天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第63話『悩むのは若人の特権よ』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第63話『悩むのは若人の特権よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日も、ロージェノム軍が日本に出現。

 

陸上自衛隊の補給を断とうとしたロージェノム軍は、陸上自衛隊関東補給処が在る霞ヶ浦駐屯地を襲撃。

 

防衛大臣からの要請を受け、IS学園はグレン団を援軍として派遣。

 

奮戦あって、被害は最小限に抑えられた。

 

グレン団は救助活動を手伝った後、IS学園へと帰還。

 

すっかり日が落ちた中、夕食を摂ろうと寮の食堂へ集まる。

 

 

 

 

 

IS学園・学生寮の食堂(五反田食堂・IS学園店)………

 

「ここのところ、連続だよなぁ………ロージェノム軍が現れたのって」

 

若干疲れが見える様子の一夏が、たぬきうどんを啜りながらそんな事を呟く。

 

「うむ………」

 

「それに、手口も段々と複雑になって来ていますわ」

 

「今までは数に任せての単純な押しの一手だったが、今日の襲撃の様に、補給基地を叩こうとする等、搦め手を使って来る様になった」

 

「厄介ね………私達は連戦連勝してるけど、人類全体で見れば、ロージェノムに負け越してるしねぇ」

 

それを聞いた箒、セシリア、ラウラ、鈴もそんな事を呟く。

 

ロージェノム軍相手に、連戦連勝を決めているグレン団。

 

しかし、世界全体の戦況は、相変わらずロージェノム軍側が優勢を維持している。

 

開戦当初だけで3分の1近く奪われていたISコアは、壊滅した国家が増えた事で更に増え、今では半数以上がロージェノムの手に渡っている。

 

更に、人類側からの裏切り者がレッドショルダーとなって人類に牙を向けている。

 

コレまでグレン団は、人類の裏切り者であるレッドショルダーを次々に打ち破って来たが、レッドショルダーが使用しているISには全て自爆装置が仕込まれており、ISコアは回収するどころか喪失されてしまっている。

 

ロージェノム軍側からすれば、ガンメンと言う戦力が多数に存在する為、例え奪ったISを失おうとも痛くも痒くも無い。

 

逆に人類側は、裏切り者であるレッドショルダーと戦えば戦う程、人類を守る筈であった最強の兵器ISを永遠に失う事となる。

 

裏切り者が出た件で見直しを迫られているとは言え、物量戦で圧倒的に負けている以上、数の不利をある程度は覆せるISの存在はまだ人類にとって必要不可欠だ。

 

だが、ISは467しか存在しない。

 

そして、その内の幾つかは完全に喪失してしまっている。

 

正に真綿で首を絞めるが如く、ロージェノム軍は人類を押して行っているのだ。

 

「せめて敵の拠点が分かれば………こちらから打って出る事が出来るのに………」

 

コーヒーが入ったカップを片手に持ちながら、簪がそんな事を呟く。

 

人類がロージェノム軍に対し防戦一方な最大の理由は、奴等の本拠地が全く分かっていない事だ。

 

壊滅させられた国家を占領し、拠点として利用しているのは確認されているが、本拠地の位置は開戦から大分立った今も分かっていない。

 

とある戦線では、やっとの思いで敵軍を壊滅させたと思ったら、翌日にはそれと同等がそれ以上の増援部隊が何時の間にか現れたと言う報告もある。

 

「ねえ、ティトリーさん。貴女は何か知らないの?」

 

「うん………私は占領したスペインの拠点で生まれたから、ロージェノム軍の本拠地までは知らないんだ」

 

そこで虚が、元ロージェノム軍であるティトリーにそう尋ねるが、彼女は占領された国家の拠点で生まれたらしく、加えて末端の兵士に過ぎない為、余り重要な情報は教えられていない様だ。

 

「そうですか………」

 

「ゴメンね、役立たずで………」

 

「ティトリーが気にする事じゃないよ」

 

「そうそう~。誰もティッチーの事を役立たずだなんて思ってないよ~」

 

