天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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今年度最後の投稿となります。

来年もよろしくお願いします。


第5話『ココはどーんと胸を借りる積りで来やがれ!!』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第5話『ココはどーんと胸を借りる積りで来やがれ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏とセシリアのクラス代表を決める戦いは………

 

ヴィラルの乱入により、御流れとなった………

 

アリーナの損傷も酷かった為、再試合はアリーナの修復が終わってからとなった。

 

しかし、その後………

 

セシリアがクラス代表候補から降りると宣言………

 

その為、自動的に一夏がクラス代表へと就任する事になった。

 

 

 

 

 

その夜………

 

IS学園の食堂にて………

 

「織斑くん、クラス代表決定おめでとーう!!」

 

「「「「「おめでとうーっ!!」」」」」

 

一角の席を借り切り、一夏のクラス代表就任を祝うちょっとしたパーティが行われていた。

 

「あ、ありがとう………」

 

「オラ、一夏! もっと堂々としろ!! お前はクラスの代表! 言わば、コイツ等のリーダーになったんだぞ! リーダーがそんな態度じゃ、子分達は付いて来ねえぞ!!」

 

恐縮している一夏と、その左隣に座って堂々としろと言っている神谷。

 

「………フンッ」

 

そして、そんな2人の姿を見て、面白くなさそうな表情を浮かべる箒。

 

「でも………セシリア、本当に良かったのか? 俺がクラス代表になっても?」

 

と、そこで一夏は、箒の更に隣に座って居たセシリアにそう声を掛けた。

 

「うふふ………確かにあのまま戦っていれば、私の勝ちは確実だったでしょう」

 

「んだとぉ!? 一夏が負けるかよ!!」

 

「アニキ、押さえて………」

 

立ち上がると得意そうにそう語り出すセシリアに、神谷が摑み掛かって行きそうになったが、一夏が押さえる。

 

「ですが、一夏さん」

 

「あ、ハイ………」

 

不意に呼ばれて、思わず敬語で返事をしてしまう一夏。

 

「あの謎のマシンを退けた時の腕前………正直、感嘆致しましたわ。私、今まで男はだらしなくて駄目で頼りない存在だと思っていましたけど………」

 

(それは俺も最初はそう言う風に見られてたって事か?)

 

セシリアの言葉に、一夏は心の中でそうツッコむ。

 

「ですが、一夏さん………貴方は違いました。あの敵を相手に逃げずに戦い、勝利した………あんな度胸がある殿方は初めてみました。あの口上が今でも私の耳に残っていますわ」

 

「そ、そりゃあ、どうも………」

 

褒められているので悪い気はせず、若干照れた様子を見せる一夏。

 

「…………」

 

そんな一夏を見て、箒は更に面白くなさそうな顔をする。

 

「そして………神谷さん」

 

「あん?」

 

急に話し相手が変わり、神谷は気の無い返事を返す。

 

「貴方の、あの敵に迷わず向かって行った勇気にも感嘆させられましたわ。何度打ちのめされても立ち上がるその根性にも」

 

「へっ、打ちのめされたは余計だよ」

 

そう言いながらも、ニヤリとした笑みを浮かべている神谷。

 

「流石は一夏さんの兄貴分なだけは有りますわ。貴方が口だけの人間じゃないという事は良く分かりました」

 

「高飛車女………いや、セシリア。お前も見る目が有るじゃねえか」

 

「当然ですわ! 私を誰だと思っているのです!?」

 

と、セシリアはそう言って腕組みをしたポーズで仁王立ちした。

 

その様子に、パーティーに参加していた生徒達が一瞬呆気に取られる。

 

「気に行ったぜ! お前にもグレン団メンバーの称号をやるぜ!!」

 

「グレン………団? 何ですの、ソレ?」

 

「熱い魂の在り処だ!」

 

「成程………光栄ですわ」

 

そう言い合って、互いにニヤリと笑い合うセシリアと神谷だった。

 

(セシリアって、あんなキャラだったけ?)

 

(天上くんと織斑くんの熱血ぶりが移ったのかな?)

 

(このまま行くと………クラス全員が熱血漢に!?)

