天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第46話『なら歌えば良いじゃねえか』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第46話『なら歌えば良いじゃねえか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

専用機限定タッグマッチが中止されて数週間後………

 

秋も深まる中でIS学園は今、1つの話題で持ち切りとなっていた………

 

 

 

 

 

IS学園・1年1組………

 

「ねえねえ! 聞いた?」

 

「聞いた聞いた! 本当なの!?」

 

「間違いないわ! 確かな筋で確認済みよ!!」

 

クラスの生徒達が、集団で固まって何かを話し合っている。

 

「お早う………ん? 何だ?」

 

「朝っぱらから騒がしいな、オイ」

 

とそこへ、登校して来た一夏と神谷が、集まっている生徒達を見てそう言う。

 

「一夏」

 

「一夏さん」

 

「一夏さん」

 

「神谷」

 

と、一夏と神谷の姿を見た箒、セシリア、ラウラ、シャルが声を掛けて来る。

 

「ああ、箒、セシリア、ラウラ、シャル。お早う」

 

「アイツ等、何話してんだ?」

 

箒達の姿を見て挨拶する一夏と、固まって話している生徒達は何を話しているのかと尋ねる神谷。

 

「うむ、私も詳しくは知らんのだが………」

 

「何でも、今日この学園にアイドルがいらっしゃるそうですわ」

 

「アイドル?」

 

箒とセシリアの話を聞いて、一夏は首を傾げる。

 

「うむ、『初音 ミク』という名前らしい」

 

「神谷、聞いた事ある?」

 

「いや、知らねえな」

 

ラウラがその学園に来るアイドルとやらの名前を言い、シャルがそう尋ねて来るが、神谷は知らないと言う。

 

「え~! かみやん達、ミクの事を知らないの~?」

 

と、一同の話を聞いていたのほほんがそう言って来る。

 

「いや、俺はアイドルとか、あんまり興味無いし………」

 

「俺もそうだな………」

 

一夏と神谷はそう言い返す。

 

「も~う………『初音 ミク』って言えば、日本で知らない人の方が少ないトップアイドルだよ~。今じゃ世界からも注目されてるんだから」

 

「へえ~、そんなに凄いアイドルなのか~」

 

「そうだよ~。何たって、世界で唯一のISを持ってるアイドルだからね」

 

「!? ISを持ったアイドルだと!?」

 

「「「!?」」」

 

のほほんのその言葉に、箒が思わず声を挙げ、シャル達も驚きを示す。

 

「そうそう。国際IS委員会から直々に専用機を与えられた、言わばISアイドルなんだよ」

 

「オイオイ、アイドルがIS………しかも専用機を持ってんのか?」

 

神谷が呆れた様に言う。

 

「ホラ~、この前、人類を裏切ったルーマニアのIS部隊が学園を襲ったじゃない~」

 

「レッドショルダーか………」

 

一夏は、タッグマッチの日に学園を襲撃して来た元ルーマニアのIS部隊………レッドショルダーの事を思い出す。

 

「それでね~、今各国とIS委員会は揺れに揺れてるらしいよ~。一部じゃ~、ISを凍結すべきだって意見も出てるらしいし~」

 

「だが、ISを凍結してしまっては、戦況は一気に人類側が不利になるぞ」

 

現在の世界各国の戦況を知るラウラは、反論する様にそう言う。

 

「そうなんだよね~。だから~、そう言う事は無いと思うんだけど~………その裏切った人のせいで、ISのイメージがドンドン落ちてるらしいよぉ~」

 

のほほんは相変わらず間延びした口調で言う。

 

コレまで、ISは女性達にとって羨望の的………永遠の憧れの存在であった。

 

しかし、その力が人類側に向けられた今………

 

今まで忘れられていた最強の兵器であるという認識を、再確認させる事となる。

 

それにより、ISの操縦者や操縦者になろうとしていた者が、次々にISから遠ざかろうとし始めている。

 

只でさえ、ISは女性にしか使えないという欠陥があるのに、操縦者が居なくなる様な事態は各国政府やIS委員会にとっても想定外だった。

 

日本でも、玩具感覚でISを使っていた女性自衛官が、次々に退官し始めているそうである。

 

今やISは憧れの存在では無く………

 