落ち込むティトリーを、シャルとのほほんがそう言って励ます。

 

「シャル………本音………」

 

「兎に角、その事は私達が気にしても仕方がないわ。各国の諜報機関もロージェノム軍の情報収集に躍起になってるわ。何れ必ず分かるわよ」

 

ティトリーがそんな2人の姿に感動していると、楯無が纏める様にそう言う。

 

「その通りだ! 飯時に小難しい話すんじゃねえよ! 食欲が落ちるぜ!! おっちゃん! 焼肉定食追加!!」

 

「あいよ!!」

 

神谷もそんな事を言い、20回目となる追加の注文を厳に頼んでいた。

 

((((((………どの口が言うか〈言いますの〉))))))

 

そんな神谷の姿を見て、一夏達は呆れながら心の中でツッコミを入れる。

 

「ヘイ、アニキ! 焼肉定食お待ち!!」

 

とそこで、出来上がった焼肉定食を弾が運んで来た。

 

「おう、サンキュウ。そう言や弾。今日のオメェの活躍は光ってたなぁ!」

 

「えっ? そうっすか?」

 

と、神谷がそう言ったのを聞いて、弾は尋ね返す。

 

「ああ、危ういところをありがとうな。お蔭で助かったよ」

 

一夏も、弾に向かってそんな事を言う。

 

「へへっ、一夏。コイツは貸しだからな」

 

「分かってるって。必ず返すぜ」

 

そんな事を言いながら、弾はナチュラルに今日の戦闘の事を振り返るグレン団の中に混ざる。

 

「…………」

 

と、その光景を、蘭が複雑そうな表情で見ていた。

 

(一夏さん………お兄………)

 

やがてその視線は、一夏と兄である弾に注がれる。

 

(私も………私も戦えたら………)

 

そんな思いが頭を過る蘭。

 

最近彼女は、一夏達グレン団に対し、疎外感を感じる様になっていた。

 

勿論、一夏達が彼女を蔑ろにしていると言うワケではなく、彼女が一方的にそう感じているのである。

 

それは、彼女がグレン団の役に立っていないという思いから来ている。

 

兄の弾が、偶発的にグラパールを動かす事に成功し、五反田一家はIS学園で保護される事となった。

 

だが、事件や襲撃の度に、一夏達と共に出撃している弾と比べて、蘭は何時も留守番役である。

 

当然と言えば当然の事であり、他にも布仏姉妹やティトリーが居るのだが、彼女達はISの整備が出来る為、言わば後方支援要員と言える。

 

それに比べて、この前の事件では(第61話、第62話)、調査の手伝いに参加する機会を得たが、戦闘となれば彼女は安全な場所から見ているだけだった。

 

せめてもの役に立ちたいと思い、リーロンからコッソリとISの整備を習っているが、物になるにはまだ時間が掛かると言われている。

 

「でよぉ、それでさあ」

 

「ええ~? ホントかよぉ?」

 

「ハハハハハハッ!!」

 

そんな蘭の気持ち等知らず、弾や一夏達は何時の間にか楽しそうに談笑している。

 

「…………」

 

蘭は知らず知らずの内に、拳を握り締めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌日………

 

IS学園の地下・リーロンの研究室………

 

「………出来ました!!」

 

何やら複数の機械を組み立てていた蘭が、組み立てを終えるとそう声を挙げる。

 

「………3分42秒。うん、大分早くなったわね」

 

ストップウォッチを持っていたリーロンが、記録を見てそう言う。

 

「…………」

 

しかし、蘭はその結果に納得が行っていない様子だ。

 

今彼女が行っていたのは、IS整備の基礎訓練の様なものなのだが、通常ならば平均で2分。

 

早い者ならば1分で終えられる作業である。

 

蘭のタイムは平均にすら届いていない。

 

初期の頃は5分程は掛かっていたので、それから見てみれば大きく進歩していると言えるが………

 

「もう1回お願いします!」

 

「いいえ。今日は此処までにしましょう」

 

リーロンにそう言う蘭だったが、断わられてしまう。

 

「えっ!? でも………」

 

