天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第42話『コイツの肩は赤く塗らないのか?』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第42話『コイツの肩は赤く塗らないのか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・IS整備室………

 

先程の試運転で早速スコープドッグの欠陥が発覚し、簪は早速調整に掛かっていた。

 

一夏と神谷、布仏姉妹もそれを手伝う。

 

「おりむー、配線繋げて見て」

 

「了解」

 

のほほんにそう言われて、一夏はスコープドッグの装甲を外した脚部の内部機器の配線の1つを繋ぐ。

 

すると、足裏のローラーとキャタピラが回転を始め、ターンピックが飛び出す。

 

「………信号が来てないわ。コレじゃターン出来ない筈よ」

 

と、脚部の信号確認ランプが点いていないのを確認した虚がそう言う。

 

「もう少しスピードと機動性が欲しい………あと火力の強化も………」

 

プログラムの方を調整していた簪が、整備をしている一夏達に向かって言う。

 

「オーイ! 新しい部品、調達して来たぞ!」

 

とそこへ、神谷が新たなスクラップ部品が入ったコンテナを牽きながら、姿を現した。

 

「ああ、かみや~ん! 待ってたよ~~!!」

 

早速のほほんが、スクラップ部品を漁り、使えそうなパーツを持ち出す。

 

「しかし簪様。火力と機動力を両立させるとなると、扱いは相当ピーキーになると思いますが………」

 

と、そこで虚が、先程簪から言われた注文を実行するに当たっての懸念事項を口にするが………

 

「………それは………」

 

簪は、神谷が持って来たスクラップ部品の中に、とあるパーツを発見して、表情を変える。

 

それは、何かの補助コンピューターの様にも見えるパーツだった。

 

「簪、それは?」

 

「………『ミッションディスク・システム』」

 

「『ミッションディスク・システム』?」

 

簪の言った単語の意味が分からず、一夏は首を捻る。

 

「基本動作プログラムが書き込まれている………『ミッションディスク』によって………ある程度の操縦自動化が………出来るシステム………」

 

「ええっ!? そんな便利な物が在ったのか!?」

 

「『ミッションディスク』は………自分で組まないといけないから………普通のIS乗りの間では………普及してない」

 

便利な物が有ると思った一夏だが、簪はそんな一夏の想いを打ち消す様にそう言う。

 

そして、ミッションディスク・システムをスクラップ部品の中から取り出すと、スコープドッグに搭載。

 

続けて、肝心要のミッションディスクの作成に取り掛かる。

 

「コレが有れば………操縦面での問題は………クリアされる………」

 

「じゃあ~、後は火力と機動力だね~」

 

「火力は武装の装備で如何にかなるけど………機動力は………」

 

笑顔でそう言うのほほんとは対照的に、虚は首を捻る。

 

普通のISならば、スラスターの装着・増設で機動力を上げる事が出来るが、スコープドッグの場合は飛行不可能だという事がネックになっている。

 

「空が飛べない以上………スラスターを付けてもデッドウェイトになるだけ………かと言って、ブースターとして使うとしても、上半身に付けてはバランスが悪くなる可能性が………」

 

「ならこうすりゃ良いじゃねえか」

 

と、虚が悩んでいると、神谷がスラスターパーツを、スコープドッグの足の裏側に付けようとし出す。

 

「ちょっ!? 天上くん! 何を!?」

 

「何をって………コイツはローラーダッシュで走るんだろ。だったら、足にブースターを付けりゃスピードアップするってワケだ」

 

「子供の工作じゃないのよ!!」

 

虚はそう怒鳴るが………

 

「それ………頂き………」

 

当の簪が、そのアイデアを気に入ったのか、神谷を指差してそう言って来た。

 

「簪様!?」

 

「よ~し、決まりだな。オイ、一夏! コイツを足の裏に付けろ」

 

「お、おう!!」

 

神谷に言われて、一夏はスコープドッグの足の裏にスラスター部品を取り付け始める。

 

と、そこへ………

 

「「「「一夏〈さん〉!」」」」

 

「「神谷!」」

 

箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、ティトリーの、グレン団メンバーが姿を見せた。

 

「! 箒! セシリア! 鈴! ラウラ!」

 

「シャル! ティトリー! 何だよ、手伝いに来てくれたのか?」

 

「うん、そうだよ」

 

「私達にも手伝わせてくれ」

 

