天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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遂にガルパン最終章第2話公開!

今日見に行きます。

1年半……長かったなぁ。


第29話『良く言ったぜ! 生徒会長さんよぉ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第29話『良く言ったぜ! 生徒会長さんよぉ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神谷や一夏と一緒にIS学園の学園祭を一緒に見て回る予定であった弾が、トラブルで保健室行きとなってしまった。

 

尤も………

 

本人は虚とフラグを立てられた様で御満悦の様子であったが………

 

その後、ネコ耳ご奉仕喫茶から、一夏が居ないと言う苦情が続出しているとの連絡が入る。

 

一夏が居なくなった後、ヘルプで手伝ってくれていた楯無が、生徒会の仕事があると急に立ち去ってしまったらしい。

 

何とも無責任な話である。

 

止むを得ず、一夏は店へと戻り、神谷は再度の客引きに向かう事にしたのだった。

 

 

 

 

 

IS学園・敷地内………

 

「1年1組名物! ネコ耳ご奉仕喫茶だ! 寄って行って損はねえぜ! 今なら特別サービスをしてやらねえ事もねえぞ!!」

 

若干怪しげな宣伝文句を謳いながら、看板を片手に客引きをして回っている神谷。

 

「あ、あの! それって、織斑くんもネコ耳を付けてるんですか!?」

 

と、1人の生徒が、神谷に恐る恐ると言った様子でそう聞いて来る。

 

「いや、一夏は犬耳だぜ」

 

神谷は、そんな生徒の様子を気にする事も無くそう答える。

 

「行きます! すぐ行きます!!」

 

それを聞いた生徒は、そう言うや否や1年1組の教室まで走り出したのであった。

 

「やれやれ、時々アイツのモテっぷりは異常じゃねえかと思うぜ」

 

走って行った生徒を見送りながら、神谷は客引きを続ける。

 

その後も似た様な事を訊いてくる生徒が続出し、その度に走って1年1組の教室を目指して行ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小1時間後………

 

「あ~、疲れたぜ………ちょいと一休みするか」

 

広大なIS学園の敷地内を6周近くした神谷は、額に少し浮かんだ汗を拭うと、休憩所を見つけてそこへ駆け込んだ。

 

「んぐっ………んぐっ………プハーッ!」

 

水飲み場で水を飲むと、ベンチに腰掛ける神谷。

 

「ふわああぁぁぁ~~~~………何だか眠くなってきやがったな………一眠りするか」

 

と、そのままベンチに寝転び、学帽を顔に被せる。

 

「………ZZZZZZzzzzzzz~~~~~~~~」

 

暫くすると、規則正しい寝息が聞こえて来た。

 

すると………

 

神谷が寝ている休憩所の近くの茂みが、ガサガサと音を立てる。

 

「………ニャ」

 

そして、メイド服姿のティトリーが顔を出した。

 

「…………」

 

ティトリーは、そ~っと神谷の傍に近づいてくる。

 

その視線は神谷の胸元………

 

首から下げられているコアドリルに注がれている。

 

(………コレを螺旋王様に届ければ………アタシは処分されずに済む………)

 

そう思いながら、ティトリーはコアドリルへと手を伸ばす。

 

しかし、いざコアドリルを摑もうとした瞬間、手が止まってしまう。

 

「…………」

 

複雑な表情で、ティトリーは神谷を見遣る。

 

(でも………でも、神谷は………)

 

楯無から自分を庇ってくれた神谷の姿が脳裏に甦る。

 

と、そこへ………

 

「神谷~!」

 

「!?」

 

神谷を呼ぶ声が聞こえて、ティトリーは慌てて再び茂みの中へ隠れた。

 

「神谷! 駄目だよ、こんな所で寝てたら!」

 

声の主のネコ耳メイド服姿のシャルは、寝ている神谷の姿を発見すると、身体を揺さぶって起こそうとする。

 

「ん? んん~………ああ、何だ、シャルか………」

 

目を覚ました神谷が、シャルの姿を見てそう呟きながら起き上がる。

 

