天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

78 / 137
第78話『会いたいって言うから来てやっただけさ』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第78話『会いたいって言うから来てやっただけさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この物語は、IS学園宛てに届けられた、1通の手紙から始まった。

 

何時もの様に、東京湾から首都を奇襲しようとしたロージェノム軍を蹴散らし、夕刻にはIS学園へと帰還したグレン団。

 

そのまま食堂で食事を摂っていると、真耶が姿を現す。

 

「あ! 天上くん。此処に居たんですね」

 

「ん? 何だよ、メガネ姉ちゃん?」

 

天丼を頬張りながら、真耶の方を見遣る神谷。

 

「其れが………IS学園宛てに、神谷くんへのお手紙が来てまして………織斑先生が渡して来いって」

 

真耶は、そう言うとポケットから封筒を取り出し、神谷に差し出す。

 

「俺に?」

 

神谷は空にした天丼の丼を置くと、真耶から封筒を受け取る。

 

そして宛名を見てみるが、其処に書かれていたのは“神谷の名前”では無く………

 

『グレンラガン様へ』という宛名だった。

 

「何だこりゃ?」

 

「アニキ………と言うより、グレンラガンを名指しで?」

 

「如何言う事?」

 

神谷が首を傾げ、覗き込んで来た一夏とシャルも、怪訝な顔をする。

 

他の一同も要領を得ない。

 

「何だってんだ、一体?」

 

と其処で、神谷は封筒の封を切る。

 

そして中に有った便箋を取り出すと目の前に広げ、読み始める………

 

 

 

 

 

『拝啓、グレンラガン様。

 

突然のお手紙、驚かれている事と存じます。

 

お許し下さい。

 

ですが、如何しても貴方様に伝えたい事が有ったのです。

 

私、グレンラガン様の事を………

 

お慕い申し上げております!!』

 

 

 

 

 

「!? ええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!?」

 

「こ、ここここ、コレって!?」

 

「ラララララ、ラブレターですわ!!」

 

シャルが驚きの声を挙げ、鈴とセシリアが顔を真っ赤にして慌てる。

 

「おお~~っ! やるね~、かみやん!」

 

「神谷って、やっぱりモテるんだね」

 

事の重大さが分かっているのかいないのか、そんな事を言うのほほんとティトリー。

 

「ちょっ! ちょちょちょちょ、神谷!! 一体誰から!?」

 

1番動揺しているシャルが、慌てて神谷に問い質す。

 

「少しは落ち着け、シャルロット」

 

そんなシャルの姿に、ラウラが呆れながらそう言う。

 

「何々? もしよろしければ、一目だけでもお会いしたいです。下記の住所にいらして下さい………『陣内 杏子』より」

 

「アレ? この住所って………確か病院よ?」

 

と神谷がマイペースに続きを読むと、ちゃっかり神谷の後ろから便箋を覗き込んでいた楯無が、其処に書かれていた住所を見てそう言う。

 

「良し! 明日行ってみっか!」

 

「ええっ!? 行くの!?」

 

あっけらかんとそう言う神谷に、シャルが驚きの声を挙げる。

 

「だって、態々手紙まで送って会いたいって言ってるんだ。応えてやらなきゃ男が廃る、ってもんだ」

 

「で、でも! その手紙の人! 神谷の事………す、好きだって………」

 

不安を露にするシャルだったが、

 

「おう! だから()()()()断らねえとな! 俺にはシャルが居る、ってよ!」

 

またも神谷は、あっけらかんとそう言うのだった。

 

「か、神谷………」

 

途端にシャルは、熱っぽい視線を神谷に向ける。

 

((((((だから、余所でやってくれよ(れよ)))))))

 

その遣り取りを見ていた一夏達は、心の中でそうツッコミを入れる。

 

「流石っすね、アニキ!」

 

「弾くん。今のは褒める様なところなの?」

 

弾が神谷を称賛すると、虚がそうツッコミを入れる。

 

「其れにしても………神谷さんにラブレター送るなんて………どんな人なのかしら?」

 

「先ず、真面な人間では無いな」

 

其処で、蘭が首を傾げながらそう言うと、箒がそう呟く。

 

「………其れって、僕も真面じゃないって事? 箒?」

 

其れを聞いていたシャルが、ジト目で箒を睨み付ける。

 

「あ、いや………別にそう言う積りでは………」

 

「もう! 如何して皆、神谷の良さが分からないのかなぁ!?」

 

