天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第52話『式は何時執り行うのですか?』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第52話『式は何時執り行うのですか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロージェノム軍との戦闘で、徐々に押されつつある人類側の切り札として………

 

リーロンが兼ねてより開発を進めていたマシン………

 

グレンラガンの量産型である『グラパール』

 

その試作機2機が完成した。

 

試作機である故か、神谷程でないにしろ螺旋力が必要とされたが………

 

何と妹の蘭の付き添いで、偶々学園に来ていた一夏の親友、五反田 弾が螺旋力に覚醒。

 

2機のグラパールの内、青い機体に選ばれ、その装着者となる。

 

しかし、そんな中………

 

ジギタリスが檻より脱走。

 

以前グレンラガンを襲撃したカメ型のガンメン・メガヘッズを引き連れて、グレンラガンに3度目となる戦いを挑んで来た!!

 

ジギタリスのザウレッグと合体し、合体ガンメン・ザガレッズとなったジギタリスの前に、グレン団は大ピンチに陥る。

 

しかし、根性の底力で、逆転勝利をもぎ取る事に成功する。

 

だが、そこで驚愕の事実が明らかになる………

 

何と、メガヘッズの正体はティトリーだったのだ。

 

装着が解け、獣人の姿をグレン団の前に曝してしまったティトリー。

 

とうとう彼女が獣人である事が、神谷や楯無、一夏以外にも知り渡ってしまったが………

 

ジギタリスがそんなティトリーを庇うかの様に人質に取り、人間だと言い放った。

 

そんなジギタリスの言葉を、神谷は素直に受け取る。

 

そしてジギタリスは、ティトリーを人質として攫っていってしまう。

 

こうして………

 

グレン団は、特攻隊長である弾がパワーアップを果たしたが………

 

ティトリーを連れ去られてしまう事になったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オープン・キャンパスから数日後の朝………

 

IS学園・1年1組の教室………

 

副担任の真耶が教壇に立ち、出席を取っている。

 

「鶴谷さん」

 

「ハイ!」

 

「鶴見さん」

 

「ハイ!」

 

真耶の呼び掛けに、元気良く返事を返して行く生徒達。

 

「ティトリーさん」

 

とそこで真耶が、ティトリーの名を呼ぶ。

 

途端に、クラスが静まり返った。

 

「!? あ、ゴ、ゴメンナサイ!」

 

真耶は慌てて謝罪する。

 

「…………」

 

一夏は空席となっている、ティトリーの席だった場所に視線を遣る。

 

(………ティトリー)

 

先日の光景を思い出し、一夏は複雑な表情となる。

 

「………チッ!」

 

神谷も面白く無さ気に、両足を机の上に投げ出し、背を仰け反らせて天井を仰ぎ見た。

 

(………神谷………)

 

そしてシャルは、そんな神谷の姿を見て、複雑な表情を浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れて昼休み………

 

昼食を摂ろうと、グレン団の面々は食堂へと集まる。

 

「い、一夏さん………いらっしゃいませ」

 

「おう、一夏に神谷! 良く来たな!!」

 

そんなグレン団の面々を出迎えたのは、エプロン姿の蘭と、彼女の祖父である五反田 厳だった。

 

「ハイ! オムライスとコロッケ定食お待ち!!」

 

「お待たせ致しました。こちら焼き魚とフライの盛り合わせ定食と豪華野菜炒め定食です」

 

テーブルエリアの方でも蘭と同じくエプロン姿の弾と、彼と蘭の母親である五反田 蓮が、注文された料理をテーブルへと運んでいる。

 

「よう、弾!」

 

「あ! アニキ! それに一夏! 虚さんも!」

 

「アラ、神谷くんに一夏くん。それに皆もお揃いで………ちょっと待ってね。コッチの席が空いてるわ」

 

神谷が弾に声を掛けると、弾は神谷達に気付き、続いて蓮もそれに気付くと、神谷達を空いている席へと案内する。

 

神谷達は蓮に案内された席へと着く。

 

「ハイ、ご注文は?」

 

「あ、俺は餃子定食で」

 

「私はエビフライ定食を」

 

「ハンバーグ定食をお願い致します」

 

「アタシは麻婆豆腐定食ね」

 

「僕は………天ぷら定食で」

 

「豚肉生姜焼き定食を1つ………」

 

「私、唐揚げ定食」

 