「余り根を詰めるのは良くないわ。そんなに直ぐ上手くなるものじゃないわよ。それに………何か知らないけど、そんなに焦ってちゃねえ」

 

「!?」

 

自分の内心を見透かされた気がして、蘭は驚く。

 

「ま、好きなだけ悩みなさい。悩むのは若人の特権よ」

 

「………ハイ」

 

「じゃあ悪いけど、私は織斑先生達と会議が有るから」

 

リーロンはそう言うと、研究室から出て行く。

 

「…………」

 

残された蘭は、暫くその場でボーッとしていた。

 

やがて、その視線は研究室の隅に置かれていた、ピンク色のカラーリングのグラパールに行き着く。

 

「…………」

 

立ち上がると、そのピンク色のカラーリングのグラパールの前に歩み寄る蘭。

 

「ねえ………貴方、私に力を貸してくれない?」

 

物言わぬグラパールに向かって、蘭はそんな事を言う。

 

「お願いよ! 私もお兄みたいに、一夏さん達と一緒に戦いたいの!!」

 

懇願するかの様な言葉を、ピンク色のカラーリングのグラパールへと投げ掛ける。

 

しかし、当然と言えば当然だが、ピンク色のカラーリングのグラパールは何も答えなかった。

 

「………駄目か………如何してお兄だけ………」

 

蘭は愚痴る様に呟くと、研究室を後にする。

 

すると、無人となった研究室の中で、ピンク色のカラーリングのグラパールが、ポウッと淡い緑色の光を放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・第1アリーナ………

 

グレン団の貸切状態となっているこのアリーナで、グレン団の面々は模擬戦を行っている。

 

「シャアアアアアァァァァァァイニングゥ! フィンガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

「超電磁パアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーンチッ!!」

 

一夏の雪羅でのシャイニングフィンガーと、グレンラガンの超電磁パンチがぶつかり合う。

 

両者の技同士がぶつかり合うと、スパークが辺りに飛び散る。

 

「クッ!?」

 

「おっと!?」

 

やがて、両者は互いに弾かれる様に距離を取った。

 

「グレンブーメラン!!」

 

空かさずグレンラガンは、胸のグレンブーメランを摑むと、一夏目掛けて投擲する。

 

「何の!!」

 

雪片弐型で、飛んで来たグレンブーメランを弾く一夏。

 

しかしその影に隠れて、グレンウイングが飛んで来ていた事には気づかなかった。

 

「!? うわっ!?」

 

ブーメランとなっていたグレンウイングが、一夏を直撃する。

 

「とああっ!!」

 

そこでグレンラガンは大きく跳躍。

 

空中で戻って来たグレンブーメランとグレンウイングを両手に握る。

 

「グレンラガン! 二刀両断!!」

 

グレンブーメランとグレンウイングを振り被ったかと思うと、両方同時に振り下ろす。

 

「!! とあああっ!!」

 

すると、それを見た一夏は瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動。

 

振り下ろされようとしていたグレンブーメランとグレンウイングに、自ら突っ込んで行った、

 

「!? 何っ!?」

 

「でりゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

そして、グレンブーメランとグレンウイングが完全に振られて勢いを付ける前に、雪片弐型で弾く!!

 

「うおあっ!?」

 

「取ったぁっ!!」

 

グレンブーメランとグレンウイングを弾かれ、完全に隙を晒したグレンラガンに、一夏は突きを繰り出す。

 

しかし!

 

「甘いな!!」

 

何と、グレンラガンはボディの顔の口で、雪片弐型の刃を噛んで受け止めた!!

