天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第56話『義理堅い奴だぜ』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第56話『義理堅い奴だぜ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園で行われたハロウィン………

 

その最中、一夏達が忽然と姿を消す事件が発生した。

 

如何やら、招かれざる客がハロウィンに紛れ込んだらしい。

 

一夏達を探し始めた神谷とシャルの前に現れたジャック・オー・ランタン。

 

奴がこの事件の元凶なのか?

 

 

 

 

 

IS学園の敷地内・ハロウィン会場脇の林の中………

 

ヒヒヒヒヒヒヒ………

 

不気味な笑い声を挙げながら、木々を摺り抜けてドンドンと林の奥の方へと逃げて行くジャック・オー・ランタン。

 

「待ちやがれ~っ!!」

 

それを追う神谷だが、生い茂る木々に邪魔され、中々距離を詰められずに居る。

 

「か、神谷………ゼエ………待って………ハア………」

 

それを追うシャルは、若干息を切らせている。

 

慣れない恰好な上に、足場の悪い林の中を、神谷に置いてかれない様に全力疾走していた為、流石の代表候補生のシャルも体力的にきつかった様である。

 

「チイッ! 面倒だ!!」

 

と、神谷はそう声を挙げたかと思うと胸のコアドリルを摑み、グレンラガンの姿となる。

 

「むんっ!!」

 

そして右手をドリルへと変えると、地中に潜った!!

 

ヒヒヒヒヒヒヒ………?

 

と、後ろを振り返ったジャック・オー・ランタンが、神谷の姿が無い事に気付いて、首を傾げながら足を止める。

 

その瞬間!!

 

「おりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

振り返ったジャック・オー・ランタンの背後の地面から、グレンラガンが飛び出す。

 

!?

 

「捕まえたぜ!!」

 

慌てて逃げようとしたジャック・オー・ランタンに、グレンラガンは覆い被さる様に圧し掛かって確保する。

 

!?!?

 

「おっと、逃げんな!」

 

ジャック・オー・ランタンは逃れようと藻掻くが、グレンラガンは逃がさぬ様にしっかりと押さえ付ける。

 

「ハア、ハア………やっと追い付いた………」

 

と、そこでシャルが追い付き、荒くなった呼吸を整える。

 

「オイ! オメェ何モンだ? 一夏達が居なくなった騒ぎはテメェの仕業か?」

 

ジャック・オー・ランタンの首根っこを摑み、ネコの様に持ち上げるとそう問い質すグレンラガン。

 

ヒ、ヒヒヒヒヒヒ………

 

ジャック・オー・ランタンは、笑い声が戸惑っている様な様子となる。

 

「笑ってねえで何とか言ったら如何なんだ、コラ!?」

 

その態度が気に入らなかったのか、グレンラガンはジャック・オー・ランタンの首根っこを摑んだままガクガクと揺さぶる。

 

ヒヒヒヒヒヒッ!?

 

ジャック・オー・ランタンは、今度は笑い声が戸惑った様なモノとなる。

 

「ちょっ! 神谷!! やり過ぎだよ!!」

 

それを見たシャルが、グレンラガンを止めに掛かる。

 

「シャル、しかしよぉ………」

 

シャルに言われて、グレンラガンがジャック・オー・ランタンを揺さぶるのを止めると、その瞬間!!

 

ヒヒヒヒヒヒッ!!

 

ジャック・オー・ランタンは、グレンラガンの手から逃れてシャルへと向かった!!

 

「!?」

 

「あ!? テメェ!!」

 

シャルに襲い掛かるのかと思い、両腕をドリルに変えるグレンラガンだったが………

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

予想に反して、ジャック・オー・ランタンはシャルの背中に隠れる。

 

そして、グレンラガンの様子をおっかなビックリと言った様子で見ている。

 

「あん?」

 

予想と違う行動を取られ、グレンラガンは呆気に取られる。

 

「ホラ、すっかり怖がってちゃってるよぉ。もう大丈夫だからね~」

 

シャルはそう言って、ジャック・オー・ランタンの頭を優しく撫でてやる。

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

するとジャック・オー・ランタンは、笑い声に嬉しそうな色を醸し出す。

 

天使に撫でられて喜んでいるジャック・オー・ランタンと言うのも、中々シュールな光景である。

 

「ったく、んだよぉ………俺が悪モンみてぇじゃねえか」

 

グレンラガンはバツが悪そうにそう言うと、神谷の姿へと戻る。

 

「神谷は乱暴過ぎるんだよ………ねえ、君? 一夏達を知らない?」

 

ヒヒヒヒヒヒ?