「鯖味噌煮定食~」

 

「うどん定食をお願いします」

 

「………蕎麦定食………」

 

蓮が伝票を手にそう尋ねると、一夏、箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラ、楯無、のほほん、虚、簪が順に自分の注文を述べる。

 

「ハイ………神谷くんは、今一夏くん達が言ったのを全部で良いかな?」

 

「おう、よろしく頼むぜ!」

 

「ハイ、確かに承りました………」

 

最後に神谷とそう遣り取りを交わすと、蓮は厨房に居る厳に注文を伝えに行ったのだった。

 

 

 

 

 

何故、五反田一家がIS学園の食堂で働いているのか………

 

話は、ティトリーが居なくなったIS学園のオープン・キャンパスの日まで遡る。

 

あの日、偶発的とは言え、螺旋力を覚醒させ、グレンラガンの量産試作機であるグラパールを起動させてしまった弾。

 

リーロンは完全な量産型が完成した暁には、全世界にその設計図と技術を公表する予定であるが、予てよりISに代わる新兵器を求めていた各国にとって、弾以外に使えないとは言え、グラパールは非常に魅力的な存在であった。

 

仮に弾が何処かの国に誘拐され、その国がグラパールを解析し、更に量産に成功したりすれば、その国はグラパールの技術を独占する事になる。

 

人類自体が危機的状況にあると言うのに、人類間の争いが再燃してしまえば、最早ロージェノム軍と戦うどころの話ではない。

 

そこで千冬は、IS学園の学園長である轡木 十蔵(表向きは彼の妻がIS学園の学園長となっている)に働き掛け………

 

弾を、家族ごとIS学園で保護する事にしたのだ。

 

神谷の場合、天涯孤独と言う事もあったが、弾の場合は家族を人質に取られる可能性を懸念しての措置である。

 

最初は蘭共々、神谷の様に学生として受け入れるべきかとも考えたが、グラパールはグレンラガンと同じくISではない為、運用ノウハウが無いので教えられる事が無く、神谷の様に学校へ行っていなかったのなら兎も角、無理に転校させるのも可哀そうだと思い………

 

現在通っている学校の方に便宜を図ってもらい、通常の教育を此方で受けさせると言う事で、特別休学扱いにしてもらった。

 

尤も………

 

弾、蘭の両在学校共、ロージェノム軍の影響で田舎に疎開する為に転校する生徒が相次いでおり、近々休校になる予定だったそうである。

 

そして現在、五反田一家は元が定食屋であった事を活かして、IS学園の食堂の手伝いを任されている。

 

「あ~~、念願叶って女の園のIS学園に入れたと思ったのに、ココでも食堂の手伝いかよ~!」

 

普段から五反田食堂で手伝いをやらされたりしていた弾は、愚痴る様にそう言う。

 

「オイ、弾! 愚痴言ってる暇が有ったら、コイツを向こうのテーブルへ運べ!!」

 

そんな弾に、厳が怒鳴る様にそう言い、出来上がった料理を差し出す。

 

「! ハ、ハイ! 只今!!」

 

それを聞いた弾は、一瞬ビクリとしながらも、出来上がった料理を急いで注文した学生の元へ運ぶ。

 

「弾くん。頑張ってね」

 

すると、そんな弾に虚が微笑みながらそう言う。

 

「う、虚さん………」

 

その微笑みを見た途端、弾の螺旋力がグングンと上昇して行く。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ! 俺の螺旋力が沸騰するぜえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!!」

 

何処ぞのスポーツ選手ロボットの様な台詞を叫ぶと、弾は先程までとは比べ物にならない働きを見せる。

 

「………スゲェ」

 

「ハハハハハッ! 惚れた女の笑顔が何よりの癒しってかぁ!!」

 

「…………」

 

一夏がそんな弾の姿に驚き、神谷が呵々大笑しながらそう言うと、虚が恥ずかしそうに赤面する。

 

「ヘイ! お待ち!!」

 

「お待たせしました」

 

「ハイ、どうぞ」

 

と、そこで神谷達が着いていたテーブルにも、注文した定食が並べられて行く。

 

「それじゃ………」

 

「「「「「「「「「「頂きま~す!」」」」」」」」」」

 

一夏が音頭を取り、全員が礼儀正しく手を合わせてそう言うと、定食へと有り付いたのだった。

 

談笑しつつ、食事を進めて行く一夏達。

 