一夏と神谷がそう言うと、シャルと箒がそう返す。

 

「でも、良いのか? 自分達の機体の調整とかもあるだろう?」

 

一夏が心配する様にそう言うが………

 

「御心配には及びませんわ」

 

「アタシ達の方はもう大体仕上がってるわよ」

 

「少しぐらい他人に手を貸しても罰は当たらんだろう」

 

「アタシは元々皆の補助だしね」

 

セシリア、鈴、ラウラ、ティトリーがそう言って来る。

 

「でも………」

 

そこで一夏は、簪の様子を窺う様に彼女を見る。

 

「…………」

 

簪は少しの間、無言の圧力を発していたが………

 

「………好きにして」

 

やがて折れたかの様にそう呟いた。

 

「良し! 先ずは何からすれば良い?」

 

「火器管制なら、僕に任せて」

 

「私にもですわ」

 

「近接戦闘用のプログラムはアタシが組むわ」

 

「なら私はマニューバの入力だな」

 

「えっと、アタシは………色々!!」

 

箒、シャル、セシリア、鈴、ラウラ、ティトリーは多種多様な返事を返し、作業に取り掛かる。

 

「こら、俺達も負けてらんねぇぞ、一夏!」

 

「分かってるよ、アニキ!」

 

「盛り上がって来たね~、お姉ちゃん」

 

「本音………貴女はホント気楽ね………」

 

神谷、一夏、のほほん、虚も負けじと作業に戻る。

 

人数が大幅に増えた事もあり、スコープドッグは見る見る内に組み上がって行く。

 

「…………」

 

その光景を、簪は複雑そうな表情で見ていた。

 

(結局………これだけの人の手を………借りる事になってしまった………なのに………如何して………嫌な気持ちがしないの………?)

 

当初の自分1人で組み立てると言う思惑は完全に崩れ去っていたが、簪の胸には不思議と嫌悪感が湧いてこない。

 

それどころか、今のこの空気を心地良いとまで感じ始めていた。

 

(………私は………)

 

と、簪が己の心を理解出来ずに居ると………

 

「………簪ちゃん」

 

「!?」

 

不意に後ろから聞こえて来た声に、簪は驚きながら振り返る。

 

「や、やあ………」

 

そこには、何やら風呂敷に包まれた幾重にも重ねられた重箱を持ち、若干気不味そうにしている楯無の姿が在った。

 

「………貴女の手は借りないって言ったわ」

 

途端に、簪はそう言って、楯無を睨み付ける。

 

「え、えっとね………差し入れを作って来たんだけど、食べてくれないかな?」

 

楯無はその視線に若干怯みながらもそう言って風呂敷に包まれた重箱を差し出す。

 

「………要らない。持って帰って」

 

「そんなこと言わないで………」

 

簪はプイッと楯無に背を向けるが、楯無は諦めずに食い下がろうとする。

 

と………

 

「! いい加減にして!!」

 

簪は突然そう叫んだかと思うと、再び楯無の方を振り返りながら腕を振るった!

 

重箱が弾き飛ばされ、床に落ちそうになる。

 

「! あぶねぇっ!!」

 

しかし、間一髪それに気付いた神谷が、スライディングする様にして重箱をキャッチした。

 

「! 簪ちゃん!!」

 

「貴女は私を何処まで馬鹿にすれば気が済むの!? もう私に構わないで!!」

 

涙目になり掛けていた楯無に、簪はそう叫ぶ。

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

その一連の騒動に、箒達は固まってしまう。

 

しかし………

 

「簪!」

 

「!?」

 

只1人動いた一夏が、簪の肩を摑んで自分の方を振り向かせたかと思うと、その頬を打った(無論、手加減はしている)。

 

「!? 一夏!?」

 

「一夏さん!? 何を!?」

 

その光景に、鈴とセシリアが驚きの声を挙げると………

 

「食べ物を粗末にしてはいけません!!」

 

一夏は引っ叩かれた頬を押さえて呆然となっていた簪に向かってそう言い放った!