 

シャルの質問に、ジャック・オー・ランタンは小首を傾げる様な動きを見せる。

 

「えっと、ね。僕達の友達が居なくなっちゃったんだ? 疑うみたいで悪いんだけど、君が犯人?」

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

続いての質問には、首を横に振る。

 

「本当?」

 

「嘘吐いたら承知しねえぞ、コラ」

 

!?

 

神谷が脅す様に言うと、ジャック・オー・ランタンは再びシャルの影に隠れてしまう。

 

「もう、神谷! 駄目だって!」

 

「ああ、もう、悪かったよ」

 

シャルに言われて、神谷が頭を掻きながらそう言うと、ジャック・オー・ランタンは恐る恐ると言った様子で、シャルの背から出て来る。

 

と、そこで神谷の携帯が鳴る。

 

「ん? おう、俺だ」

 

[神谷。ポイントN-5地区に、妙なエネルギー反応が出てるわ。監視システムじゃ様子が確認出来ないの。見て来てくれる?]

 

神谷が携帯を取り出し、通話ボタンを押すと、リーロンのそう言う声が聞こえて来た。

 

「分かった。すぐに行く………行くぞ、シャル」

 

それだけ答えると、神谷はシャルに呼び掛ける。

 

「あ、うん」

 

「と、それと………」

 

すると神谷は、今度はジャック・オー・ランタンに近付く。

 

ヒヒヒヒヒヒ?

 

「神谷?」

 

「ホラよ」

 

戸惑うジャック・オー・ランタンに、神谷はロリポップを手渡した。

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

「色々迷惑掛けちまったからな。まあ、詫びだとでも思って受け取っといてくれ」

 

ジャック・オー・ランタンが首を傾げると、神谷はそう言う。

 

「ふふふ………優しいね、神谷」

 

そんな神谷の姿を見て、シャルは微笑みながらそう言う。

 

「るせぇ、行くぞ!」

 

神谷は照れ隠しの様にそう言い、踵を返すと走り出した。

 

「じゃあ、またね」

 

シャルもジャック・オー・ランタンに手を振ると、神谷を追って走り出す。

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

ジャック・オー・ランタンは、神谷から貰ったロリポップを手に持ったまま、暫くその場で佇んでいたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

ポイントN-5地区………

 

そこには、黒紫色のオーラが立ち上る、如何にも怪しげな洋館風の館が在った。

 

「んだ? こりゃ?」

 

「こ、こんな建物、学園内には無かったよ?」

 

その館を見上げてそう呟く神谷と、若干怖がっている様な様子を見せるシャル。

 

「こんばんわ~! 誰か居ますか~!」

 

と、神谷は何の躊躇も無く、その館の正面玄関のドアをノックする。

 

「ちょっ!? 神谷!?」

 

シャルはそんな神谷の様子に驚きながらも、ISのハイパーセンサーだけを展開し、館をスキャンする。

 

しかし、返って来た答えは『解析不能』であった。

 

「そんな!? ISのハイパーセンサーでも分析出来ないなんて………」

 

益々その正体の謎を深めて行く館に、シャルは背中に冷たいモノを感じる。

 

「オイ、シャル。何やってんだ!?行くぞ!」

 

しかし、そんなシャルの様子を他所に、既に神谷は館の扉を開け、中へと入り込んでいた。

 

「か、神谷ぁ………」

 

心臓に毛が生えているどころか、鋼鉄で出来て居そうな神谷の度胸に、シャルは呆れながらも一緒に館の中へと入り込む。

 

 

 

 

 

不気味な洋館風の館の内部………

 

館の内部は真っ暗であり、神谷とシャルが入る際に開けっ放しにした正面玄関からの月明かり以外に、灯りが一切なかった。

 

「うう………」

 

「何か陰気くせぇなぁ」

 

またも怖がるシャルに、そんな感想を呟く神谷。

 

と、その時!!

 

開けっ放しにしていた正面玄関が、何の前触れもなく、突然閉まる!!

