来年も『天元突破インフィニット・ストラトス』をよろしくお願いします。
これは………
女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………
それに付き従う女達の物語である………
天元突破インフィニット・ストラトス
第57話『あのデカブツを止めてみせるぜ!!』
日本のとある山中………
草木も眠る真夜中の山の上を、空自のRF-4EJが飛んでいた。
「こちらウッドペッカー1。ポイントB45地区を飛行中。現在のところ異常無し」
[こちら本部。了解、ウッドペッカー1。引き続き、ポイントC36からG79までの哨戒を続けよ]
「了解」
RF-4EJのパイロットは、通信でそう遣り取りをすると、哨戒任務を続ける。
ロージェノム軍の出現以来、空自の哨戒任務は前にも増して行われる様になっていた。
彼等の必死の努力にも関わらず、ロージェノム軍は日本の防衛網を易々と突破し、日本各地………
特に、IS学園を中心に襲撃している。
それでも、彼等の任務が全く意味を成していないか?と問われれば、答えは否である。
彼等が進軍中のロージェノム軍を発見した事により、グレン団の面々が戦闘を有利に行えた事も多々ある。
彼等の様な縁の下の力持ちが居るからこそ、日本は比較的平穏を保っていられるのである。
と、そうこうしている内に、RF-4EJは次の哨戒地点へと到着する。
だが、そこで彼等は、驚くべき光景を目撃する事となる。
「ん? 何だ?」
RF-4EJのナビゲーターが、地上で何かが動いているのを捉える。
レーダーにも、動体反応がしっかりと出ていた。
確認の為に、RF-4EJは高度を落とし、旋回する。
そして彼等は、驚くべき光景を目にする。
「!? なっ!?」
「や、山が動いている!?」
驚愕するRF-4EJのパイロットとナビゲーター。
彼等の目の前では、黒い山が地響きを立てながら動いていたのだ。
「い、いや違う!? 何か………何か巨大なモノが動いている!?」
しかし、よくよく確認すると、それは何か巨大なモノが動いている事に気づく。
するとそこで、夜空に掛かっていた雲が途切れ、月明かりがその動く巨大な何かの姿を映し出す。
それは………
「!? せ、戦艦!? 戦艦が陸上を進んでいる!?」
RF-4EJのナビゲーターは、またも驚愕の声を挙げる。
月明かりに照らし出された動く「巨大な何か」の姿は、正しく戦艦であった。
しかし、地響きと共に山中に生えていた木々を薙ぎ倒し、そして山を砕いて更地と化すその姿は、怪物と表現するのが相応しかった。
「こ、こちらウッドペッカー1! 非常事態発生!! ポイントC45地点に! 巨大な! 巨大な陸上戦艦が!!」
と、そこで漸く我に返ったRF-4EJのパイロットが、慌てて本部へ通信を送る。
だが、その瞬間!!
陸上戦艦が、RF-4EJに気付いたのか、凄まじい数の対空砲火を放って来た。
その様子は、正に弾幕の嵐である。
「「う、うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」
避ける間も無く、弾幕の嵐に飲み込まれたRF-4EJは蜂の巣にされ、爆発・四散したのだった。
◇
その翌日………
IS学園・1年1組………
「ですから、この場合は国際IS委員会の定めたこの規約が適用されます。それに伴い………」
平和に授業が行われているIS学園。
しかし、1年1組の教室でも退学者や転校者の空席が結構目立つ様になっており、一抹の寂しさを感じさせる。
「ZZZZZZZZzzzzzzzzz~~~~~~~~~~」
そして今日も爆睡街道まっしぐらの神谷。
1時間目の授業だと言うのに、既にイビキを立てている。
「ですのでこの場合、IS学園の規則では………」
しかし、真耶も既に慣れたのか、最早気にも留めてない。
一夏を含めた他の生徒も、当然の光景として見ている。
慣れとは時に恐ろしいものである。
と、その時………
「山田くん。今日の授業は中止だ」
千冬がそう言いながら、1組の教室に入って来た。
突然現れ、授業の中止を言い放って来た千冬に、生徒達はざわめき立つ。
「あ、織斑先生。中止って、如何言う事ですか?」
真耶が首を傾げながら、千冬にそう尋ねる。
「説明は後でする。これより全校生徒は、各自必要な荷物を纏め、1時間後に港に入港する海上自衛隊の護衛艦へ乗艦。IS学園を離れろ!」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
突然学園を離れろと言って来た千冬の言葉を理解出来ず、生徒達は目を白黒させて呆然となる。
「聞こえなかったのか!? 各自避難の準備だ!!」
すると千冬は、今度はキツい口調でそう怒鳴った!!