 

「「「「「「ズコーーーッ!?」」」」」」

 

途端に、神谷とのほほんを除いた一同が、漫画の様に一斉にズッコける。

 

「ア、アイツはお母さんか………」

 

最初に立ち直った箒が、そんな事を呟く。

 

「作った人間が嫌いでも食べ物には敬意を払え。悪感情を食べ物に持ち込むな。こういう言葉もあるんだぞ、簪」

 

一夏はそんな箒達の様子なぞ気にせず、簪に向かって説教する様に言う。

 

「…………」

 

簪は呆然と一夏の言葉に聞き入っている。

 

「分かったか?」

 

「…………」

 

「返事!!」

 

「!? ハ、ハイ!!」

 

得体の知れない迫力に押されて、思わず返事を返してしまう簪。

 

「良し!………じゃあ、休憩にしようか!」

 

それを聞いた途端、先程までの迫力は雲散し、一夏は笑いながら箒達にもそう呼び掛けた。

 

その変貌ぶりに付いて行けず、またも箒達はズッコケてしまう。

 

「? 何やってんだ? 皆?」

 

「い、一夏~! お前は~!」

 

「心なしか、最近益々神谷に似て来ている様な気がする………」

 

「奇遇ね………アタシもそれ思ってたわ」

 

「わ、私もですわ………」

 

首を傾げる一夏に、ズッコケたままでそう言い合うラウラ、箒、鈴、セシリアだった。

 

「ア、アハハハハ………」

 

「ニャハハハハハ………」

 

シャルとティトリーは、苦笑いを浮かべている。

 

「休憩~休憩~! 御飯が美味しい!」

 

「本音………貴女ってホント、マイペースね」

 

そんな雰囲気の中で1人だけマイペースを保っているのほほんと、そんな彼女の姿に呆れる虚。

 

「ホラ、お前等! 何時までもズッコケてないで、飯にすっぞ!」

 

そして神谷は、1人整備用に置かれていたブルーシートを引っ張り出し、床に広げると、靴を脱いで上に胡坐を掻いて座り込み、重箱を開いていた。

 

一同は戸惑いながらも、済し崩し的に楯無の持って来た差し入れを頂き出す。

 

 

 

 

 

「ガツガツ! バクバク!」

 

「神谷………そんなにがっつかなくても」

 

遠慮無しに、次から次へと料理を平らげて行く神谷に、シャルがツッコミを入れる。

 

「お魚! お魚!」

 

そして、その正面で、魚料理ばかりを中心に摘まんでいるティトリー。

 

「…………」

 

そんな神谷とシャルの隣では、簪が無表情で食事を頬張っている。

 

「ア、アハハハハ………」

 

如何にか隣に座ったものの、苦笑いする事しか出来ない楯無。

 

「簪、そんな顔したまま飯食うなよ。折角の飯が不味くなるだろ」

 

「………この顔は………生まれつき………」

 

一夏が態度を軟化さえようとそう言うが、簪はバッサリと斬り捨てる。

 

「そんなこと言わずに。ホラ、このチキン南蛮、美味いぞ。食ってみろ」

 

と、そこで一夏は、重箱の中にあったチキン南蛮を一切れ箸で摑み、簪の目の前に差し出した。

 

「!?」

 

然しもの簪も、この事態には動揺を見せる。

 

「「「「…………」」」」

 

当然一夏は、箒、セシリア、鈴、ラウラから嫉妬と殺気の籠った視線を向けられるが、本人はまるで気づいていない。

 

「ホラ、あ~ん」

 

「…………」

 

一夏がそのまま目の前にチキン南蛮の一切れを差し出したままにするので、やがて簪は諦めた様にそのチキン南蛮を頬張った。

 

「な? 美味いだろ?」

 

「………うん」

 

一夏の言葉に、短くそう言って、簪は頷く。

 

(ホラ、楯無さん! 俺に続いて!)

 

と、そこで一夏は目で楯無にそう合図する。

 

「か、簪ちゃん! この卵焼きも如何?」

 

それを察した楯無は、目の前にあった重箱の中の卵焼きを指す。

 

「…………」

 

簪はそんな楯無の事をジッと見据える。

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

そんな空気を察したかの様に、一同は沈黙してしまう。

 

「…………」

 

(あうう………)

 

尚も簪は楯無の事を見据え、楯無は柄にも無く逃げ出したい衝動に駆られる。

 

(作った人間が嫌いでも食べ物には敬意を払え。悪感情を食べ物に持ち込むな)

 

と、そこで簪の脳裏に、先程の一夏の言葉が甦る。

 

「………貰うわ」

 

そして、楯無に向かってそう呟く様に言った。

 

「!! じ、じゃあ、ハイ!!」

 

楯無は卵焼きを1つ箸で取ると、簪の前に差し出す。

 

「…………」

 

簪はその卵焼きを頬張ると、ゆっくりと咀嚼する。

 

「ど、如何………かな?」

 

楯無は緊張した様子でそう尋ねる。

 

「…………」

 

暫く咀嚼を続ける簪。

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

楯無だけでなく、神谷とのほほんを除いた一同が緊張感に包まれる。

 

そして………

 

「………美味しい」

 

「そ、そう………」

 

((((((((ハアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!))))))))