 

(それはやだな~。何か汗臭そう~)

 

(良いな~。私もグレン団に入りたいなぁ~)

 

そんな様子を見て、そうヒソヒソと話し合う生徒達だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

IS学園・1年1組の教室にて………

 

今、教室内では1つの噂が飛び交っていた。

 

「おはよー。ねぇ、聞いた? 転校生の噂?」

 

「あん?」

 

「転校生? 今の時期に?」

 

教室に着いて、席に座った一夏と神谷に、クラスメイトの1人がそう言って来た。

 

「そう、何でも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「あら? 私の存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 

その話を聞いていたセシリアが、相変わらず様になっている腰に手を当てるポーズを取ってそう言う。

 

「このクラスに転入して来るワケではないのだろ? 騒ぐ程の事でもあるまい」

 

先程まで自分の席に居た箒が、何時の間にか一夏の傍に来てそう言う。

 

「どんな奴なんだろうな?」

 

「へっ、喧嘩を売って来たら返り討ちにしてやるぜ」

 

時期外れの転入生に興味を抱く一夏と、好戦的な台詞を吐く神谷。

 

「もうすぐクラス対抗戦だもんね。織斑くんには頑張ってもらわないとね」

 

「フリーパスの為にも」

 

「今のところ専用機持ってるクラス代表って1組と4組だけだから、余裕だよ」

 

と、クラスメイト達がそう言い合っていると………

 

「………その情報、古いよ」

 

そう言う声が、教室の入り口辺りから聞こえて来た。

 

「「「「「?」」」」」

 

一同がその声に釣られる様に、教室の入り口に目をやると、そこには………

 

肩出しの改造制服を着た、小柄でツインテールの少女が佇んでいた。

 

「2組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから!」

 

ツインテールの少女は、1組の生徒全員に聞こえる様にそう言い放つ。

 

「鈴?………お前、鈴か!?」

 

「おおっ!? 何だよ、チャイナ娘! 久しぶりじゃねえか!!」

 

その少女の姿を見た一夏が驚いた様子で、神谷が懐かしい顔に会ったと言う顔で席から立ち上がった。

 

「そうよ! 中国代表候補生、凰 鈴音(ファン リンイン)! 今日は宣戦布告に来たって訳………って、神谷!? 何でアンタまでこの学園に居るのよ!?」

 

ビシッと人差し指を立てた右手を1組の教室に向ける様に構えて、高らかにそう言い放つ少女………凰 鈴音(ファン リンイン)だったが、神谷の姿を見てその高らかな態度が1発でフッ飛ぶ。

 

「フッ………愚問だな!! 弟分の一夏が居る学園に兄貴分の俺が居る!! 当然の事だろう!!」

 

「説明になってないわよ!! 何っ!? アンタもISを操れるってワケ!?」

 

そのまま神谷と言い争いに突入する鈴。

 

………と言うより、鈴が一方的に神谷に突っ掛かってると言う感じだ。

 

「だ、誰ですの? 神谷さんは兎も角、一夏さんと親しそうに………」

 

「…………」

 

その様子に、若干戸惑いを浮かべているセシリアと箒。

 

「ああ、もう! 兎に角!! 一夏! 今日はアンタに宣戦布告を………」

 

と、鈴が改めて一夏に宣戦布告を言い渡そうとしたところ………

 

突然後ろから頭を小突かれた。

 

「!? イッターッ!?………何すんの!?………!? ふわっ!?」

 

振り向いて、小突いて来た人物に噛み付く鈴だったが、その人物………

 

千冬の姿を見て表情を変える。

 

「もうSHRの時間だぞ」

 

「ち、千冬さん………」

 

「織斑先生と呼べ。サッサと戻れ。邪魔だ」

「す、すいません………また後で来るからね! 逃げないでよ、一夏! ついでに神谷! アンタもね!」

 

千冬の迫力に圧倒された様に道を譲ると、そう捨て台詞を残して、鈴は去って行った。

 

「アイツが………代表候補生?」

 

「へっ………面白くなってきたじゃねえか」

 

若干の戸惑いを浮かべている一夏と、何やらワクワクしている様な様子を見せる神谷だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、昼食の時間となり………

 

一夏、神谷、鈴が、同じ席で昼食を取っていた。

 

その隣の席では、箒とセシリア、そして同じクラスの生徒達が、その様子を注視していた。

 