「「「「「「「「「「!? ハ、ハイ~~~~~~ッ!!」」」」」」」」」」
その言葉で、呆然としていた生徒達は、一斉に行動へ移る。
「それから、織斑、篠ノ之、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、そして天上。以上の者は学園地下のリットナー先生の研究室へと集合せよ」
「「「「「!?」」」」」
「………んあ?」
千冬に呼ばれて一瞬緊張の色を見せる一夏達と、目を覚ます神谷。
彼等グレン団メンバーが呼ばれたと言う事は即ち、ロージェノム軍の襲来だと言う事を表していた。
IS学園・地下………
リーロンの研究室………
神谷、シャル、一夏、箒、セシリア、ラウラが研究室兼作戦室へと集合してから程なくして、鈴、楯無、簪、弾のメンバーも集まり、グレン団の戦闘メンバーが集合した。
現在彼等は、コの字型に組まれた長テーブルの席に着き、司令官的立場である千冬達を待っている。
「全員集まったな」
そしてそこで、真耶とリーロンを引き連れて、当の千冬が姿を見せた。
「オイ、ブラコンアネキ。一体如何したんだ? 自棄に仰々しいじゃねえか」
と、千冬の姿を見た神谷がそう言い放つ。
「仰々しくもせねばならん………今回の敵は一筋縄では行かんぞ」
千冬は何時もと同じキツい目付きの表情で、神谷にそう言い返す。
「? 如何言う事ですか?」
「それは………」
千冬の言葉の意味が分からず、シャルがそう質問し、真耶が答えようとしたところ、
「説明するより、見せた方が早いだろう。リットナー先生」
「ハイハイ、っと」
それを遮る様に千冬がそう言うと、リーロンがリモコンの様な物を取り出し、ボタンを押した。
すると、神谷達全員から見える位置の空中に、投影ディスプレイが表示される。
するとそこには………
空高く土煙を舞い上がらせ、木々を薙ぎ倒し、小山を砕いて驀進している、巨大な鉄の城が映し出された!
「!? コレは!?」
「「「「「「「!?」」」」」」」
その巨大な鉄の城を見て、一夏は驚きの声を挙げ、箒達も驚愕を露にする。
「ほう………」
只1人、その動く鉄の城を見ても、不敵な笑みを浮かべている神谷。
「…………」
そして簪も、何時もと変わらぬ冷静そうな様子で居た。
「ち、千冬ね………織斑先生! コレは一体!?」
やがて最初に我に返った一夏が、千冬に向かってそう尋ねる。
「コイツの名は『天岩戸(あまのいわと)』」
「旧日本軍が、アメリカ・ソ連との本土決戦に備えて建造していたとされる移動要塞よ」
それに対し、千冬がそう答え、リーロンが補足する。
「!? 旧日本軍が!?」
「そんな馬鹿な!? 当時の! しかも敗戦間近だった日本に、こんな物を造る力なんて!!」
「目の前の光景が現実だ」
投影ディスプレイに映し出されている動く城・『天岩戸(あまのいわと)』が旧日本軍によって造られたと言われ、信じられないと言う楯無だったが、千冬はバッサリと切り返す。
「当時の旧日本軍も何を考えていたのか、コイツのスペックは最早化け物と言っても良いわ」
と、リーロンがそう言いながら、天岩戸の詳しいデータを映し出す。
名前:天岩戸
正式名称:本土決戦用移動式防衛要塞零号『天岩戸』
所属:大日本帝国軍(陸・海軍共同開発)
起工:1944年1月
完成:1945年8月
全長:15.8キロメートル
全幅:7.3キロメートル
全高:9.6キロメートル
重量:5000万トン
乗員数:12万人
速度:時速120キロ
航続距離:500万キロ
主砲:84㎝(67口径)砲3連装41基123門