 

その一言で、楯無は安堵し、一夏達も溜めていた息を思いっきり吐き出した。

 

「………ありがとう、姉さん」

 

「!? 簪ちゃん!?」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

と、そこで更に簪が漏らした言葉に、楯無と一夏達が驚愕する。

 

「…………」

 

良く見れば、簪の顔には微笑が浮かんでいた。

 

「! くうっ!?」

 

思わず泣きそうになってしまい、顔を背ける楯無。

 

(良かったですね、お嬢様………)

 

虚の方も、熱くなっている目頭を押さえている。

 

「一件落着かな~?」

 

「ま、そう見て良いじゃねえか?」

 

そしてそんな間も、次々に重箱を空にしているのほほんと神谷が、そんな更識姉妹の様子を見てそう言い合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから程無くして………

 

休憩は終わり、一同は再びスコープドッグの組み立てに戻ろうとする。

 

「少し………良い?」

 

しかし、簪がそれを制した。

 

「? 如何したんだ? 簪?」

 

「「「「「「「「「??」」」」」」」」」

 

一夏が尋ね、他の一同も怪訝な顔をする。

 

「ちょっと………待ってて………」

 

そう言い残すと、簪は整備室から出て行った。

 

「? 何だろう?」

 

突然の簪の行動に、一夏達は首を傾げる。

 

((………まさか))

 

そして、楯無と虚は嫌な予感を感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして………

 

簪は再び整備室へと戻って来た。

 

人数分のコーヒーが入ったトレーを持って………

 

「簪、それは?」

 

「私が淹れたコーヒー………食後の………一服に………どうぞ………」

 

尋ねて来た一夏に、簪はコーヒーが乗ったトレイを差し出しながらそう言った。

 

「おお、そうか。サンキュ」

 

「食後の一服か。悪くねえな」

 

「うむ、もらおう」

 

「私は紅茶党ですが………偶にはコーヒーも悪くないですわ」

 

「遠慮無く貰うわよ」

 

「頂きます」

 

「どれ………」

 

「いただきま~す!」

 

一夏、神谷、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、ティトリーは、次々にトレーからカップに入ったコーヒーを取って行く。

 

「さ………姉さん達も………」

 

簪はそう言って、楯無と布仏姉妹にもコーヒーを差し出す。

 

「わ~い、ありがとう~」

 

「あ、ありがとう………」

 

「い、頂きますね、簪様………」

 

笑顔で受け取るのほほんに対し、楯無と虚は表情を引き攣らせている。

 

「んじゃ、頂きまーす」

 

一夏がそう言って最初に口を付け、他の一同も続く様に簪が淹れたコーヒーに口を付けた。

 

そして………

 

「「「「「「「!? ゴホッ!? ゲホッ!?」」」」」」」

 

神谷とのほほん以外が全員………

 

 

 

 

 

むせる

 

 

 

 

 

「な、何だコレ!?」

 

「に、苦い………」

 

「いえ、苦い何てものじゃないですわ………」

 

「最早味の暴力よ………」

 

「う~………舌が痺れる………」

 

「コ、コレは………」

 

「みぎゃあ~~~~っ!」

 

全員が渋面を浮かべて顔を見合わせる。

 

「私のオリジナルブレンド………『ウドのコーヒー』………如何?………美味しい………?」

 

簪は、自身もそのコーヒーを飲みながらそう尋ねて来る。

 

その様には不味そうにしている様子は無い。

 

「中々面白れぇ味じゃねえか」

 

只1人、悪食な神谷だけが、平気な顔をして飲みながらそう返事を返す。

 

「そう………良かった………」

 

そう言って簪は笑みを浮かべるのだった。

 

(災難だったわね、一夏くん、皆)

 

(心中、お察し致します)

 

とそこで、同じ様にコーヒーに口を付け、渋面を浮かべていた楯無と虚が小声でそう話し掛けて来る。

 

(楯無さん………コレは一体?)

