これは………
女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………
それに付き従う女達の物語である………
天元突破インフィニット・ストラトス
第7話『出来るか如何かじゃねえ………やるんだ』
IS学園・第2アリーナ………
「「「…………」」」
神谷、一夏、鈴は、無言でアリーナの上空に展開したモニターを凝視していた。
『…………』
モニターに映る男………螺旋王ロージェノムは不敵な笑みを浮かべており、まるでモニター越しに神谷達を見下しているかの様だった。
[アレは………]
[一体………誰ですの?]
[お、織斑先生………]
[…………]
管制室に居る箒、セシリア、真耶、千冬も突如現れた男に戸惑いの様子を浮かべている。
「………聞こえるか、ロージェノムとやら。私はIS学園教員の織斑千冬だ」
とそこで、千冬が神谷達の前にモニターを展開させ、ロージェノムに向かって話し掛けた。
『………ブリュンヒルデか。学園に居るとは聞いていたが、まさか教師をしているとは思わなかったぞ』
ロージェノムは不敵な笑みを浮かべたままそう言い放つ。
「その呼び名は余り好きではない………それよりも答えてもらおう。今回のこの謎のIS………そして以前の獣人やガンメンと呼ばれる者達の襲撃はお前の仕業か?」
そんなロージェノムに対して、千冬はそう問い質す。
『そうだ………』
アッサリと白状するロージェノム。
いや、と言うよりも………
それが如何したとでも言わんばかりの態度だ。
「貴様、正気か? このIS学園は如何なる国家、企業、組織の干渉を受けない。逆に言えば、この学園に干渉すると言う事は、世界を敵に回す事だぞ?」
『それが如何した?』
「なっ!?」
ロージェノムの意にも介していない様子に、千冬は驚きの声を挙げる。
(コイツは何を考えているんだ!? まさか本気で世界中を敵に回す気か!?)
「おうおうおうおう! さっきから聞いてりゃ、上から目線で見下ろしやがって!! 何様の積りだ、テメェ!!」
と、千冬がロージェノムの真意を測りかねていると、白式ラガン姿のままの神谷が、モニターのロージェノムに向かってそう啖呵を切った。
「ア、アニキ………」
融合している一夏は、若干気後れしている様子を見せている。
『………貴様が天上の息子か………成程………父親同様に勇ましい奴だな………』
と、ロージェノムは千冬から白式ラガンに視線を移すとそう言い放った。
「!? 親父を知ってんのか!?」
『ああ、良く知っているよ………奴はワシの夢にとって、1番の障害だった男だったからな………しかしまさか………今度はその息子が立ちはだかって来るとは思わなかったぞ………』
「障害?………!? まさか!! 親父を殺したのは!?」
『そうだ………天上は………ワシが殺した』
「「「「[[[!!]]]」」」」
その言葉に、全員が驚愕を露わにした。
「テ、テメェが親父を………」
白式ラガンの手が、血が出んばかりに握り締められる。
『奴もとことん邪魔をしてくれる………余程ワシの夢を阻みたいと見える………全く………死んでからも手を焼かされる男だ』
「るせぇっ!! 何が夢だ!! その為に親父を殺したってのか!! 一体どんな夢だってんだぁ! 言ってみやがれ!!」
不敵な笑みを浮かべたままそう言うロージェノムに向かって、神谷はそう叫んだ。
「………『世界征服』」
「!? 何ぃ!?」
「世界………征服だと?」
ロージェノムの語る夢が、余りにも単純明快にして壮大なものであると知り、神谷と一夏が驚きの声を挙げる。
「はあっ!? アンタ! 頭おかしいんじゃないの!?」
しかし、鈴は誇大妄想だとばかりにそう言い放つ。
『…………(ギロリ)』
途端に、ロージェノムは鈴を睨み付けた。
「!? ひいっ!?」
悲鳴を挙げる鈴。
ロージェノムが放つ迫力と眼力は半端では無く、モニター越しだと言うのに鈴は心臓を冷たい手で鷲摑みにされた様な感覚に襲われた。
「貴様………そんな漫画の様な事が本当に出来ると思っているのか?」
と、そこで千冬がロージェノムにそう言い放った。
確かに、世界征服など空想の中でしか実現できぬ絵空事であると考えるのが普通だ。
加えて、この世界にはISと呼ばれる最強の兵器が存在している。
『勿論だ………』
しかし、ロージェノムが相変わらず不敵な笑みを浮かべてそう言ったかと思うと………
彼が映っていた巨大モニターの周囲に、新たな小型のモニターが4つ展開した。
そこには、炎に包まれているオーストラリア、インドネシア、南アフリカ共和国、トルコの様子が映し出されていた。
「なっ!?」
[[[「「「!?」」」]]]
その光景に驚愕する一同。
やがて小型モニターの映像が切り替わり、螺旋四天王の姿が映し出された!!