そんな中で神谷は相変わらずの食欲を見せ、数人分の定食を次々に平らげている。

 

「ガツガツ! バクバク! モグモグ! ムシャムシャ!」

 

「ア、アハハハハハ………」

 

一夏達は、時折そんな神谷の事を見ながら、苦笑いを零す。

 

と、そんな中………

 

「? ん?………私だ………ああ、クラリッサか」

 

ラウラの軍用無線機が鳴り、受信ボタンを押したラウラが応答するとそう言う。

 

如何やら相手は、彼女がドイツ本国で率いているIS配備特殊部隊、『シュヴァルツェ・ハーゼ(黒ウサギ)』の副隊長、『クラリッサ・ハルフォーフ』の様だ。

 

ラウラの母国・ドイツから、しかも彼女の部隊の副隊長からの通信と言う事で、ラウラに一同の視線が集まる。

 

「それで? 如何したんだ?………うむ………ふむふむ………何?………そうか………分かった。何時頃になる?………うむ………了解した。出迎えは任せろ………遠慮は要らん。では空港でな」

 

そのままラウラは何かを言い合ったかと思うと、通信機を切った。

 

「如何したんだ? ラウラ」

 

気になった一夏が、ラウラにそう尋ねる。

 

「うむ、私の部隊の副隊長であるクラリッサ・ハルフォーフ大尉が日本に来る事になった」

 

「ああ、ラウラに日本の事を教えてくれてるって言う」

 

ラウラの言葉を聞いたシャルがそう言う。

 

「日本の………(って事は、そいつがラウラに間違った日本の知識を植え付けている根源って事か………)」

 

それを聞いた一夏は、内心でそう思う。

 

「ちょっと。アンタのとこって、確か精鋭部隊って聞いたわよ。その部隊の隊長と副隊長が抜けちゃって良いワケ?」

 

「確かに………現在の情勢を見ると………あまり良くない………?」

 

鈴がそう言うと、簪も同意するかの様な台詞を言う。

 

「いや、上層部から正式に休暇を出されたらしい。今まで働き詰めだったそうだからな」

 

「そうなの?」

 

「まあ、そう言う事でしたら………」

 

ラウラがそう言うと、シャルとセシリアは納得が行った様な表情となる。

 

「一夏」

 

「ん?」

 

と、そこでラウラは、今度は一夏へと声を掛ける。

 

「クラリッサは今度の日曜に来日する。出迎えに付き合ってくれんか?」

 

「ああ、別に構わないけど、良いのか? 俺なんかが一緒に行って?」

 

「お前は私の嫁だろう。当然だ。クラリッサに紹介もせねばならんしな」

 

涼しい顔でサラッとそう言い放つラウラ。

 

「ボーデヴィッヒさん! 前々から仰ってますけど、一夏さんは貴方のお嫁さんではありませんわ!!」

 

「そうよそうよ!!」

 

「納得が行かん!!」

 

当然、セシリア、鈴、箒が噛み付いてくる。

 

「一夏は私の嫁だ」

 

しかし、ラウラもそんな3人を正面から見据えてそう返す。

 

「一夏! 大体お前がハッキリとしないから!!」

 

「一夏のせいよ!!」

 

「一夏さん! この際ハッキリと仰って下さい!!」

 

「ちょっ!? 矛先早くも俺!? 大体ハッキリしないって何がだよ!?」

 

やがて怒りの矛先は一夏へと向き、一夏は相変わらず、自分では全く分かっていない己の罪に気づかずに居た。

 

「じゃあ此処は間を取って、一夏くんは私の物って事で」

 

とそこで、楯無が火に油を注ぐ様に箒達をからかい始める。

 

「ちょっ!? 楯無さん!?」

 

「「「「「一夏〈さん〉!!」」」」」

 

当然、箒達、新たに参戦してきた蘭は、更に激しく一夏に迫り始める。

 

「!?」

 

遂に一夏が身の危険を感じ始めた瞬間!

 

ドギュオンッ!!と言う轟音と共に、食堂の天井に穴が開いた!!