副砲:52㎝(41口径)砲3連装25基75門
49㎝(37口径)単装砲153基153門
対空兵装:六式20㎝連装高射砲127基254門
40㎜3連装機銃592基1776門
40㎜単装機銃475基475門
35㎜連装機銃361基722門
その他:28㎜57連装噴進砲694基
装甲:金剛合金製 正面及び後面・2000㎜ 側面・1600㎜ 甲板・1200㎜ 底面・1400㎜
機関:試作型零号式超蒸気機関520基
1200万馬力
「………コレなんて中二病の産物?」
そのスペックを見た一夏が、最初に発した言葉がそれだった。
「織斑、コレは現実だと言っただろう」
だが千冬が、またもバッサリとそう言う。
その中二病の産物の様なスペックを、天岩戸は実際に持っている。
これは紛れも無く、現存する兵器なのだ。
「………この際、その天岩戸が旧日本軍が造ったモノだとか、そのスペックについては置いておきましょう」
「問題は、何故コレが今になって動き出したか?と言う事だ」
そこで、漸く冷静さを取り戻して来たセシリアとラウラがそう言う。
「それについてもハッキリしてるわ………と言うか、こんな事する連中なんて決まってるでしょう」
と、リーロンがそう言うと、天岩戸を真上から捉えた衛星写真を映し出す。
そのまま、その写真を拡大して行き、ハリネズミの様に武装が施された上部を映し出す。
すると、武装の隙間にあるものが映っていた。
「! 獣人!!」
鈴がそう声を挙げる。
そう。映し出されている写真に映っていたのは、紛れも無く獣人の姿だった。
「と言う事は………」
「そうだ。天岩戸は現在、ロージェノム軍によって運用されている」
千冬がそう言うと、投影ディスプレイの映像が再び切り替わる。
そこには日本地図が映し出され、天岩戸と表示されている赤い光点が、青い光点に向かって来ている事を表している。
「ちょっ!? あの青い点って………まさか!?」
「その通りだ」
「天岩戸は現在、このIS学園を目指して進軍して来ています」
弾が嫌な予感を感じてそう言うと、千冬がそう答え、真耶が補足した。
そして、地図上の青い点にIS学園と言う表示が加えられる。
「天岩戸が現在の速度を維持し続けた場合、5時間後にはIS学園を主砲の射程内に収めるわ。そして、更にその5時間後には、奴自体がIS学園に到達するわ」
「先程、航空自衛隊の戦闘機部隊と、陸上自衛隊の機甲師団。そしてIS部隊が、天岩戸に対し総攻撃を掛けました」
リーロンと真耶がそう言うと、またも投影ディスプレイが切り替わり、自衛隊の攻撃の様子が動画で再生される。
だが、その内容は惨澹たるものだった。
先陣を切ってミサイル攻撃を天岩戸に浴びせる航空自衛隊の戦闘機部隊だったが、ミサイルが天岩戸に近付くと、突然在らぬ方向へと曲がり、直撃弾を浴びせられない。
そして反撃に撃ち出された隙間無い対空砲火によって、戦闘機隊は次々に蜂の巣にされ、墜落して行く。
陸上自衛隊の機甲師団も、果敢に戦車砲や迫撃砲、榴弾砲にロケット弾、そしてミサイルで天岩戸を攻撃する。
しかし、戦闘機隊の攻撃の時と同じく、ミサイルは在らぬ方向へ飛んで行ってしまい、その他の攻撃は天岩戸のブ厚く堅牢な装甲を貫けず、表面で爆発を起こすか、弾かれるばかりだった。
そして、天岩戸からの反撃の砲撃とロケット弾を受け、機甲師団の装甲戦闘車輌は玩具の様に壊されて行く。
中には退避が遅れ、その巨体で踏み潰されるモノも居た。
そしてISも、天岩戸の前には全くの無力であった。
ミサイルは命中せず、レーザーやビーム、実弾の攻撃はやはり天岩戸の装甲を貫けず、反撃の嵐の如き対空砲火で、蠅の様に叩き落とされている。