 

(あの子、昔からコーヒーに凝っててね………けど、如何にも苦いのが好きみたいで………苦味を追及している内に出来たのがコレなのよ………)

 

(私達も昔から良く飲まされて………むせてました)

 

小声で尋ねて来た一夏に、楯無と虚はそう返す。

 

「やあ~、おりむー良かったね~。かんちゃんがコーヒー振舞ってくれるって事は、皆の事を信頼した証だよ~」

 

とそこへ、自分の分のカップを片手に、のほほんがやって来て、そう言って来た。

 

「そ、そうなのか?」

 

「うん。かんちゃんがコーヒー振舞うのって、よっぽど仲の良い人か、心底信頼した人にだけだもん」

 

戸惑う一夏にそう返すのほほん。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

そこで一夏達は再び持っている『ウドのコーヒー』に視線を遣る。

 

殺人的な苦さを誇るこのコーヒー………

 

しかし………

 

コレは彼女が信頼の証として振舞ってくれてた代物………

 

残すワケには行かない………

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

一夏達は目尻に涙を浮かべ、そのコーヒーを更に飲み続ける。

 

尚、神谷と同じ様に平然と飲んでいた様に見えたのほほんだが………

 

「う~~ん? まだちょっと苦いかな~?」

 

自分はちゃっかりと、砂糖とミルクを入れて飲んでいたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから作業は再開され………

 

数時間後………

 

「出来たぞーっ!!」

 

遂に、簪の専用機『スコープドッグ・ターボカスタム』が完成した!!

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

油に塗れた顔で、完成したスコープドッグ・ターボカスタムを見上げている簪達。

 

脚部の裏側にスラスター部品が取り付けられて機動力が増した他にも、ミッションディスク・システムにより操縦性の向上が図られている。

 

火力面でも、背部にミッションパックと呼ばれる機能拡張モジュールを装備し、右の非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)に7連装ミサイルポッド。

 

左脇に13㎜ガトリングガンが装備されている。

 

右脇には2連装ミサイルポッドが装備され、右手にはお馴染みのヘヴィマシンガンが握られている。

 

更に、特殊兵装として、左非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)に3連装スモークディスチャージャーが装備されている。

 

「漸く終わったなぁ………」

 

「…………」

 

神谷は一仕事終えた感じにそう言うが、虚だけはそのスコープドッグ・ターボカスタム(以下TC)に不満げな表情を向けている。

 

「お姉ちゃ~ん。そんなにこの機体が気に入らないの~?」

 

「宛てにならない部品がザッと50は有るわ」

 

のほほんがそう問い質すと、虚は憮然とした様子でそう返す。

 

そう、このスコープドッグ・TC………

 

見てくれこそは立派だが、元はスクラップ部品の寄せ集め………

 

その為、組み込まれた部品の中には、信頼性が置けない物も多々有ったのである。

 

「気にしたら切りが無いよ~。それに、かんちゃんは満足してるみたいだけど?」

 

そう虚に言うのほほん。

 

彼女の言う通り、簪はスコープドッグ・TCを満足そうな目で見上げていた。

 

「ハア~~………簪様もお嬢様とは別の意味で手を掛けさせられる方ですね………」

 

その簪の姿を見た虚は、力無く溜息を吐き、額に手を当てる。

 

「それにしても………何だか無骨なISね………」

 

と、鈴がスコープドッグ・TCを見ながらそう言う。

 

確かに、箒達の専用機と比べると、スコープドッグ・TCは元の部品が部品な事はあるが、量産機に近く、カラーリングもまるで迷彩の様で、かなり無骨な印象を受けた。

 

「じゃあ何かパーソナルマークでも入れたら如何かな? 僕みたいにさ」

 

すると、自らのISにグレン団のマークを入れていたシャルがそう提案する。

 

「パーソナルマークか………『レッドショルダー』の様にか?」

 

「? 『レッドショルダー』?」

 

と、それを聞いたラウラが謎の単語を発し、箒が首を傾げる。

 

「ルーマニア軍の特殊IS部隊だ。凄まじい戦闘能力を誇るが、色々と黒い噂の絶えない部隊でな………生き残る為には仲間の血を吸い、死人の肉さえ喰らうと言われている。地獄からでも這い戻って来る連中らしい」

 

「聞いた事ありますわ………その名の通り、右肩が赤く塗られたISを使っているのですが、その赤は敵の血潮で染められた暗い赤だと………人呼んで、吸血部隊………」

 