『危険な兵器』と認識されていた。

 

「それでね~。アイドルをIS操縦者にして、ISのイメージアップを図ろうとしてるみたいだよ~」

 

「成程………」

 

「態々貴重なISをアイドルに渡すワケが分かりましたわ」

 

箒とセシリアが、納得の行った表情となって頷く。

 

「要するに人気取りか………御苦労なこった」

 

「まあまあ、神谷。向こうはそれが仕事なんだし………」

 

益々呆れる神谷に、シャルは宥めるかの様に言う。

 

「なあ、ティトリーは如何思う?」

 

と、そこで一夏が、自分の席に居たティトリーに向かってそう尋ねた。

 

「…………」

 

しかし、ティトリーは何かを考え込んでいる様な表情で沈黙している。

 

「? ティトリー?」

 

「!? ニャッ!? な、何!? 一夏!?」

 

再度声を掛けられて、漸く我に返ったティトリーが、慌てながら一夏に問い返す。

 

「大丈夫か? 何か思い詰めてるみたいに見えたけど?」

 

「え、えっと~」

 

ティトリーが返答に困っていると………

 

「席に着け!!」

 

千冬が教室に姿を見せるや否や、そう言い放つ。

 

途端に、教室中に散らばっていた生徒達は、一斉に自分の席に着く。

 

只1人、神谷だけが平然と立ち尽くしていた。

 

「神谷………席に着け」

 

「ヘイヘイ………」

 

千冬が神谷にそう言うと、神谷はそう言いながら席に着き、何時もの足を机の上に投げ出すポーズを取る。

 

「…………ハア~~」

 

そんな神谷の姿を見て、千冬は疲れた様に重々しい溜息を吐いて、教壇の横へと移動する。

 

「皆さ~ん。お早うございま~す」

 

とそこで、今度は真耶がそう言いながら教室に入って来た。

 

「さて、皆さん。もう知っている人も居ると思いますが………実は今日、この学園に………素敵な人が来ています!」

 

教壇に立った真耶が、生徒達に向かってそう言うと、「やっぱり!」、「本当だったんだ!」といったざわめきが起こる。

 

「しかも何と! ウチのクラスに来てくれる事になりました!!」

 

「「「「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」」」」

 

しかし、続いて出た真耶の言葉で、一斉に驚きの声を挙げて沈黙する。

 

それと同時に、教室の後ろ側にカメラを抱えた人間や、集音マイクを持った人間と言った、所謂放送スタッフ達が現れ、バタバタと撮影の準備をする。

 

「それじゃあ、入って来て下さい………初音 ミクさん!」

 

「ハ~イ!」

 

そして、真耶がそう言うと、透き通る様な声と共に、教室の前側の出入り口から………

 

青緑色でくるぶしまで届く長さのツインテールの髪型をした、IS学園の制服に身を包んだ少女………ISアイドル・初音 ミクが姿を現した。

 

「初音 ミクです。今日1日、皆さんと一緒に勉強させてもらいます。よろしくお願いしますね」

 

そう言ってミクは、ニッコリと笑って頭を下げる。

 

「キャアアアアァァァァァーーーーーーッ!!」

 

「本物! 本物の初音 ミクちゃんよ!!」

 

「いやん! 可愛い~~~っ!!」

 

「ミクちゃ~ん! 私よ~~!! 妹になって~~~~っ!!」

 

途端に、生徒達は一斉に騒ぎ始める。

 

「うわっ!?」

 

「うるせえなぁ………」

 

その声の大きさに驚く一夏と、煩そうに耳を塞ぐ神谷。

 

「静かにしろ!!」

 

しかし、千冬の怒声が挙がると、ピタリと静まり返った。

 

「ア、アハハハハ………」

 

「ご、ゴメンね、ミクちゃん。ウチのクラス、元気の良い子が多いから………」

 

ミクが苦笑いを漏らすと、真耶がそう謝罪する。

 

「い、いえ、大丈夫です。ちょっとビックリしただけですから………それにしても、流石ブリュンヒルデさんですね。一声で全員を静まらせるなんて」

 

ミクは真耶にそう言いながら、千冬に尊敬の眼差しを送る。

 

「あまりその名は使わないでくれると助かる………好きじゃないんだ」

 