「酷い………」
その凄惨な様に、シャルは思わずそう呟く。
「映像の通り、展開していた部隊はほぼ全滅。天岩戸は自衛隊の攻撃を全て跳ね除け、速度を落とさぬままIS学園を目指している」
「もうこうなったら、貴方達が最後の希望ってワケよ」
千冬とリーロンが、グレン団の面々を見ながらそう言う。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
最後の希望………
そう言われて、グレン団の面々は緊張の様子を見せる。
「よっしゃあっ! 任せとけ!! 俺が必ず! あのデカブツを止めてみせるぜ!!」
只1人、神谷だけが闘志を燃やしている。
「全く………お前のその根拠の無い自信も、こういう状況では頼もしく思えるな」
そんな神谷を見て、千冬はフッと笑いながらそう言う。
「ではコレより、対天岩戸攻略作戦を始めるわよ」
リーロンがそう言うと、投影ディスプレイがまた切り替わり、天岩戸の全体図の3Dモデルが表示される。
「コレが今までに取れたデータを元に作成した、天岩戸の3Dモデルよ」
「リットナー先生………さっきの自衛隊の攻撃の時………ミサイルが無力化されている様に見えたけど………アレは?」
とそこで、簪が先程の自衛隊が天岩戸に攻撃を掛けた時の映像を思い出し、ミサイル攻撃が無力化されていた点について尋ねた。
「ええ。如何やら敵は、強力なジャミング装置を装備してるみたいね。コレは多分、ロージェノム軍によって後付けされた物だと思われるわ」
「となると………誘導兵器が使えないか………」
リーロンの説明を聞き、簪は顎に手を当てる。
「そもそも、あんな巨大要塞を………如何やって破壊すれば良いんだ?」
「一夏! そんなもん決まってんだろ!! 魂を込めた漢の1撃を叩き込んでやれば良いんだよ!!」
「いや、アニキ。今回ばかりは流石にそれは無茶だよ」
天岩戸の巨大さを前に尻込みしているかの様な一夏に、神谷がそう言い放つが、弾からのツッコミが入る。
「だが、その大きさが付け入る隙となる」
「アレだけ巨大な要塞です。一旦取り付いてしまえば、どんな火力を持っていようと役に立ちません」
「つまり、内部へ突入して、内側から破壊する、と?」
千冬と真耶がそう言うと、ラウラがそう推察を述べる。
「その通りだ。お前達は天岩戸に突入し、先ず主砲を使用不能にしろ。それでIS学園が砲撃に晒される危険性を回避する」
投影ディスプレイの、天岩戸の全体図の3Dモデルの主砲部分に、赤い×点が印される。
「然る後に、艦橋を制圧。若しくは動力を破壊し、天岩戸を無力化する」
千冬がそう言うと、今度は天岩戸の艦橋と内部に、×点が印される。
「問題は、このハリネズミの様な天岩戸の武装の攻撃を掻い潜って、如何やって内部へ突入するか?ね………」
楯無がそう指摘する。
そう。この作戦の最大の問題点は、『如何にして天岩戸の内部へ入り込むか?』である。
ISすら蠅の様に叩き落とす対空砲火。
誘導兵器を完全に無力化するジャミング装置。
戦車砲等の直撃を何1000発喰らおうともビクともしない強固な装甲。
その守りは、正に鉄壁と評するのが相応しく、全く以て隙が無い様に思える。
「「「…………」」」
如何やら、千冬達もその点については理解しているらしく、良い手が無い様で沈黙する。
「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」
一夏達も、何か良い案はないかと頭を捻る。
と、そこで!
