これは………
女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………
それに付き従う女達の物語である………
天元突破インフィニット・ストラトス
第79話『俺は逃げるんじゃねえぞ!!』
今回ロージェノム軍が現れたのは、東京・川崎・横浜を中心として広がっている日本三大工業地帯の1つ………
『京浜工業地帯』だった。
何時もの如く、破壊と混乱を振り撒くロージェノム軍だったが、今日はその中に毛色の違う奴が居た。
トカゲのような頭部や昆虫の如き節足………
そして堅牢そうな外殻で身を包んだ濃い緑色の生物………
他のロージェノム軍が破壊活動を続ける中、その不気味な生き物は、ロージェノム軍が破壊した工場の残骸や燃料タンク、そして生産中だった機械等を、文字通りバリバリと貪り喰っている。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
「フフフフ、良いぞギルギルガン。もっと喰らえ! 喰らい尽くしてしまえ!!」
そんな怪獣………『ギルギルガン』の様子を見て、ガンメン部隊の部隊長が満足気な様子を見せつつそう言う。
更にその間にも、ガンメン部隊やレッドショルダー達の破壊行動が続く。
「待てぇ! ロージェノム軍!!」
と其処で、そう言う声が響き、神谷とシャルを除いたグレン団の一同が戦場へと現れる。
「むっ! 現れたな、グレン団!………うん? グレンラガンが居ない様だが?」
「へっ! お前達ぐらい! 俺等で十分って事だ!!」
「痛い目見ない内にとっとと帰る事をお勧めするぜ」
それを見たガンメン部隊の部隊長が、その中にグレンラガンの姿が無いのを見てそう言うが、一夏とグラパール・弾が挑発する様にそう言い放つ。
「ふんっ! 貴様等のその憎たらしい姿を見るのも今日限りだ!! ギルギルガン!! グレン団を始末しろ!!」
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
とガンメン部隊の部隊長がそう命じると、工場の残骸を貪っていたギルギルガンが、グレン団へと向かう。
「な、何だ!? アイツは!?」
「うわぁっ!? 気持ち悪っ!!」
ギルギルガンのその異様な姿を見た箒と鈴が、嫌悪感を露にする。
「生体兵器の類か?」
「…………」
ラウラがそう推測し、簪も無言でヘヴィマシンガンを構える。
「何にせよ!」
「敵なら倒すだけだよ!!」
と其処で!
セシリアがスターライトmkⅢを発砲し、楯無がラスティー・ネイルの刃を伸ばす!!
しかし!!
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
スターライトmkⅢはギルギルガンの堅牢な表皮に弾かれ、ラスティー・ネイルの刃は噛み付いて受け止められる。
「「なっ!?」」
セシリアと楯無が驚きの声を挙げた瞬間!!
ギルギルガンはバリボリと音を立てながら、ラスティー・ネイルの刃を喰い始めた。
「!? うわっ!?」
引っ張られた楯無が、慌ててラスティー・ネイルを手放すと、ギルギルガンはそのままラスティー・ネイルを完全に噛み砕いて飲み込んでしまう。
「ラ、ラスティー・ネイルを………食べた!?」
「な、何なの!? 此奴!?」
その光景に、楯無とグラパール・蘭が戦慄する。
「クッ! このぉっ!!」
其処で鈴が、連結した双天牙月を投げ付ける。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
だが、ギルギルガンはその見た目から想像出来ない俊敏な動きで躱すと、口から舌を伸ばして双天牙月に巻き付け、そのままラスティー・ネイルと同じ様に喰ってしまう。
「ああっ!? 何すんのよ!?」
「………!!」
今度は簪が仕掛ける。
ローラーダッシュ移動で撹乱しながら、ギルギルガンに向かってヘヴィマシンガンを発砲する。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
しかし、ヘヴィマシンガンの弾丸は、全てギルギルガンの表皮で弾かれてしまう。
「だったら………」
其処で不意に簪は足を止めると、右脇腰の2連装ミサイルポッドのミサイルを放つ。
白煙の尾を曳きながら飛翔したミサイルが、ギルギルギガンへと着弾し、ギルギルガンは爆煙に包まれる。
「やった!!」
「…………」
一夏がそう声を挙げたが、簪は油断せずに爆煙の中を見据える。
と、次の瞬間!!
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
咆哮と共にギルギルガンが爆煙の中から飛び出し、目から簪に向かって怪光線を発射する!!
「!?」
紙一重で躱した簪だったが、左肩の装甲を持って行かれてバランスを崩し、転倒してしまう。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
ギルギルガンはそんな簪を見逃さず、涎の滴る口を開きながら迫って行く。
「!!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」
だが其処で、ティトリーことファイナルダンクーガが、横からギルギルガンに体当たりを仕掛ける。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?
