天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第72話『いっぺん戦ってみたかったなぁ』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第72話『いっぺん戦ってみたかったなぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜・京都のとある旅館………

 

1日目の団体行動、清水寺の見学を終え、IS学園の一同は旅館へと到着していた。

 

「あ~、サッパリしたぜ」

 

「やっぱり天然の温泉は良いよな~」

 

「相変わらず爺むさいなぁ、一夏」

 

風呂上がりと思われるホテルの浴衣姿の神谷、一夏、弾の3人が、未だ若干身体から湯気を上げながら、部屋へと戻っている。

 

「ん?」

 

とその途中、神谷が何かを見付けて足を止める。

 

「? アニキ?」

 

「如何したんだ?」

 

其れに気付いた一夏と弾も立ち止まると、神谷は或る絵画へと視線を注いでいた。

 

その絵画には、昔の京都の街並みの様子と逃げ惑う人々………

 

そして、天狗と鬼を合わせた様な妖怪の姿が描かれている。

 

「何だ、コレ?」

 

「お客様、『天狗鬼』に興味が御有りで?」

 

するとそこで、通り掛かった旅館の老仲居が声を掛けて来た。

 

「『天狗鬼』?」

 

「ハイ。その昔、夜の都に度々現れては悪さを働いた妖怪ですじゃ」

 

老仲居はそのまま、『天狗鬼』について説明を始める。

 

「『天狗鬼』はその名の通り、天狗と鬼の間に生まれた妖怪で、鬼の剛力と天狗の妖術を併せ持つ途轍もない妖怪なのです」

 

「鬼と天狗の力って………何だよ、その無駄なハイブリット」

 

「何人もの武士(もののふ)が退治しようと挑んで行ったのですが、悉く敗れ去ったそうです………しかし、ある時、『錦田小十郎景竜』と言う旅の侍が現れ、天狗鬼を倒し、その亡骸を2度と甦る事の無い様に地中に埋め、その上に社を立て、自ら刀を封印として奉納したのですじゃ」

 

「まあ、良くある妖怪伝説だな」

 

老仲居の話を聞いて、弾はそんな感想を漏らす。

 

「天狗鬼かぁ………いっぺん戦ってみたかったなぁ」

 

そして神谷は、天狗鬼の絵画を見て不敵に笑いながらそう言う。

 

「ちょっ!? アニキ、勘弁してよぉ~」

 

「流石に妖怪退治だなんて、無理だって………そう言うのは鬼○郎の仕事じゃないかな?」

 

そんな神谷の言葉を聞いて、一夏と弾は思わずそう呟く。

 

「フォッフォッフォッ、頼もしいですなぁ。まるで本物の景竜様の様ですじゃ」

 

老仲居は、意味深な言葉を呟くと、踵を返して持ち場へと戻って行った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

京都市内の某山中にて………

 

観光用のルートから外れ、密林の生い茂った場所に、まるで人目を憚るかの様に1つの社が建っている。

 

この社こそが、錦田小十郎景竜が自らの刀を奉納し、天狗鬼を封じたとされる社である。

 

その大切な社に近づく、3つの影が在った。

 

「なあ………やっぱり止めないか?」

 

「ウルセェ! 今更ビビッてんじゃねえ!!」

 

「そうだそうだ!!」

 

全員黒尽くめで、御丁寧に黒い目出し帽を被っている如何にもな連中である。

 

其れもその筈。

 

彼等は古美術品泥棒なのだ。

 

天狗鬼と錦田小十郎景竜の伝説を聞き、その社が実在すると知った彼等は、其処に納められていると言われている景竜の刀を狙ったのである。

 

「今まで散々罰当たりな事して来ただろうが!」

 

「其れはそうだけど………今回ばっかりは何かヤバそうな気がするんだ」

 

「へっ! 臆病風に吹かれたってのかよ!」

 

3人組の内、1人は乗り気でない様子だが、他の1人は罰当たりなぞ今更、と言った様子で社に辿り着くと、扉に掛かっていた頑丈そうな鍵を、持って来ていたハンマーで叩き壊す!

