けた髪を三つ編みの少女は、逃げる様に神谷の傍を離れる。

 

「お姉ちゃ~ん。怖がり過ぎだよ~。かみやんは不良だけど、良い人なんだよ~」

 

そんな少女の姿を見て、のほほんがそう言う。

 

「ふ、不良なのに良い人って、微妙に矛盾してない?」

 

「アニキは不良って言うより、ツッパリとか番長タイプだと思うけど………っていうか、お姉ちゃん?」

 

2人の会話にツッコミを入れる一夏だったが、そこでのほほんがメガネを掛けた髪を三つ編みの少女をお姉ちゃんと呼んでいた事に気づく。

 

「あ、ああ、初めまして、織斑 一夏くん。妹が何時もお世話になってるわね。私は『布仏 虚』。本音の姉よ」

 

するとそこで、メガネを掛けた髪を三つ編みの少女………『布仏 虚』がそう自己紹介した。

 

「(のほほんさんの本名って、布仏 本音だったのか)えっ? 姉妹で生徒会に?」

 

内心で微妙に失礼な事を思いながら、一夏はそう疑問を呈する。

 

「むかーしから、更識家のお手伝いさんなんだよー。うちは、代々」

 

「生徒会長は最強でないといけないけど、他のメンバーは定員数になるまで好きに入れて良いの。だから、私は幼馴染の2人をね」

 

すると、のほほんがそう言い、楯無がそう説明して来た。

 

「お嬢様にお仕えするのが私共の仕事ですので」

 

虚が礼儀正しい態度でそう言う。

 

その姿は、まるで秘書かメイド長を思わせる。

 

「さて………じゃあ、話をさせてもらっても良いかな?」

 

一夏と神谷を見据えながら、楯無がそう言って来た。

 

「ハイ………」

 

「早く始めろよ」

 

改まっている一夏とは対照的に、神谷は出された紅茶を飲みながら、ふてぶてしくそう言う。

 

「…………全校集会の時も思わず口走っちゃったけど、一夏くんが部活動に入らない事で色々と苦情が寄せられているの。それで生徒会としては君を何処かに入部させないとマズイ事になっちゃったのよ」

 

その態度に嫌悪感を露にする楯無だが、グッと堪えて話を始める。

 

「そうですか………ですが、申し訳ないんですけど、俺は部活に入る気はありません。まだ自分の特訓で精一杯ですし、女子しかいないこの学園の部活に入るには無理があると思います」

 

一夏は冷静にながらも、自分の意見を主張した。

 

「まあまあ、そう言わずに………だからその代わりに、これから学園祭までの間、私が鍛えてあげるのよ。ISも、生身もね」

 

「別に要りません。コーチは沢山いますから、コレ以上増やす積りはないですし、アニキも居てくれますから」

 

「そういうこった」

 

楯無の提案を、やんわりながらもキッパリと断る一夏に、それを見てニヤリと笑う神谷。

 

「くうっ! でもあなた弱いじゃない!!」

 

「ええ、確かに俺は弱いですよ。だから日々強くなろうとしています。それをいきなり横からしゃしゃり出て来て、強くしてやるなんて、何様の積りですか?」

 

「それは………!?」

 

「大体、貴女アニキに負けてたじゃないですか? アニキより弱い人に教わる事なんて無いと思いますけど」

 

「うぐうっ!?」

 

楯無は言葉に詰まる。

 

やはりこの間、グレンラガンに敗北した姿を見られたのが足を引っ張っている様だ。

 

「…………」

 

そんな楯無の姿を見て、神谷はニヤニヤと笑っている。

 

(………ムカつく!!)

 

「え~っ!? 会長負けちゃったの~?」

 

「そんな!? ホントですか!?」

 

そんな神谷の姿を見て、楯無が内心で腹を立てていると、のほほんと虚が驚きの声を挙げる。

 

「と言う事は、学園規則に則り………天上さんが生徒会長に!?」

 

「うわ~! 面白そ~う!」

 

狼狽している虚とは対照的に、のほほんは楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「ま、負けてないわ! 負けてないもん!!」

 

(もん、って………)

 

「見苦しいぜ。生徒会長さんよぉ。素直に負けを認めたら如何だ?」

 

子供の様な口調になった楯無に呆れる一夏と、勝ち誇った笑みを浮かべてそう言う神谷。

 

「な、なら! 私と勝負よ!!」

 

するとそこで、楯無は一夏を指差してそう言い放つ。

 

「貴方が私に有効打を一撃でも入れられたら、今回の件は全て諦める! でも! 私が勝ったら、今回の件を全て受け入れてもらうわ!!」

 

「………だとよ? 如何する、一夏?」

 

神谷は紅茶を飲みながら、隣の一夏に尋ねる。

 

「良いですよ………喧嘩ならあらゆる事が万事解決するってもんだ」

 

絶対有り得ないが、一夏はそう確信している目でそう言い放った。

 

「後悔しないでよ」

 

「その台詞………リボンでも付けて返してあげますよ」

 

苦々しい顔を浮かべている楯無に、一夏は神谷と同じ様に不敵な笑みを浮かべてそう言う。

 

「何か面白い事になってきたね~」

 

「本音………今日ばかりは貴女の性格が少し羨ましいわ………」

 

ワクワクしているのほほんと対照的に、虚は頭を抱えていた。

 

「オイ、茶菓子ねえのか?」

 

そして、そんな空気など知った事かと言う様に、マイペースに紅茶を啜り、挙句に茶菓子を要求する神谷であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に登場、楯無生徒会長。
しかし、ティトリーとの一件で神谷とは険悪な雰囲気………
そのせいで一夏との件も原作通りに進みません。
遂には喧嘩を売る形になってしまいます。

原作では合気道で対決していましたが、この作品ではISで戦います。
学園最強を相手に一夏は分が悪いですが………
思わぬ手を繰り出すことに?
更に楯無と箒に悲劇が?………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)
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