「断空剣っ!!」
そして断空剣の柄を射出して、右手に握ると刀身を生成し、ギルギルガンに斬り付ける!!
が、ガキィンッ!! と言う音と共に、ファイナルダンクーガの断空剣が弾かれてしまう。
「か、カッタァ~~~~」
手が痺れてしまうファイナルダンクーガ。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
そんなファイナルダンクーガに標的を変えたギルギルガンが、口から緑色の液体を吐く。
「!?」
「危ない!!」
咄嗟に一夏が間に割り込み、左腕でその液体を受け止める。
すると、雪羅に付着したその液体は白煙を挙げ、雪羅を溶かし始める。
「!? 雪羅強制切除!!」
咄嗟に、雪羅を強制自切する一夏。
雪羅は地面に落ちると、そのまま音を立てて溶けて消えてしまった。
「何て奴だ………ISの装甲を溶かすなんて………」
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
戦慄している一夏に、ギルギルガンが突進して来る。
「!? このぉっ!!」
驚きながらも雪片弐型からエネルギーの刃を展開すると、ギルギルガンに向かって突きを繰り出す。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
そのエネルギーの刃にも噛み付くギルギルガンだったが、途端にスパークが飛び散る。
「流石に此奴は食えないだろ!!」
そう言い放ち、出力を上げる一夏だったが………
突如、ガクリと白式の反応が鈍くなる。
「!? 何だ!?」
一夏が慌てて白式の状態をチェックする。
すると、エネルギーが急激な勢いで減っている事に気付く。
「何だコレ!? 零落白夜を使ってるにしても減り過ぎだぞ!?」
白式の急激なエネルギー低下の原因が分からず、一瞬困惑する一夏だったが………
「!? まさか!?」
其処でギルギルガンを見遣ると………
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
ギルギルガンは、雪片弐型のエネルギー刃から、白式のエネルギーを吸い取り始めていた!
「此奴!? 金属だけじゃなくて、エネルギーも食うのか!?」
一夏がそう言っている間に、アッと言う間に白式のエネルギーは空となり、本人の意思と裏腹に、ガクリを膝を突いてしまう。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
動けなくなった一夏に襲い掛かろうとするギルギルガン。
「!?」
「やらせん!!」
しかし、箒がビットを飛ばし、ギルギルガンを弾き飛ばすと、そのまま牽制しながら一夏に近付く。
「一夏! エネルギーを!!」
「すまない、箒」
そして絢爛舞踏を発動させると、一夏にエネルギーを譲渡する。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
とその瞬間、ギルギルガンが紅椿のビットに噛み付き、そのまま喰ってしまう。
「むうっ!? 意地汚い奴め………」
「なら、コレは如何だ!?」
箒がそう言うと、ラウラが大型レールカノンの照準をギルギルガンに向ける。
「蘭!」
「分かってる!」
更に、グラパール・弾とグラパール・蘭も、スパイラルボンバーを構える。
「喰らえっ!!」
「「ファイヤーッ!!」」
ラウラとグラパール・弾とグラパール・蘭の一斉攻撃が、ギルギルガンに叩き込まれる。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?
其処で、初めて怯んだ様な様子を見せたギルギルガンだったが………
直ぐ様体勢を立て直すと、目から怪光線を放つ!
「ぐうっ!?」
「おうわ!?」
「キャアッ!?」
怪光線は3人の足元に着弾し、ラウラとグラパール・弾とグラパール・蘭は爆風で吹き飛ばされる。
「このぉっ!!」
其処で再び、ギルギルガン目掛けてスターライトmkⅢを発砲するセシリア。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
だが、ギルギルガンは向かって来るビームに対し、怪光線で対抗。
スターライトmkⅢのビームとギルギルガンの怪光線がぶつかり合い、押し合いとなる。
しかし、拮抗したのは一瞬で、直ぐにギルギルガンの怪光線に、スターライトmkⅢのビームが押され始める。
「!? そんなっ!?………!? キャアッ!?」
そして遂にスターライトmkⅢのビームは掻き消され、ギルギルガンの怪光線がスターライトmkⅢに命中。
スターライトmkⅢは爆散してしまう。
「くうっ!」
「こんのおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」
爆風で地面に倒れたセシリアを飛び越え、鈴がギルギルガンに向かって飛び蹴りを繰り出す。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
だが、ギルギルガンは鈴の飛び蹴りを足に噛み付いて受け止める。
「!? キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」
そのまま、鈴を咥えたまま振り回すギルギルガン。
そして遂に!