「あ、ゴメンなさい………」

 

「まあ、良い………初音 ミク。君の席は一夏の隣だ」

 

「あ、ハイ」

 

千冬に言われて、ミクは一夏の隣の席へ着く。

 

前には別の生徒が使っていた机だが、その生徒は退学した為、今は空席となっていた。

 

「君が織斑 一夏くん? ニュースで見たよ。世界で初めてISを動かした男性って」

 

と、ミクは隣の席の一夏に、ニッコリ微笑みながらそう声を掛ける。

 

「あ、ど、如何も………」

 

思わず照れながら返事を返す一夏。

 

「「「…………」」」

 

途端に、箒、セシリア、ラウラから殺意の籠った視線が向けられる。

 

(ううっ!?)

 

一夏は思わず身震いする。

 

しかしまあ、今回に限って彼の気持ちも分からないではない………

 

何せ、初音 ミクは世界からも注目されているアイドルなだけあって、かなり可愛い容姿をしている。

 

そんな美少女にニッコリ微笑まれながら挨拶されれば、一夏でなくても照れてしまうだろう。

 

「あ、そっちの方は………」

 

「………気に入らねえな」

 

と、ミクは今度は神谷に挨拶しようとしたが、それを遮る様に神谷がそう言う。

 

「えっ?」

 

「ちょっ!? アニキ!?」

 

神谷の思わぬ言葉に、ミクは戸惑い、一夏は慌てる。

 

「そんな作り笑い浮かべて………楽しいのかよ?」

 

「!?」

 

そして続いて神谷から出た言葉で、ミクは驚いた様な様子を見せる。

 

「…………」

 

神谷は無言で立ち上がると、堂々と教室を後にする………

 

「ちょっ!? て、天上くん!?」

 

「山田くん、放って置け。何か言うだけ無駄だ………」

 

真耶が慌てるが、千冬は頭を抱えて諦めた様な様子でそう言う。

 

「え、ええ~~」

 

千冬にそう言われ、真耶は情けない声を挙げる。

 

「ちょっと!? 何よあの態度!?」

 

「ミクちゃんに向かって~!」

 

「天上 神谷! 許すまじ!!」

 

生徒達は、ミクへ暴挙とも取れる行動を取った神谷に批判の声を挙げる。

 

教室後方に居た撮影スタッフも、戸惑って撮影を止める。

 

「すみません、皆さん。彼の事は気にせず撮影を続けて下さい」

 

と、そんなスタッフ達に向かって、千冬がそう言う。

 

それを受けて、スタッフ達は若干戸惑いながらも、撮影を再開する。

 

「ミクちゃん! あんな奴の言う事なんか気にしないで良いよ!」

 

「そうそう! 何時もあんな感じだから!!」

 

「う、うん………」

 

生徒達はミクをフォローする様にそう言うが、ミクは若干表情を曇らせていた。

 

それでも、カメラが向けられるとそんな様子はおくびにも出さなかったのは、流石にプロである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れて昼休み………

 

ミクは、一夏達専用機持ちのメンバーに囲まれて、屋上で弁当を食べようとして、移動中だ。

 

勿論、一同の後ろからは撮影スタッフが尾いて来ている。

 

「わおっ! 本物のミクじゃないの!!」

 

「きゃあ~~、可愛い~~!!」

 

途中で合流した鈴と楯無は、ミクの姿を見て、テンションが上がりっ放しである。

 

「…………」

 

只1人、簪だけが興味無さ気だった。

 

「鈴、お前は初音 ミクの事を知ってたんだな」

 

と、一夏が何気なくそう言うと………

 

「何言ってんのよ!? 寧ろ知らないアンタ達がおかしいんでしょうが!!」

 

「そうだよ、一夏くん!! 初音 ミクちゃんだよ! 初音 ミク!!」

 

鈴に加えて、楯無までもがそう言って来る。

 

「お、おう………ゴメンナサイ」

 

その迫力に、一夏は思わず謝ってしまう。

 

「凰さん、更識さん。そんなに織斑さんを責めないで下さい。私、気にしてませんから」

 

しかし、当の本人であるミクが、ニッコリと笑いながらそう言う。

 

「そう?」

 