「もう、駄目だよ。こんな所でサボっちゃ」

 

「ちょいと休憩だよ。お前こそ店は如何したんだよ?」

 

「こっちも休憩。ずっとお客さんラッシュだったからね。1時間ほど休憩して、体勢を立て直すんだって」

 

「そっか………んじゃ、どうせだし、2人で学園祭を見回るか」

 

「うん、良いね! 行こう、行こう!」

 

それを聞くや否や、シャルは神谷の手を取って、やや強引に引っ張り出した。

 

「お、オイ、シャル! 落ち着けって!!」

 

そんなシャルの浮かれ具合に若干苦笑いを浮かべながらも、神谷は連れられて行く。

 

「………ギガンチョ失敗しちゃった」

 

2人の姿が見えなくなった後、茂みから出て来たティトリーがそう呟く。

 

「仕方ない………一夏の方を狙ってみよう」

 

そう言うと、神谷達が向かった方向とは反対の方向に歩き出す。

 

その顔は残念がっている様にも………

 

安堵している様にも見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、学園祭デートへ洒落込み始めた神谷とシャルは………

 

料理部の出し物を見に来ていた。

 

「料理部か………何か美味いもんでも食わしてくれるのか?」

 

「パンフレットによると、日本の伝統料理を作ってるらしいよ。折角だから作れる様になりたいなぁ」

 

「そりゃ良い。やっぱ何だかんだで和食が1番うめぇからな」

 

「そう言えば、神谷世界中を旅してたって言ってたよね。やっぱり、彼方此方の料理食べたりしてたの?」

 

「まあな。どっちかってえと、サバイバルして野草や野生動物を仕留めて食ってた事の方が多かったけどな」

 

「そ、そうなんだ………」

 

神谷のワイルドな旅の様子を想像し、シャルは思わず苦笑いを浮かべる。

 

そんな事を言い合いながら、2人は料理部が使っている調理室へと入って行った。

 

「あ! 1度は男子だったと噂のデュノアくんと………ゲッ!? 天上 神谷!?」

 

料理部部長がシャルを見て笑みを浮かべた後、神谷の姿を見て驚愕する。

 

「何ですって!? 天上 神谷!?」

 

「い、命ばかりはお助けをぉ!!」

 

「お父さん、お母さん………先立つ不孝をお許し下さい………」

 

他の部員達も、次々に慌てふためき出す。

 

「ハハハ! モテる男は辛いぜ!」

 

「この状況見て良くそんな事が言えるね、神谷」

 

呵々大笑する神谷と、そんな神谷に呆れた様な声でツッコミを入れるシャル。

 

「あ、あの! これ良かったらどうぞ!!」

 

すると、料理部部長は、まるで許しを請うかの様に販売していた惣菜を差し出して来た。

 

「おっ! くれんのか!? あんがとよ!!」

 

「あの、後でお金払いますね」

 

神谷はそれに遠慮無く手を付け始め、シャルがフォローを入れる。

 

「ガツガツ、モグモグ………カーッ! うめぇな、オイ!」

 

肉じゃが、おでん、煮物に焼き物、和え物が乗っている大皿が、凄い勢いで空になって行く。

 

「「「「コレ何て手品!?」」」」

 

その光景を見た料理部の部員達が、思わずそんなツッコミを入れる。

 

「あ、ホント、美味しい………」

 

その隣でちゃっかりと自分も手を付けていたシャルが、そう感想を漏らす。

 

「! デュノアくん! 良かったらウチに入らない!? もっと色々と美味しい料理の作り方とか教えてあげるよ!!」

 

と、そんなシャルの姿を見た料理部部長が、隙を見逃さずと言った具合に勧誘してくる。

 

「料理部かぁ………ね、ねえ、神谷? 神谷は僕の料理が美味しいと嬉しい?」

 

隣で相変わらず次々に惣菜を平らげている神谷に、シャルはそう尋ねる。

 

「ああ? 当たり前だろ、そんなもん!」

 

