天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第3話『へっ………弱い犬ほどよく吠えるとは言ったもんだぜ』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第3話『へっ………弱い犬ほどよく吠えるとは言ったもんだぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???………

 

その場所には、まるで螺旋を描く様に高くなっている台座があり、その上に設置された玉座の肘掛けに、肘を衝いて頬杖をして座って居る巨大な体躯の男が座って居た。

 

ただ座って居るだけだと言うのに、その身体から発せられている迫力は凄まじく、並みの人間であれば彼を目にした瞬間に気絶してしまうだろう。

 

そして、その螺旋を描いている台座の下には、4人の獣人が片膝を衝いて畏まっていた。

 

「御報告致します………IS学園に送った獣人達がやられました」

 

その中の1人………ゴリラ型の獣人『チミルフ』が、玉座の男に向かってそう報告した。

 

「…………」

 

チミルフの報告を受けても、玉座の男は無表情のままであり、何の反応も示さなかった。

 

「ほほう? 奴等には確か、ガンメンも与えて置いた筈。それで失敗したとは………ブリュンヒルデが出て来たか」

 

すると、玉座の男に代わる様に、アルマジロの獣人『グアーム』がそう言う。

 

「いや………それが妙な事になっておる………奴等のガンメンから送られてきた最後の映像を再生するぞ」

 

チミルフがそう言うと、空中にモニターが展開し、映像が映し出される。

 

[必殺! グレンラガン・スーパー・アッパアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!]

 

そこには、ガンメン・ゴズーがトドメを刺される瞬間に見たもの………

 

グレンラガンの姿が映し出されていた。

 

「!? コレは!?」

 

「まさか!? グレンラガン!?」

 

グレンラガンの姿を見た、ほぼ若い人間の女性そのもので、帯と肩まで露出した着物を着用しており、サソリの様な尻尾を持つ獣人『アディーネ』と………

 

孔雀の様な派手な羽ととさかを持つ獣人『シトマンドラ』が驚きの声を挙げる。

 

「ほう………」

 

そこで初めて、玉座の男が反応を示した。

 

グレンラガンの姿を見てニヤリと笑い、感心したかの様な声を漏らした。

 

「その通り………そして装着者は恐らく………天上博士の息子かと」

 

チミルフが、更にそう報告を続ける。

 

「オノレェ、天上博士め………」

 

「我々の下から逃げ出し、我々の計画を散々邪魔しただけでは飽き足らず、グレンラガンを自分の息子に託すとは………忌々しい奴」

 

アディーネとシトマンドラが、苦々しげにそう言う。

 

「フッフッフッフッ………」

 

と、そこで玉座の男が笑い声を漏らした。

 

「? 螺旋王様?」

 

「「「??」」」

 

突然笑い声を挙げた玉座の男に、4人の獣人達………螺旋四天王は首を傾げる。

 

「面白い………天上………貴様の息子が何処まで出来るか………見せてもらおうか?」

 

モニターに映るグレンラガンの姿を見ながら、玉座の男………『螺旋王 ロージェノム』は、不敵に笑ってそう言い放った。

 

「どれ………先ずは小手調べと行こうか………IS学園に新たなガンメンを送り込め。序に織斑 一夏なる小僧の情報も取って来い」

 

「「「「ハッ! 畏まりました! 螺旋王様!!」」」」

 

ロージェノムがそう言うと、螺旋四天王は畏まった姿勢を取る。

 

「失礼致します、螺旋王様、四天王様」

 

するとそこで………

 

その場に、ネコ科の様な鋭い目付きをし、鮫のような歯と異形な手をし、右眼を隠すようにした金髪が特徴的で、人間に近い姿をした獣人が姿を見せた。

 

「畏れながらその任………このヴィラルに引き受けさせて頂けないでしょうか?」

 

ロージェノムと螺旋四天王に畏まりながら、獣人………『ヴィラル』はそう申し上げる。

 

「ヴィラル、貴様! 我等に意見する気か!!」

 

シトマンドラが、ヴィラルを叱りつける。

 

「いえ、その様な積りは………私はただ、そのグレンラガンなるものと戦ってみたいと思っただけです」

 

「フン………お前らしいな、ヴィラル」

 

そんなヴィラルの態度に、呆れる様な言葉を漏らすグアーム。

 

「螺旋王様、宜しいですか?」

 

と、チミフルがロージェノムに向かってそう尋ねる。

 

「好きにしろ………」

 

ロージェノムは無表情のままそう答える。

 