「で? 何時代表候補生になったんだよ?」

 

「アンタこそ、ニュースで見た時、ビックリしたじゃない………神谷が居た事にはもっと驚いたけど」

 

「当然だ! 俺を誰だと思ってやがる!!」

 

「またそれ! いい加減、耳に胼胝が出来るほど聞いたんだけど!!」

 

「バッキャロウ! 男の決め台詞ってのは、言わば魂の言葉なんだよ!!」

 

「だから意味が分かんないって言ってんでしょ!!」

 

またも神谷に突っ掛かっている鈴。

 

「アハハハハッ! こうしてると、あの頃を思い出すなぁ………」

 

そんな2人の様子を見て、一夏は昔を懐かしむ様に楽しそうな表情を浮かべる。

 

と、その時!!

 

「一夏! 神谷! そろそろ説明して欲しいのだが………」

 

「そうですわ、一夏さん! 神谷さん! その人は誰ですの!?」

 

と、そこで………

 

横のテーブルで見ていた箒とセシリアが、そう言いながら一夏と神谷………主に一夏の方に詰め寄って来た。

 

「ま、まさか、一夏さん! こちらの方と、つ、つつつ、付き合ってらっしゃるの!?」

 

「!? べ、べべべ、別に私は………」

 

セシリアの付き合っているのか、という質問に動揺する鈴だったが………

 

「そうだぞ。只の幼馴染だよ」

 

一夏がアッサリとそう言い放った。

 

「むうう………」

 

それを聞いた鈴は不機嫌そうな顔になる。

 

「ん? 如何かしたか?」

 

「何でも無いわよ!」

 

一夏が問い掛けると、そう言ってそっぽを向いてしまう鈴だった。

 

「幼馴染?」

 

その言葉に箒が驚いた表情を見せる。

 

「そういや、箒。お前とは入れ違いに来たんだっけな」

 

「ああ、そう言えば………」

 

神谷の言葉に、一夏も同意する。

 

「こいつは篠ノ乃 箒。前に話しただろ? 箒はファースト幼馴染みで、お前はセカンド幼馴染みと言った所だ」

 

「ファースト………」

 

ファーストと言う言葉に、箒は頬を赤らめる。

 

「ふ~~ん、そうなんだ………初めまして、これからよろしくね」

 

「ああ、こちらこそ………」

 

そう言い合う鈴と箒の視線が交差した瞬間、火花が散った様に見えた。

 

「ん、んん! 私の存在を忘れてもらっては困りますわ。わたくしはセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生ですわ。一夏さんとは、先日クラス代表の座を掛けて、熱い戦いを………」

 

「アンタ、1組の代表になったんだって?」

 

「ああ、まあ………半ば成り行きみたいなもんだけどな」

 

セシリアが語り始めているのを無視して、鈴は一夏を会話を続ける。

 

「へえ~、意外ねえ。神谷が居るんだったら、てっきりアンタがなるとか言い出すと思ったんだけど………」

 

「オイオイ、鈴。見くびってもらっちゃ困るなぁ。この神谷様が弟分の晴れ舞台を邪魔すると思ってんのかよ」

 

「あ、そう………まあ、別に良いけど………一夏。良かったらアタシが見てあげようか? ISの操縦」

 

「ああ、そりゃ助かる」

 

「………って、ちょっとぉ! 聞いてらっしゃるのぉ!?」

 

とそこで、無視されている事に気づいたセシリアが、鈴に迫る。

 

「ゴメン………アタシ、興味無いから」

 

しかし、鈴はそう言って、バッサリと斬り捨てる。

 

「言ってくれますわね………」

 

「一夏に教えるのは私の役目だ!!」

 

と、そこで箒もそう言って、鈴に迫った。

 

「貴方は2組でしょ。敵の施しは受けませんわ!」

 

「アタシは一夏と話してるの。関係無い人達は引っ込んでてよぉ」

 

「「むう!!」」

 

鈴の挑発する様な態度に、箒とセシリアは表情を強張らせる。

 

「ど、如何したんだ?」

 

「ハハッ、あの生意気な性格も変わってねえな………」

 

何やら険悪な雰囲気になっている3人の様子に困惑する一夏と、旧友の変わらぬ様子を懐かしんでいる神谷。

 