 

扉が開くと、中には鞘に納められている刀が置かれていた。

 

「おお~~」

 

感嘆の声を挙げながら、リーダー格の男がその刀を手に取る。

 

そして、鞘から抜き放つと、銀色に輝く刀身が露わになる。

 

「スゲェ………本当に大昔に奉納された代物かよ? まるで新品みたいだぜ」

 

「って言うか、本物何すか? ソレ?」

 

輝く刀身に満足げな表情を見せるリーダー格の男だが、ビビッていない方の手下が、そう疑問を呈する。

 

「当たり前だろ! 今まで俺が間違った事があったか!?」

 

「い、いえっ!!」

 

それを強引に納得させると、リーダー格の男は刀を再び鞘に納め、社の中から持ち出す。

 

「大丈夫かな~」

 

一方、ビビッている手下の方は、未だに不安そうな表情を見せる。

 

「何時までビビッてんだ!? 行くぞ!!」

 

しかし、リーダー格の男がそう言い放ち、刀を持ったままその場所から立ち去って行く。

 

「あ! ま、待ってくれ~!」

 

「へへっ! 今回も大儲けだな!!」

 

手下の2人も、それに続いて社を後にするのだった。

 

そして、古美術品泥棒達が社を後にして暫くすると………

 

突如地震の様に地面が揺れ動き、地割れが起こって社が呑み込まれてしまう!!

 

その社が呑み込まれてしまった地割れからは、おどろおどろしい気配が立ち昇って来る。

 

と、次の瞬間!!

 

その気配の中から、黒い羽根を撒き散らし、何かが飛び出す!!

 

「蘇った………蘇ったぞぉ!!」

 

そう叫びを挙げる天狗と鬼を合わせた様な妖怪………『天狗鬼』!

 

「フハハハハハッ! 久しぶりの外の空気は美味いのぉ~! さて………アレから大分時が流れた様だな。今の京の都が如何なったか、見てみるとするか! フハハハハハハッ!!」

 

天狗鬼はそう言うと、黒い羽根を撒き散らして、夜の闇へと消えて行く………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日………

 

そんな事があった等露知らず、神谷達グレン団は、2日目から自由行動に入っていた。

 

初日の午後こそ団体行動だったが、其処は流石に色々と自由なIS学園。

 

2日目から即座に自由行動となり、生徒達は仲良しグループに分かれて、其々の目的地へと出発している。

 

そして、グレン団の一団も………

 

 

 

 

 

嵐山・嵯峨野………

 

「此処が嵐山かぁ~」

 

「紅葉が綺麗だなぁ~」

 

一夏と弾が、紅葉に染まっている嵐山を、渡月橋の上から眺めながら感嘆の声を漏らす。

 

「うむ、見事なものだ………」

 

「ホント、綺麗ですわ」

 

箒とセシリアも、2人と同じ様に感嘆の声を漏らす。

 

「綺麗だね、神谷………アレ? 神谷?」

 

シャルも、隣に居ると思われた神谷にそう声を掛けるが、返事が返って来ないのを不審に思って振り向くと………

 

「テメェ! やんのかコラァ!!」

 

「上等だ! 俺を誰だと思ってやがる!!」

 

他校の修学旅行生に喧嘩を売られている神谷の姿が飛び込んで来た。

 

「ちょっ! 神谷ぁ!!」

 

「またアイツは………」

 

「何かと言うと喧嘩を仕掛けられるな、奴は」

 

シャルが慌てて駆け出し、鈴とラウラが呆れる様に呟く。

 

「まあ、かみやんは目立つからねぇ~」

 

「あの外見では、他の不良の人に絡まれるのはある意味必然ですね」

 

のほほんと虚が、その光景を見ながらそう言う。

 

「まあ、神谷らしいと言えば神谷らしいねぇ」

 

「ホントホント」

 

苦笑いしながら言うティトリーと、ケタケタ笑いながら言う楯無。

 

「…………良い写真が撮れた」

 

「貴女もマイペースですね………」

 

そして、簪は1人マイペースの紅葉を写真に収め、蘭はそんな簪にツッコミを入れる。

 

結局、喧嘩の方は神谷の名が出た途端に相手が退く結果となった。

 

神谷の悪名は京都にまで轟いていたらしい………

 

 

 

 

 

その後………

 

グレン団の一同は、嵐山名物の1つである保津川下りを楽しもうと、トロッコ嵯峨駅からトロッコ列車に乗り込み、トロッコ亀岡駅を目指している。

 

