天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第39話『俺を信じろ! お前を信じる俺を信じろ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第39話『俺を信じろ! お前を信じる俺を信じろ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・1年4組の教室………

 

「…………」

 

神谷と一夏の存在に気づいて驚いた後、簪は再び机に座り直し、再度キーボードを叩く作業に没頭し始めていた。

 

「えっと………改めて自己紹介するけど、初めまして。俺、1組の織斑 一夏。で、コッチが………」

 

「IS学園に悪名轟くグレン団! 男の魂、背中に背負い! 不撓不屈の! あ! 鬼リーダー! 神谷様たぁ、俺の事だ!!」

 

一夏が改めて自己紹介し、神谷を紹介しようとしたところで、神谷はお馴染みの天を指差すポーズを取って、お決まりの口上を述べる。

 

「ア、アハハハ………」

 

「…………」

 

何時もの事とは言え、思わず苦笑いする一夏に対し、簪は相変わらず涼しい顔で作業を続けている。

 

「………知ってる」

 

とそこで、作業の手を止めずにそう呟く。

 

「…………」

 

しかし、それだけ言っただけで、後は再びの無言であった。

 

(か、絡み難い………)

 

取り付く島も無しの簪の態度に、一夏はギャグ汗を浮かべる。

 

「よ~し! それなら話ははえぇ。更識 簪! 今度の専用機持ちタッグマッチで、俺か一夏と組め!!」

 

だが、唯我独尊な神谷は、そんな簪の態度など気にせず、単刀直入にそう言う。

 

「イヤ………」

 

(うわ、即答………)

 

簪は即座に断わり、一夏はまたもギャグ汗を浮かべる。

 

「遠慮すんな! 俺か一夏と組めば、優勝は間違いなしだぜ!」

 

神谷は気にせずにそう言葉を続ける。

 

「………嫌よ。それに貴方達、組む相手には………困っていない………」

 

「俺と一夏はお前と組みたいと思ってんだよ」

 

そんな2人の話し合いは、思いっきり平行線だった。

 

「………如何して?………ひょっとして………姉さんに頼まれたの?」

 

とそこで、簪は睨み付けるかの様な視線を2人に向ける。

 

「そ、それは………」

 

「まあ切欠はそうだな」

 

口籠る一夏だったが、神谷はアッサリとバラしてしまう。

 

「!?」

 

それを聞いた途端、簪は怒っている様な表情となり、椅子を倒しながら立ち上がる。

 

「ちょ! アニキ!!」

 

「帰って………私は貴方達の………『あの人』の力は借りない………」

 

静かだが、ハッキリとした言い方でそう言う簪。

 

(姉さんを『あの人』呼ばわりか………やっぱり姉妹仲悪いんだな………)

 

そんな簪の姿に、一夏は箒の姿を重ねる。

 

「まあ、話は最後まで聞け。楯無の野郎はお前と仲直りしたいと思ってるんだ。だが、切欠が摑めなかったもんだから、先ず俺達を使って、お前が姉貴の事を如何思ってるか探ろうとしたワケだ」

 

しかし、神谷はそんな簪の態度も気にせず言葉を続ける。

 

「………嘘」

 

「嘘なんもんかよ。あの楯無の野郎が態々頭下げてまで頼んで来たんだぜ」

 

「………もし………仮にそうだったとしても………貴方達とは組まない………」

 

簪はハッキリと拒絶の意思を示す。

 

「そりゃそうだろな。お前、姉貴の事………嫌いなんだってな」

 

それでも尚、神谷は引き下がる様子を見せない。

 

「!!」

 

そう言われて、簪は再び黙り込んだ。

 

「何でも、楯無の野郎が優秀過ぎるからコーンフレークを感じてるとか………」

 

「アニキ、コンプレックスだよ」

 

神谷の言葉の間違いにツッコミを入れる一夏。

 

「んなくだらねえ事は良いんだよ」

 

「! くだらない………?」

 

その言葉を聞いた簪の表情が、更に怒りに染まる。

 

「貴方に何が分かるの?………物心付いた時から何時も目の前に居て………何をしても比較され………私の行く先行く先で幻の様に付き纏う………ただあの人の妹に生まれたという理由だけで………」

 

静かだが、ハッキリを怒気を含んだ声で、簪はそう言う。

 

(簪さん………)

 

それを聞いた一夏は、簪に対し同情の様な思いを感じる。

 

彼もブリュンヒルデである姉・千冬を持ち、コンプレックスとまでは行かないが、何かと比較される様な事は何度も有った。

 