「貴女こそ………後から出て来て、何を図々しい事を!!」

 

「後からじゃないけどね。アタシの方が付き合いは長いんだし」

 

「それを言うなら、私の方が早い! 一夏は! 何度もウチで食事している間柄だ!」

 

「それなら、アタシもそうだけど?」

 

「「!?」」

 

と、鈴のその言葉に箒とセシリアの表情が変わる。

 

が………

 

「おう! そう言やそうだな! オメェん家の中華料理屋の飯は旨かったからなぁ!!」

 

神谷が雰囲気を読まないでそう言い放ってしまった。

 

「ちょっ! 神谷! アンタ、余計な事を………」

 

「何だ、店なのか………」

 

「お店なら、別に不自然な事は何1つありませんわね」

 

「…………」

 

安堵する箒とセシリアの様子を見て、不機嫌そうになる鈴。

 

「そう言えば、親父さん、元気にしてるか?」

 

と、そこで一夏がそう話題を振った。

 

「あ、うん………元気だと思う」

 

しかし、そう言った鈴には、今までの歯切れの良さが無かった。

 

「??」

 

その事を怪訝に思う一夏だったが、そこでチャイムが鳴った。

 

「あ! じゃあ一夏、放課後に………そっちの練習が終わった頃に行くから。時間空けといてよね」

 

「ああ………」

 

食器を片付けに向かう鈴を見送りながら、一夏はやや生返事を返す。

 

「相変わらずオメェにべったりだな、アイツも」

 

「「…………」」

 

そんな一夏に神谷がそう言うと、箒とセシリアが不機嫌そうな表情を浮かべるのだった。

 

そして午後の授業が開始された………

 

当然、神谷はサボタージュを決行していたが(千冬の胃がストレスでマッハである)………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、放課後………

 

修復が完了した第3アリーナにて………

 

一夏にISの訓練をさせようとやって来た箒とセシリアだったが………

 

「神谷さん! 如何言う事ですの、コレは!?」

 

「神谷! 一体如何言う積りだ!!」

 

そう声を荒げる2人。

 

今、2人の目の前には………

 

白式を装着している一夏と………

 

その一夏と対峙する様に、伝統と信頼のガイナ立ちをしているグレンラガンの姿となった神谷の姿が在った。

 

「な~に、偶には弟分の喧嘩の腕を見てやるのも兄貴分の務めだと思ってな………と言うワケで、来い! 一夏!!」

 

神谷はそう言い放つと、グレンラガンに構えを取らせた。

 

「そ、そんな!! 無理だよ! 俺じゃアニキには敵わないよ!!」

 

一夏はとんでもないという様子で、神谷にそう反論する。

 

「何言ってんだ! 昔は良くやっただろうが! 兄貴分が直々に喧嘩の指導してやるってんだ! ココはどーんと胸を借りる積りで来やがれ!!」

 

「アニキ………分かったよ!」

 

しかし、神谷の言葉で戦意が高まったのか、雪片弐型を実体剣モードで構えた。

 

(くうっ! 折角の一夏さんとの時間が!!)

 

(せっかくこの為に『打鉄』の使用許可を取ったと言うのに!!)

 

そんな2人の様子を見て、やきもきするセシリアと箒だったが、男の友情の熱さに負け、介入出来ずに居た。

 

「行くぜえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

と、そんな中で、グレンラガンが動いた!!

 

一夏に向かって、勢い良くダッシュして突撃して行く。

 

「!!」

 

身構える一夏。

 

「おりゃああっ!!」

 

と、一夏の眼前まで迫ったグレンラガンが、不意に跳躍した。

 

「!?」

 

すぐにその姿を目で追う一夏だったが………

 

跳躍したグレンラガンが太陽を背にした為、太陽光を真面に見てしまう。

 

「!? うわっ!?」

 

一瞬目が眩む一夏。

 

「燃える男のぉ!!」

 

するとその間に、グレンラガンは空中で前方宙返りを決めると、右足を一夏に向かって伸ばし、突っ込んで行った!!

 

「火の車キイイイイィィィィィックッ!!」

 

炎に包まれたグレンラガンの飛び蹴りが、一夏に叩き込まれる!!