咥えていた甲龍の脚部パーツが外れ、鈴が吹き飛ばされる。
「あうっ!?」
工場の残骸に、派手に粉塵を上げて叩き付けられる鈴。
その間に、ギルギルガンは咥えたままだった甲龍の脚部パーツを噛み砕き、喰ってしまう。
「ハハハハハッ! 良いぞ、ギルギルガン!! そのままグレン団の連中を叩きのめせ!!」
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
その光景を見ていたガンメン部隊の部隊長が、得意気に笑いながらそう言い放つと、ギルギルガンは怪光線を薙ぎ払う様に放つ。
「「うわああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!?」」
「「「「「「「「キャアアアアアァァァァァァーーーーーーーッ!?」」」」」」」」
怪光線が走った後に一瞬遅れて発生した爆発で、次々に吹き飛ばされ、地面に叩き付けられるグレン団。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
ギルギルガンは、そんなグレン団に襲い掛かろうとする。
「待ちやがれええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
と其処で、そう言う叫びが響いたかと思うと、太陽の中からグレンラガンが現れ、ギルギルガンに飛び蹴りを噛ます!!
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!?
不意打ちに近い1撃に、ギルギルガンはブッ飛ばされて、工場の残骸に叩き付けられる。
「むうっ!? 現れたかグレンラガン!!」
「皆! 大丈夫!?」
ガンメン部隊の部隊長がそう言っている間に、続いて現れたシャルが一夏達を助け起こす。
「シャル! アニキ!」
「おうおうおうおう! このトカゲの出来損ない野郎! よくも俺の可愛い弟分達を痛め付けてくれたな! コレの礼はタップリとしてやるぜ!!」
一夏が声を挙げると、グレンラガンはギルギルガンに向かって啖呵を切る。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
工場の残骸の中から抜け出したギルギルガンが、そんなグレンラガンに向かって行く。
「行くぜぇっ!!」
其れを見たグレンラガンは、右腕をドリルに変えてギルギルガンに突撃する。
「! アニキ! 気を付けて!! ソイツは………」
「うおりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」
一夏が言い切る前に、グレンラガンは右腕のドリルをギルギルガンに叩き込む。
しかし!!
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
ギルギルガンは、大きく口を開けてそのドリルに噛み付くと、そのままバリバリと噛み砕き始める。
「!? うおっ!?」
慌ててドリルを射出し、ギルギルガンから離れるグレンラガン。
噛み砕かれたドリルは、そのまま飲み込まれてしまう。
「コノヤロウ! 俺のドリルを!!」
と、グレンラガンがそう言った瞬間………
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
突如ギルギルガンが咆哮を挙げ、ビクビクと痙攣し始める。
「!?」
「何っ!?」
シャルが驚きの声を挙げた瞬間!!
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
ギルギルガンの甲羅の様な身体の背中部分を突き破って、恐ろしい姿をした人型の上半身が生えて来て、ギルギルガンの体色が黄土色へ変化し、元々の姿だったトカゲの様な部分も赤茶色に変わる。
そして更に驚くべき事に………
グレンラガン達より少し大きいぐらいだった大きさが、一気に15メートルは有ろうかという巨体へと変化した!!
「なっ!?」
「お、大きくなっちゃった!?」
コレには、流石のグレンラガンとグレン団も驚きを隠せない。
「ハーッハッハッハッハッ! 如何やらグレンラガンの螺旋力の籠ったドリルを喰らった事で成長が早まった様だな! 礼を言うぞ、グレンラガン!!」
その様子に、ガンメン部隊の部隊長が大笑いしながらそう言う。
「んだと!? 如何言う事だ!?」
「良い事を教えてやろう! そのギルギルガンは金属やエネルギーを吸収する事によって
「な、何だって!?」
「冗談でしょ!? そんな化け物、如何やって倒せって言うのよ!?」
ガンメン部隊の部隊長の言葉に、一夏と鈴が驚きの声を挙げる。
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
と其処で、第2形態となったギルギルガンが咆哮を挙げ、下半身のトカゲの様な頭の目から怪光線を放って来る。
成長し巨大化しただけあって、怪光線の威力も増大しており、着弾した場所から巨大な爆発が上がる!
「うおわぁっ!?」
「キャアッ!?」
「「「「「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」
その爆風によって、彼方此方に吹き飛ばされるグレン団。
「チキショウがぁ!!」
[神谷! 聞こえるか!? 一時撤退しろ!!]