神谷は手は止めずに惣菜を頬張りながらそう返事を返す。

 

「そ、そう。そうなんだ。そっかぁ………へへへ」

 

それを聞いて、シャルはニコニコとし出す。

 

((((………リア充、爆発しろ))))

 

そしてそんな2人の様子を見て、内心でそう邪念を飛ばす料理部の部員達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、すっかり惣菜を平らげた(主に神谷が)2人は、そろそろ休憩時間も終わりと言う事で、教室へと戻る。

 

しかし、大盛況だった筈の1年1組は、すっかり客が居なくなって静まり返っていた。

 

見れば、接客を担当していた一夏達の姿が居なくなっている。

 

「何だぁ? 豪く寂れちまってるじゃねえか?」

 

「何があったの?」

 

神谷とシャルが、残っていた生徒にそう尋ねる。

 

「ああ、デュノアさん………それがね………」

 

「また生徒会長が突然やって来て、織斑くん達を掻っ攫って行っちゃったの………」

 

「生徒会の演劇に出すんだって………」

 

残っていた生徒が、一夏を持って行かれたショックからか、意気消沈した様子でそう答える。

 

「んだよ、またあの生徒会長か?」

 

「生徒会の演劇って………何処でやってるの?」

 

神谷が呆れた声を挙げ、シャルが続けてそう尋ねる。

 

「確か………第4アリーナだって言ってたよ」

 

「ったく、仕方ねえ………取り返しに行くか」

 

それを聞いた神谷は、楯無から一夏を取り返そうと、第4アリーナへ向かう。

 

「僕も行くね、神谷」

 

シャルもそんな神谷に付いて行く。

 

「「「「「頑張って~!!」」」」」

 

一夏を取り返してくれるという事から、普段神谷を敬遠している生徒までもが、背中に向かってそう声を掛けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

第4アリーナでは………

 

「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!? 助けてくれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「待てええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」」」」

 

アリーナ内一杯に造られたセットの上を、王子様の恰好をした一夏が、ドレス姿の箒、セシリア、鈴、ラウラから必死に逃げ回っていた。

 

何故こんな事になっているかと言うと、話は少し遡る………

 

 

 

 

 

楯無によって、生徒会の演劇へ強制参加する事になってしまった一夏。

 

演目はシンデレラであり、一夏は王子様役を任される。

 

そこまでは問題無い………

 

原因はこの後である。

 

「昔々、あるところに、ジンデレラと言う少女が居ました」

 

ナレーションを務める楯無がそう言い、劇が開始されたのだが………

 

その直後!!

 

「否、それは最早名前では無い。幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵を薙ぎ倒し、灰燼を纏う事さえ厭わぬ地上最強の兵士達。彼女等を呼ぶに相応しい称号………それが『灰被り姫(シンデレラ)』!!」

 

等と言う、とても一般人が知るシンデレラとは思えぬナレーションを楯無は開始。

 

「今宵もまた、血に飢えたシンデレラ達の夜が始まる。王子の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女達が舞い踊る!」

 

最後にそう言った瞬間………

 

舞台上に現れた一夏は、飛刀を構えた鈴、スナイパーライフルを携えたセシリア、タクティカル・ナイフを両手に握ったラウラ、そして日本刀を構えた箒という、物騒極まりないシンデレラ達に追い回される事になった。

 

普段から何かと一夏には攻撃的な彼女達だが、この時は更に殺気立っている。

 

それもその筈………

 

実は劇が始まる前に楯無より、生徒会長権限で………

 

『一夏が被っている王冠をゲットした者に、一夏との同室同居の権利を与える』

 

という、彼女達からしてみれば、正に夢の提案とも呼ぶべき賞品が提示されたのだ。

 

勿論、一夏本人には何も知らされていない。

 

箒達は互いに鎬を削りながら、一夏の王冠の奪取を狙う。

 

だが、この王冠………

 

頭から離れると電流が流れる仕組みになっており………

 