 

「!? うわああっ!?」

 

咄嗟に実体剣モードの雪片弐型で受け止めたが、大きくシールドエネルギーを削られる。

 

「ぐうううっ! でりゃああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

だが、すぐに気合を入れて、グレンラガンを弾き飛ばす。

 

「!! おおっと!!」

 

グレンラガンは後方宙返りを決めながら着地。

 

「まだまだ行くぜぇ!!」

 

その後、片手に2本、両腕で計4本のドリルを出現させたかと思うと、それを腕ごとアリーナの地面に突き刺した!!

 

そして何と!!

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

アリーナの地面を、巨大な岩石として持ち上げた!!

 

「うえええっ!?」

 

まさかそんな事をするとは思っていなかった一夏は、思わず珍妙な声を挙げてしまう。

 

「喰らえぇ! グレンラガン・超・ウルトラ・デラックス・岩石投げぇ!!」

 

その持ち上げた岩石を、一夏目掛けて思いっきり投げつけるグレンラガン。

 

巨大な影が、一夏に掛かる。

 

「うわあああっ!? ちょちょちょ、ちょっとぉ!!」

 

慌てながらも、素早く雪片弐型をエネルギーブレード状態にし、岩石を斬り裂いた!!

 

斬り裂かれた岩石はバラバラになり、一夏の周囲に降り注ぐ。

 

「やるなぁ! 一夏!! なら、コイツは如何だ!!」

 

神谷はそう言うと、胸のグレンブーメランを取り外した。

 

「そらよっ!!」

 

そして、一夏に向かって投擲する。

 

「何のっ!!」

 

雪片弐型を使い、弾き返す一夏。

 

「もらったぁっ! レーザーアイ!!」

 

だが、その直後!

 

グレンラガンのボディ部分にある顔の目から、一夏目掛けてレーザーが発射された!!

 

「え!? うわあっ!?」

 

続く1撃を防げず、直撃を受ける一夏。

 

シールドゲージがまた減少する。

 

「うおおおおおっ!!」

 

戻って来たグレンブーメランを回収しながら、再度一夏に向かって突撃するグレンラガン。

 

「うりゃああっ!! 超電磁パアアアアァァァァァンチッ!!」

 

よろけて態勢が崩れていた一夏に、電磁を纏った拳が繰り出される。

 

「!! クウッ! まだだ!!」

 

しかし、一夏は肩部のスラスターを展開して急上昇。

 

グレンラガンの超電磁パンチを躱す。

 

「むっ!?」

 

「アニキの真似で! 火の車キイイイイィィィィィックッ!!」

 

そして、真下に来たグレンラガンに向かって急降下し、飛び蹴りを見舞った!!

 

「おわっ!?」

 

ガードしたものの、ブッ飛ばされるグレンラガン。

 

そのまま地面の上を滑って行ったが、ある程度滑ってところで、バック宙する様に起き上がる。

 

「「…………」」

 

そのまま睨み合いとなる2人。

 

「へへっ………楽しいな、一夏」

 

すると、不意に神谷が、一夏にそう呼び掛けた。

 

「ああ………俺も楽しいよ、アニキ」

 

その言葉に、一夏も笑いながらそう返す。

 

「こうしてやり合ってると………昔を思い出すぜ」

 

「ああ………アニキに喧嘩の稽古をつけてもらって………そんで他校の不良集団との喧嘩に明け暮れたっけ………」

 

「良い思い出じゃねえか」

 

「俺はちょっと後悔してるけどね………」

 

「へっ………」

 

「ふっ………」

 

そう言い合って、また笑い合う2人。

 

「行くぜぇ! 稽古はこれからだぁ!!」

 

「望むところだぜ! アニキ!!」

 

そして2人は、また熱くブツかり合う。

 

「コレが噂に聞く………日本の男の友情なのですね」

 

「いや………違うと思うぞ」

 

そんな目の前の光景に、若干羨望の眼差しを送っているセシリアと、呆れた様子で突っ込みを入れる箒だった………

 

………結局、神谷の喧嘩稽古は日が落ちるまで続けられ、セシリアと箒は2人の戦いの様子を見物しているだけで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・学生寮………

 

屋上………

 

「ふう~~………今日は一段と燃えたぜ」

 

そう言いながら、寮の自分の部屋………

 