 

「「!?」」

 

神谷とシャルが驚いた瞬間、館の彼方此方に在った燭台の蝋燭に、次々と独りでに灯が灯り始めた。

 

「何か居やがるな………この館」

 

その様子を見て、神谷はそう言い放つ。

 

「神谷! 玄関が開かないよ!!」

 

と、閉まった玄関のドアのノブを弄っていたシャルがそう言って来る。

 

「しゃあねえ。取り敢えず、この家の中を調べるぞ」

 

「ええっ!? 此処の!?」

 

「他にする事もねえだろう」

 

「それは、そうだけど………」

 

「行くぜ」

 

気後れしているシャルを尻目に、神谷は館の更に内部へと踏み込み始める。

 

「あ! ま、待ってよぉ!!」

 

シャルは慌てて神谷を追うと、その腕にしがみ付くのであった。

 

 

 

 

 

怪しげな館の1階の奥………

 

「此処は書斎になってるみたいだね………」

 

多数の本が収められた本棚が並んでいるのを見て、シャルがそう呟く。

 

「みてぇだな………」

 

神谷はそう呟くと、シャルと共に部屋の奥の方まで踏み込んで行く。

 

と、そこで!

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

何処からとも無く、不気味な笑い声が聞こえて来た。

 

「ヒイッ!? な、何っ!?」

 

「出やがったか!?」

 

シャルが神谷にしがみ付き、神谷がそう言い放つと………

 

突如本棚の本の幾つかが、独りでに本棚から抜け出て開いたかと思うと、そこに鋭い牙を生やして襲い掛かって来る!!

 

「うわぁっ!?」

 

「野郎!!」

 

驚くシャルと、腰に差していた剣を抜き放つ神谷。

 

牙を生やした本達は、一斉に神谷とシャルに襲い掛かって来る!

 

「んなろーっ!!」

 

最初に飛び掛かって来た牙の生えた本達を、横薙ぎの一閃で斬り捨てる神谷。

 

斬り捨てられた本達は床に落ちると、青白い炎を上げて消し炭になる。

 

と、そこで続けて来た牙の生えた本が、神谷の左腕の小手に噛み付く。

 

「うおっ!?」

 

神谷が驚きの声を挙げると、左腕の小手に噛み付いた牙の生えた本は、バリバリと音を立てて鎧を噛み砕き始める。

 

「こなくそっ!!」

 

咄嗟に神谷は、左腕の小手から腕を抜く。

 

腕が抜かれた小手は、重力に引かれて、噛み付いていた牙の生えた本ごと地面に落ちる。

 

「そりゃあっ!!」

 

そしてそのまま、小手ごと牙の生えた本を串刺しにする!!

 

串刺しにされた牙の生えた本から青白い炎が上がり、消し炭と化す。

 

しかし、牙の生えた本は次々に本棚から出現し、キリが無かった。

 

「クソッ! 次から次へと!!」

 

「これじゃキリが無いよぉ」

 

思わずそう声を挙げる神谷とシャル。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

それに気を良くしたかの様に、何処からとも無く、あの不気味な笑い声が聞こえて来る。

 

「チキショー! 何処に居やがるんだ!!」

 

その声の主に向かってそう問い質す神谷だったが、答えの代わりに返って来たのは、牙の生えた本達だった。

 

 

 

 

 

????………

 

一方、そんな神谷達の姿を見せられている者達が居る。

 

「危ない、アニキ! 後ろだ!!」

 

「右だ! 右から来てるッス!!」

 

捕らわれの身となっている一夏達だ。

 

現在彼等は、真っ暗闇の中に居り、1人1人鳥籠の様な檻に捕らわれている。

 

「クッ! ISが起動しない!!」

 

「如何してですの!?」

 

箒とセシリアは、ISを起動させようとしているが、如何言うワケか待機状態のISはウンともスンとも言わない。

 

「クッ! 駄目か! 一体何で出来ているんだ、この檻は!?」

 

コンバットナイフで檻を抉じ開けようとしていたラウラが、ナイフの刃がボロボロになってしまったのを見てそう言う。

 

「…………」

 

無言で1人物静かにしている簪だが、彼女も先程アーマーマグナムを檻に向かって撃っていたが、ビクともせずに弾が切れてしまい、今は大人しく外部からの救援を待っている。

 

と、その時………

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

神谷達の元にも響いている、あの不気味な笑い声が聞こえて来たかと思うと、一夏達の前に不気味に光る眼と大きな牙が生えている様に見える口を光らせている、粘土の様な身体を持った人型の影が現れた。

 

「!? キャアッ!?」

 

「何!? 何っ!?」

 