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

何事かと一夏達が硬直すると………

 

「………食事中は………静かに………」

 

アーマーマグナムを天井に向かって撃った簪が、低い声でそう言う。

 

「「「「「「スイマセンでしたーっ!!」」」」」」」

 

途端に一夏達は、揃って簪に向かって頭を下げる。

 

「かんちゃんもやるね~」

 

「と言うか、やり過ぎですよ、簪様」

 

そんな簪の姿を見て、何時も通りに笑みを浮かべているのほほんと、簪の過激なやり方に冷や汗を掻く虚だった。

 

「天井に穴開いちゃったけど………如何しよう?」

 

「俺のせいだって言って、ブラコンアネキにでも言やあ良いだろう。大体の苦情はアイツのとこ持ってく事になってんしよぉ」

 

シャルが天井に開いた穴を見ながらそう呟くと、神谷がそんな事を言う。

 

千冬、涙目である。

 

その後、結局………

 

クラリッサの出迎えは、グレン団全員で行く事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はあっと言う間に流れて、日曜日………

 

東京国際空港………

 

ターミナルで、クラリッサの到着を待っているグレン団。

 

只でさえ、美女揃いの集団で注目を浴びている彼等だが、更に神谷が『熱烈歓迎! クラリッサ・ハルフォーフ!!』と書かれた大きなプラカードを掲げている事で、更に注目を浴びていた。

 

「俺達………今スッゲー目立ってんな………」

 

「だな………」

 

一夏と弾が、先程から他の空港利用客や、空港職員の注目を浴びまくっている事で、萎縮している様子を見せる。

 

「こんだけ目立ってりゃ、クラリッサとか言う奴もすぐに見付けてくれるってもんだろが!」

 

しかし、一番目立っているプラカードを掲げている神谷が、何を縮こまってるんだと言う様に2人に話し掛ける。

 

ロージェノム軍の出現以来、出国したり入国する人の人数は減る一方だったが、それでも休日と言う事もあり、ターミナル内は多くの人でごった返していた。

 

そこで、クラリッサがすぐにラウラ達を見つけられる様にと、神谷が一計を案じたのである。

 

「しかし………これは………」

 

「居心地悪いったらありゃしないわね………」

 

神谷は相変わらず堂々としているが、箒と鈴も、不特定多数の視線を浴びているので、若干居心地が悪そうにしている。

 

「まあまあ、皆。気にしない。気にしない」

 

「…………」

 

そんな中で、何時も生徒達の注目を浴びている為、視線には慣れている楯無と、そう言ったモノを一切気にしない簪が平然としている。

 

「あ! あの方じゃありませんか?」

 

するとそこで、セシリアが入国ゲートが有る方向から、トランクケースを牽きながらコチラに向かって来る、黒い軍服を着て軍帽を被った、ボブカットの女性を見付け、そう声を挙げる。

 

左目に、ラウラと同じ様に眼帯をしている。

 

「ああ、そうだ………クラリッサ! コッチだ!!」

 

「! 隊長!!」

 

ラウラが呼び掛けると、その女性………クラリッサ・ハルフォーフは、ラウラの方へ駆け寄って来て、目の前で気を付けすると、ビシッと敬礼する。

 

「クラリッサ・ハルフォーフ大尉、本日只今を以ちまして来日致しました。態々御足労頂き、誠に申し訳ありません」

 

「気にするな、クラリッサ。仲間を迎えるのは当然の事だ。それと今は休暇中だろう。敬礼は止せ」

 

「ハッ! 了解しました!!」

 

ラウラにそう言われると、クラリッサは敬礼を解く。

 

「ところで………そちらの方々が、例の………」

 

と、そこでクラリッサが、ラウラの背後に居るグレン団の面々を見ながらそう言い掛けると………

 

「おうおうおう! 耳の穴かっぽじって、よ~く聞きやがれ!! IS学園に悪名轟くグレン団! 男の魂、背中に背負い! 不撓不屈の! あ! 鬼リーダー! 神谷様たぁ、俺の事だ!!」

 

神谷が、何時ものノリでクラリッサにそう自己紹介をする。

 

「ちょっ!? 神谷ぁ!!」

 

只でさえ注目を浴びていた他の空港利用客や空港職員達に更に注目され、シャルが何か言おうとしたが………

 

「貴方がグレン団の………噂は兼ね兼ねお伺いしております。お会い出来て光栄です」

 

クラリッサは、神谷の独特なノリを気にした様子も無く、普通に挨拶を返して来た。

 

「流石ドイツ軍人。狼狽えないね~」

 

「本音、それは………」

 

のほほんが有名漫画の台詞を言い、虚が窘めようとしたが………

 