『こちらチミルフ。オーストラリア軍、殲滅致しました』
『アディーネです。インドネシア軍は完全に沈黙。残存戦力もありません』
『このシトマンドラの手に掛かれば、南アフリカ共和国軍など赤子も同然!』
『トルコ軍も、このグアームが片付けましたじゃ』
チミルフ、アディーネ、シトマンドラ、グアームから、次々にその国の軍隊を全滅させたという報告が挙げられる。
『御苦労………ISコアは回収したか?』
『『『『ハッ! ココに!!』』』』
ロージェノムがそう問うと映像が再び切り替わり、小型モニターが4つとも積み上げられたISコアへと変わった。
『ふっ………』
それを見て、更に不敵に笑うロージェノム。
「そ、そんなバカな………」
信じがたい光景に、あの千冬さえも言葉を失う。
『コレで分かったかな? ワシが本気だという事を?』
そんな千冬に向かって、ロージェノムは見下しながらそう言い放つ。
『何れは世界が我が手の中に落ちる………残り少ない平和な日々を………精々謳歌するが良い』
最後にそう言い残し、ロージェノムと螺旋四天王が映っていたモニターは消えた。
「!? 待ちやがれ!! テメェにはまだ聞きたい事が………」
と、神谷がそう言い、白式ラガンが前に出た瞬間………
「「うっ!?」」
神谷と一夏から、同時にそんな声が漏れたかと思うと………
白式ラガンが光に包まれ、グレンラガンと白式を装着した一夏の姿に分離。
更にグレンラガンは神谷の姿に戻り、一夏の方もISの装着が解除され、アリーナの地面の上に前のめりに倒れた。
「!? 一夏!? 神谷!?」
それを見た鈴が、慌てて傍に駆け寄る。
「!? 救護班!! 第2アリーナだ!! すぐ来てくれ!!」
更に、千冬が慌てながら救護班へと連絡を入れるのだった………
◇
夕刻………
IS学園・保健室………
「う………?」
全身に痛みを感じながら、一夏が目を覚ました。
「おう、一夏。気が付いたか?」
「一夏!」
「一夏さん! 大丈夫ですか!?」
「一夏! 目を覚ましたの!?」
そこで、横から声が聞こえて来たのでその方向へ視線をやると、神谷、箒、セシリア、鈴の姿が在った。
「アニキ………皆も………」
一夏はそう言いながら、半身を起こす。
「!? つうっ!?」
すると、全身を鈍い痛みが走った。
「! 一夏!!」
「一夏さん! まだ寝てなくては駄目ですわ!!」
「そうよ! アンタ、全身筋肉痛なのよ!!」
箒達がそう言って、再び一夏を寝かし付ける。
「此処は………保健室か?………俺………どうなったんだ?」
視線だけを箒達の方に向け、そう尋ねる一夏。
「あの後、気を失って倒れたのよ」
「保健の先生の話では、極度の疲労だそうです」
「全身筋肉痛なのも、その影響だ」
「そっか………合体したせいなのか?………!? アイタタタタタタッ!?」
箒達の説明に、一夏がそう返事を返すと、再び身体を鈍い痛みが襲った。
「オイ、大丈夫か? 一夏」
「イッテェ………アニキは大丈夫だったの?」
「おうよ! 俺を誰だと思ってやがる!!」
「コイツも気絶してたんだけど、保健室に連れて来られた直後に目を覚ましたのよ………」
「しかも、身体には一切異常は無しだそうだ………」
「人間とは思えませんわね」
一夏とは対照的に、ピンピンとしている神谷がそう言い、箒達が呆れの言葉を漏らした。
「ハハッ、流石アニキだ………! そうだ! あのロージェノムとか言う奴は如何したんだ?」
「「「!?」」」
「…………」
一夏が続いてそう尋ねると、箒達は言葉に詰まり、神谷も険しい表情を浮かべた。
「? 如何したんだよ?」
「奴は本気で………世界を征服する積りだ」
一夏が首を傾げると、そう言う台詞と共に、千冬が真耶を伴って、保健室内に姿を現した。
2人供、険しい表情を浮かべている。
「あ、千冬………織斑先生」
千冬姉と言い掛けて、慌てて訂正する一夏。
「織斑………コレから大事な話をする。そのままで良いから心して聞け」
「あ、ああ………」
千冬の言葉に戸惑いながらも、心の準備を整えて話を聞く一夏。
しかし………
千冬の口から語れたのは………
衝撃的な現実であった………
◇
第2アリーナをゴーレムIが強襲したのと時を同じくして………
国連非加盟国を含めた世界204ヵ国全てに………
IS学園を襲ったのと同じ『獣人』と『ガンメン』が多数出現!