その影の姿を見て、虚とのほほんが驚きを示す。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

「こ、怖い………」

 

影の不気味な姿に、恐怖を感じる蘭。

 

「ちょっと! アンタ!!」

 

「これは貴方の仕業?」

 

と、その影に向かって、鈴と楯無がそう問い質すが………

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

影は不気味な笑いを挙げるだけで、2人の質問には答えなかった。

 

「何とか言いなさいよ!!」

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

そんな影に、鈴は更にそう問い詰めるが、影は相変わらず不気味な笑い声を挙げるだけだった。

 

「貴様………舐めるなよ!!」

 

その様子を見ていたラウラが、影に向かってナイフを投擲する。

 

しかし、ナイフは影に突き刺さったかと思うと、そのまま身体の中に呑み込まれてしまう。

 

「!? 何っ!?」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

その瞬間、一夏達は相手が人間でも獣人でもない事を悟る。

 

何かもっとこう………得体の知れないモノであると。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

そんな一夏達を嘲笑うかの様に、影は不気味な笑い声を挙げながら、牙の生えた本に襲われている神谷達を見遣るのだった。

 

 

 

 

 

「この! この!」

 

次々に襲い掛かって来る牙の生えた本を、剣で斬り落としている神谷。

 

既に彼方此方に噛み付かれたのか、着ていた大魔神の鎧は所々無くなっている。

 

「キャアッ! キャアッ!」

 

シャルも、悲鳴を挙げながらも火の点いた蝋燭が載っている燭台を振り回し、近付く牙の生えた本達を振り払っている。

 

しかし、幾ら斬り落としても、牙の生えた本達は次々に本棚から出現し、一向に絶える気配が無かった。

 

「だ、駄目だよ、神谷! 一旦退こう!!」

 

「馬鹿言うな! 敵に後ろ見せられっか!?」

 

「そんな事言ってないで~!!」

 

退こうとしない神谷に向かって、シャルは怒る様にそう言うが、その瞬間!!

 

1冊の牙の生えた本が、動きの止まったシャル目掛けて襲い掛かる!!

 

「!?」

 

思わず硬直してしまうシャル。

 

「危ねえ、シャル!!」

 

しかしそこで、神谷がシャルと牙の生えた本の間に、自らの身体を割り込ませた!

 

牙の生えた本は、そのまま神谷の左肩に噛み付く。

 

既に左肩部分は鎧が無くなっており、牙の生えた本は、そのまま神谷の肉を食い千切らんとする。

 

「!? ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

左肩に走る激痛に、流石の神谷も、声を挙げ倒れる。

 

「! 神谷!!」

 

慌てて、神谷の左肩に食らい付いている牙の生えた本を引き剥がそうとするシャルだったが、牙の生えた本の牙は神谷の肉体に深く食い込んでおり、下手に外せば肉ごと持って行ってしまう。

 

かといってこのままでも、神谷の肩が食い千切られてしまう。

 

「ど、如何すれば!?」

 

焦るシャル。

 

しかし、妙案は浮かんでこない。

 

その間にも、牙の生えた本は神谷の肩を食い千切ろうとする。

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「か、神谷ああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

と、シャルが悲鳴を挙げた瞬間………

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

何処からとも無く笑い声が響いて来たかと思うと、ジャック・オー・ランタンが現れた。

 

「!? 君は!?」

 

シャルが、突如現れたジャック・オー・ランタンに驚きを示すと、

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

ジャック・オー・ランタンは、右手に持っていたランタンを掲げる様にした。

 

すると、ランタンから眩い光が放たれ始める。

 

ギャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!

 

途端に、牙の生えた本達が、白煙を上げて消滅し始める。

 

ジャック・オー・ランタンが持つランタンの炎は、死沼へ誘う鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)。

 

その光に導かれ、冥府へ落ちて行った様だ。

 

神谷の左肩に噛み付いていた牙の生えた本も、白い煙を上げて消滅する。

 

「ぐうっ!?」

 

「神谷!!」

 

すぐに神谷を助け起こすシャル。

 

「お前は………」

 

何で助けたんだと言う様な顔を、神谷がジャック・オー・ランタンに向けると………

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

ジャック・オー・ランタンは、笑い声と共に左手に神谷があげたロリポップを出現させた。

 

「あ! ソレ………」

 

「態々ソイツの礼に来たのか?」

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

神谷がそう言うと、肯定するかの様に笑い声を挙げるジャック・オー・ランタン。

 

「義理堅い奴だぜ。気に入ったぞ」

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

そこでジャック・オー・ランタンは、更に死沼へ誘う鬼火(ウィル・オー・ウィスプ)を光らせる。

 

 

 

 

 

アアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーーッ!?