と、身体の上に乗っていた瓦礫を跳ね除けて起き上がったグレンラガンの元に、千冬からの通信が入る。
「馬鹿言ってんじゃねえ、ブラコンアネキ! 敵に後ろ見せられっか!?」
[馬鹿はそっちだ! 今回ばかりは無策で勝てる相手では無いぞ! 一旦退いて態勢を立て直すんだ!!]
「けどよぉっ!!」
グレンラガンが更に何か言おうとしたところ………
「弾! オイ、弾!!」
「お兄! しっかりして! お兄ぃっ!!」
一夏とグラパール・蘭の叫びが聞こえて来て、その方向を見やると………
「う、あ………」
爆風で吹き飛んで来た瓦礫が当たったのか、頭部パーツが割れて顔の一部が露出して血を流しているグラパール・弾の姿が在った。
「!? 弾!!」
[撤退だ神谷! 弟分を見殺しにするのか!?]
其処で千冬が、グレンラガンに向かってそう言い放つ。
「グッ!!」
グレンラガンは葛藤する様な様子を見せると………
「………引き上げだ! 全員一旦引き上げるぞ!!」
グレン団全員に向かってそう言い放った。
「弾! 摑まれ!!」
「お兄! しっかり!!」
「クッ、すまねえ………」
其れを聞くや否や、一夏とグラパール・蘭がグラパール・弾に肩を貸し、一緒に飛び去る。
「屈辱ですわ………」
「この借りは必ず返すぞ」
「覚えてなさい!!」
続いて、セシリア・ラウラ・鈴が飛び去る。
「簪ちゃん!」
「簪! 摑まって!!」
「…………」
そして楯無とティトリーが、飛行不能な簪に手を貸して撤退して行く。
「神谷! 僕達も!!」
最後にシャルがグレンラガンにそう声を掛け、撤退する。
「………逃げるんじゃねえ………俺は逃げるんじゃねえぞ!!」
グレンラガンは一瞬ギルギルガンを見遣りそう叫ぶと、ウイングのトビダマから炎を上げ、飛び去って行く。
「やった! やったぞ!! グレン団を退けた!! もう怖いものは無い!! ギルギルガン!! 思う存分暴れるが良い!!」
ギャオオオオオオオオォォォォォォォォォーーーーーーーーーーッ!!
ガンメン部隊の部隊長の声に、ギルギルガン(第2形態)は咆哮を挙げ、更に工業地帯を破壊し、ドンドン金属とエネルギーを吸収して行くのだった。
◇
総合病院の待合室………
[ああ! グレン団が撤退して行きます! グレン団でもあの怪物には敵わなかった様です! 一体、日本は………世界は如何なってしまうのでしょうか!?]
戦いの様子を中継していたテレビ局が、撤退して行くグレン団と暴れるギルギルガン(第2形態)をカメラで撮しながら、レポーターがそんなコメントを言う。
「ああ! グレン団が………」
「グレン団が………負けちゃった………」
その様子に待合室に居た人々………
特に子供達は、絶望した様子を見せ始める。
(………神谷様………)
そしてその中に居た杏子も、両手を胸の前で組み、不安気な顔を露わにして、車椅子に座って居るのだった………
◇
IS学園・地下………
リーロンの研究室………
「弾くん、ホントに大丈夫?」
「平気平気。コレぐらい何て事無いっすよ………アイタタタタッ!」
傷を心配して来る虚に、弾は大丈夫と傷を叩いて見せるが、我慢出来ずに声を漏らしてしまう。
「弾、無理すんなって」
「そうよ、お兄! 安静にしてなさいよ!」
「いや、そうも行かねえ………あの化け物を如何にかしない事には、落ち落ち寝ても居られねえさ」
一夏と蘭も、弾に向かってそう言うが、弾はそう返す。
「其れでリーロンさん。あのギルギルガンって生き物の事について、何か分かりましたか?」
其処でシャルが、神谷達の戦闘データからギルギルガンを分析していリーロンにそう尋ねる。
「ええ、色々とね………先ず、あのガンメン部隊の部隊長が言っていた通り、ギルギルガンは金属やエネルギーを吸収する事によって“無限に成長する性質”を持っているみたい」
「無限に成長………」
「今の段階でさえあんなに強いのに、コレ以上成長したら如何なるってのよ………」
其れを聞いた箒と鈴が、戦慄を表情に浮かべる。
「それでリットナー技術主任。奴を倒す方法は有るのか?」
しかし其処で、ラウラが冷静にそう尋ねる。
「そうね。風船を割るのと同じやり方かしら」
「えっ?」
「風船………ですか?」
リーロンの言った言葉の意味が分からず、困惑するティトリーとセシリア。
「そっ。風船にドンドン空気を入れて行けば、何れ限界を超えて割れちゃうでしょ? 其れと同じよ」
「つまり………短時間でギルギルガンに………許容量以上のエネルギーを与えると………」
簪がリーロンの言葉を意訳する。
「そう言う事」