一度箒達の狙いに気づき、一夏が王冠を捨てて逃げようとしたところ、電流で黒焦げになりかけるという事態が起こっている。

 

止むを得ず、一夏は王冠を被ったまま、事情を知らない殺気立つ4人のシンデレラから逃げ回るしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「何故僕がこんな目にあうのママン! 何も悪い事してないのに、皆が僕を苛めるよママン!!」

 

ショックの余り、一夏はどこぞの人間台風(ヒューマノイド・タイフーン)のガンマンの様な台詞を言い始める。

 

すると、そんな一夏に、更に追い打ちを掛ける様な事態が発生する………

 

「さあ! 只今からフリーエントリー組の参加です! 王子様の王冠目指して頑張って下さい!!」

 

楯無の、そう言うアナウンスと共に………

 

「織斑くん! 大人しくしなさい!!」

 

「私と幸せになりましょう! 王子様!!」

 

「そいつを………寄こせえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

鬼気迫る様な表情を浮かべたシンデレラ達が、一斉にステージ上に現れ、一夏に群がった!!

 

「や、ヤバい!? コイツはヤバいぞ!?」

 

箒達と挟み撃ちにされ、一夏が慌てふためく。

 

「アハハハハハッ! 盛り上がってるねぇ、一夏くん」

 

するとそこで、陽気な笑い声を響かせながら、ナレーターをしていた筈の楯無が、シンデレラの恰好で一夏の傍に現れた。

 

「!? 楯無さん!? 止めて下さい!! 幾ら何でも、こんなの無茶苦茶です!!」

 

「無茶苦茶しても良いじゃない。生徒会長なんだから」

 

一夏の言葉に、楯無は何故かみ〇お風に返す。

 

「ああもう! この人は!!」

 

「ハハハハハッ! さあさあ、逃げないと駄目だよ。一夏くん」

 

と、楯無が笑いながらそう言った瞬間………

 

突如、アリーナ内に爆発音が響き渡った!!

 

「「「「「「「「「「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」」」」」」」」」」

 

「!? 何ごと!?」

 

突然響いて来た爆発音に、生徒達は悲鳴を挙げ、楯無も慌てる。

 

[更識! 聞こえるか!!]

 

するとそこへ、楯無の元へ千冬からの通信が送られてきた。

 

「織斑先生! 何があったんですか!?」

 

[ロージェノム軍の襲撃だ!! 海上と陸地に出現した戦艦タイプの巨大ガンメンから、次々に獣人とガンメン達が射出されて来ている!! 奇襲攻撃で教師部隊の発進が遅れている!! すぐにそこに居る生徒を地下シェルターに避難させるんだ!!]

 

状況の説明を求める楯無に、千冬は早口でそう説明する!!

 

「クッ! 何て事!!………皆! すぐに地下シェルターに避難を!!」

 

と、楯無がステージ上と観客席に居る生徒に向かってそう叫んだ瞬間………

 

「人間は皆殺しだぁ!!」

 

「逆らう奴は殺す! 逃げる奴も殺す!!」

 

アリーナの客席出入り口、更にはISの射出用カタパルトを経由して、アリーナ内にも次々に獣人が姿を現し始めた!!

 

「「「「「「「「「「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」」」」」」」」」」

 

忽ち生徒達はパニック状態となる。

 

「殺せ殺せぇ!!」

 

「螺旋王様の命令だ! 1人も生かして帰すなぁ!!」

 

そんな生徒達は、獣人の恰好の獲物であった。

 

棍棒や石斧と言った原始的な武器や、マシンガンやロケットランチャーと言った近代兵器までバラエティ豊かに装備した獣人達が、生徒へ襲い掛かる。

 

「アイツ等!!」

 

「そうはさせん!!」

 

一夏と箒達は、すぐに自分のISを展開しようとする。

 

するとそこで………

 

「止めなさい! この汚らわしい獣人共!!」

 

アリーナ内に設置されたスピーカーを通して、楯無のそう言う声が響き渡った。

 