最初は気にしていた事もあった一夏だが、神谷の影響もあり、今では笑い飛ばせる様な些細な事である。

 

だが、もし神谷と出会っていなければ、自分も簪の様になっていたかも知れない………

 

そんな思いが湧き上がる。

 

「簪さん………楯無さんが優秀なのは俺も良く知ってるよ。けど、簪さんは簪さんだろ? 楯無さんじゃない」

 

気が付くと、一夏は簪に向かってそう言っていた。

 

(! 一夏………)

 

それを聞いた神谷は、一瞬驚いた様な表情をしたが、すぐに笑みを浮かべる。

 

弟分の成長を喜んで………

 

「それに楯無さんにだって出来ない事もある。逆に、簪さんにしか出来ない事だってある」

 

「そんな………綺麗事………」

 

「綺麗事じゃない!」

 

そこで一夏も、簪と視線を合わせる様に椅子から立ち上がる。

 

「俺には分かる………簪さんには素晴らしい力が有る!!」

 

「わ、私には………そんな力は………」

 

一夏が余りにも自信満々な態度な為、先程までの勢いは何処へ行ったのやら、簪は萎縮し始める。

 

「馬鹿野郎! 良いか、簪さん! 自分を信じるな!!」

 

「えっ?」

 

「俺を信じろ! お前を信じる俺を信じろ!!」

 

簪に向かって、一夏は自分を親指で指しながらそう言い放つ。

 

それは、嘗て………

 

一夏が神谷に言われた言葉だった。

 

「…………」

 

当の本人は、一夏がその言葉を言った事にニヤッとした笑みを浮かべている。

 

「…………」

 

簪は、当然と言えば当然だが、呆気に取られた表情で固まっていた。

 

とそこで、昼休み終了間近を告げるチャイムが鳴る。

 

「あ! もうこんな時間か」

 

見れば、逃げ出していた4組の生徒がチラホラと戻り始めており、教室の出入り口に固まっておっかなびっくり様子を窺っている。

 

「アニキ、一旦引き上げよう」

 

「しゃーねえな………また来るぜ」

 

一夏と神谷はそう言うと座って居た席を立ち、教室から出て行った。

 

出入り口に居た生徒達は、ササッと道を譲る。

 

「…………」

 

残された簪は、呆然とその場に立ち尽くしていたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後………

 

IS整備室にて………

 

「…………」

 

簪は1人で黙々と、自分の専用機を組み立てている。

 

元々彼女の専用機は、日本の倉持技研が開発を進めていたのだが………

 

一夏と言うISを扱える男子が登場した途端、急遽白式を建造する事となり、開発やデータ収集に全ての技術者を取られてしまったのだ。

 

その為、彼女はまだ組み立てられてもいなかった自分の専用機の部品を全て学園に送って貰い、自分で組み立てる事にしたのである。

 

彼女の姉である楯無も、機体データを元に、1人で今使っているミステリアス・レイディを組み上げたと言われており、彼女も自分1人で自分の専用機を組み上げる事で、コンプレックスを解消しようとしている。

 

だが、それはとても困難な道であった………

 

実は白式に取られたのは技術者だけでなく、部品もだったのである。

 

一夏の専用機があれほど早く完成したのは、簪の専用機から部品を貰っていたからでもあるのだ。

 

組み上げる為には圧倒的に部品が足りない………

 

だが、代わりの部品の発注は滞っている………

 

ロージェノム軍の攻撃の影響で、毎日の様に軍属のISが損傷しており、部品は全てそちらに優先されて配送されているのである。

 

現在の戦況を考えれば、仕方の無い措置とも言えるが………

 

「………駄目………やっぱり部品が足りない………」

 

と、簪は不意に組み立ての手を止めるとそう呟く。

 

(でも………新しいパーツは入って来ない………如何すれば………)

 

悩む簪だが、今の彼女に如何にか出来る問題では無かった。

 

「………今日はココまでにしよう」

 

結局、今日の作業はココまでだと打ち切り、帰宅しようと自分の専用機に背を向ける。

 

と、その時………

 

「へえ~、コイツがオメェの専用機か?」

 

「打鉄やラファールに似てるけど、色々と違うなぁ」

 

「!?」

 

後ろからそう言う声が聞こえて来て、驚きながら振り返ると………

 

自分の専用機をペタペタと触っている神谷と、それを見ている一夏の姿が在った。

 

「な、何してるの!?」

 