 

「!?」

 

「おりゃあっ!!」

 

驚く一夏に、グレンラガンは蹴りを叩き込む。

 

「うおわっ!?」

 

一夏は弾かれるが、空中で姿勢を整えると地面に着地する。

 

グレンラガンも着地を決めると、グレンブーメランとグレンウイングを胸と背に戻す。

 

「へへっ」

 

「ハッ」

 

ふと、不意に一夏が楽しそうな笑みを零すと、グレンラガンも同じ様に笑う。

 

「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」」

 

その直後に、両者は再び激しくぶつかり合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2人共………模擬戦だって事、分かってるのかなぁ?」

 

模擬戦にも関わらず、白熱した戦いを繰り広げているグレンラガンと一夏の姿を見て、シャルが呆れる様にそう言う。

 

とそこへ、銃声と共に多数の弾丸が飛来する。

 

「!?」

 

咄嗟に、実体シールドで弾丸を受け止めるシャル。

 

受け止めた弾丸・ペイント弾は、シールド上で弾けて、赤いペンキをぶち撒ける。

 

実体シールドが所々赤く染まる。

 

「訓練中に、余所見は………駄目よ」

 

ヘヴィマシンガンを構えた簪が、ターレットレンズ越しにシャルを見ながらそう言う。

 

「ゴメンゴメン! 行くよ!!」

 

シャルはそう謝罪すると、ガルムを構え、簪に向かってペイント砲弾を連射して撃ち込む。

 

「…………」

 

すると簪は、ターンピックを巧みに使い、ペイント砲弾を躱すと同時に、横へのスライド移動で爆風圏内から逃れると言う離れ業を披露する。

 

「ううっ!? 相変わらずプロ並みの操縦テクニックだね!!」

 

簪の操縦テクニックに舌を巻くシャル。

 

「…………」

 

その間に簪はシャルに肉薄。

 

左手のアームパンチを叩き込んで来る!

 

「クウッ!?」

 

シャルは、またも実体シールドで防御する。

 

しかし、前にペイント弾の直撃を受けていた実体シールドにアームパンチが命中した為、模擬戦モードだった機体は、実体シールドが限界ダメージを受けたと判断し、実体シールドを収納してしまう。

 

「まだまだっ!!」

 

アームパンチの衝撃で距離を取ったシャルは、ガルムをしまうと、デザート・フォックスを両手に持ち、腰だめ撃ちで発砲する。

 

「…………」

 

ジェットローラーダッシュで回避運動を取る簪。

 

時折、ペイント弾が至近距離を掠めたりしているが、眉一つ動かさない。

 

(簪さんの一番恐ろしいところは、あの冷静沈着さだなぁ………)

 

その簪の姿を見て、シャルはそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おりゃあっ!!」

 

気合の叫びと共に、グラパール・弾がラウラに向かって、飛び蹴りを繰り出す。

 

「むっ!!」

 

腕を使ってその飛び蹴りをガードするラウラ。

 

しかし、グラパール・弾はキックした反動を利用して、再び宙に舞う。

 

「!? 何っ!?」

 

「グラパール反転キイイイイイィィィィィィーーーーーーーックッ!!」

 

そして再びラウラに飛び蹴りを繰り出した!!

 

「ぐうっ!?」

 

2度の連続キックに、衝撃を殺し切れず、ラウラは大きく後退させられる。

 

「チイッ!!」

 

だが空かさず、レールカノンをグラパール・弾目掛けて発射する。

 

「!? うおわっ!?」

 

するとグラパール・弾は、まるで某アクション映画の様に上半身を大きく仰け反らせて回避する。

 

「!? ぐえっ!?」

 

しかしそのまま、頭を地面に打ち付けてしまう。

 

「アダダダダダダダッ!?」

 

余りの痛みに、グラパール・弾は頭を押さえて転がる様に悶える。

 

「何をやっとるんだ、貴様は?」

 

その光景に、ラウラが呆れた声を漏らす。

 

「イデデデデデ………いや~、失敗失敗」

 

頭を擦りながら起き上がるグラパール・弾

 

「全く、訓練と言えど気を抜くな。今のが実戦だったら、貴様は死んでいるぞ?」

 

「生憎、渋とさには自信が有るんでね。そう簡単には死なねえさ」

 

「ほう? 流石嫁の親友だな。大きく出たな」

 

「そりゃどうも」

 

ラウラとグラパール・弾は、そう言い合うと模擬戦を再開するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこっ!!」

 

「おっと!!」

 