見れば、楯無は何時の間にか片手にマイクを握っており、それを通してアリーナ全体に自分の声を響かせたらしい。

 

「何だぁ? 人間のクセに生意気な!」

 

「貴様から先に始末してやる!!」

 

注目を集めてしまった楯無に、獣人達が殺到する。

 

「楯無さん!!」

 

「「「「!?」」」」

 

「折角の学園祭を邪魔して! 何様の積り!! さっさと消えなさい!! このケダモノ共!!」

 

慌てる一夏達だったが、当の楯無は獣人達に群がられても凛とした態度を崩さず、そう言い放つ。

 

「な、何だ、コイツ!?」

 

「お、俺達の事が怖くないのか!?」

 

全くビビる様子を見せない楯無に、獣人達の間に戸惑いの色が浮かぶ。

 

「貴方達! 私を誰だと思っているの!?」

 

そんな獣人達に向かって、楯無は啖呵を切る様にそう叫ぶ。

 

「私は更識 楯無!! 更識家17代目当主であるIS学園最強の生徒会長!! この学園の生徒は皆、私の大切な人!! それを傷付けさせはしないわ!!」

 

IS学園生徒会長としての彼女のプライドが、獣人への恐怖を大きく上回っているのだ!!

 

「良く言ったぜ! 生徒会長さんよぉ!!」

 

するとそこへ、楯無とは別の勇ましい声が聞こえて来る。

 

「!? この声は!?」

 

「!? 天上 神谷!?」

 

一夏と楯無が驚きを露わにした瞬間………

 

アリーナ内に造られたセットに仕込まれていたスモーク装置が作動し、アリーナ一体が煙幕に覆われた。

 

「キャアッ!?」

 

「な、何だぁっ!?」

 

突然噴き上がった煙に、生徒達も獣人達も驚いて動きが止まる。

 

「えほっ! えほっ! 何だ、コレは!?」

 

「楯無さんは!? 楯無さんは無事か!?」

 

箒が噎せている中、一夏がそう叫ぶと、徐々に煙幕が晴れて行く………

 

そこに広がっていたのは………

 

「やいやいやいやい! 獣人共!! これ以上の悪行! 天が見逃しても、この俺が許しちゃおけねえ!!」

 

神谷が、楯無を守る様に獣人達の前に立ちはだかり、番長の恰好から何時もの赤マント姿となり、長刀を天に向かって掲げる様に構えている光景だった。

 

「「「「「えええぇぇぇぇ~~~~~っ!?」」」」」

 

思わぬ展開に、一夏達は口を大きく開けて驚きを露わにする。

 

「あ、貴方………」

 

「天に煌めく星々に! 誓った夢こそ違えども! 同じ星見るその瞳………あ! 守って見せよう、男意地! 天下に轟くグレン団の神谷様たぁ、この俺の事よ!!」

 

驚いている楯無を尻目に、神谷は口上を述べる!

 

「シャル! のほほん! もっと俺にスポットを集めろ!!」

 

「ほ~い! でゅっちー、そっちの照明、もうちょっと右ね」

 

「あ、うん………何でこんな事やってるんだろう?」

 

神谷がそう言うと、ステージの上に居たのほほんとシャルが、神谷に照明を集める。

 

「やいやい、獣人共! 刀の錆になりたい奴から、掛かって来い!!」

 

「ぬううっ!? 奴が噂のグレンラガンか!?」

 

「ええい! ビビるな!! 数なら俺達が上だ!!」

 

神谷の啖呵に、獣人達は怯む様な様子を見せるが、数の有利もあって踏み留まる。

 

だが………

 

「そうはさせるか! 白式!!」

 

「紅椿!!」

 

「ブルー・ティアーズ!!」

 

「甲龍!!」

 

「シュヴァルツェア・レーゲン!!」

 

そこで一夏達が、其々に自分のISを起動。

 

光に包まれたかと思うと、ISを装着した状態で獣人達の前に立ちはだかる。

 

「こ、コイツ等!? 専用機持ちか!?」

 