「何だよ、簡単じゃねえか! コレであの野郎に借りを返してやれるってもんだぜ!!」
神谷がグッと拳を握ってそう言う。
「馬鹿者。そんな単純ならば苦労はせん」
「“短時間で”というところが、実はネックになるんです」
しかし其処で、千冬と真耶がそう言って来る。
「下手をすれば、ギルギルガンが私達の攻撃のエネルギーを吸収して、益々パワーアップしてしまうって事になるって事ですね」
その千冬と真耶の真意を読んだ楯無が、扇子で口元を隠しながらそう言う。
「なら、どれぐらいの時間で奴を倒せば良いんすか?」
「分析と計算の結果によれば………凡そ1分よ」
「い、1分!? たったの1分かよ!?」
弾の質問にリーロンが答えを返すと、一夏が驚きの声を挙げる。
「ええ。つまり、コチラが攻撃準備を整える時間を稼がなくちゃならない、って事ね」
「其処で、奴の好物を利用する」
「ギルギルガンの好物?」
千冬のその言葉に、蘭が首を傾げる。
「分析したデータによれば、ギルギルガンは『鉄』を好んで食べているそうです」
「鉄? 普通のですか?」
「そうよ。鉄の塊をエサにしてギルギルガンを誘導して時間稼ぎをするの」
「良し! じゃあ俺がその鉄の塊を持って動く!!」
「一夏!」
「一夏さん!!」
自ら進んで囮の役目を引き受けようとする一夏に、箒達は驚きの声を挙げる。
「いや、駄目だ。其れでは両手が塞がって、動きが制限されてしまう」
「じゃあ、如何すれば………」
「コレを使うのよ」
と其処で、リーロンがパソコンのキーボードを操作したかと思うと………
研究室の床の一部が開き、中から1機の打鉄が迫り上がって来た。
「? この打鉄は?」
「“全てのパーツ”を鉄製にした打鉄よ。コレで奴を誘き出すの」
「成程………ってコレ、誰が乗るんですか?」
納得し掛けたシャルだったが、肝心の打鉄(純鉄製)の装着者の事を思い遣り、そう尋ねるシャル。
「其れは………」
「ハ~イ! 私で~す!」
すると何と!
今までマイペースに茶を啜って皆の話を聞いていたのほほんが、陽気に手を挙げた。
「えっ?………ええええっ!?」
「本音が………?」
それを聞いたティトリーが驚きの声を挙げ、簪も珍しく動揺する。
「そんな!? 如何してのほほんさんが!?」
「織斑先生! 危険過ぎます!!」
一夏も驚きを露わにし、楯無も抗議の声を挙げる。
「いや………案外行けるかも知れねえ」
しかし、神谷だけはそんな事を言う。
「えっ? 如何言う事? 神谷」
「思い出してみろ。IS操縦授業の時の鬼ごっごで、此奴を捕まえられた奴が居たか?」
戸惑うシャルに、神谷はそう言う。
鬼ごっこと言うのはIS訓練の一環で、所謂『追跡移動訓練』の事である。
実は、この時のほほんは同じ量産機の生徒どころか、
云わば、エスケープの達人なのだ。
「そう言う事~。だから~、今回の囮役は私が務めるね~。かみやん達はしっかりギルギルガンを撃破してね~」
笑顔でそう言うのほほんだったが、何時もだったら眠た気な様を見せている筈の瞳に、強い意思が宿っている。
「「「「「…………」」」」」
其れを見て、一夏達はもう何も言わなかった。
彼等も実戦を多く潜り抜けて来ただけ在って、相手の決意の程と言うものがある程度は感じ取れる様になっている。
「良し! 作戦は2時間後に決行する! 各員、其々に準備を整え、出撃に備えろ!!」
最後に千冬がそう言ってその場を纏め………
グレン団の一同はギルギルガン撃破に向けて、準備を整え始めるのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
グレン団の前に立ちはだかった新たな敵。
それはグレートマジンガーVSゲッターロボに出演した『宇宙怪獣ギルギルガン』です。
金属やエネルギーを食らって無限に成長するギルギルガンを相手に、グレン団は遂に撤退を余儀なくされます。
そしてギルギルガンを撃破する作戦の為に………
何とのほほんさんが出撃!
果たして、上手く行くのでしょうか?
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は
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天元突破ISと同時
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土曜午前7時
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別の日時(後日再アンケート)