「ったく………名前にビビるくらいなら、最初から喧嘩仕掛けて来んな、ってんだよ」

 

「まあまあ、神谷。折角の修学旅行なんだからさ。今回くらいは喧嘩無しで行こうよ、ねっ?」

 

先程の不良との一件で不完全燃焼気味な神谷が愚痴る様に言うと、隣に座って居るシャルが宥める。

 

「にしても、やっぱり良い景色だな~」

 

と其処で一夏が、車窓の外に広がる保津川と紅葉の嵐山を見て、また感嘆の声を漏らす。

 

「おっ、見ろよ! 川下りの舟が来たぜ!!」

 

とそこで、弾が保津川を下って来る舟を発見し、そう声を挙げる。

 

一同が其れに反応して眼下へ視線を向けると、其処には急流の中を、船頭の巧みな舵捌きで進んで行っている舟の姿が見える。

 

「おお! 素晴らしいな!」

 

「ジャパニーズ風流ですわね」

 

「ちょっと違う気がするけど、そんな感じね」

 

箒、セシリア、鈴がそう声を挙げる。

 

「ふむ、この流れなら水上輸送には十分だな………補給路としても申し分無い」

 

ミリタリー視点でやや的外れな注目をしているラウラ。

 

「うんうん、凄い迫力だね~」

 

「…………」

 

楯無も感嘆の声を挙げ、簪は無言でシャッターを切る。

 

「ホラ、神谷。舟だって」

 

「どれどれ? へえ~~、見事なもんだ」

 

シャルも神谷にそう呼び掛け、神谷は眼下に広がる保津川へと視線をやる。

 

「ん?」

 

しかし、直ぐに何かを感じた様に視線を上に向ける。

 

「? 如何したの? 神谷」

 

「いや………何か見られてる様な気がしたんだがな?」

 

シャルが尋ねると、神谷は相変わらず上方を見ながらそう返す。

 

「気の所為じゃないですか?」

 

「そうだよ~。こんな渓谷の何処で誰が見てるってのさ~」

 

そんな神谷に、虚とのほほんがそう言う。

 

「まあ、確かにな………」

 

「気にし過ぎだよ、神谷。あ、八つ橋食べる?」

 

「お! 良いね~!」

 

何処か腑に落ちない神谷だったが、ティトリーにそう言われて八つ橋を差し出され、食欲を優先させたのだった。

 

しかし………

 

確かに神谷が感じた通り、グレン団を見ている者が居る………

 

「フッフッフッフッ………美味そうな娘っ子達じゃわい」

 

天狗鬼が、木の天辺に立ち、神谷達………

 

と言うよりも箒達を見ていた。

 

天狗鬼は、若い娘の肉を好んで食べるのである………

 

 

 

 

 

その後………

 

トロッコ亀岡駅に到着したグレン団の一同は、早速乗船場へと向かい、川下りの舟へと乗り込んだ。

 

乗船の際、誰が一夏の隣に座るかで、もう何度目とも知れぬ争奪戦が発生したが、結局箒と蘭が競り勝つ。

 

「お客様に申し上げます。急流を下りますので、舟は大きく揺れます。予めご注意下さい」

 

「い、一夏さん………船頭さんもああ言ってますので………その………つ、摑まって良いですか!?」

 

船頭が出発前の注意を促すと、蘭が一夏にそう尋ねる。

 

「ああ、良いよ。しっかり摑まってな」

 

「し、失礼します………」

 

一夏が如何いう事か分からず了承すると、蘭は遠慮がちに一夏の腕にしがみ付いた。

 

「ムッ………い、一夏! 私も良いか!?」

 

其れを見た反対側に座って居た箒が、一夏にそう言う。

 

「お、おう、良いけど………」

 

「…………」

 

一夏が戸惑いながら返事を返すと、箒はムスッとした顔(本人にしてみれば照れ顔)で、蘭とは逆の一夏の腕にしがみ付く。

 

「何怒ってるんだ?」

 

「怒ってなぞいない!」

 

一夏に問われて、素っ気無くそう返す箒。

 

「「「…………」」」

 

一方で、その後ろに座って居るセシリア、鈴、ラウラは、一夏達に邪念が籠った視線を向けているのだった。

 