「まあ、ミクちゃんが良いって言うなら………」

 

それを聞いて、鈴と楯無は素直に引き下がる。

 

「ひえ~~………ありがとう、ミクちゃん」

 

「いえいえ、どういたしまして」

 

そう言ってニッコリとした笑顔を一夏に向けるミク。

 

「!?」

 

それを見て、一夏はまたも照れる様子を見せる。

 

「「「「…………」」」」

 

途端に、箒、セシリア、鈴、ラウラからは殺意の視線が送られるのだった。

 

そうこうしている内に、漸く屋上へと辿り着く。

 

「? アレ?」

 

するとそこで、シャルが何かに気づく。

 

「? 如何した? シャルロット?」

 

「ねえ、何か聞こえない?」

 

一夏がそう聞くと、シャルは一同にそう問い質した。

 

「何か?」

 

「「「「「「??」」」」」」

 

と、そこで一夏と箒達も耳を澄ませる。

 

「!? コレは!?」

 

そこで、ミクが驚きを露にする。

 

聞こえて来ていたのは、ミクの持ち歌『ワールドイズマイン』だった。

 

「誰が聞いてるんだろう?」

 

「もしかして………」

 

一同は屋上の芝生エリアへと踏み込む。

 

そしてそこには………

 

「…………」

 

神谷が芝生の上に寝っ転がり、携帯から『ワールドイズマイン』を流していた。

 

「神谷!」

 

「アニキ!」

 

「おう、お前等。もう昼休みか」

 

神谷は、一夏達の姿を見ると、身体を起こす。

 

「ちょっと神谷! アンタミクちゃんに暴言を吐いたって聞いたわよ!!」

 

「なのにそのミクちゃんの曲を聞いてる………如何いう了見!?」

 

鈴と楯無が、神谷へと食って掛かって行く。

 

「聞いた事なかったからな。中々良い歌じゃねえか」

 

しかし、そんな2人を軽く流しながら、神谷はそう言い放つ。

 

「あ、あの、えっと………私の歌、聞いてくれたんですね。ありがとうございます」

 

ミクは戸惑いながらも、自分の歌を聞いてくれた神谷に感謝の意を示す。

 

撮影スタッフも良い絵だと言う様にカメラを寄せて来る。

 

「兎に角………アニキもミクの良さを分かったみたいだし、それで良いじゃないか」

 

「別はそうは言ってねえぞ」

 

コレ以上は不毛な議論になると思い、一夏がその場を纏めようとしたが、神谷はそこでまたも爆弾を投げ込んで来た。

 

「え!?」

 

「ちょ!? アニキ!?」

 

「アンタ! 何様の積り!?」

 

「一体如何言う事か説明してくれるかな?」

 

ミクは再び驚き、一夏が戸惑っていると、鈴が神谷に食って掛かり、楯無も笑みを浮かべてのプレッシャーを掛ける。

 

「お前さん………何で作り笑いなんかしてんだ?」

 

すると、神谷はミクに向かってそう言い放った。

 

「!?」

 

それを聞いたミクが仰天する。

 

「作り笑いって………」

 

「アンタ、何適当なこと言って………」

 

「………如何して分かったんですか?」

 

鈴が再び噛み付こうとしたが、その前にミクがそう言って来た。

 

「!? ミクちゃん!?」

 

「まさか………ホントなの!?」

 

戸惑う鈴と楯無。

 

撮影スタッフも若干混乱している。

 

「まあな………で? 如何してだよ?」

 

「それは………」

 

神谷の問いに、ミクは答え辛そうにしている。

 

と、その視線が撮影スタッフに向けられる。

 

「………カメラにゃ映せねえってか?」

 

「………すみません、スタッフさん。暫くオフレコにしてくれませんか?」

 

神谷がそう言うと、ミクはスタッフにオフレコにしてくれと言う。

 

「え? いやでも………」

 

「そりゃ困るよ、ミクちゃ~ん。お昼の談笑の光景なんて、撮影するに値する良い絵になるに決まってるじゃな~い」

 

渋る撮影スタッフ。

 

「お願いします」

 

「そう言われてもね~」

 

尚もお願いするミクだが、スタッフは相変わらず渋る。

 

と………

 

「口で言って分からないなら………コレと話す?」

 

簪がそう言うと、懐から矢鱈ゴツい拳銃を取り出し、撮影スタッフに突き付けた!!