「ありがたき幸せ………アディーネ様。『ダイガンカイ』をお借り致します」

 

「構わないよ………ただし! 傷つけるんじゃないよ」

 

「御意!」

 

アディーネにそう言うと、ヴィラルは一瞬で姿を消す。

 

「グレンラガン………我が野望………止められるものならば止めてみるが良い」

 

ロージェノムはそう言い、再び不敵に笑うのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

神谷がグレンラガンとなり、ガンメン達を倒した日の夜………

 

IS学園・研究室………

 

「如何だ? 山田くん?」

 

「ハイ………ISと似通ったところはありますが………やっぱりまるで別物です」

 

「そうか………」

 

そう言って視線を移す千冬。

 

その視線の先には、スキャンやら何やらに掛けられているグレンラガンの姿が在った。

 

 

 

 

 

あの後………

 

騒ぎを聞きつけてやって来た野次馬やマスコミ、政府関係者からグレンラガンをなんとか隠し通した千冬。

 

現在、世界の軍事バランスはISの存在によって大きく崩されており………

 

もしそこへ………

 

IS並みの性能を持つ新たな兵器が現れたとなれば………

 

各国は挙ってそのデータを入手したがるだろう………

 

そう考えた千冬は、グレンラガンの存在を隠し、独自に調査を行った。

 

なお、学園を襲撃した獣人、そしてガンメンについても各国に問い合わせたが、どの国も関与を否定していた。

 

学園側としては更なる追求をしたかったが、獣人の死体は謎の蒸発で無くなっており、ガンメンは自爆装置で完全に吹き飛ばされており、確たる証拠が無かった為それ以上は追及できなかった。

 

 

 

 

 

(コレだけのマシンを造れる人物と言えば………やはり………)

 

と、千冬がそう思案していた時………

 

「ふわあああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~………」

 

佇んでいたグレンラガンが、大きな欠伸をすると共に、伸びを行った。

 

「オイ千冬。もういい加減にしてくれよ。退屈でしょうがねえぜ」

 

そして、神谷の声で話し出すグレンラガン。

 

「ああ、そうだな………もう良いぞ、神谷」

 

「アイヨッ」

 

千冬がそう言うと、グレンラガンが緑色の光に包まれ、神谷の姿となった。

 

最初は待機状態の小さなドリル………『コアドリル』の状態で調べようとした千冬達だったが………

 

どのような解析に掛けても、返って来る答えが『解析不能』であった為、起動させて調べようとしたのだが………

 

如何いうワケか、グレンラガンは神谷にしか起動させる事が出来なかったのだ。

 

仕方なく、神谷にグレンラガンを装着してもらい、その状態で調べを進めていたのである。

 

「神谷………お前はそれを何処で手に入れたんだ?」

 

神谷の胸元に光るコアドリルを見ながら、そう質問をぶつける千冬。

 

「コイツは………親父から貰ったのさ」

 

神谷はコアドリルを握りながらそう答える。

 

「!? 親父!? 会ったのか!? 父親に!? 天上博士に!?」

 

その答えに、千冬は驚きを示す。

 

「天上博士って………! あの篠ノ之 束に並ぶ天才科学者と言われていた、あの天上博士ですか!?」

 

それを聞いていた真耶も、驚きの声を挙げる。

 

「それで、今何処に居るんだ?」

 

「………死んだよ」

 

「「………えっ?」」

 

「親父は死んだ………コイツを俺に託してな………」

 

神谷は怒りの形相で、コアドリルを握り直した。

 

「………如何言う事なんだ?」

 

「分からねえ………あの日………俺は親父が生きているかもしれないと言う話を聞いて………親父を探す旅に出た………世界中彼方此方を回って親父の痕跡を探した………」

 

(一夏が誘拐された時か………)

 

「そしてやっと見つけたと思った時には………親父は何者かに襲われ、虫の息だった」

 

語っている神谷の拳が、キツく握り締められる。

 

「そして、最後の力を振り絞ってこのコアドリルを俺に託し、日本………IS学園に行けと言い残した」

 

「IS学園に? 何故だ?」

 

「さあな………ただ………自分の償いに俺を巻き込んじまうのが心残りだ………最期に親父はそう言っていた」

 

「償いだと………」

 

千冬は表情を険しくする。

 

「そして、親父の言葉に従ってこの学園来てみりゃ………あのケダモノ野郎共と出くわしたワケだ」

 

「偶然………とは考え難いな」

 