「!? ううっ!?(何か寒気が!?)」

 

その視線を感じて、一夏は寒気を覚える。

 

「だ、弾くん………しっかりお願いね」

 

「任せといて下さい! 虚さんは俺が守ります!」

 

そして、虚と弾の方は、聞いてる方が恥ずかしくなる遣り取りを交わしている。

 

「アハハハ、虚ったら、相変わらずラブラブだね~」

 

「…………」

 

ケタケタと笑う楯無の横で、無言で写真を撮り続けている簪。

 

「お姉ちゃん良いな~」

 

「のほほんもやっぱり彼氏とか欲しいの?」

 

「そりゃ欲しいけど~、出合いが無いからね~。おりむーは競争率高いし」

 

のほほんとティトリーは、ガールズトークに花を咲かせている。

 

「いよいよだな~。ワクワクして来たぜ」

 

「僕はドキドキしてるよ~」

 

そして、ナチュラルに肩を組みながらそんな会話を交わしている神谷とシャル。

 

「では、出発します」

 

と其処で船頭がそう言い、舟が船着き場から離れ、川を下り始めた。

 

川を流れ始めた船は徐々にスピードを上げて行き、そのまま渓谷へと進む。

 

そして両脇の山の森林には、綺麗な紅葉が広がっており、落ち葉が川の中に流れて色を付けていた。

 

「わあ~~、凄~い」

 

「ああ、絶景かな、絶景かな」

 

シャルが何度目とも知れぬ感嘆の声を漏らし、神谷は天下の大泥棒の台詞を言う。

 

やがて舟は、先程神谷が視線を感じた場所………

 

天狗鬼が待ち構えている場所へと辿り着く。

 

「フフフ………どれ、仕掛けるか」

 

と、川を下って来た舟に箒達の姿を確認すると、天狗鬼は左手に葉団扇を出現させたかと思うと、其れを一閃する。

 

途端に、竜巻の様な突風が出現し、グレン団の乗る舟へと襲い掛かった。

 

「!? な、何だ!?」

 

「キャアッ!?」

 

「急に風が!?」

 

突然の突風に、戸惑う一夏達。

 

と、次の瞬間!!

 

舟が止まったかと思うと、そのまま竜巻の様な突風に巻き上げられて、宙に浮かび始める!!

 

「!? 何っ!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

信じ難い出来事に思わず声を挙げる弾と鈴。

 

「ハハハハッ! 人間共め! 驚いておるわ!!」

 

その様子を天狗鬼は満足そうに見ている。

 

「クソォッ! 白式!!」

 

と、緊急事態だと判断した一夏は、咄嗟に白式を展開!

 

水面から持ち上がった舟の下に回り込むと、そのまま持ち上げる様に抱えて竜巻から脱出する。

 

「むっ!? 何じゃアレは!?」

 

天狗鬼は、初めて見るISに、驚きを露にする。

 

その間に、一夏は舟を川岸へと下ろす。

 

「皆! 大丈夫か!?」

 

「だ、大丈夫です、一夏さん」

 

「助かりましたわ」

 

一夏が尋ねると蘭とセシリアが返事を返す。

 

「しかし今の風………明らかに自然に吹いたモノではないぞ」

 

「一体何だったの?」

 

ラウラと鈴は、先程の竜巻の様な突風に疑念を抱く。

 

「チイッ! 人間め………少し見ない間に妙な鎧を作りおって………まあ良い。軽く捻ってくれるわ!」

 

と其処で天狗鬼は再び葉団扇を振るう。

 

またも竜巻の様な突風が発生し、一夏を包み込む!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

そのまま一夏は、空高くへと舞い上げられた!