 

その光は、神谷達の様子を覗き見ていた影にも届き、影は身体から白い煙を上げて苦悶の悲鳴を挙げ始める。

 

「な、何だ!?」

 

「「「「「「「「!?」」」」」」」」

 

その様子に驚く一夏達。

 

そしてその次の瞬間!

 

景色が一瞬にして回転する!!

 

「「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」

 

「「「「「「「「キャアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、黒紫色のオーラが立ち上っていた館は消滅。

 

神谷達と一夏達が、館が存在していた場所の地面に投げ落とされた!

 

「イダッ!?」

 

「アダッ!? イッテェ~」

 

頭を振りながら起き上がる神谷。

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

そして、悠然と浮遊しているジャック・オー・ランタン。

 

「! アニキ!!」

 

「! 一夏!!」

 

「皆! 大丈夫!?」

 

一夏達の存在に気づいた神谷とシャルが駆け寄り、助け起こす。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

「「!?」」

 

とそこで、あの影の怪人が現れた。

 

あからさまに敵意が籠った視線で、神谷達を睨み付けている。

 

「アレがこの騒ぎの元凶!?」

 

「シャル! 一夏達を連れて下がってろ!!」

 

と、シャルがそう言うと、神谷がそう言いながら、一同の前に出た。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

「何モンかぁ知らねえが、随分と好き勝手にやってくれたみてぇじゃねえか。お返しはタップリとさせてもらうぜ! グレンラガン! スピンオン!!」

 

と、神谷はそう言う台詞と共に、コアドリルを掲げ、グレンラガンの姿となる!!

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

対する影の怪人は、その粘土の様な質感の身体の両腕を、刃へと変える。

 

「ハッ! 上等だ!!」

 

それに対抗する様に、グレンラガンも、腕に細長いドリルを2本ずつ、計4本のドリルを出現させる。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

不気味な笑い声を響かせたかと思うと、大きく跳躍する影の怪人!

 

「トアアッ!!」

 

それに対抗する様に、グレンラガンも跳躍する!

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

「ゼエリャアッ!!」

 

三日月をバックに、2つの影の怪人とグレンラガンが火花を散らして交差する。

 

そのまま互いが居た位置へと着地する両者。

 

「うおっ!!」

 

先に仕掛けたのはグレンラガン。

 

両腕のドリルを回転させながら、影の怪人に突っ込んで行く。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

と、影の怪人はグレンラガンの方を振り向いたかと思うと、刃に変えたままの両腕を伸ばして来る。

 

「このぉっ!!」

 

迫って来た刃の両腕を、グレンラガンは両腕のドリルで粉砕する!!

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

「貰ったぁっ!!」

 

そのまま、両腕を失った影の怪人に飛び掛かるグレンラガンだったが………

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

何と、両腕を失った影の怪人の胸部から第3の巨大な手が生えた腕が伸びて来た!!

 

「!? 何っ!? ぐあっ!?」

 

避ける間も無く、その巨大な手に捕まえられるグレンラガン。

 

「クソッ! しまった!!」

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

影の怪人が、そのままグレンラガンを握り潰そうとする。

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「アニキ!!」

 

「やらせるか!!」

 

「「「「「「「!!」」」」」」」」

 

一夏と弾が、ISとグラパールを展開しようとし、シャルや箒達も同じくISを展開させようとしたが、

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

影の怪人の口から、黒紫色の炎が吐かれ、一夏達の元に着弾する!!

 

「!? うわあああっ!?」

 

「「「「「「「「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」」」」」」」

 

その黒紫色の炎で、一夏達は忽ち動きを封じられてしまう。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ………

 

「ぐああっ! クッソォッ!!」

 

そのまま一気にグレンラガンを握り潰そうとする影の怪人だが、グレンラガンも抵抗する。

 

しかし、徐々に影の怪人の力は上がって行く。

 

と、そこで!!

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

ジャック・オー・ランタンが、再びランタンの光を影の怪人に浴びせた!!