「良い手が有るぜ!」
神谷が事も無げにそう言い放った。
「!? 本当!? 神谷!!」
「ああ、コイツなら確実にあのデカブツに取り付く事が出来る!!」
尋ねて来たシャルに、神谷は自信満々にそう返す。
「それで………どんな手だ?」
神谷にそう問い質す千冬。
「名付けて! 『人間ロケット作戦』だ!!」
神谷は、ガッツポーズをしながらそう言い放つ。
それを聞いていた一夏達は………
(((((((((嫌な予感しかしない………)))))))))
一抹の不安を露わにしていたのだった。
◇
2時間後………
とある山中………
木々を薙ぎ倒し、そして山を砕いて更地と化しながら、天岩戸はIS学園を目指して突き進んで居る。
既に自衛隊は撤退し、天岩戸を阻む者は居ない。
我が物顔で、天岩戸は山を平地に変えて行く。
IS学園がその主砲の射程距離内に収まるまで、後3時間を切っている。
天岩戸・艦橋………
天岩戸の大きさが大きさなだけに、艦橋の広さも半端では無く、中でちょっとしたスポーツが出来そうな位の広さが有った。
「IS学園、主砲の射程内まで残り2時間50分を切りました」
「自衛隊は完全に撤退した様です。現在天岩戸周囲に動体反応無し」
「フン、腰抜け共め。それで良く国の守り手を名乗れたものだ」
艦橋要員の獣人の報告を聞き、指揮を執っていたヴィラルがそう皮肉る様に言う。
(やはり………我等に対抗出来るのはアイツ等だけか………)
と、内心でそう思っていたところ!
「! レーダーに感! 前方に展開中の陸上自衛隊部隊を確認!!」
「また無駄な事をしに来たか………」
ヴィラルはウンザリしているかの様にそう呟いたが………
「ヴィ、ヴィラル様! アレを!!」
「如何した?」
艦橋要員の1人の獣人が、そう言って艦橋の窓から前方に展開していた自衛隊の部隊を指差したので、ヴィラルが視線を向ける。
すると其処には!
巨大なロケット弾の様な物・計9つが、天岩戸に狙いを定めていた!!
その大きさは中にISを展開した人間が入って居られそうな程に有る。
「うわああっ!? 超巨大なロケット弾だ!?」
「狼狽えるな!! フッ、知恵を絞った作戦がそれか。敵が大きければ巨大な武器を使えば良い。単純な発想だな」
狼狽える艦橋要員の獣人を一喝し、ヴィラルは設置されている巨大なロケット弾を小馬鹿にする。
と、その瞬間!!
ロケット弾の後部から火の手が上がり!!
発射装置から勢い良く発射され、天岩戸に向かった!!
「うわあぁっ!? 来たぞ!?」
「落ち着け! 全機銃及び高射砲照準!! 叩き落としてしまえ!!」
ヴィラルがそう命じると、天岩戸にハリネズミの様に装備された機銃と高射砲から、一斉に射撃が開始される。
爆音と共に撒き散らされる弾丸が、巨大ロケット弾に襲い掛かる。
しかし、巨大ロケット弾は防弾処理を施されているのか、機銃と高射砲の弾丸は、巨大ロケット弾に命中すると弾かれ地面に落ちる。
「だ、駄目です! 弾丸が弾かれてしまいます!!」
「ならば副砲で迎撃しろ。砲弾装填!」
すると今度は、副砲である3連装52㎝41口径砲が、迫り来る巨大ロケット弾に向けられる。
「方位、240! 仰角50度! 誤差修正!!」
「撃てぇっ!!」
そして、ヴィラルの号令と共に轟音が挙がり、副砲が発射された!!