 

「!? 一夏ぁ!!」

 

箒が声を挙げる中、一夏の姿は遥か上空へと舞い上げられる。

 

「フッフッフッフッ………」

 

天狗鬼はそれを確認すると、その後を追う様に、背の黒い翼を広げ、黒い羽根を撒き散らして飛翔するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、遥か上空へと巻き上げられた一夏は………

 

「ぐうううっ!? でえええええいっ!!」

 

気合の叫びと共に、自身を包んでいた竜巻を吹き飛ばす。

 

「ハア………ハア………何だったんだ? 今のは?」

 

「何じゃ………まだ小僧ではないか」

 

戸惑う一夏の前に、天狗鬼が姿を現す。

 

「!? な、何だ!? 妖怪!?」

 

天狗鬼の姿を見て、一夏は驚きの声を挙げる。

 

「やれやれ、久々に人間との戦が楽しめるかと思えば、こんな小僧が相手とはのう………」

 

まるで小馬鹿にする様な台詞を一夏に向かって吐き、落胆した様な様子を見せる天狗鬼。

 

「! 小僧、小僧って………黙って聞いてりゃ! 好き放題言ってくれるじゃないか!!」

 

その台詞に怒った一夏は、右手に雪片弐型を出現させると、エネルギーの刀身を出現させ、正眼に構える。

 

「ほう? 少しは剣の心得があるようだのう………しかし、まだまだ未熟だのう」

 

その構えを見て、一夏に剣の心得が有る事を察する天狗鬼だったが、相変わらず小馬鹿にした様な言い回しを続ける。

 

「! この野郎ぉっ!!」

 

途端に、一夏は雪片弐型で天狗鬼に斬り掛かる。

 

しかし、雪片弐型のエネルギー刃が当たると思われた瞬間!

 

天狗鬼の身体は木の葉となって砕け散る!

 

「!?」

 

「コッチじゃコッチ」

 

背後から聞こえて来た声に、一夏が振り向くと、其処には余裕綽々と言った様子で空中で足を組み、頬杖を衝いている天狗鬼の姿が在った。

 

「! このぉっ!!」

 

再び斬り掛かる一夏だったが、天狗鬼の身体はまたも木の葉となって砕け散り、背後に空中で寝そべった姿勢で現れる。

 

「ふわああああぁぁぁぁぁ~~~~~~」

 

退屈そうに大欠伸を掻く天狗鬼。

 

「! この野郎おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

3度目の正直を狙う一夏だったが、天狗鬼はまたも木の葉となって砕け散る。

 

「くうっ!?」

 

「やれやれ………未熟だとは思っておったが、これ程とはのう」

 

一夏が焦っているかの様な声を挙げると、天狗鬼は腕組みをした状態で姿を現す。

 

「このぉっ!」

 

またも斬り掛かって行こうとする一夏だったが、

 

「つまらぬ奴じゃ………引っ込んでおれ! 青二才!!」

 

天狗鬼がそう言って、葉団扇を振るうと、突風が吹き荒れる!

 

そして、その突風に乗って飛んで来た木の葉が、まるで手裏剣の様に一夏へと命中する!

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

ガリガリとシールドエネルギーを削られる一夏。

 

「くううっ! シャアアアアアァァァァァァイニングゥ! フィンガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そこで一夏は、手裏剣の様な木の葉の混ざった突風にシャイニングフィンガーを繰り出す!

 

左手の雪羅から放出されたエネルギーが、木の葉を焼き尽くす。

 

「ハア………ハア………」

 

「ほほう? 良く耐えたな? 如何やら思ったよりは出来る様だな」

 

一夏が頬を伝う血を払いながら乱れた呼吸を整えていると、天狗鬼がそう言う。

 

最も、その態度は相変わらず余裕綽々だった。

 

「テメェ………いい加減に! しろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

その瞬間に、一夏の怒りは最高潮に達する!

 

白式の装甲が金色に輝き出し、ISスーツが赤く染まる。

 

怒りのスーパーモードだ!

 

「むっ!? 何だ!?」

 

そこで天狗鬼は、初めて驚いた様な様子を見せる。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

怒りの咆哮を挙げると、天狗鬼に向かって二段階加速(ダブルイグニション)で突撃する一夏。

 

「!? むおっ!?」

 

其れまでと違う動きに、天狗鬼は戸惑いながらも回避に成功する。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

だが、一夏は再び咆哮を挙げると素早く斬り返し、天狗鬼に向かって連続で雪片弐型を振るう。

 

「ぬううっ!? 怒りで力を高めているのか!! 成程、面白い事をする! だが!!」

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

天狗鬼の台詞が耳に入っていないのか、一夏は咆哮を挙げながら雪片弐型を振り下ろす。

 

しかし、天狗鬼の姿はフッと消えたかと思うと、一本歯下駄で雪片弐型のエネルギーの刃の上に乗っかる。

 

「!?」

 

「少々驚いたが、そんな怒り任せの隙だらけの攻撃など! 躱す事は容易じゃ!!」

 

そう言い放つと、天狗鬼は驚いていた一夏の顔に蹴りを叩き込む!!