………と言う名の、屋上に置かれたプレハブ小屋へと帰室する神谷。

 

神谷をIS学園に置く際に、最も困ったのがその住居である。

 

寮に空き部屋はあるものの、一夏と違って神谷を寮の部屋に入れるのは、色々な意味で危険だと千冬は判断。

 

しかし、監視が行き届く範囲内に留めたい………

 

一夏と相部屋にする方法も考えたが、そうなると箒の移動先の部屋を早急に考えないといけない………

 

紆余曲折を経て、寮の屋上にプレハブを建て、そこに住まわせると言う手段を取ったのだ。

 

あんまりな待遇に思えるが、ちょっと前まで世界中を旅しており、野宿する事も多かった神谷にとっては、住居とは雨風さえ凌げればそれで良いと考えており、特に不平を言う事は無かった。

 

根無し草生活が長かった為、部屋には私物らしい私物は無く、小ざっぱりとしていた。

 

「よっ、と」

 

トレードマークのマントをスタンドに掛け、ゴミ捨て場から失敬してきた畳の上に敷かれた千冬の唯一の厚意で渡された支給品の布団の上に寝転ぶ神谷。

 

そのまま、胸に下げていたコアドリルを摑んで、目の前に持って来るとジッと見つめる。

 

「…………」

 

そこで神谷は、難しい顔となった。

 

(この間現れた獣人の奴は、親父の事を知っている様な素振りを見せた………やっぱり親父は獣人と関わりを持ってたのか? 償いってのは一体何なんだ?)

 

彼是と考えてみる神谷だったが、どれも決定的な証拠が無い為に断定できず、考えは堂々巡りした。

 

「ああ、もう! 止めだ! 止めだ!! 考えたってしょうがねえ! アイツ等をブッ倒して行けば、何時か分かんだろ!!」

 

とうとう神谷は考える事を放棄し、そう叫んだ。

 

と、その時………

 

「最低っ! 女の子との約束をちゃんと覚えてないなんて、男の風上にも置けない奴!! 犬に噛まれて死ね!!」

 

鈴のものと思われる罵声が、床………下の部屋から聞こえて来た。

 

「? 何だぁ?」

 

神谷が困惑しながら半身を起こすと………

 

「馬に蹴られて死ね!」

 

今度は箒のものと思われる罵声が聞こえて来た。

 

「………何かあったなぁ」

 

神谷はそう言うと完全に身を起こし、プレハブ小屋の隅の方に行ったかと思うと、床板を外した。

 

更に、その下にも有った板も外したかと思うと、そこから下の階の部屋………

 

一夏と箒の部屋の天井から、逆さまに顔を出した。

 

実は、神谷のプレハブ………

 

一夏と箒の部屋の丁度真上に立てられており、それを知った神谷は即座の自室の床と、一夏と箒の部屋の天井を貫通させ、専用通路を作った。

 

当然、千冬、そして箒からは怒りの声が挙がったが、神谷は何処吹く風だった。

 

一夏は喜んでいたが………

 

「どした、一夏?………って、何だ? その顔は?」

 

部屋の天井から、逆さまになって顔を出した神谷が見たものは、左頬に紅葉を作っている一夏と、不機嫌そうにしている箒の姿だった。

 

「あ、アニキ」

 

「神谷………だから、天井から来るのは止めろと言ってるだろう?」

 

神谷の存在に気づく一夏と、無駄だと分かっていながらも、一応そう注意してみる箒。

 

「さっき鈴の罵声が聞こえたが………お前、何かしたのか?」

 

部屋からロープを垂らし、戻り道が出来ると、一夏と箒の部屋に降りて来てそう尋ねる神谷。

 

「いや、それが………」

 

一夏が困惑しながら状況を説明し始める。

 

曰く、一夏と箒が一緒の部屋になっている事を知った鈴が、箒と部屋を代わろうと言って来た。

 

曰く、案の定言い争いになり、その最中に鈴は一夏に昔交わした約束を覚えているかと尋ねて来た。

 

曰く、鈴の料理が上がったら毎日酢豚を奢ってくれるって約束だろうと答えた途端、鈴が怒り出した。

 

曰く、そのまま売り言葉に買い言葉で、来週のクラス対抗戦で、勝った方が負けた方に何でも1つ言う事を聞かせられるという約束を交わしてしまった。

 