「ああ………多分、親父がコイツを造ったのは………アイツ等と戦う為だ。俺はそう思う」

 

再びコアドリルを見ながら、神谷はそう言った。

 

「そうか、分かった………ところで、神谷。今後のお前の処遇だが………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

1年1組の教室にて………

 

「え~………皆さんに編入生を紹介します」

 

真耶が、若干言葉に詰まりながらそう言う。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

生徒達も、言葉を失っていた。

 

「「…………」」

 

箒と一夏も、驚きを露わにしており、特に一夏など目が点になっている。

 

それもその筈………

 

真耶が紹介しようとしていた編入生とは………

 

神谷の事だった。

 

IS学園の特注した男子用制服に身を包んでいる神谷だったが………

 

着ているのはズボンと上着だけで、その上着の前は全開に開かれており、晒を巻いているだけの上半身が露出していた。

 

しかも、その制服の上からトレードマークの1つである紅いマントを羽織っていた。

 

「えっと………それじゃあ、自己紹介を………」

 

「おうおうおうおう! テメェ等! 耳の穴かっぽじって、よ~く聞きやがれ!!」

 

と、真耶が神谷に自己紹介を促そうとしたところ、神谷の方からそう言葉を切り始めた。

 

「IS学園に悪名轟くグレン団! 男の魂、背中に背負い! 不撓不屈の! あ! 鬼リーダー! 神谷様たぁ、俺の事だ!!」

 

目の前に有った一夏の机の縁に片足を掛けて、右手の親指で自分の事を指差しながら、神谷はクラス中に響き渡る声でそう言い放った。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

再び呆気に取られる生徒達。

 

「え、え~と………」

 

「………ハア~」

 

真耶は困惑し、千冬は呆れた様な溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

あの後………

 

千冬は神谷を、IS学園に編入させる事にした。

 

グレンラガンがIS並みの性能を持つ兵器だと言う事を露見させない為まだ情報公開は行っていないが、彼を世界で2人目にISを起動させた男として、グレンラガンをIS扱いにした。

 

尚、神谷は17歳の為、本来ならば上級生になる筈なのだが………

 

実は神谷は高校に行っておらず………と言うか、小中学校すら真面に行っていない為、1年への編入としたのだ。

 

また、自分の目の届くところで監視しておきたい、と言う思惑も有ったと思われる。

 

 

 

 

 

(2人目の男子………だけど………)

 

(馬鹿だ………大馬鹿だ)

 

(何か汗臭そう………)

 

(ちょっと不良っぽいかも………)

 

(そうかな? 私は良いと思うけど………)

 

(今時珍しい、熱血漢って奴だね)

 

(アレ? あのマントに描かれてるマークって………織斑くんと同じだ)

 

生徒達の間で、そんなヒソヒソ話が始まる。

 

女の園であるIS学園に、2人目となる男子の入学であったが………

 

割とイケメンタイプな一夏と違って、神谷の見た目は所謂男臭さと不良っぽさを感じさせる為、万人に受け入れられるタイプではなかった。

 

「静かにしろ!………神谷、お前の席は一夏の右隣だ」

 

「おう!」

 

千冬がヒソヒソ話をしていた生徒達を一喝すると、神谷に着席を促す。

 

神谷は指定された席に行くと………

 

机の上に両足を投げ出して、腕組みをして座った!!

 

その態度に悪びれている様子は微塵も無く、寧ろコレが自然体だと言わんばかりに堂々としている。

 

「………ハア~~………山田くん、授業を始めてくれ」

 

「え、ええっ!? わ、分かりました………」

 

神谷を注意する様子を見せない千冬に、真耶は若干混乱しながらも、授業を始めるのだった。

 

「アニキ………」

 

と、一夏が神谷に声を掛けると、神谷は視線だけを一夏に向ける。

 

「一夏………色々と積る話も有るが、取り敢えずは後だ。休み時間にゆっくりと聞かせてやるよ」

 

「あ、ああ………」

 

そう言われて正面を向く一夏。

 

しかし、その顔には何処か嬉しさが浮かんでいた。

 

(アニキがIS学園に………しかも同じクラスだなんて………)

 

「………フンッ」

 

そんな一夏の姿を見て面白くない様な顔をすると、窓の外に視線を向ける箒だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業中………

 

「ですから、この場合は、この様に………」

 

(あ、相変わらず何を言っているのかサッパリ分からん………)

 

相変わらず真耶の授業にちっとも付いて行けていない一夏。

 