簪は一瞬吃りながらも、2人に向かってそう叫ぶ。

 

「やあ、簪さん」

 

「ちょいとオメェの専用機がどんなモンか気になってな………しかしこりゃ、色々と物が足りてねえんじゃねえか?」

 

片手を上げて簪に挨拶する一夏と、相変わらず簪の専用機をペタペタと触っている神谷。

 

「! 触らないで!!」

 

簪はそう声を挙げると、神谷と自分の専用機の間に割って入り、神谷を引き剥がす。

 

「とと………何だよ。いいじゃねえか、別に。減るモンじゃねえし」

 

「…………」

 

そう言う神谷に、簪は睨み付ける様に視線を送る。

 

「やれやれ」

 

しかし、それを受けても、神谷は対して気にした様子も無く、肩を竦めるだけだった。

 

「コレ………自分1人で組み立ててるのか?」

 

とそこで、簪の専用機を見ながら、一夏がそう尋ねる。

 

「………だったら………何?」

 

「いや、凄いなぁと思って………自分のISを1から組み立てるなんて、俺には真似出来ないしさ」

 

「この程度の事………あの人もやっていた………」

 

「あの人って………楯無さんも?」

 

「…………」

 

無言で肯定の意を返す簪。

 

(そう言えば、前にそんな事を聞いたな………)

 

以前本人から聞いた事があった事を、一夏は思い出す。

 

「しかっしコリャ、全然出来てねえ様に見えるがなぁ」

 

神谷が碌に組み立てられてもいない簪の専用機を見て、ズケズケとそう言う。

 

「なあ、良かったら手伝おうか? そしたら、タッグマッチで俺かアニキと組んでくれよ」

 

するとそこで、一夏がそんな事を提案した。

 

「要らない………この機体は………私1人で組み上げる………」

 

だが、簪はそうキッパリと拒絶する。

 

「遠慮すんなって。こまけえ事は分からねえが、力仕事なら手伝えるぜ」

 

だが、神谷は相変わらず気にした様子も無くそう言う。

 

「要らないって言って………」

 

「まあまあ。そう言わないでよ、簪ちゃん」

 

「!?」

 

突然背後から聞こえて来た声に、簪は驚きながら振り返る。

 

「や、やあ………どうも………」

 

「やっほ~、かんちゃん」

 

「こんにちは、簪様」

 

そこには若干気まずそうにしている楯無と、陽気そうに挨拶をするのほほん、そして何時もと変わらぬ態度の虚の姿が在った。

 

「………何か用?」

 

簪は楯無を冷たい目で睨みながらそう言う。

 

「うう………」

 

「かんちゃんのISの組み立て、手伝ってあげようと思って!!」

 

その視線を受けて、楯無は若干怯んだ様な様子となるが、のほほんが気にせずにそう言う。

 

「………施しの積り?」

 

だが、簪は楯無を睨み付けたままそう言い放つ。

 

「うっ!」

 

「簪様、違います! お嬢様は純粋に簪様の事を手伝おうと………」

 

「…………」

 

楯無は更に怯み、虚は決してそんな事では無いと言うが、簪は楯無を睨み付けたままである。

 

「簪ちゃん………」

 

実妹にそんな態度を取られて、流石の楯無の目にも涙が………

 

「コラコラ! 姉貴に向かってそんな顔する奴があるか!!」

 

浮かび上がりかけた瞬間!!

 

簪の背後に立った神谷が、簪の両頬を手で摘まんで軽く引っ張った!!

 

「!? ふみゅ!?」

 

簪の口から珍妙な悲鳴が漏れる。

 

「「!?!?!?!?」」

 

楯無と虚は仰天を通り越して意味不明な叫びを挙げてしまう。

 

「ホレホレ、笑え笑え!!」

 

「うみゅみゅみゅみゅっ!?」

 

頬を摘まんだまま、簪に無理矢理笑顔を浮かばせようとする神谷と、相変わらず珍妙な悲鳴を挙げてしまう簪。

 

「は、離し………て!!」

 

しかし簪は、身体を捻って無理矢理神谷の手から逃れる。

 

「おっ?」

 

「!!」

 

そして驚いていた神谷の頬に、平手打ちを見舞った!!