セシリアのスターライトmkⅢから放たれたビームを、楯無は回転する様に躱す。

 

「まだまだですわ!」

 

しかし、放たれたビームは軌道を変えて、楯無の背から襲い掛かる。

 

「予測済み」

 

だが、楯無はそう言って不敵に笑うと、背中に水のヴェールを回し、ビームを防ぐ。

 

「でしたら!!」

 

するとセシリアは、ビットのブルー・ティアーズを起動。

 

本体から分離したビットのブルー・ティアーズが、四方八方から楯無にビームを見舞う。

 

「おおっと!!」

 

全方からの攻撃に、楯無は回避に専念する。

 

「…………」

 

その楯無を、スターライトmkⅢのスコープ越しに見ながら、狙いを付けようとしているセシリア。

 

そして、遂に絶好のタイミングが訪れる。

 

「今度こそ!!」

 

「!? えいっ!!」

 

と、セシリアが引き金を引こうとした瞬間!

 

楯無は蒼流旋を、セシリア目掛けて投擲した!!

 

「!? キャアッ!?」

 

直撃は逃れたものの、セシリアは攻撃チャンスを潰され、更に意識が逸れた事でビットのブルー・ティアーズも停止し、隙を晒してしまう。

 

「チャンスッ!!」

 

楯無は即座にラスティー・ネイルを手に握り、セシリアに斬り掛かる。

 

「接近戦! 貰ったぁっ!!」

 

「そうは行きませんわ!!」

 

しかし、寸でのところで、セシリアはインターセプターを取り出し、楯無のラスティー・ネイルを受ける。

 

「むむっ!?」

 

「ハアッ!!」

 

そして、気合の叫びと共に弾き飛ばす。

 

「ととっ!?………接近戦は苦手じゃなかったの?」

 

「コレでも私は代表候補生ですわ。苦手分野を、何時までも苦手なままにしておくとお思いですか?」

 

「ふふん~、良いね~。お姉さん、ちょっとテンション上がって来たかも」

 

不敵に笑うセシリアに、楯無は微笑みながらそんな事を言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それっ!!」

 

突っ込んで来る箒に向かって、鈴が龍咆を放つ。

 

「むんっ!!」

 

だが、箒は不可視である龍咆の砲弾・圧縮空気を、雨月と空裂で斬り裂く。

 

「んなっ!?」

 

「テヤアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!!」

 

驚く鈴に、そのまま斬り掛かる箒。

 

「ッ!?」

 

鈴は連結させた双天牙月で、雨月と空裂を受け止める。

 

「随分と出鱈目な事してくれるじゃない。龍咆の砲弾を斬り裂くなんて」

 

「今まで何度お前の戦いを見ていたと思うんだ。発射のタイミングさえ見極めれば、そう難しい事ではない!」

 

鍔迫り合いをしながら、鈴と箒は互いに不敵に笑いながらそう言い合う。

 

「言ってくれるじゃない!!」

 

と、鈴はそう言い放つと同時に、雨月と空裂を弾き、距離を取ろうとする。

 

「逃がさん!!」

 

しかし、箒は両肩の展開装甲をクロスボウ状に変形させた穿千を構える。

 

穿千から熱線が発射され、離れようとしていた鈴に向かう。

 

「!? キャアアアッ!?」

 

辛うじて直撃は避けたが、バランスを崩して失速する鈴。

 

「クウッ!!」

 

しかし、その状態で連結した双天牙月を投擲する。

 

「!? グアッ!?」

 

アーマー上を掠り、火花を挙げる双天牙月に、箒は短く悲鳴を漏らす。

 

「よっ!!」

 

その間に鈴は体勢を立て直すと、戻って来た双天牙月をキャッチする。

 

「フッ、やるな………」

 

「アンタこそ………」

 

両者は再び不敵に笑い合うと、互いに突撃して、激しくぶつかり合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ~! 皆凄~い!」

 

「お嬢様達の実力、ここ数か月で格段に伸びてるわね」

 

「こうなると、反応速度の調整を見直す必要が有りそうだね」

 

その模擬戦の様子を、ピットの入り口で見ながら、機体データを取っていたのほほん、虚、ティトリーがそう言い合う。

 

「…………」

 

とそこで、アリーナの観客席の方に、蘭が姿を見せる。

 

自然と視線は一夏、そしてグラパール・弾を追う。

 

「…………」

 

知らず知らずの内に、拳を握り締める蘭。

 

と、その時!