 

アアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

途端に、影の怪人は苦悶の声を挙げて、身体から白い煙を上げて苦しみ出す。

 

「! しめた!!」

 

その瞬間に拘束が弱まり、グレンラガンは抜け出す事に成功する。

 

「サンキュー、カボチャマン! 今度は俺の番だ!!」

 

そう言うとグレンラガンは、胸のグレンブーメランと、背のグレンウイングを取り外す。

 

「ダブルブーメラン! スパイラル!!」

 

そして、その両方をブーメランとして影の怪人目掛けて投擲した!!

 

身体から白煙が上がっていた影の怪人は避ける事が出来ず、そのまま2つのブーメランの連続斬り付けを喰らう!!

 

そしてその勢いで、宙に舞い上げられた!!

 

「今だ! 喰らえっ!!」

 

と、グレンラガンが戻って来たグレンブーメランとグレンウイングを回収すると、額から1本のドリルを出現させ、胸に再装着したグレンブーメランを発熱させる。

 

「ドリルビーム!! アンド! グレンファイヤー!!」

 

額のドリルの先端からのビーム・ドリルビームと、胸部のサングラスからの熱線・グレンファイヤーが同時に放たれる!!

 

アアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!?

 

ドリルビームとグレンファイヤーの同時直撃を受けた影の怪人は、風船の様に身体が膨らんで行き、やがて限界に達した瞬間!!

 

木端微塵に大爆発した!!

 

破片も空中で燃え尽き、黒い灰となって、辺りに降り注ぐ。

 

「やったぜ!!」

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

グレンラガンがそう言ってガッツポーズを決めると、ジャック・オー・ランタンも嬉しそうな笑い声を挙げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局………あの影の怪人は何者だったのかしら?」

 

先程まで、黒紫色のオーラを立ち上らせていた館が在った場所に居るグレン団の中で、鈴がそう言う。

 

「最後まで分からず終いだったな………」

 

「得体の知れないモノだと言うのは感じたが………」

 

箒とラウラもそう意見を出し合う。

 

「ひょっとしたら………悪霊の類だったのかも知れないわね」

 

「悪霊?」

 

とそこで楯無が挙げた意見に、シャルが首を傾げる。

 

「ハロウィンが行われる10月31日は………死者の霊が家族を訪ねたり、精霊や魔女が出てくると信じられていたわ………」

 

「だから、本当に悪霊が出たと?」

 

「俄には信じられませんわね………」

 

簪がそう述べると、虚とセシリアがそう言う。

 

「でも~、確かにアレは悪霊ぽかったよね~」

 

「うう~、怖かったです~」

 

そう言い合うのほほんと蘭。

 

「まあ、でも、世界征服を企む悪の獣人と戦ってる時点で俺達も十分非常識だし」

 

「世の中、科学や常識で説明出来ない事なんてごまんと有るぜ」

 

するとそこで、一夏と弾があっけらかんとそう言い放った。

 

「サンキュウな、お前のお蔭で助かったぜ」

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

一方神谷は、今回の功労者であるジャック・オー・ランタンに礼を言っている。

 

「そう言えば、君も一体何者なの?」

 

そこでシャルが、ジャック・オー・ランタンにそう疑問を投げ掛けた。

 

今まで色々とあった為に聞きそびれていたが、このジャック・オー・ランタンの存在もかなり怪し気なものである。

 

ヒヒヒヒヒヒ………

 

しかし、ジャック・オー・ランタンはその質問には答えず、スーッと上昇して行ったかと思うと、

 

トリック・オア・トリート!

 

ハロウィンでお決まりの台詞を残して、夜空に溶け込む様に消えてしまった。

 

「き、消えた………」

 

暫しの間、茫然と夜空を見上げる一夏達。

 

「ひょっとしたらアイツ………ハロウィンの精霊だったりしたのかもな」

 

するとそこで、神谷がそんな事を言う。

 

「そう………かもしれないね」

 

シャルがそれを聞くと、少し考える様な素振りを見せた後、笑みを浮かべてそう言う。

 

他の一同も戸惑いながらも、やがて神谷の言葉を信じ、そう思い込む事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロウィンの夜に起きた、ちょっと不思議な物語。

 

もし、皆さんの前に、こんなジャック・オー・ランタンが現れたら………

 

恐がらずに、お菓子を渡して挙げて下さいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ハロウィン編後編。
今回はロージェノム軍ではなく、謎の存在と戦いました。
ジャック・オー・ランタンも合わさり、ちょっぴり不思議な話に仕上がっています。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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