 

だが………

 

「!?!?」

 

平手打ちを見舞った簪の方が、見舞った手を押さえながら痛そうにし出す。

 

「ああ! 素手でアニキを殴るなんて、無謀な!!」

 

それを見た一夏が、慌てて駆け寄り、簪の手を握って状態を見る。

 

「!?!?」

 

イキナリ手を握られて、簪は赤面する。

 

「う~ん………赤くなってるけど、大した事はないな。うん、大丈夫だ」

 

そんな簪の様子など気にせず、一夏は手の状態を見てそう言う。

 

「は、離して!!」

 

と、簪は強引に一夏に摑まれていた手を放す。

 

「うわっ、と!?」

 

「…………」

 

そして、赤面した表情のままで一夏を睨み付ける。

 

「? どしたんだ? 顔赤いけど………風邪か?」

 

しかし、その心情を一夏が理解出来る筈も無く、そんな言葉を投げ掛ける。

 

「!!………何でも………無い………」

 

「??」

 

簪はプイッと顔を背け、一夏は益々ワケが分からないと言った具合に首を傾げるのだった。

 

「ま、兎に角………タッグマッチまで時間がねえんだぞ。参加する積りなら、急いで組み上げちまった方が良いだろう」

 

とそこで神谷が、簪に向かってそう言う。

 

「それは………」

 

神谷の言葉は曲がり形にも真実を衝いている為、簪は反論出来ずに黙り込む。

 

「簪さん、一先ず俺かアニキと組むって話は置いといてくれて良いから。簪さんだってタッグマッチに出たいだろ? 今までのイベントだって、ずっと出れず終いだったんだし………」

 

そこで一夏も、神谷を援護する様にそう言って来る。

 

「…………」

 

簪は黙り込み、考え込む様な様子を見せた。

 

「簪ちゃん………」

 

「簪様………」

 

楯無と虚が、そんな簪の様子を固唾を呑んで見守る………

 

そして………

 

「………分かった」

 

やがて簪は、諦めた様に大きく息を吐き、肩を落としてそう言った。

 

「じゃあ!!」

 

「やったー! かんちゃんのお手伝いが出来る~!!」

 

「やりましたね! お嬢様!!」

 

「うん!!」

 

喜びの様子を示す一同。

 

「けど!」

 

だがそこで、簪は楯無を睨み付ける。

 

「貴女の手だけは………借りない」

 

「えっ!?」

 

簪の言葉に、楯無は驚きを露にする。

 

「!? 簪様!!」

 

「オイオイ! へそ曲がりも大概にしろよ!!」

 

そんな簪の態度に、虚と神谷が抗議をしようとしたが………

 

「………うん、分かったよ」

 

楯無は諦めたかの様な笑みを浮かべてそう呟いた。

 

「! お嬢様!!」

 

「オイ、楯無!!」

 

「良いよ、別に。私の事は気にしないで」

 

虚と神谷が何か言おうとしたが、楯無自身がそれを遮る。

 

「お嬢様………」

 

「楯無………」

 

「じゃあ、邪魔者は消えるね………皆、後はよろしくお願いするわね」

 

そのまま楯無は、しょんぼりとした様子で、整備室を後にする。

 

「楯無さん………」

 

「…………」

 

一夏は残念そうな顔をするが、簪はスッと踵を返し、再び自分の専用機の傍に寄った。

 

(………こりゃ、仲直りさせるのは一筋縄じゃ行きそうにないな)

 

神谷は頭を掻き、更識姉妹の仲の修復が簡単には行かない事を悟る。

 

(ま、やるしかねえか………)

 

そして、長期戦になる事を密かに決意するのだった。

 

「取り敢えず、何から始めれば良い?」

 

「やはり、部品集めでしょうか?」

 

と、そこで既に一夏と虚は、簪の専用機の組み立てに入っている。

 

「でも~、確か今、ISの部品って、前線で使われている方に優先的に回されてて~、学園のとかは発注が滞ってるんだよね~?」

 

「…………」

 

のほほんがそう言うと、簪も分かっているので専用機の前で沈黙している。

 

「部品か………! そうだ! 良い手が有るじゃねえか!!」

 

と、それを聞いていた神谷が、ポンッと手を打って何かを思い付いた様に言う。

 

「? アニキ? 良い手って?」

 

「まあちょいと待ってろ。すぐ戻るからな」

 

と、尋ねて来た一夏へ返事もそこそこに、神谷は整備室から出て行った。

 

「あ、かみやん!」

 

「如何したのかしら?」

 

突然出て行った神谷を、のほほんと虚は首を傾げて見送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

残された簪、一夏、のほほん、虚は………

 

4人で簪の専用機の組み立てを進めていたが………

 