 

[神谷! それに一夏! 他の連中も聞こえるか!?]

 

グレンラガン達へ、千冬から緊急通信が入る。

 

「!? 織斑先生!」

 

「如何した、ブラコンアネキ! またロージェノムの奴か?」

 

[その通りだが、少し厄介な事になっている………兎に角、直ぐにリーロンの研究室に来てくれ!]

 

一夏とグレンラガンがそう答えると、千冬はそう言って通信を切った。

 

「皆! 聞いたわね!? 模擬戦は中止!! リーロンさんの研究室に集合よ!!」

 

楯無が纏める様にそう言うと、グレン団の一同は次々にピットに引き上げ始める。

 

「ん? 蘭?」

 

とそこで、グラパール・弾が蘭の姿に気づく。

 

「あ!? お、お兄ぃ! えっと………」

 

「何やってんだ! 非常招集だぞ! 直ぐに研究室に集合だ!!」

 

戸惑う蘭に、グラパールから弾の姿に戻るとそう言い、研究室へと向かう。

 

「う、うん………」

 

蘭は少し表情に陰を落としながら、研究室へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下・リーロンの研究室………

 

作戦室と化した研究室へ集合するグレン団。

 

既に千冬、真耶、リーロンの姿が在る。

 

「織斑先生、一体何が有ったんですか?」

 

「うむ………コレを見ろ」

 

シャルの問いに、千冬は一同から見える位置に空中投影ディスプレイを展開させる。

 

そこには、襲撃を受けている陸上自衛隊の十条駐屯地と、木更津駐屯地の映像が映し出される。

 

「!? コレは!?」

 

「2箇所同時に?」

 

ラウラと楯無が驚きの声を挙げる。

 

今まで、日本を襲ったロージェノム軍は、IS学園を中心に襲撃していたと言う事もあるが、基本は戦力を一点集中で送り込んで来ていた。

 

だが、今回は2箇所を同時に攻撃すると言う作戦を執っている。

 

「今回も、敵は自衛隊の補給処を狙って攻撃を仕掛けて来た。十条駐屯地には陸上自衛隊補給統制本部が、木更津駐屯地には航空自衛隊第1補給処が在る」

 

「防衛省からは、既にIS学園に救援要請が出されています」

 

「十条駐屯地にはレッドショルダー、木更津駐屯地にはガンメンを中心とした部隊が展開しているわ」

 

千冬と真耶、リーロンが一同に向かってそう説明する。

 

「2箇所同時だなんて………今まではこんな事無かったのに………」

 

「同時攻撃で………こちらの戦力を分断するのが狙い?」

 

一夏がそう言うと、簪がそんな推測を立てる。

 

「考えててもしょうがねえ! 直ぐに行くぞ! これ以上アイツ等の好きにさせるワケには行かねえ!!」

 

「残念だけど、神谷の言う通りよ。敵の猛攻の前に自衛隊は苦戦を強いられてるわ。このまま補給処が破壊されてしまったら、自衛隊の機能がマヒしてしまうわ」

 

神谷が考えていても仕方ないと言い、リーロンもその時間が無い事を告げる。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

グレン団の面々は敵の目的が分からず、一抹の不安を抱えながらも、出撃準備に入る。

 

そして、十条駐屯地には楯無、簪、セシリア、鈴、ラウラ。

 

木更津駐屯地には神谷、シャル、一夏、箒、弾が向かう事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時………

 

今後巻き起こる事態を………

 

誰もが予想だにしていなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

今回から蘭編です。
いよいよ彼女の参戦が秒読みとなります。
果たして、思い悩む蘭に転機は訪れるのか?
そして、2面作戦に出たロージェノム軍の意図は?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)
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