ラウラの話を聞いて、セシリアも思い出した様にそう言う。

 

「こ、怖いニャ~」

 

怪談染みたレッドショルダーの噂に、ティトリーは思わずそう呟く。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

悍ましい話を聞いて、他の一同も思わず沈黙するが………

 

「へえ~、吸血部隊かぁ~。何かカッコイイな、そう言うの」

 

レッドショルダーを中2病的なモノと捉えてしまった一夏が、空気を読まずにそんな事を言う。

 

そして、スコープドッグ・TCを見上げると………

 

「コイツの肩は赤く塗らないのか?」

 

そう尋ねてしまう。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

途端に、神谷を除いた一同が、一夏を睨み付ける。

 

「織斑くん………貴方、塗りたいの?」

 

楯無が底冷えする様な声で一夏にそう言う。

 

「!?………へっ、冗談だよ」

 

そこで漸く空気を察した一夏は、慌ててそう誤魔化すのだった。

 

「まあ、取り敢えず完成したんだ。先ずはそいつを喜ぼうじゃねえか」

 

と、流石に不憫に思ったのか、神谷がフォローするかの様にそう言う。

 

「………ありがとう………皆のお蔭で………この子は………完成させる事が………出来た………」

 

「あ、いや、大した事ないよ」

 

簪の言葉に、一夏がそう答えると、他の一同も気にするなと言う表情を見せる。

 

「…………」

 

と、そこで簪は一夏の事を見据える。

 

「な、何かな………?」

 

地獄を潜り抜けて来た様な目をしている簪に見詰められ、一夏は若干戸惑う。

 

「織斑 一夏………タッグマッチ………貴方となら………組んでも良いわ………」

 

「えっ!?」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

(ほう?)

 

その言葉に、一夏と箒達は驚き、神谷も内心で軽く驚く。

 

「ホ、ホントか!? で、でも如何して急に………?」

 

「私は………これでもクソ真面目な女でね………借りは………返すわ………」

 

無表情のまま、簪はそう言う。

 

「そ、そうか………取り敢えず、ありがとな! 早速申し込みに行こうぜ!!」

 

一夏は簪の手を取ると、タッグマッチの申し込みに職員室へと向かうのだった。

 

「………今回の件は承諾済みだったが………」

 

「やはりどこか納得行きませんわね………」

 

と、それを見送った後、箒とセシリアがそう言い合う。

 

「ゴメンね、皆」

 

「ああもう! こうなったらタッグマッチでアイツと当たったら思いっきりブン殴ってやるんだから!!」

 

「それぐらいはせんとコッチの気が収まらんな………」

 

楯無が一同に向かって謝ると、鈴とラウラが若干殺気を醸し出しながらそんな事を口にする。

 

「ありゃ~、これはタッグマッチで血の雨が降るかな~」

 

「一夏くん………死なないでね」

 

その光景を見て、他人事の様にそう言うのほほんと、一夏を心配する虚だった。

 

「皆頑張ってね!………あ~、誰を応援しよう………」

 

1人専用機持ちで無いティトリーは、皆に激励を飛ばすが、誰を応援するかで悩む。

 

「簪の奴………一夏と組む方を選んだか………」

 

「ね、ねえ神谷………約束だよ」

 

「分かってるって。タッグマッチ、お前と組ませて貰うぜ」

 

「アハッ! やった!!」

 

そして、簪が一夏と組む事にした為、フリーになった神谷は、シャルと組む。

 

「背中は任せたぜ、シャル」

 

「勿論だよ、神谷」

 

迫るタッグマッチに向けて、2人は早くも闘志を燃やし始めるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

簪のモノローグ………

 

私の運命を歪ませた姉は、もう私の敵ではなかった………

 

益々泥沼に引き摺り込まれる様な予感に怯えながら、一方、私は驚いていた………

 

自分がこれ程までに願った事があるだろうか?

 

もっと人と関わりたいと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

遂に出ました、コイツの肩は赤く塗らないのか?
この遣り取りは、最低野郎なら1度はやりたい遣り取りです。

そしてレッドショルダーがISの世界に実在!
果たして、どう絡んでくるのか?

いよいよ組み上がったスコープドッグ・TCと、一夏と組むことにした簪。
次回はいよいよタッグマッチですが………
イベントは襲撃されるのがISのお約束。
果たして………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)
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