放たれた副砲の砲弾は、正確な照準で巨大ロケット弾に次々に命中!!
流石に52㎝砲の砲撃には耐え切れず、巨大ロケット弾は爆発し・四散してしまう!!
「目標撃墜!!」
「フン………呆気無いものだな」
再び皮肉る様な台詞を口にするヴィラル。
だがしかし!!
「!?」
そこでヴィラルは、背中にゾワリとした感覚を感じた!!
「この感覚は………まさか!?」
と、ヴィラルがそう声を挙げた瞬間!!
「ヴィ、ヴィラル様! 撃墜地点に螺旋力! 及びISのエネルギー反応が!!」
艦橋要員の獣人の1人が、そう声を挙げた!!
「!?」
それにヴィラルが驚愕の表情を浮かべると、巨大ロケット弾が爆発した際の爆煙の中から………
グレンラガンを先頭に、ISを装着した一夏達が飛び出す!!
「よっしゃあっ!! 一気に行くぜぇっ!!」
「やっぱり無茶苦茶な作戦だったぁっ!!」
「人間ロケット弾って、ホントに名前の通りの作戦だったんだ………」
「アイツに付き合っていると、命が幾つ有っても足りんな」
先頭を行くグレンラガンがそう叫ぶが、一夏からは愚痴の様な悲鳴が挙がり、シャルは呆れ顔をしており、箒は皮肉気味な台詞を言い放つ。
「けど、此処まで来たら、もう腹括るしかないぜ!!」
「確かに、天岩戸へ接近する事には成功しましたわ」
「後は取り付くだけだ!!」
「もうこうなったら自棄よ!!」
続いて、グラパール・弾、セシリア、ラウラ、鈴からそう声が挙がる。
とそこで、天岩戸からグレン団目掛けて、対空砲火が放たれ始める。
「クッ! 撃って来た!!」
「構わないわ………此処まで来れば………後は強行突破あるのみ」
水のヴェールで弾丸を防ぐ楯無に、簪がそう言う。
尚、彼女の機体は飛行不能な為、ミッションパックからパラグライダーの様な落下傘を展開し、滑空しながら天岩戸に降下している。
当然ながら、他のメンバーと比べて、その飛行機動は限定される。
と、1発の銃弾が運悪く簪のパラグライダーに命中!!
パラグライダーに穴が開く!!
「!? クッ!!」
それにより軌道が変わり、簪は天岩戸から逸れて行ってしまう。
「!? 簪ちゃん!!」
と、楯無が思わず声を挙げた瞬間!!
「………!」
簪は、自らパラグライダーをミッションパックから切り離した!!
そして、ミッションパックの左側に今回の作戦の為に装備して来たウインチガンを発射!!
ワイヤーで繋がれたフックが、天岩戸の出っ張りに引っ掛かり、簪は側面側にぶら下がりながら両足を着く!
そして、ジェットローラーダッシュで天岩戸の側面を駆け上がる!!
しかし、引っ掛かりが不十分だったのか、途中で外れてしまう。
「…………」
簪は、冷静にウインチを巻き戻してワイヤーとフックを回収すると、そのままジェットローラーダッシュの出力を上げて、一気に天岩戸の側面を駆け上がった!!
そしてそのまま天岩戸の甲板に乗ると、グレン団を狙っている対空砲塔の幾つかを狙って、ミッションパック右側に装備していた9連装ロケット弾ポッドからロケット弾を放つ!
ロケット弾は次々に対空砲塔へ命中。
混乱から一時対空砲火が止まる。
「今だ! 取り付けぇっ!!」
そこでグレンラガンの声が響いたかと思うと、残りのメンバーが一気に天岩戸に取り付いた!!