都市部に対し、破壊行為を開始した。
各国軍は直ちに出動。
ISをも投入して、これの鎮圧に当たった。
ISの存在もあり、戦況はすぐに各国の軍側に傾くと思われていた………
しかし………
各国の軍は獣人とガンメンの部隊の前に、次々と敗北………
ISの撃墜も確認された………
獣人の戦闘力は現代歩兵を、ガンメンの戦闘力は現代のあらゆる兵器を上回っていたが………
単純に比べて、ISはそのどちらもの上を行く性能であった。
………にも関わらず、苦戦を強いられたのは何故か?
それは数の違いである。
ISはその中核となるコアと呼ばれる部品が、現状467しかないのだ。
それを不公平の無い様に世界各国に振り分け、更に研究用と軍事用に分けた結果………
大国であったとしても、軍事利用されているISは精々10数機と言う状況だった。
ISは最強の機動兵器ではあったが、無敵でない………
稼働させているエネルギーには限りがあり、エネルギーが尽きれば只のガラクタと化す。
コレはIS以前の現代兵器にも通じる事であり、補給や整備と言った後方支援が有って、兵器は初めて機能するのである。
しかし、それでも………
1機で1つの国の軍事力を賄える程の性能がある。
だが、ISは敗北した………
何故なら、IS1機辺りに対して………
ロージェノム軍は実に、100万体近くの数で戦ったのである。
某機動戦士に出て来る敵国の3男坊も言った通り、結局のところ戦いは数であり………
100万と言う数の波には、ISも抗いきれなかったのだ。
しかもコレはIS1機に倒して向けられた戦力………
各国の軍隊を襲撃したロージェノムの軍勢の数は、小国でも軽く10億を超えていた。
辛うじて、アメリカやロシア、中国、イギリス、フランス、ドイツ等と言った世界の上位国は持ち堪えたものの、大きく戦力を削がれた。
そして、最悪な事に………
467のコアの内………
実に3分の1以上である170のコアが、ロージェノム軍の手によって回収されたのだ。
これにより只でさえ驚異的な戦力を誇っていたロージェノム軍に、世界最強の兵器の源が多く渡った事になる。
ロージェノム軍は小国の幾つかを壊滅させ、大国にも甚大な被害を与えた後、姿を消した。
そしてその後、各国に向けてIS学園でしたものと同じ………『世界征服宣言』を行った。
この瞬間………
人類は歴史上初めて………
『共通の敵』と対峙する事になった………
◇
IS学園・保健室………
「………以上が、今現在の世界の情勢だ」
「…………」
一夏は言葉が出なかった………
気を失う間際、ロージェノムが国を焼いていた描写は見ていたが、それがほんの一部に過ぎない事を思い知らされた。
「世界は混乱の渦に呑み込まれている。無理もない話だがな………最強の兵器だと言われて、信じて疑わなかったISが敗北し、国という存在がまるごと焼かれたんだ」
そう言う千冬の声も、少し震えていた。
「あ、あの、織斑先生………俺達はコレから如何するんですか?」
と、漸く我に返った一夏が、千冬にそう尋ねた。
「………現状維持だ」
「えっ?」
しかし、千冬から返って来た言葉が予想だにしなかったもので、一瞬混乱した。
「取り敢えず、クラス対抗戦は中止だ。第2アリーナは修復が終わるまで使用禁止だ。それ以外は通常通り授業を行う………」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 千冬姉!! 世界征服を企む連中が暴れてるんだぞ! 授業なんかしてる場合じゃ………」
「お前に何が出来る!?」
「!?」
食い掛かって来た一夏を、千冬は一喝する。
「相手は、本気で世界征服を企む強大な軍勢だぞ………ただの訓練生に過ぎないお前に、一体何が出来ると言うんだ!?」
「それは………!?」
そう言われて言葉に詰まる一夏。
「織斑くんの気持ちは分かりますが、事は極めて国際的な問題です………私達が出る幕は………」
真耶が諭す様にそう言って来たが………
「出来るか如何かじゃねえ………やるんだ」
神谷が腕組みをしながらそう言って来た。
「!? 天上くん!?」
「アニキ!?」
「神谷! 貴様また………」