自分だけは、神谷の良さを分かっているとでも言いた気にそう言うシャル。

 

((((((………結局惚気か))))))

 

そんなシャルに、一夏達は再び心の中でツッコミを入れる。

 

「…………」

 

そして、只1人この話題には乗らず、聞き耳を立てていただけの簪は、お馴染みのウドのコーヒーを啜るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日………

 

IS学園から2駅程離れた街の総合病院の前………

 

「手紙の住所に寄ると………この病院だよな?」

 

手紙に書かれている住所を見た後、病院の建物を見上げてそう呟く神谷。

 

「間違い無いよ。確かにこの住所だよ」

 

付き添いで来ていたシャルもそう言う。

 

そして、背後にはグレン団の面々の姿が在る。

 

「って、言うか………何で皆従いて来てるんだ?」

 

「そう言うお前こそ、何故従いて来ている?」

 

一夏がそんな一同にツッコむと、箒からツッコみ返される。

 

「い、いやぁ、俺は………ホ、ホラ! アニキの弟分だし!」

 

「理由になって無いわよ」

 

若干言葉に詰まりながらそう言う一夏だったが、鈴にバッサリと斬り捨てられる。

 

「ぐうっ!………じゃ、じゃあ! 皆は如何して従いて来たんだよ!?」

 

其処で、改めて一夏は何故従いて来たのかを一同に尋ねる。

 

「其れは………」

 

「「「「…………」」」」

 

箒、セシリア、鈴、ラウラ、蘭は答えられずに沈黙する。

 

「決まってるじゃん! 面白そうだからよ!!」

 

「同じく~」

 

しかし、楯無とのほほんは明け透けにそう言い放つ。

 

「俺も面白そうだったから従いて来た」

 

「わ、私は弾くんに連れられて、無理矢理………」

 

弾もそう言い、虚が申し訳無さそうにしている。

 

「皆が行くみたいだったから………流れで………」

 

「………ノリで」

 

そして、流れとノリで従いて来たと言うティトリーと簪だった。

 

「皆~」

 

「ま、良いじゃねえか! とっとと行くぜ!!」

 

そんな一同に呆れるシャルだったが、神谷は特に気にした様子も無く、病院の中へと入って行く。

 

「あ! 待ってよ、神谷!」

 

「アニキ!」

 

シャルと一夏が慌てて其れに続くと、他の一同も続いて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受付で、『陣内 杏子』の病室を訊き、其処へと向かうグレン団。

 

最初受付からは、ガラの悪い男がイケメンと美少女を引き連れて来たので何事かと思ったが、IS学園の生徒である事を明かすと、直ぐに通された。

 

無駄にIS学園の高名が役に立った様である。

 

「え~と、125号室………125号室………」

 

廊下を歩きながら、病室の名札に目を通し、手紙の送り主である『陣内 杏子』を探している神谷。

 

「あ! アニキ! 此処じゃない?」

 

すると其処で、一夏が目的の病室を発見する。

 

「ああ、間違い無え、此処だな」

 

神谷も確認すると、イキナリドアを開けようとする。

 

「ちょっ! 待ってよ、神谷! ノックぐらいしないと………」

 

其れを見たシャルが、慌てて神谷を押さえると、彼に代わる様に病室のドアをノックする。

 

すると、中から足音が聞こえて来て病室のドアが開かれた。

 

「………どちら様ですか?」

 

30代半ばくらいと思われる女性が姿を見せ、神谷達を見ると怪訝な表情をする。

 

「おうおうおう! 耳の穴かっぽっじって良ーく聞きやがれ!! IS学園に………」

 

「アニキ! 此処病院だから!!」

 

其れを聞いた神谷は、お決まりの口上を決めようとしたが、流石に病院で其れはマズイと思った一夏が止めに入る。

 

「IS学園?………!? ひょっとして、グレンラガンの!?」

 

しかし、IS学園という単語を聞いた途端、女性はそう言って驚きを露にする。

 

「おうよ。如何にも俺がグレンラガンの天上 神谷様よ。そして俺の愉快な仲間達、グレン団のメンバーだ」

 

「「「「「誰が愉快な仲間達だ(ですか、よ)!?」」」」」

 

神谷のその紹介の仕方に、箒、セシリア、鈴、ラウラ、蘭がツッコミを入れる。

 

「まさか………本当に来てくれたんですか!?」

 

「おうよ! アンタがこの手紙を書いたのか?」

 

そう言って、女性に便箋を見せる神谷。

 