………との事である。

 

「成程な………」

 

「全くワケが分かんないだろ? コッチはちゃんと約束を覚えてたってに、急に怒り出して………」

 

心底不思議そうな顔をしてそう言う一夏。

 

………もし世の男達がコレを聞いたら、間違いなく彼は殴られているだろう。

 

(昔っからこういう所は変わらねえなぁ………まあ、あのブラコンアネキのせいで本人は自覚してないが、シスコンが入っているところがあるからなぁ………)

 

そんな一夏の姿を見て、内心でそう思う神谷。

 

因みに神谷は、空気は読めない………と言うか、基本読まないが、恋愛ごとに関してはそれなりに機微を理解している。

 

「(ま、コレばっかりは俺がどうこう言って如何にかなる問題じゃねえからな………本人の自覚を待つしかねえか)一夏」

 

「? 何だよ、アニキ?」

 

「取り敢えず、後ろから刺されない様に気を付けとけ」

 

「何で!?」

 

神谷の言葉の意味が理解出来ず、ますます困惑する一夏だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

螺旋王と螺旋四天王は………

 

???………

 

「全く! 何て様だ、ヴィラル!!」

 

「申し訳ございません………」

 

厳しく叱りつけて来ているシトマンドラに、只々頭を下げているヴィラル。

 

「大口叩いておいてこの体たらくとは………貴様それでも獣人か!!」

 

「その辺にしておけ、シトマンドラ。螺旋王様の御前であるぞ」

 

更に責め立てようとするシトマンドラを、チミフルがそう言って押さえた。

 

「チイッ!」

 

シトマンドラは不満そうにしながらも、黙り込んだ。

 

「…………」

 

一方のロージェノムは、そんな喧噪なぞ興味が無い様に、ヴィラルが撮って来た白式を操る一夏の映像を無表情で眺めていた。

 

「織斑 一夏………如何やら、私達が思っている以上に厄介な存在かもしれないね………」

 

そこでアディーネがそう呟く。

 

「ふむ………そういう芽は、早い内に踏み潰しておくに限る………螺旋王様。『例のアレ』を使う許可を貰えますかな?」

 

「『アレ』を使うか………」

 

グアームがそう言うと、ロージェノムはグアームに視線だけを向けてそう言った。

 

「亡国企業(ファントム・タスク)の連中が持ってたあの玩具か? 使えるのか?」

 

チミフルが疑問の声を挙げる。

 

「ISを持ってISを制する………それはあの篠ノ之 束本人も言っていた事だ。仮に壊されたとしても、我々には何の痛手も無かろう」

 

「それもそうだね………あの女の玩具が幾ら壊れようが、アタシ達にとっちゃ寧ろ願ったり叶ったりだね」

 

グアームの言葉にそう賛同するアディーネ。

 

「良いだろう、グアーム。その件はお前に任せる………それと………今宵は、祝いの酒を用意しておけ」

 

「祝いの酒?………!? と仰られますと、つまり!?」

 

ロージェノムが言った言葉に、シトマンドラが反応する。

 

他の四天王とヴィラルも、表情を引き締めた。

 

「そうだ………いよいよ我等が存在を世に知らしめる時が来た………」

 

「おおおっ! 遂に!!」

 

「この日が来たのでございますね………」

 

「ふむ、いよいよか………」

 

「このシトマンドラ。螺旋王様の為ならば、喜んで働きましょう」

 

ロージェノムがそう言うと、四天王は一気に高揚した様子を見せる。

 

「愚かなる人類に変わり………我等がこの星の頂点に立つ………それを阻むものは、天上………貴様の息子であろうと、叩き潰すまでだ」

 

そう言って、ロージェノムはニヤリとした笑みを浮かべるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

クラス代表戦が終わり、新たなるヒロイン『凰 鈴音(ファン リンイン)』が登場。
そして一夏との悶着から、クラス対抗戦での勝負となります。
しかし、例によってまた介入者が現れます。
そしていよいよロージェノムが本性を見せるのも近いです。

尚、今回グレンラガンが使ったレーザーアイや超電磁パンチという技は、DSゲームのグレンラガンでの技です。
今後もDSゲーム版の技やキャラが登場する予定なので、お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしています。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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