再発行してもらった参考書に目を通してはみたが、そう簡単に覚えられる内容ではなかった。

 

(でも、千冬姉から1週間で覚えろって言われてるからなぁ………覚えられなかったら殺される………)

 

一夏は千冬の厳しい顔つきを思い出し、顔を青くする。

 

と、その時………

 

「ZZZZZZZZzzzzzzzzz~~~~~~~~~~………」

 

教室内に、イビキが響き渡って来た。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

それに戦慄する生徒達。

 

この教室の担任は千冬………モンド・グロッソの優勝者でブリュンヒルデの彼女である。

 

その彼女が担任を任されて、居眠りをするなど考えられなかった。

 

一体誰がと、一同の視線がイビキが聞こえて来る地点へと向けられる。

 

(………アレ? 何か、俺のすぐ傍から聞こえる様な………って、まさか!?)

 

一夏がとある予感を感じながら右横を見ると、そこには………

 

「ZZZZZZZZzzzzzzzzz~~~~~~~~~~………」

 

堂々と椅子の背凭れに凭れ掛かって居眠りをしている神谷の姿が在った!!

 

(ア、アニキイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーーッ!?)

 

その余りに堂々とした姿に驚愕する一夏。

 

(ちょっ!? 天上くん、居眠りしてる!?)

 

(凄いイビキ………)

 

(って言うか、マズイんじゃない!? 千冬お姉様の前で!!)

 

他の生徒達も小声でそう言い合う。

 

と、その時………

 

「…………」

 

教室の端で待機していた千冬が、出席簿を手に神谷に近づいた。

 

(あっ!? 死んだ!!)

 

(天上くん………グッドラック!)

 

(千冬お姉様の前で居眠りなんて………何て命知らずな)

 

生徒達がそう思っていた瞬間………

 

「!!」

 

千冬の持っていた出席簿が、神谷の脳天に思いっきり叩き付けられた!!

 

バギャッ!!と言う、まるでコンクリートに角材を叩き付けて圧し折ったかの様な音が教室内に響き渡る。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

驚愕に包まれる生徒達。

 

そして、次の瞬間………

 

神谷を引っ叩いた千冬の出席簿が………

 

真ん中の辺りから、真っ二つに折れてしまった………

 

「………んあ? 終わったのか?」

 

そして、神谷がごく普通そうに眼を覚ました。

 

((((((((((ええええぇぇぇぇぇ~~~~~~っ!?))))))))))

 

本日何度目とも知れぬ驚きに包まれる生徒達。

 

千冬が口よりも先に手が出る性格な事は知られており、その制裁も容赦が無い事は周知の事実だったが………

 

まさか真面に喰らってビクともしないと言うのは予想外だった。

 

しかし………

 

ココから更に、予想外な展開を目撃する事となった。

 

「天上………」

 

「あん?」

 

「………居眠りするなとは言わん。だがイビキは掻くな。迷惑だ」

 

「善処するぜ………」

 

そう言うと、神谷は再び目を閉じて寝始めた。

 

「………ハア~~」

 

それを見た千冬は、本日何度目になるかの重い溜息を吐いて、所定の位置に戻って行った。

 

((((((((((ええええぇぇぇぇぇ~~~~~~っ!?))))))))))

 

またまた驚愕に包まれる生徒達。

 

(ウソッ!? 千冬お姉様が居眠りを黙認!?)

 

(って言うか、公認!?)

 

(何なの、あの人!?)

 

クラス全員の好奇の視線が、一斉に神谷へと注がれる。

 

(スゲェ! 流石アニキだ!!)

 

そんな中只1人、一夏だけは、神谷の図太さに尊敬の念を抱いていた。

 

一方、授業中に堂々と居眠りをされている真耶は、涙目になっていた。

 

 

 

 

 

千冬が神谷の居眠りを黙認するワケ………

 

それは、幼少の頃からそう言う奴だと言う事を熟知している他に、もう1つ有った………

 

神谷が使っているグレンラガンは、建前上はISと言う事になっているが、ISではない………

 

その為、運用ノウハウがISとはまるで異なるのだ。

 

しかも、神谷にしか動かせないとなると、マニュアルもクソもなかった。

 

尚、神谷に如何やってグレンラガンを動かしたのかと聞いたところ………

 

頭の中に直接動かし方が流れ込んで来た、との事である(本人はこの事を、『要は気合ってこったろ!』と称したそうだ)。

 