「マズイ! 本当にマズイぞ! IS専用機の強さは一騎当千だ!!」

 

「ええい! 一旦退くぞ!!」

 

すると獣人達は忽ち分が悪くなったと感じ、アリーナから撤退を始めた。

 

「へっ! 口程にもねえ奴等だぜ!」

 

「貴方………如何して? 私の事を嫌ってたんじゃないの?」

 

それを見た神谷がフッと笑い、楯無がそう言う。

 

先日は獣人の少女のティトリーを自分から庇い、そして今はその自分を獣人から庇っている。

 

神谷の行動理念がまるで理解出来ず、困惑する。

 

「別に嫌ってなんざいねえさ」

 

「えっ?」

 

そこで、神谷から齎された意外な言葉に、楯無は目を丸くした。

 

「オメェも俺と同じだろ。俺はグレン団のリーダーだ。団員達の命は死んでも守ってみせる。お前にとっては、この学校の生徒達全員がそうなんだろ! 楯無!!」

 

そこで神谷は初めて、楯無の名前を口にする。

 

「天上………神谷」

 

楯無もそう言われて、フッと笑みを浮かべた。

 

「如何やら貴方………私が思っている以上に大馬鹿で………大きな男だったみたいね」

 

「へっ! 馬鹿は余計だっての」

 

「神谷!」

 

とそこで、照明を担当していたシャルも、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを装着した状態で降りて来る。

 

「良し、お前等! 獣人共を学園から追い出すぞ!!」

 

「「「「「「おおぉーーーーーっ!!」」」」」」

 

神谷の声に、威勢の良い返事を返すと、一夏達は学園の彼方此方へと散らばって行く。

 

「俺も行くぜ!!」

 

神谷もグレンラガンの姿となり、グレンウイングを展開すると、大空に舞い上がった。

 

「私も負けてらんないね………本音!」

 

「ハイハ~イ」

 

楯無が呼び掛けると、ロープを使って降りて来たのほほんが返事をする。

 

「貴女はこのアリーナに居る生徒を地下シェルターに避難させて。私は、獣人達を片付けに行くから!」

 

そう言うと、楯無はミステリアス・レイディを展開する。

 

「りょ~か~い! 会長~! 気を付けてね~~!」

 

「ええ」

 

余っている袖をブンブンと振るのほほんに、楯無は笑みを返すと、神谷達と同じ様に学園中に散らばっている獣人達の排除に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・西方面………

 

森林地帯………

 

「セリャアアッ!!」

 

気合の掛け声と共に袈裟懸けに振るった雪片弐型で、ガンメン・メズーを斬り裂く一夏。

 

「獣人に栄光あれえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

斬り裂かれたメズーは、そう断末魔を挙げると爆発・四散する。

 

「ハア………ハア………大分倒したな………」

 

若干荒くなった呼吸を整えて、一夏はそう言う。

 

見れば、周りには彼が倒したと思われるガンメンの残骸が、無数に転がっていた。

 

「クソッ! またエネルギーが………パワーアップしたけど、白式(コイツ)は相変わらず燃費が悪いからな………」

 

既に残り少なくなり始めているエネルギーを見て、一夏は愚痴る様にそう呟く。

 

「愚痴っててもしょうがないか………次の場所へ………」

 

「ちょっと待って下さい」

 

と、次の場所へ向かおうとした一夏に、声を掛ける人物が居た。

 

「えっ!?」

 

一夏が驚きながら振り返ると、そこには………

 

巻紙 礼子の姿が在った。

 

「!? 巻紙さん!?」

 

意外な人物の登場に、一夏は驚きを露わにする。

 

「危ないですよ! 今この学園はロージェノム軍の襲撃されてるんです! こんな所で何やってるんですか!?」

 

一夏は慌てながら、礼子を避難させようとする。

 

「ええ………これを機会に、白式を頂こうと思いまして」

 

「えっ?………!?」

 

礼子が言った言葉の意味が分からず困惑する一夏だったが、続いて発せられた殺気を感じて、慌てて飛び退く!!