「その通り! ドイツ軍人は狼狽えない!!」

 

他ならぬクラリッサ自身が乗って来る。

 

「…………」

 

それを見て、呆れた様な表情を見せる虚。

 

(流石………ラウラに色々と間違った知識を吹き込んだ元凶………)

 

そんなクラリッサを、一夏は呆れた表情で見遣る。

 

「ん?」

 

と、そんな一夏の視線に気付いたクラリッサが、一夏を見遣る。

 

「あ、いや、その………」

 

「ああ、貴方が織斑 一夏殿ですね?」

 

と、一夏は気不味くなったが、逆にクラリッサの方は、喜びの笑みを浮かべる。

 

「え? あ、ハイ………」

 

「隊長より話は聞き及んでおります。どうか隊長をよろしくお願い致します………して、式は何時執り行うのですか?」

 

「? 式? 式って、何の式ですか?」

 

「またまた、御冗談を………隊長と織斑殿の結婚式に決まっているではありませんか」

 

「ブウッ!?」

 

丁寧な挨拶をしながらのクラリッサからのキラーパスに、一夏は思わず吹き出してしまう。

 

「「「…………」」」

 

当然、箒、セシリア、鈴の3人は、一夏を睨み付け始める。

 

(な、何なのこの人!? い、一夏さんが、け、結婚って!!)

 

蘭も、内心で戦慄していた。

 

「…………」

 

簪も、何時もと同じ無表情に見えるが、若干眉が不機嫌そうにピクピクと動いている。

 

「なななな、何言ってんですか、貴女は!?」

 

「織斑殿は隊長の嫁なのでしょう。ならば式を挙げるのは当然の事ではないですか」

 

慌てる一夏だが、クラリッサは至って当然の様に話を進め始める。

 

「いや、だから………!? ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

釈明をしようとした一夏の背中を、箒、セシリア、鈴が抓りあげる。

 

「ちょっ!? 箒! セシリア! 鈴! 一体何………!? ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」

 

何をするんだと言おうとした瞬間に、更に一夏の背中を抓る3人。

 

その表情は不機嫌を通り越して殺気すら感じる。

 

(隊長………あの少女達が、隊長と同じく織斑 一夏殿に好意を寄せている者達ですか?)

 

(ああそうだ………特にあの黒髪の女………篠ノ之 箒等は最近油断がならなくなっている………)

 

そんな一夏を他所に、クラリッサはラウラと小声でヒソヒソ話をしている。

 

(成程………隊長の御苦労、お察し致します………ですが、御安心下さい! この休日の間は、私がより隊長の魅力が織斑殿に伝わる様に全力でお手伝いさせて頂きます!)

 

(おお、頼もしいぞ、クラリッサ!)

 

「何話してるの?」

 

と、そこでヒソヒソ話に気付いたシャルがそう声を掛ける。

 

「いや、何………ちょっと今後の部隊運営の事でな」

 

「ええ………」

 

そう誤魔化す2人だったが、その顔が思いっきり澄まし顔だった為、却って分かり易かった。

 

(………分かり易いなぁ………)

 

心の中でそうツッコミを入れるシャル。

 

「それでクラリッサ。この後の予定は如何なっているんだ?」

 

「ハイ。滞在先のホテルに荷物を置いたら、前々から是非行ってみたい場所がありまして」

 

「そうか………」

 

「良おし! 今日は1日中遊び倒すとしようぜ!! オイ、お前等! 何時までやってんだ!? 行くぞ!!」

 

と、ラウラとクラリッサがそう言い合うと、神谷が仕切る様にそう言う。

 

「フンッ」

 

「まあ、これくらいにしておいてあげますわ」

 

「アンタってホント最低よね………」

 

「お、俺が………何をした………」

 

背中を抓っていた箒、セシリア、鈴は、一夏を漸く解放し、一応満足気な表情を浮かべていた。

 

「一夏………お前、何時か死ぬぞ、きっと………」

 

そんな親友の相も変らぬ姿に、弾は苦笑いする。

 

その後、クラリッサを加えたグレン団の一同は、クラリッサの滞在先のホテルへと向かった後………

 

クラリッサが日本に来たら、是非共行ってみたいと思っていた場所に向かった。

 

その場所とは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京・秋葉原………

 

「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

目をキラキラに輝かせて感激しているクラリッサ。

 

彼女が日本に来たら、是非共行ってみたいと思っていた場所とは………

 

何を隠そう、日本一の電気街………

 

そしてオタクの聖地!!