神谷をIS学園に入れたのは飽く迄グレンラガンのデータを各国に渡さない為であり、IS操縦者にする積りではない………

 

つまり言ってしまえば、例え授業を真面に受けなくとも神谷がIS学園に居てくれさえすれば良いのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間………

 

「スゲェよ、アニキ! まさか千冬姉に居眠りを黙認させるなんて!!」

 

「当たり前だ! 俺を誰だと思ってやがる!!」

 

先程の偉業を褒め称える一夏と、当然だと言わんばかりの態度の神谷。

 

「ちょっと宜しくて?」

 

と、そんな2人に声を掛ける人物が居た………

 

「へっ?」

 

「あん? んだよ?」

 

「まあ!? 何ですの、そのお返事!? 私に話し掛けられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」

 

いきなり高圧的な態度で接して来る縦ロールのある長い金髪に透き通った碧眼を持つ少女。

 

「あ、いや、その………」

 

「おうおうおうおうおう! いきなり随分なご挨拶してくれるじゃねえか!! 何様の積りだ!?」

 

一夏が何か言おうとしたところ、それを遮る様に神谷が少女に向かって啖呵を切った。

 

「なっ!? 私を知らない!? 『セシリア・オルコット』を!? イギリス代表候補生にして、入試主席のこの私を!?」

 

「知らねえな!! そっちこそ覚えておけ! IS学園に悪名轟くグレン団! 男の魂、背中に背負い! 不撓不屈の! あ! 鬼リーダー! 神谷様たぁ、俺の事だ!!」

 

少女………イギリス代表候補生『セシリア・オルコット』に向かって、自己紹介の時にした名乗りを挙げる神谷。

 

「ぐうっ!?」

 

その良く分からない迫力に押されて黙り込むセシリア。

 

「あ、あの………ちょっと質問良いか?」

 

と、そこで一夏が、セシリアに向かってそう言った。

 

「!? え、ええ、良いですわよ。下々の者の要求に応えるのも貴族の務めですわ。よろしくてよ」

 

その言葉で落ち着きを取り戻し、気取った様なポーズを取りながらそう言うセシリア。

 

「………代表候補生って、何?」

 

「食えんのか?」

 

ドドドドドッ!という音が聞こえて来て、3人の話に聞き耳を立てていた生徒達が芸人の様にずっこけた。

 

「あ、ああああ………」

 

セシリアも、呆れで肩を震わせている。

 

「「あ?」」

 

「信じられませんわ! 日本の男性というのは、皆これほど知識に乏しいものかしら!? 常識ですわよ! 常識!!」

 

「………で、代表候補生って?」

 

セシリアに向かって重ねてそう尋ねる一夏。

 

その瞬間、セシリアは目を光らせて、自慢げに語り出す。

 

「国家代表IS操縦者の、その候補生として選出されるエリートの事ですわ。単語から想像したら分かるでしょう?」

 

「そう言われればそうだ」

 

「そう、エリートなのですわ! 本来なら、私の様な選ばれた人間とクラスを同じくするだけでも奇跡! 幸運なのよ!」

 

背後にバラが咲いている様なイメージを見せながら、セシリアはそう言葉(自慢)を続ける。

 

「その現実をもう少し理解していただける?」

 

そう言って、再び一夏と神谷の方を見やるセシリア。

 

しかし………

 

「ZZZZZZZZzzzzzzzzz~~~~~~~~~~………」

 

神谷は何時の間にか寝息を立てていた。

 

「そうか………そりゃラッキーだ」

 

一夏の方も、反応が薄い。

 

「バ、バカにしていますの!!」

 

怒りの様子を露わに、机を叩くセシリア。

 

「うわっ!?」

 

「んあ?」

 

一夏が驚き、神谷が目を覚ます。

 

「んだよ………難しい話するから寝ちまったじゃねえか………」

 

「ああああ、貴方と言う方は!!」

 

神谷の態度で、更に怒りのボルテージを上げるセシリアだったが………

 

そこで休み時間終了を告げるチャイムが鳴った。

 

「!! 話の続きは、また改めて! よろしいですわね!?」

 

セシリアは神谷と一夏を指差すと、自分の席へ戻って行った。

 

「何だったんだ?」

 

「さあ?」

 

その後で、2人揃って首を傾げる神谷と一夏だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして授業が始まろうとした時………

 

千冬が教壇に立ち、生徒全員を見据える。

 

「これより、再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」

 

そして、そう話を切り出し始めた。

 