 

「「「「!? ヒイイイイィィィィィーーーーーーッ!?」」」」

 

撮影スタッフは忽ち悲鳴を挙げて逃げ出した!!

 

「…………」

 

それを確認すると、簪は肘を曲げて銃口を天に向ける。

 

「か、簪? その銃は?」

 

冷や汗を掻きながら、一夏が簪に尋ねる。

 

「バカラ・メタル社製………バハウザーM571………アーマーマグナム………私が独自に研究して造り出したISの絶対防御を貫ける徹甲弾が装填されてるわ………」

 

サラッととんでもない事を言いながら、簪はゴツい銃………アーマーマグナムを懐に戻す。

 

「うむ、良い銃だ」

 

軍人であるラウラは、簪の持っていた銃にそう言う評価を下すものの、神谷を除いた他の一同はドン引きしていたのだった………

 

「え、えっと、それでミクちゃん。アニキが言ってた事………本当なのかい?」

 

と、そこで一夏が空気を変える様に、ミクにそう尋ねる。

 

「あ、ハイ………私、最近………ずっと心から笑った事なんて無くって………」

 

「如何してよ!? ミクちゃんは誰もが認めるトップアイドルじゃない!! しかもIS持ちの!!」

 

鈴が、信じられないと言う様にそう言うと………

 

「………そのISが問題なんです」

 

ミクから、思いがけない言葉が出て来た。

 

「? ISが問題って………」

 

「一体如何言う事なんですの?」

 

ミクの言葉に、楯無とセシリアが首を傾げる。

 

「………私がアイドルになったのは、色んな大勢の人に自分の歌を聞いてもらって、元気になってもらいたいと思ったからなんです」

 

ミクはポツリポツリと語り出す。

 

「最初は勿論上手く行かなかったけど………でも………頑張ってレッスンに励んで、仕事に打ち込んで………我武者羅に頑張ったんです」

 

「…………」

 

「そうしたら、1人………また1人ってファンの人が出来て来て………今じゃトップアイドルなんて言われる様になって………」

 

「勿論! ミクちゃんは今や誰もが認めるトップアイドルよ!!」

 

鈴がまるで自分の事の様にそう言うが………

 

「でも………IS委員会が私にISをくれてから………皆の私を見る目が変わったんです」

 

「変わった?」

 

シャルが首を傾げる。

 

「皆私の歌より………私がIS乗りだって事に注目する様になったんです」

 

「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」

 

「ISを持つ世界で一番強いアイドルだって………皆私にIS乗りである事を求める………私はアイドルだから、皆が求める姿には答えなくちゃいけない………だから………来る日も来る日も薄っぺらい笑みを浮かべて仕事を熟して………」

 

「ミク………」

 

箒がそんなミクを哀れむ様な目で見る。

 

「私は別にISなんか欲しくなかった………ただ私の歌を聞いてもらいたかっただけなのに………」

 

そこで、堪えていたものに耐えられなくなったのか、ミクはポロポロと涙を流し始めた。

 

「ミ、ミクちゃん!?」

 

「ちょっ!?」

 

泣き出してしまったミクに、一夏達はアタフタとする。

 

と………

 

「なら歌えば良いじゃねえか」

 

そんなミクに向かって、神谷は遠慮無しにそう言う。

 

「ちょっ!? アニキ!!」

 

「神谷! アンタねぇ!!」

 

一夏が驚き、鈴が摑み掛かって行きそうになるが………

 

「お前の歌がホンモンなら、歌ってりゃあ聞いてくれる奴は居る筈だぜ………その為にISが邪魔だってんだら、いっそ利用してやれ!! 目の前の壁ってのは打ち破る為に有るんだ!!」

 

神谷は、お得意の熱血根性論をミクに叩き付ける。

 

「ISを利用………目の前の壁を打ち破る………」

 

「ああ、もう、ミクちゃん。コイツの言う事は聞き流して良いから」

 

「そうそう。ISを持っていてもいなくても、少なくとも私達はミクちゃんのファンだよ」

 

神谷の言葉に感じ入るものがあったミクだったが、鈴と楯無がそう言って来る。

 