 

「!? ガハッ!?」

 

血を吐いて態勢を崩す一夏。

 

「どれ………そろそろ仕舞いにするかのう」

 

と、天狗鬼がそう言った瞬間、右手に己の身の丈以上は有る巨大な金棒を出現させる。

 

「そうれいっ!!」

 

そしてその金棒を片手で軽々と振り回し、一夏目掛けて叩き下ろす!!

 

「!?」

 

一夏は咄嗟に、雪片弐型を横に構える様にして防御しようとしたが………

 

天狗鬼の巨大金棒の1撃は、雪片弐型を呆気無く粉々にし、一夏へと命中!!

 

「!? ガハッ!?」

 

反射的に頭を反らした事で、脳天へと直撃は避けたが、巨大金棒は一夏の左肩に食い込む様に命中!

 

アーマーを粉々にし、ISスーツをも斬り裂いた!!

 

絶対防御が発動し、一瞬にして白式は機能停止。

 

私服姿へ戻った一夏は血を吐いて気を失い、そのまま頭から落下して行く。

 

「フハハハハハッ! 人間なぞ所詮はこの程度よ!!」

 

落下して行く一夏を見遣りながら、そう高笑いを挙げる天狗鬼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

地上の神谷達は………

 

「一体何が起こっているのだ!?」

 

「一夏さんは如何なったのですか!?」

 

突然の事態に混乱し、只々一夏が吹き飛ばされた上空を見上げている。

 

「チッ! こうなりゃ俺が様子を………!!」

 

「!? 何か落ちて来るよ!!」

 

業を煮やした神谷が、直接確認に向かおうとコアドリルを取り出した瞬間、シャルが上空を指差してそう叫ぶ。

 

落ちて来る何かの影は徐々に大きくなって行き………

 

頭から落ちて来る一夏の姿となった。

 

「!? 一夏!!」

 

「一夏さん!?」

 

「一夏ぁ!!」

 

箒達が悲鳴を挙げる中、一夏はそのまま保津川へダイブする。

 

「チイッ! 弾!!」

 

「おうさっ!!」

 

すかさず神谷と弾が、マントと上着を脱ぎ捨て、保津川へと飛び込む。

 

一夏が落下した地点まで泳ぐと、息を大きく吸って潜る。

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

一同が心配気な表情をして見守る中、10数秒程して………

 

「「プハッ!!」」

 

神谷と弾が再び水面に姿を現し、一夏を引き上げた。

 

そのまま、神谷と弾は一夏を引っ張ったまま泳ぐと、岸へと上がる。

 

「一夏!!」

 

「「「「一夏〈さん〉!!」」」」

 

慌てて一夏へと駆け寄る箒達。

 

「う、ああ………」

 

しかし、ボロボロの一夏は気絶したまま、呻き声を漏らすだけだった。

 

「姉さん、ドクターヘリの要請………」

 

「もう済ませてあるよ」

 

簪と楯無は、ドクターヘリの要請を行う。

 

「本音! 応急処置用の医療キット! 有ったわよね!?」

 

「うん!!」

 

そして布仏姉妹は、緊急医療キットを持ち出し、一夏の応急処置に掛かる。

 

「!?」

 

と其処で、神谷が上空からの視線を感じ顔を上げると、此方を悠然と見下ろしている天狗鬼を見付ける。

 

「アイツは!?」

 

「フッ………」

 

天狗鬼はそんな神谷達を一笑に付すと、そのまま飛び去って行く。

 

(アリャ天狗鬼………まさか、この世に蘇ったってのか? 上等だ! 俺の弟分を痛め付けてくれた礼はたっぷりとしてやるぜ!!)

 

飛び去って行く天狗鬼を見ながら、神谷はそう決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

京都ならでは敵………妖怪・鬼天狗出現。
その力はISを装着した一夏を蹴散らす程。
果たして、この未知の敵に対し、グレン団は打つ手はあるのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)
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