「クラス代表者とは対抗戦だけでなく、生徒会の会議や委員会の出席等………まぁ、学級委員長と考えてもらって良い。自薦他薦は問わない。誰か居ないか?」

 

そう言って、再びクラス全体を見やる千冬。

 

「ハイ。織斑君を推薦します」

 

すると、1人の生徒が、一夏を推薦した。

「えっ!?」

 

「ハイ。私もそれが良いと思います」

 

「ええっ!? お、俺!?」

 

「他には居ないのか? 居ないのなら、無投票当選だぞ」

 

戸惑う一夏を他所に、千冬は一夏をクラス代表に任命しようとする。

 

「ちょ、ちょっと待った! 俺なんかじゃとても無理だよ!!………! そうだ! アニキ!! アニキがやってくれよ!!」

 

一夏は立ち上がり、隣の席の神谷を見ながらそう言う。

 

「バカ野郎! 一夏! 推薦されたのはお前だろ! 弟分の晴れ舞台を横取りするなんて、この神谷様に出来ると思ったか!!」

 

しかし、神谷は立ち上がると一夏を見ながらそう言う。

 

「で、でも………俺、無理だよ!!」

 

「無理を通して道理を蹴っ飛ばすんだよ! それが俺達、グレン団のやり方だろうが!! 忘れたのか、一夏!!」

 

「!?」

 

その言葉でハッとする一夏。

 

(全く………妙なところで良い影響を与えているから性質が悪い………)

 

そんな2人の様子を見て、頭痛がするのを感じる千冬。

 

「わ、分かったよ、アニキ………俺、やって………」

 

と、一夏が決意を固め、そう言おうとした瞬間………

 

「納得が行きませんわ!!」

 

突如声を張り上げる人物が居た。

 

「!?」

 

「あん?」

 

「その様な選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!」

 

セシリアだった。

 

一夏が推薦された事に噛み付いて来ている。

 

「このセシリア・オルコットに、その様な屈辱を1年間味わえと仰るのですか!? 大体、文化としても後進的な国に暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛で………」

 

「へっ………弱い犬ほどよく吠えるとは言ったもんだぜ」

 

すると、そんなセシリアを見ていた神谷がそんな事を口走った。

 

「なっ!? 何ですって!? もう1度言って御覧なさい!!」

 

「何度でも言ってやるぜ。弱い犬ほどよく吠える………人様の国のこと扱き下ろして、ギャーギャー喚くのがイギリスのやり方かよ。そんなんじゃ高が知れるぜ」

 

「! 貴方! 私の祖国を侮辱しますの!!」

 

「先に喧嘩売って来たのはテメェだろうが! 言いたい事があるんだったら、拳で語ってみろ!!」

 

「!! 決闘ですわ!!」

 

そこでセシリアは、神谷を指差してそう言い放った。

 

「へっ! 最初からそう言やあ良かったんだよ!」

 

「態と負けたりしたら、貴方を小間使い………いえ、奴隷にして差し上げますわ!!」

 

「上等だ!! 良し!!………任せたぞ! 一夏!!」

 

「え、ええええっ!? 俺!?」

 

急に振られて戸惑う一夏。

 

「なっ!? 逃げるのですか!? 卑怯者!!」

 

「バカ言うな! この神谷様が逃げるかよ! テメェがなりてぇのはクラス代表だろう! なら、一夏を倒すのが筋ってもんよ!!」

 

無茶苦茶な理論を展開する神谷。

 

「一夏は俺の弟分だ! 弟分の負けは兄貴分の負け! もし一夏がお前に負けたら、俺も一夏も好きにして良いぜ!!」

 

「ちょっ!? アニキ、勝手に!!………」

 

「良いですわ! 貴方の自慢の弟分………叩きのめしてあげますわ!!」

 

「話は纏まったな。それでは勝負は次の月曜………第3アリーナで行う」

 

「ちょっ!?」

 

一夏の意見を無視して、話が進行して行く。

 

「織斑とオルコットは其々準備をしておく様に………」

 

「何でこうなるんだああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

一夏の叫びが、虚しく木霊するのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

獣人達の親玉………螺旋王ロージェノムと螺旋四天王が登場。
その目的は一体?
そして、新たな刺客として放たれたヴィラルの実力は?

一方神谷は、千冬の思惑でIS学園に編入。
しかし、相変わらずのゴーイングマイウェイぶりを見せる。
そして原作最初のバトル、クラス代表戦が始まります。
神谷の誇りまで背負う事になった一夏の運命は?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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