 

『秋葉原』だった!!

 

「此処が………聖地………グスッ………」

 

感激のあまり、クラリッサの目に涙が零れ始める。

 

「ど、如何した!? クラリッサ!?」

 

突然涙を流し始めたクラリッサを見て、ラウラが慌てる。

 

「す、すみません、隊長………感激のあまり………ちょっと………」

 

「そうか………そんなに来たかったのか………良し! 私が許す! 今日は思う存分この『秋葉原』と言う街を堪能しろ!!」

 

「ハイ!!」

 

そう言って来たラウラに、クラリッサはガッツポーズを取りながらそう返す。

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

しかし、そんなクラリッサとラウラとは対照的に、一夏、弾、箒、セシリア、鈴、蘭、虚は若干引く様子を見せている。

 

「やっぱり………クラリッサさんって、ソッチの方の人だったんだ?」

 

「? そっちって何だ? シャル?」

 

「いや、それはその………」

 

神谷に如何説明すれば良いのかと悩むシャル。

 

「へえ~~、此処がアキバか~。楽しそうなとこだね」

 

「…………」

 

初めて来た秋葉原に興味津々な様子の楯無と、簪は相変わらず読めない無表情を浮かべている。

 

「あ、新刊出るの今日だったっけ~。序に買って行こう~」

 

………のほほん! お前もか!?

 

「では………クラリッサ・ハルフォーフ! 突貫します!!」

 

そして、何処ぞのガンダムパイロットの様な台詞を言うと、クラリッサは秋葉原の街へと繰り出して行く。

 

「一夏! 何をしている!! 私達も行くぞ!!」

 

するとラウラが若干引いていたメンバーの中に居た一夏の手を握り、クラリッサの後を追って行く。

 

「!? おわぁっ!? ちょっ!? 待っ………」

 

抗議の声もそこそこに、一夏はラウラに引っ張られて行く。

 

「! 一夏!!」

 

「一夏さん!!」

 

「一夏!!」

 

「一夏さん! 待って!!」

 

そこで慌てて、箒、セシリア、鈴、蘭が、その一夏を追い掛けて行く。

 

「オイ、蘭! 待てって!!………虚さん! 行きましょう!!」

 

「えっ!? あ、ちょっと………!?」

 

続いて、弾が虚の手を取って走り出す。

 

「あ、コラ! テメェ等!! 俺より先を行こうだなんて、良い度胸じゃねえか!!」

 

「アハハハハハ………」

 

それを見た神谷が、一夏達を追い抜かさんと駆け出し、シャルも苦笑いしながらその隣を走る。

 

「やれやれ~。皆元気だね~」

 

「姉さん………その台詞………若干年寄り臭い………」

 

そんな一同の姿を見ていた楯無がそう言うと、簪がそうツッコミを入れて来た。

 

「ちょっ!? 簪ちゃん!?」

 

「ふふっ………」

 

慌てる楯無に簪は微笑むと、逃げる様に一夏や神谷達の後を追って行く。

 

「コ、コラー! 待ちなさーい!!」

 

慌ててそれを追う楯無。

 

こうして………

 

グレン団の秋葉原珍道中が開始されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚、いの一番に突貫していったクラリッサだが………

 

最初に駆け込んだのが女性向け商品の置いてあるとらのあな秋葉原店Bだった為………

 

ラウラに引っ張られる形で一緒に突っ込んだ一夏が、彼女共々多大なショックを受けて戦略的撤退し………

 

箒、セシリア、鈴、蘭、楯無、虚は年齢の事もあり、店の外で待機していたが、時折興味深そうに店舗内を覗き見たりしており………

 

同じく年齢制限で入れなかった神谷は、シャルにどんな店なのかを尋ねて、シャルは弾に無茶振りする。

 

そしてのほほんは、興味無さげな簪を尻目に、堂々と入店し、クラリッサと共に女性向け商品を買い漁ると言う………

 

何とも混沌(カオス)と化した状況を創り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ティトリーが去った後のIS学園。
皆色々と思うところがありながらも、時間は無情に進む………

そんな中、ラウラの部隊の副隊長・クラリッサが来日。
オタクの聖地でグレン団と珍道中を巻き起こします。
更に次回はあのマシンがロージェノム軍として登場するのでお楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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