「あ、いえ。其れは私の娘が書いたモノで………と、取り敢えず、入って下さい」

 

すると女性………杏子の母親はそう言いながら、神谷達に入室を促す。

 

「邪魔するぜ」

 

「「「「「「失礼します」」」」」」

 

神谷が先立って中へと入り、一夏達が其れに続く。

 

病室は個室となっており、奥の方の窓際に車椅子に乗っている人物の姿が在った。

 

「杏子! 来てくれたわよ! グレンラガンの人が!」

 

「! まあ! 本当ですか!?」

 

杏子の母親が、車椅子の人物に向かってそう呼び掛けると、車椅子の人物は後ろを向きその姿を露わにする。

 

「えっ!?」

 

「嘘っ!?」

 

「まあ………」

 

「アラ………」

 

その人物の姿を見た弾、のほほん、虚、楯無が驚きの声を挙げる。

 

何故なら、車椅子に乗っていたのは………

 

如何見ても10歳か其処らにしか見えない「少女」だったからだ。

 

「貴方が………グレンラガンの?」

 

車椅子の少女………杏子は、神谷に向かってそう尋ねる。

 

「何だ? 疑ってんのか? 良いぜ! 見せてやるよ!!」

 

其れを聞いた神谷は、直ぐ様コアドリルを握った。

 

「!? ちょっ!? アニキ!!」

 

「グレンラガン! スピンオン!!」

 

一夏が止める間も無く、神谷は緑色の光に包まれ、グレンラガンの姿となる。

 

「如何だ?」

 

「まあ! 本当ですわ! 本当にグレンラガン様なのですね!!」

 

途端に、杏子は満面の笑みを浮かべてそう言う。

 

「あちゃ~」

 

「神谷ったら………」

 

「苦情が来たら………織斑先生に回すしかないか?」

 

「また胃が荒れるわね………」

 

一夏、シャル、楯無、簪がその光景を見ながらそう呟くのだった。

 

「信用したみてぇだな」

 

「ハイ! まさか本当に来てくれるなんて、感激です!」

 

そんな一同の言葉を聞き流し、神谷が杏子にそう言うと、杏子は嬉しそうな笑顔を浮かべてそう言う。

 

「嬉しいです………私………ずっと貴方様にお会いしたいと思っておりました」

 

「嬉しい事言ってくれるじゃねえか」

 

そんな杏子の姿を見て、神谷も呵々大笑するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

一夏達も杏子へ自己紹介を済ますと、そのまま彼女を囲む様にして談笑を始める。

 

其れ程広くない病室は、グレン団のメンバーで埋め尽くされ、杏子の母は気を遣ったのか、外へと出て行った。

 

「んじゃ早速だが、この手紙の事についてだがよぉ」

 

杏子の前に立つ神谷が、そう言って胸ポケットから封の開いた封筒を取り出す。

 

「あ、ハイ、其れなのですが………」

 

「ワリィが、俺にはこのシャルっていう恋人が居るからな。お前とは付き合ってやれねえ」

 

杏子が何か言おうとする前に、神谷はそう言い放った。

 

「ちょっ!? 神谷!?」

 

「アンタ! もっと言い方ってモンが有るでしょう!?」

 

「神谷さん! もっとオブラートに包んで言えないんですか!?」

 

途端に、シャルが驚きの声を挙げ、鈴とセシリアが非難の声が挙がる。

 

「あ、いえ、良いんです………何となくお察ししておりましたから」

 

しかし、意外にも杏子はそんな事を言って来た。

 

「えっ?」

 

「分かってたの?」

 

「ハイ………神谷様とシャルロット様の間に有る雰囲気が、何となく独特なものでしたから………ひょっとしてと思いまして………」

 

シャルと楯無がそう言うと、杏子はそう答える。

 

(この子………鋭い洞察力ね………其れに、年に似合わず落ち着いている………)

 

壁の花となっていた簪が、杏子の言葉を聞いてそんな事を思う。

 

しかし、簪………

 

其れはお前にも当て嵌まると思うぞ………

 

「えっと、その………こう言うのも何か変だけど………ゴメンね」

 

「いえ、そんな。お気になさらないで下さい、シャルロット様。今回の事は私の思慮の足りない浅はかな行いの招いた結果です。言うなれば、因果応報というのものです」

 

(………何か、時代掛かった話し方する子だな)

 

(この子、多分………由緒正しい家とかの出身なのね)

 

杏子の言葉が、妙に時代掛かっている事が気になる一夏と、そう推察する虚。

 