「ロージェノムだか何だか知らねえが………あんな奴等を野放しにして良い訳がねえ! 何が世界征服だ! 笑わせんじゃねえ!!」
何時もと同じ様にそう言い放つ神谷。
だが、その表情は真剣そのものだ。
「それにアイツ等は親父の仇だ! 放って置けるかよ!!」
「だからと言ってどうする積りだ!? コチラは敵に対する情報は殆ど持っていないんだぞ! 奴等が何処に居るかも分からないで、一体何をすると言うんだ!?」
「へっ! 簡単な事よ!! アイツは俺の事を世界征服の障害と見ていた! つまり!! コレからも奴の所から俺に対して刺客が送られてくるに違いねえ! そいつ等を片っ端から倒していきゃ、痺れを切らして出て来るに違いねえ!!」
「アニキ! それはそうかもしれないけど………」
神谷の言う事にも一理有る………
しかし、同時にそれは………
果てしなき戦いに身を投じると言う事でもあった………
「無理だよ、アニキ! そんな事!!」
「一夏! 忘れたのか!! 無理を通して、道理を蹴っ飛ばす!!」
「!!」
神谷の言葉にハッとする一夏。
(そうだ………そうだよな………アニキはそういう男だ………やると言った事はトコトンやり抜く………それが俺の憧れているアニキだ!)
「そう! それが俺達!!………」
「グレン団のやり方だ!!」
何時の間にか一夏は、身体の痛みを忘れる程に気分を高揚させ、ガッツポーズを作りながらそう言い放った。
「あ、あのですね、天上くん、織斑くん………」
そんな2人に向かって、真耶が何か言おうとするが………
「………分かった。好きにしろ」
それよりも早く、千冬がそう言い放った。
「お、織斑先生!?」
「コイツは昔っから、言い出したら聞かない奴だったからな………ただし、神谷」
「あん?」
「お前は死んでも良いが、一夏だけは守れ」
千冬は何とも身も蓋も無い言葉を、神谷に投げ掛ける。
「ちょっ!? 千冬姉!?」
「へっ! 当然だ!! 一夏は俺の弟分! 兄貴分が弟分を守るのは当然の事よ!!」
一夏は千冬の言葉に抗議しようとしたが、神谷はそう言い放つ。
「はあ~、分かってれば良い………」
動じない神谷に、千冬は頭痛を感じながら、そう言った。
そんな千冬を尻目に、神谷は夕暮れの窓の外の景色を見遣った。
「来るなら来やがれ、ロージェノム………テメェーの野望は………この神谷様が打ち砕いてやるぜ!!」
◇
???………
「螺旋王様、お持ちいたしました………ISコアです」
山の様に積まれたISコアを、ロージェノムに献上する様に畏まっている螺旋四天王。
「コレで世界に存在するISコアの内、3分の1が螺旋王様の物となりましたな」
「………足りぬ」
シトマンドラがそう言うと、螺旋王は無表情でそう言った。
「はっ?」
「この程度では足りぬ………世界中、全てのISコアを人間共から取り上げ………奴等を絶望の底へ叩き落としてやるのだ」
アディーネがその言葉の意味が分からずに居ると、ロージェノムはそう言葉を続けた。
「心得ております。残りのコアも近い内に必ずやご献上致しましょう」
するとチミルフが、ロージェノムに向かってそう言上した。
「ISさえ取り上げれば、人間共は為す術もありませんからなぁ」
グアームが人間を見下している様子でそう言う。
「と、なると………目下の障害は………」
「グレンラガン………そして、天上 神谷」
「織斑 一夏の強さも侮れん………それにIS学園には、各国の最新鋭機が揃っておる」
「それですが、ロージェノム様。1つ面白い情報を手に入れました。ご覧下さい」
グアーム、アディーネ、チミルフがそう言うと、シトマンドラがそう言って、ロージェノムの前にモニターを展開させた。
そのモニターには、何かの計画書と思われるものが記載されていた。
「『VTシステム』………か」
「ドイツを攻めた際に、ある隠し研究所から入手しました。しかも、それを搭載したISが装着者ごとIS学園に配属になると………」
「良かろう………シトマンドラ、この件はお前に任せる」
そこまで聞くと、ロージェノムはシトマンドラに向かってそう言った。
「ハハッ! 螺旋王様の為に!!」
シトマンドラはそう言うと、ナチス式敬礼の様なポーズを取るのだった………
◇
その夜………
IS学園・学生寮………
一夏と箒の部屋を、真耶が尋ねて来ていた。