やはり部品が足りない事には如何にもならず、作業は僅かに進んだだけでまた止まってしまった………

 

「やっぱ部品がないと駄目か………」

 

「…………」

 

愚痴る様に一夏が呟き、簪も悔しそうな表情を浮かべる。

 

と、そこへ………

 

「オーイ! 待たせたなー!!」

 

そう言いながら、整備室から姿を消していた神谷が戻って来た。

 

その手には縄が握られており、その縄は神谷の背後に在った移動用のローラー付きのコンテナに結ばれている。

 

「あ! かみや~ん!!」

 

「何処へ行ってたんですか?」

 

手を余っている袖ごとブンブンと振るのほほんと、そう尋ねる虚。

 

「ホラよ、持って来てやったぜ」

 

それに答える様に神谷はそう言うと、コンテナを一同から見える位置へと置く。

 

神谷が引いて来たコンテナの中には………

 

溢れんばかりに積まれたISのパーツが有った!!

 

「!?」

 

「うわ~! いっぱい有るね~!」

 

それを見た簪が驚きを露わにし、のほほんがそう声を挙げる。

 

「アニキ! コレ如何したの?」

 

「良く見れば専用機用の特注パーツまで………!? まさか盗んで来たんじゃ!?」

 

一夏がそう尋ね、虚が持って来た部品の中に専用機で使われている特注パーツがあるのを見て、そんな事を思い浮かべる。

 

「ヘッ! ゴミを持って来たところで、誰も怒りゃあしねえよ!」

 

「ゴ、ゴミ………?」

 

神谷から出た言葉の意味が分からず、困惑する虚だったが………

 

「アレ? 何か此処に在る部品って………古臭い様な………」

 

「それに壊れてるのもいっぱい有るよ~」

 

とそこで、神谷が持って来た部品を良く見ていた一夏とのほほんが、そんな事に気付く………

 

「………ひょっとして、コレって………廃棄部品?」

 

「その通り。スクラップ置き場からチョイと失敬して来たのさ」

 

気づいた簪の事を指差しながら、神谷はそう言う。

 

「! 廃棄部品! つまり………捨てられてた部品って事!? アニキ!!」

 

「どうせ要らないって思われて捨てられたモンだ。俺達が如何使おうが勝手だろう」

 

驚く一夏にそう言いながら、神谷は廃棄部品をコンテナから出し始める。

 

「それはそうかも知れないけど………」

 

「でも! スクラップからISを組むなんて、聞いた事ありません!」

 

一夏が戸惑い、虚がそう声を挙げる。

 

「なら、コイツはその第1号になるワケだ」

 

だが、神谷はあっけらかんにそう返す。

 

「神谷さん!!」

 

「虚さん………良い………」

 

と、更に抗議の声を挙げようとして来た虚を、簪が制した。

 

「! 簪様! でも………」

 

「もうこの際………動かせる様になれば………それで良い………」

 

簪はそう言うと、自らスクラップ部品を手に取り、自分の専用機の方に運ぼうとする。

 

「うっ!」

 

しかし、予想以上に重かった様で、途中で床に着けてしまう。

 

「ああ、もう、無理するなよ。コレからは俺達も手伝うんだから。なっ?」

 

見かねた一夏が、代わってスクラップ部品を取り、運ぶ。

 

「よ~し! それじゃあ一丁! やりますか!!」

 

「全く………スクラップからIS………しかも専用機を組み立てようなんて………前代未聞ね」

 

ノリノリで作業に掛かるのほほんと、愚痴りながら作業に入る虚。

 

「…………」

 

簪はそんな一同の様子をジッと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簪のモノローグ………

 

自分でも焼きが回ったと思う………

 

スクラップからIS専用機を造ろうなんて………

 

けど、私の機体を完成させるにはもうこの手しかない………

 

こんな機体………最早ISとは呼べない………

 

呼ぶならば、そう………

 

『ボトムズ(最低野郎)』だ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

簪に『むせる』を取り入れた理由………
それは彼女の機体が組み上げ途中だったという点から思いつきました。
丁度この頃に、第2次スパロボZが発売されて、初参戦したボトムズにはまり出したんですよね。
それで見たOVAのラストレッドショルダーで、ATをスクラップから組み上げるシーンがあったのを見て、これを簪の機体を組み上げるところで使ってみたいと思いまして。

なので、彼女の機体は打鉄弐式ではなくなっています。
出来上がるのは、彼女の言葉通り………『ボトムズ』です。
後々にあの遣り取りも出ますのでお楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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