 

すると、先程まで一夏が居た場所の地面が抉れた!!

 

「チッ! ガキのクセに良い感してるじゃねえか!!」

 

礼子はそれを見て、蛇を思わせる切れ眼を、邪悪に歪める。

 

何時の間にかその姿はISを纏ったものとなっており、背中から蜘蛛の様な8つの装甲脚が生えていた。

 

「お前! 何者だ!! ロージェノム軍か!?」

 

雪片弐型を油断無く両手で構え、一夏は礼子にそう言う。

 

「ロージェノム!? あんなクソ生意気な連中と一緒にすんじゃねえ!! 私は亡国企業(ファントム・タスク)のオータム様だ!!」

 

ロージェノムの名を聞いた礼子改め、オータムは逆ギレした様な様子を見せて、一夏に向かってそう言い放った。

 

「!? 亡国企業!? そんな馬鹿な!? 亡国企業はロージェノム軍に乗っ取られた筈じゃ!?」

 

相手が亡国企業であると聞いて、一夏は驚く。

 

「うるせぇ! あんなケダモノ野郎共に乗っ取られたままで終わる亡国企業だと思ったのか!? 今一度同志と戦力を集めて、奴等に復讐を果たす!!」

 

「要するに残党って事か………」

 

「うるせぇっ! ガキが生意気ヌカすんじゃねえっ!!」

 

オータムはそう言うと、自分が装着しているIS………『アラクネ』の背中に装着されている8つの装甲脚の砲門から、実弾射撃を見舞って来た!!

 

「チッ!!」

 

一夏は上昇し弾丸の雨を躱す。

 

「逃がすかぁ!!」

 

しかし、オータムは手からエネルギー・ワイヤーを伸ばして来る。

 

エネルギー・ワイヤーは、上昇していた一夏の右足に巻き付く。

 

「!? しまっ………」

 

「オラアッ!!」

 

一夏が雪片弐型で切断しようとするよりも早く、オータムが腕を振り下ろし、一夏を地面に叩き付ける!!

 

「ガハッ!?」

 

肺の空気が一気に吐き出され、一夏は咳き込む。

 

「ガホッ! ガホッ! クソッ!!」

 

「シェエエエエエエェェェェェェェーーーーーーーーッ!!」

 

倒れたままだった一夏に、オータムは両手にカタールを握って跳躍し、奇声と共に急降下して、一夏を串刺しにしようとする。

 

「!!」

 

一夏は咄嗟に、雪羅から荷電粒子砲を放つ!!

 

「ぐうっ!?」

 

あまりダメージを与えられなかったが、落下速度を一時止めた事で、一夏は離脱に成功する。

 

「ムンッ!!」

 

すると一夏は、近くにあった大木を根本から切断。

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

それを摑むと、オータム目掛けて投げつける。

 

「効くかぁ! そんなもん!!」

 

飛んで来た大木を、装甲脚で破壊するオータム。

 

「クソッ!(あの装甲脚が厄介だな………慎重に行かないと………)」

 

それを見て、再び雪片弐型を構え直すと、オータムを見据える。

 

「へえ、意外と臆病だな。あん時は結構抵抗してくれたのによぉ」

 

「? あの時?」

 

オータムがふと言った言葉に、一夏は反応する。

 

「オイオイ、忘れちまったのか? 第2回モンド・グロッソ決勝戦の時の事だよ!」

 

「!?」

 

それを聞いた一夏の心に、激情が湧き上がってくる。

 

「まさか、お前………」

 

「そうさ! あん時の作戦の指揮を執ってたのは私さ!! あの忌々しいクソガキさせ来なければ、ロージェノムに足元を掬われる事も無かったってのによぉ!!」

 

「!! テメエエエエエェェェェェェーーーーーーーッ!!」

 

それを聞いた途端、一夏は先程までの慎重さを捨てて、真正面からオータムに斬り掛かって行った!!