「んな畏まんなよ! 恋人にゃあなってやれねえが、ダチにならなれるぜ!」

 

と其処で、神谷が杏子に向かってそう言う。

 

「ダチ?………友達の事ですか?」

 

「おうよ! ダチは良いぞ! 喜びも苦しみも分かち合って笑える! それ以上何が要る!?」

 

「出たわね、神谷節」

 

「しかし、割と良い言葉だな」

 

そう言う神谷の言葉を聞いて、鈴とラウラがそう言い合う。

 

「そうですね………ありがとうございます、神谷様。嬉しいです」

 

「俺だけじゃねえぞ! 此処に居る連中は、今日から皆お前のダチだ! そうだろ!? お前等!」

 

其処で神谷は、一夏達に向かってそう問い掛ける。

 

「「「「「「勿論!」」」」」」

 

一夏達は一瞬顔を見合わせたが、やがて笑顔になると、杏子に向かってそう言った。

 

「皆さん………ありがとうございます!」

 

感激に目を潤ませながらも、杏子も其れに返礼する様に笑みを浮かべる。

 

その後、杏子の病室はちょっとした宴会騒ぎになる。

 

神谷が自分とグレン団の武勇伝を熱く語ったり、シャルや箒達とガールズトークで盛り上がったり、一夏のスーパー朴念仁ぶりに呆れたり………

 

あんまり騒ぎ過ぎて、看護師から叱られる程だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏子と楽しく語り合っていたグレン団のメンバーだったが、やがて杏子の検査の時間が来て一旦杏子を見送ると、杏子の母と共に診察室の前で待機する。

 

「皆さん、本当にありがとうございます。娘の為に態々来ていただいて………」

 

杏子を待っている間に、杏子の母親は(杏子)の為に態々出向いてくれたグレン団の面々にお礼を言う。

 

「な~に、会いたいって言うから来てやっただけさ」

 

神谷は何時もの調子でそう答える。

 

「ところで………杏子ちゃんは、如何して車椅子に?」

 

と其処で一夏が、なるべく触れない様にしていたものの如何しても気になったのか、京子の母親にその質問をぶつける。

 

「ええ、1ヶ月程前に、交通事故で………」

 

「1ヶ月? でも、そんな怪我には見えませんでしたが?」

 

其れを聞いた虚が、そう疑問を呈する。

 

「………事故の怪我自体は治ったのですが、未だに足が動かないんです」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

其れを聞いたグレン団の面々の表情に、驚きが浮かぶ。

 

「お医者様が言うには、精神的な問題だと………杏子自身にも原因が分からないそうで、時間を掛けて直すしかないと………」

 

「そうですか………」

 

意外と重かった杏子の事情に、一同は思わず黙り込んでしまう。

 

「大丈夫だ! 気合が有りゃ直ぐにでも治らあっ!!」

 

だが、只1人神谷だけが、何時もと変わらぬテンションでそう言う。

 

「神谷………お前は黙っていろ」

 

「神谷。今回ばかりは、流石に気合だけじゃ………」

 

そんな神谷に、箒が呆れながらそう言い、ティトリーも懐疑的な様子を見せるが、

 

「馬鹿野郎! 無理を通して道理を蹴っ飛ばすんだよ!!」

 

「神谷さん! 今回ばかりは道理どころか無理をも蹴っ飛ばしてます!」

 

神谷の様子は変わらず、見かねた蘭がそうツッコミを入れる。

 

「兎に角だ! アイツはもう俺達のダチだ! ダチが困ってるんなら、助けてやるのが筋ってもんだろ!?」

 

「は~い、その部分には賛成~」

 

「確かに………その通りだな」

 

のほほんと弾がそう同意する。

 

一夏達も思う所が有るのか、無言で頷いている。

 

「決まりだな! よっし! 杏子が歩ける様になるまで、毎日来て応援してやろうじゃねえか!!」

 

其処でそう宣言する神谷だったが

 

「いや、神谷。毎日こんな人数で押し掛けたら流石に迷惑だよ?」

 

シャルがそうツッコミを入れて来る。

 

「んだよ、シャル。ノッてるとこに水差すなよ」

 

「まあまあ、神谷くん。シャルロットちゃんの言ってる事も尤もよ」

 

不満気な顔をする神谷に、楯無がやんわりとそう言って来る。

 

「………2人ずつくらい………毎日交代で来る方が………杏子ちゃんにも私達にも、負担は少ないわ」

 

更に簪も、そう意見を挙げる。

 