結局、また話そうとしたところで、逃げ出した撮影スタッフが戻って来てしまい、話はそれまでとなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして再び時は流れて放課後………

 

ミクの緊急コンサートが開かれる事となり、会場として選ばれた第1アリーナには、全校生徒が集結している。

 

「「「「「「「「「「ミーク!! ミーク!! ミーク!! ミーク!!」」」」」」」」」」

 

大合唱のミクコールが、地響きとなって地面を揺さぶる………

 

「皆ー! ありがとうー!! 今日は心行くまで楽しんで行ってねー!!」

 

ステージ上のミクがそう言うと、曲が流れ始め、ミクはダンスを披露しながら踊り始める。

 

「キャーッ! ミクちゃ~~ん!!」

 

「う~~ん! 私もう死んでも良い!!」

 

鈴と楯無は、最早興奮の絶頂に居た。

 

「改めて見ると、本当に魅了されるな~」

 

「トップアイドルって言うのも頷けるね~」

 

一夏とシャルも、歌って踊るミクの姿を見てそんな感想を呟く。

 

箒達もミクの迫力に黙り込んでいる。

 

(やっぱり良い歌歌うじゃねえか………)

 

神谷も心の中でそう思っていた。

 

と、その時………

 

突如学園内に警報が鳴り響く!!

 

「!? えっ!?」

 

ミクは思わず歌うのを止めてしまい、生徒達も戸惑いの様子を見せる。

 

「!? コレは!?」

 

「まさか!?」

 

一夏と箒がそう言った瞬間………

 

[ロージェノム軍襲来!! 全校生徒は直ちにシェルターへ避難せよ!! 繰り返す!! ロージェノム軍襲来!! 全校生徒は直ちにシェルターへ避難せよ!!]

 

千冬の声でそうアナウンスが流れた。

 

「「「「「「「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」」」」」」」」」」

 

途端に生徒達は、アリーナから逃げ出し始める。

 

「チッ! こんな時にかよ………」

 

「オノレェ! ロージェノム軍!! ミクちゃんのコンサートを中止させるなんてぇ!!」

 

「この恨み! 晴らさでおくべきかぁ!!」

 

神谷が愚痴る様にそう言うと、鈴と楯無が恨みが籠った怒りの声を挙げる。

 

[神谷! 一夏くん! 他の皆も聞こえる!?]

 

とそこで、神谷には通信機に、一夏達には待機状態のISからリーロンの声が響いてくる。

 

「リーロンさん!」

 

「状況は如何なっている!?」

 

[敵は例の飛行母艦よ。海上の方から飛行ガンメン部隊を展開して学園の方に向かって来てるわ。如何やら、爆撃でもする積りみたいね]

 

ラウラに状況の報告を求められると、リーロンはそう言う。

 

「そうはさせるかってんだ! 行くぞ、お前等!!」

 

「おうっ!!」

 

神谷の声に、一夏が返事を返して待機状態の白式を構え、他の者も同じく待機状態のISを構えた。

 

「グレンラガン! スピンオンッ!!」

 

そして神谷も、コアドリルを握った右手を天に掲げる様に構えたかと思うと………

 

螺旋力の光に包まれ、グレンラガンの姿となった!!

 

一夏達も光に包まれ、ISを装着した状態となる。

 

「行くぜ!!」

 

グレンラガンがそう言って、グレンウイングを展開すると、空へと舞い上がる。

 

一夏達もそれに続き、飛行出来ない簪はジェットローラーダッシュで地上からその後を追って行く。

 

「神谷さん………一夏さん………皆さん………」

 

「ミクちゃん! 早く逃げるんだよ!!」

 

ミクがその後姿を見送りながら呆然としていたところ、スタッフに手を引かれて、シェルターへと連れて行かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

今回からオリジナルストーリーが始まります。
その1発目は、あの電子の歌姫・初音ミクにゲスト出演して頂きました。
アイドルが学園に来るってのは昭和の作品なんかだとお約束ですよね。

そしてISらしく、ISを持ったアイドルにしてみました。
しかし、その事が苦悩の原因となっているミク。
そんな中で、お約束の襲撃。
戦いに赴く神谷達を見て、ミクは………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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