「ハアーッ! し、死ぬかと思った………」
短時間ながら、凄まじい対空砲火の中に曝され、生きた心地がしなかった一夏が、大きく息を吐きながら、自分がまだ生きている事に驚く様にそう言う。
「人間………中々死なないものよ」
そんな一夏に向かって、簪が撃ち終えた9連装ロケット弾ポッドをパージしながらそう言う。
………君と他の人を同列で考えてはいけない気がする。
「兎に角! 作戦の第1段階は無事成功した!!」
「次は主砲の無力化ですわ!」
そこで、ラウラとセシリアがそう言う。
「じゃあ予定通り、少人数に分かれて行動だね」
「ああ。誰か1人でも主砲を無力化出来れば、他のメンバーは動力炉か艦橋へ向かうのだったな」
シャルと箒も、作戦内容を確認する様にそう言う。
「………今回ばかりは生きて帰れるかしらね」
「決死の作戦ね………」
と、鈴と楯無が、今回の作戦が今までにない過酷なものである事への恐怖からか、そんな事を口走る。
「オイオイ、何言ってんだ、鈴? お前らしくも無い」
「その通りよ! 俺達は必ず勝つ!!」
「そして全員で生きて帰るんだ!!」
しかし、そんな恐怖を振り払うかの様に、グラパール・弾、グレンラガン、一夏の男性メンバーが勇ましい声を挙げる。
(神谷………)
(一夏………)
そんな男性メンバーの内、密かにグレンラガンに惚れ惚れしているシャルと、一夏に惚れ惚れしている箒。
「全く………アンタ達見ていると、ビビッてんのが馬鹿らしくなるわね」
「そうだね………皆で生きて帰ろうね!」
その言葉で、鈴と楯無の恐怖が消える。
「よし! 行くぞ、お前等ぁっ!!」
「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」
「…………」
そしてグレンラガンのその声で、一夏達は其々少人数に分かれて、天岩戸の内部へと突入して行くのだった。
天岩戸・艦橋………
「グ、グレン団です!! グレン団の連中が、天岩戸内に侵入しました!!」
「フ、フフフフフフフ………フハハハハハハハッ!!」
艦橋要員の獣人の報告を聞いたヴィラルが、突然笑い声を挙げる。
「ヴィ、ヴィラル隊長?」
「やはり! やはり来たか! グレン団!! 嬉しい! 俺は嬉しいぞ!! やはり俺の前に立ちはだかるのは、天上 神谷!! お前でなくてはならん!!」
艦橋要員の獣人が戸惑っていると、ヴィラルは続けてそう言い放つ。
「全部隊を侵入者迎撃に向かわせろ! 小煩いネズミ共を生かして帰すな!!」
「ハ、ハイッ!!」
ヴィラルがそう指示を出すと、艦橋要員の獣人は慌てて通信機を取り、侵入したグレン団の迎撃を通達するのだった。
「奴等の狙いは先ず主砲だな。そしてこの艦橋か動力炉と言ったところか………」
と、ヴィラルはそう呟いたかと思うと、動力炉に通信を繋ぐ。
「聞こえるか、ジギタリス?」
[ヴィラルか。先程の衝撃は、ひょっとすると………?]
「ああ、その通りだ………グレン団の連中が来た」
[やはり来たか………]
何と、この天岩戸にはジギタリスも乗っている様だ。
そしてジギタリスが居ると言う事は、ティトリーも………
「奴等は恐らく主砲を無力化した後、艦橋か動力炉へ向かう筈だ。動力炉へ向かった場合は………分かっているな?」
[承知している。俺にも獣人としての矜持がある]
「ならば任せたぞ」
と、ヴィラルはそう言うと一方的に通信を切る。
「さあ………来るなら来い! グレンラガン!!」
つづく
新話、投稿させて頂きました。
元号も令和へと変わり、最近は見かけなくなりましたが………
昭和の作品なんかでよく使われた、『旧日本軍の秘密兵器』ネタです。
鉄人28号しかり、轟天号しかり、メタルダーしかり………
ロマンです(笑)
そしてジギタリスも再登場。
当然彼女もいます。
いよいよ決着をつける事になるかと。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は
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天元突破ISと同時
-
土曜午前7時
-
別の日時(後日再アンケート)