「そうしようよ。ね? 神谷」

 

「チッ! しゃねえなぁ………」

 

シャルに念を押され、神谷は渋々ながらもその案を受け入れる。

 

「皆さん………ありがとうございます」

 

そんなグレン団の姿に、杏子の母親は深々と頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から、グレン団は代わる代わる杏子の見舞いへ行き………

 

彼女が歩ける様になる様に応援を始める。

 

その応援の甲斐が有ってか、杏子は今まで以上にリハビリに力を入れる様になって行った。

 

杏子が僅かでも歩ける様な様子を見せると、グレン団のメンバーは我が事の様に喜び、感激する。

 

 

 

そんなグレン団の奇妙な病院通いが続いていた或る日………

 

本日病院を訪れたのは神谷とシャル………

 

天気も良いので、病院の外へ出てリハビリをしようと神谷が提案し、杏子は母親に車椅子を押して貰い、病院の庭へと出た。

 

「良し、杏子! 早速始めるか!」

 

と或る程度進むと、不意に神谷がそう言う。

 

「ハ、ハイ!」

 

「杏子、頑張るのよ」

 

そう言って車椅子を止める杏子の母親。

 

「…………」

 

そして杏子は、足掛けから足を地面に下ろすと、両腕で肘掛けを摑んで立ち上がろうとする。

 

「頑張って!!」

 

「気合! 気合入れろ!!」

 

シャルと神谷が、両脇からそう激励する。

 

「う、うう………」

 

必死に足に力を入れようとする杏子。

 

しかし………

 

「!? あうっ!?」

 

結局、そのまま車椅子からずり落ちる様に転んでしまう。

 

「! 杏子!」

 

「大丈夫!?」

 

母親が慌て、シャルが慌てて助け起こして、車椅子に座り直させる。

 

「も、申し訳ございません………」

 

「如何した、杏子!? 気合が足りねえぞ!!」

 

車椅子に座り直した杏子に、神谷がそう叫ぶ。

 

「ちょっ! 神谷!」

 

「良いんです、シャルロットさん。神谷さんの言う通りです」

 

そんな神谷を諫めようとするシャルだったが、他ならぬ杏子自身が止める。

 

「正直に言いますと………私、怖いんです………ひょっとしたらもう歩けないかも………そう思うと、如何しても足が動かなくて」

 

表情に陰を浮かべて杏子はそう言う。

 

「杏子………」

 

「杏子ちゃん………」

 

杏子の母親は悲しそうな顔をし、シャルも言葉が出なくなる。

 

「馬鹿野郎! 弱音吐いてんじゃねえ!! それでもグレン団の一員か!? だったら歩けると思いやがれ!! そうすりゃ歩けんだろ!?」

 

しかし、神谷は相変わらずの神谷節を炸裂させる。

 

「………神谷さんはお強いんですね。羨ましいです」

 

そんな神谷の言葉を聞いて、杏子は弱々しく笑う。

 

と、その時!!

 

待機状態のシャルのISと、神谷の持っていた通信機が鳴った。

 

「!?」

 

「! ハイ! シャルロットです!!」

 

[シャルロットか!? 神谷も其処に居るな!? ロージェノム軍が出現した! 既に一夏達は出撃した! お前達も直ぐに現場へ向かえ!!]

 

シャルが応答すると、千冬からそう言う通信が送られて来る。

 

「分かりました! 直ぐに向かいます!!」

 

そう言って通信を切るシャル。

 

「チッ! 毎度毎度懲りねえ奴等だ………行くぞ、シャル!!」

 

「うん! ゴメン、杏子ちゃん! 行って来るね!!」

 

神谷とシャルはそう言うと、人気の無い場所へと移動。

 

其処で神谷はグレンラガンの姿となり、シャルはISを展開する。

 

「あ!」

 

杏子が声を挙げた瞬間!

 

グレンラガンとISを展開したシャルは、大空へと飛び上がる。

 

「神谷様………シャルロット様………」

 

既に空の彼方へと飛び去った2人を見上げ、杏子は両手を胸の前で組むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

お気づきの方も居るかも知れませんが、私って昭和っぽい古めかしい話が得意でして。
今回の話も昭和っぽい感じでのを目指して作成しました。

訳ありで病院に居る子供との交流ってのはお約束のパターンですからね。
しかし、ロージェノム軍出現の報を受けて、神谷とシャルは出撃。
ですが、そこで今までにない強敵とのバトルが待ち構えています。
果たして………

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。