 

「ああん!? テメェ、馬鹿か!? こんな安い挑発に乗りやがってよぉ!!」

 

突っ込んで来た一夏にそう言い、オータムは再びエネルギー・ワイヤーを放つ。

 

エネルギー・ワイヤーは、一夏の眼前で網状となり、一夏を雁字搦めにした!!

 

「し、しまった!?」

 

「ホラよ、喰らえぇっ!!」

 

その瞬間、オータムが4つの足を持つ謎の装置を投げ付ける。

 

謎の装置は一夏に張り付くと、電流に似たエネルギーを放った!!

 

「ぐあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

悲鳴を挙げる一夏。

 

すると、その身体が光に包まれ………

 

白式が解除された、ISスーツだけの状態となる。

 

「ガハッ!?………し、白式が!?………」

 

一夏は、先程の電流のダメージが大きかったのか、そのまま俯せに倒れて、苦しそうにしながらそう呟く。

 

「お前の探し物は此処に有るぜ!」

 

と、そう言うオータムの手にはひし形をしたクリスタル………白式のコアが在った。

 

「な、何で………」

 

「さっきの装置はなぁ! 『剥離剤(リムーバー)』っつうんだよ! ISを解除出来るって秘密兵器だぜ! 生きている内に見れて良かったなぁ!!」

 

辛うじて動く首を動かしてそれを見遣り驚く一夏に、オータムは得意気にそう言い放ち、トドメを刺そうと装甲脚の1本を振り被る。

 

「クッ………ソォ………」

 

一夏の口から悔しそうな声が漏れた瞬間、装甲脚が振り下ろされる!

 

しかし、続いて聞こえて来たのは………

 

金属が柔らかい肉を貫く音では無く………

 

金属同士がぶつかり合った様な甲高い音だった。

 

そして………

 

一夏を貫こうとしていた装甲脚の先端が宙に舞い、やや離れた地面に突き刺さる。

 

「!? 何っ!?」

 

「………?」

 

オータムも一夏も、何が起こったのか理解出来ない。

 

すると………

 

再び甲高い音が響いて、別の装甲脚が、今度は根元から切断された!!

 

「!? 何だってんだ!?」

 

そこでオータムは、装甲脚を破壊したと思われる物を発見する!

 

それは、緑色の小さな円盤に、黄色と黒の突起がくの字状に付けられているブーメランだった!

 

そのブーメランが、まるで意思が有るかの様に飛び、オータムと倒れている一夏の間に割って入って来たかと思うと、オータム側を向く様にして空中で回転。

 

やがてその回転が止まったかと思うと、何も無い空間に人間のものらしき目が浮かび上がった!!

 

ブーメランは、その目の上にあり、まるで角の様になっている。

 

そして、そこに………

 

「この雑魚めが………」

 

カーキ色の軍用風のトレンチコートを纏い、黒・赤・金のドイツ国旗色の覆面をした少女が現れた!!

 

「!?」

 

「テメェ!? 何モンだぁ!?」

 

一夏が驚き、オータムがそう問い質す。

 

「我が名は………『シュバルツ・シュヴェスター』」

 

覆面の少女………『シュバルツ・シュヴェスター』は、静かにそう名乗るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

今回は怒涛の展開の連続です。

学園祭デートを楽しむ神谷とシャルの裏で葛藤しながら暗躍するティトリー。

一夏を演劇に参加させるが、ロージェノム軍の襲撃を受ける楯無。

そのピンチに颯爽と登場する神谷。

そして遂に正体を見せたオータムと、謎の覆面少女。


神谷が楯無の前に現れるシーンは、第2次スーパーロボット大戦Z破界編で、シェリルのコンサートにカミナが乱入するシーンへのオマージュです。
あのシーンは未だによく覚えています。

そして多分今回の最大の驚きポイント………
ネオドイツのゲルマン忍者の登場。
恐らく皆さん予想はついているでしょうが、正体は彼女です。
この作品で彼女はこういうポジションになります。
活躍をお楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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