「お引越しでーす」
「「ハイ?」」
「あん? 引っ越し?」
部屋の主である一夏と箒、そして当然の様に入り浸っていた神谷は首を傾げた。
「部屋の調整が付いたんです。篠ノ之さんは別の部屋に移動です」
すると、そんな一同に説明する様に、真耶はそう言葉を続けた。
「ま、待って下さい! それは、今すぐでないといけませんか!?」
と、そこで箒は思わずそう言ってしまう。
「はっ?」
(確かに………箒にしてみりゃ、この状況を続けてぇよなぁ)
そんな箒の心情を相変わらず理解していない一夏と、理解しているが口には出さない神谷。
「それは、まあ、そうです。何時までも年頃の男女が同室で生活をすると言うのは問題ですし、篠ノ之さんも寛げないでしょう?」
「いや、私は………」
言葉に詰まり、一夏を見遣る箒だったが………
「俺の事なら心配するなよ。箒が居なくても、ちゃんと起きれるし、歯も磨くぞ」
箒の心情など、これっぽっちも理解していない一夏は、笑顔を浮かべてサムズアップまでしてそう言ってしまう。
「~~~っ!! 先生! 今すぐ部屋を移動します!!」
すると箒は、態度を一変させ、真耶に向かってそう言い放った。
「あ、ハイ………」
箒の豹変に戸惑いながらも、引っ越しの手伝いを始める真耶。
「あ、えっと………俺も手伝おうか?」
「要らん!!………私がこうまで気に掛けているのにお前という奴は………」
一夏の手伝いを拒絶すると、箒はいそいそと荷物を纏め、引っ越して行ったのだった。
(アチャー………またやったか)
弟分の失態を内心で呆れる神谷。
「ア、アニキ。箒の奴、一体何を怒ってたのかな?」
「それに気づかない内は………お前は一生半人前だ」
「な、何だよソレ!?」
神谷の言葉も、一夏には全く理解が付かないのだった。
「やれやれ………俺は寝るぜ」
「あ、じゃあアニキ。良かったら此処のベッドを使ってくれよ。快適だと思うぜ」
「そうだな………偶にはベッドで寝るのも悪かぁねえ」
と、そんな事を言い合って、一夏と神谷は就寝しようとしていたところ………
コンッコンッ、と部屋のドアをノックする音が聞こえて来た。
「? ハイ」
一夏が出迎え様と玄関に近づき、ドアを開けた。
「…………」
そこに居たのは、先程引っ越して行った筈の箒だった。
腕組みをして、ムスッとしたと表現するのが相応しい顔をして、ドアの前に仁王立ちしている。
「何だよ? 忘れ物か?」
「は、話が有る………」
何やら頬を紅潮させながら、箒はそう言い放つ。
「何だよ、改まって?」
「来月の………学年別個人トーナメントの事だが………わ、私が優勝したら………」
そこで言葉に詰まった様な様子を見せる箒だったが、やがて意を決した様に口を開く。
「つ、付き合ってもらう!!」
「………ハイ?」
一夏は思わず、間抜けな表情を浮かべた。
(思い切ったなぁ、箒………だが、果たしてその言葉の意味が一夏に正しく伝わってるのか………怪しいもんだな)
そして神谷は、そんな2人の様子を見ながら、1人内心でそう思っていたのだった………
つづく
新話、投稿させていただきました。
遂に神谷達の前に姿を見せたロージェノム。
何と、神谷の父親を殺したのは奴だった。
その目的は………『世界征服』!
今時、フィクションでも見られなくなったストレートな悪の野望ですが、本気度合いは半端ではありません。
国が幾つも壊滅し、ISも撃墜されるなど、その戦力は強力かつ強大です。
果たして、グレン団はロージェノムの野望を阻止出来るのでしょうか?
そして次回!
遂にメインヒロインが登場!
神谷のお相手は彼女となります!
お楽しみに。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は
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天元突破ISと同時
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土曜午前7時
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別の日時(後日再アンケート)