天元突破インフィニット・ストラトス   作:宇宙刑事ブルーノア

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第89話『………コレっきゃねえか』

これは………

 

女尊男卑の定められた世界の運命に風穴を開ける男達と………

 

それに付き従う女達の物語である………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天元突破インフィニット・ストラトス

 

第89話『………コレっきゃねえか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大雪山へ、雪中戦の訓練に来ていたIS学園一同とグレン団。

 

しかしその最中(さなか)………

 

大雪山の山奥にロージェノム軍の影を発見する。

 

直ぐ様その場所へと向かったグレン団だったが、ロージェノム軍の新兵器『ブリザード装置』により………

 

神谷とシャルが、コアドリルとISを失った状態で吹雪が吹き荒れる大雪山中に取り残されてしまう。

 

更に、ロージェノム軍は追撃部隊を差し向けており、正に絶体絶命のピンチに陥っていた。

 

凍えて身動きが取れなくなってしまっているシャルを連れ、神谷は決死の下山を試みる。

 

果たして、神谷とシャルは無事に生きて帰れるのか?

 

そして、大雪山を凍結要塞化しようとしているロージェノム軍の野望を阻止出来るのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大雪山・山中………

 

高く降り積もった雪の中を、塹壕を掘る様に進んでいる影が在った………

 

簪のスコープドッグ(寒冷地帯仕様)である。

 

脚部に装備したアイスブロウワーで、塹壕を掘る様に雪を掻き分けて進んで行っている。

 

その掘った雪塹壕の道の後ろからは、一夏達が続いている。

 

本来なら空から飛んで行きたいところなのだが、この悪天候ではISと言えど飛行不可能であり、已むを得ず地上を雪を掻き分けながら進むしか無かったのである。

 

「凄いなぁ、簪のソレ」

 

アイスブロウワーの万能さに、一夏がそう呟く。

 

「………ギルガメス社に頼んで………特注したパーツだからね………」

 

そう答えながら、更に雪道に塹壕を掘り進んで行く簪。

 

「アニキ、大丈夫かなぁ?」

 

「シャルの方も無事だと良いんだけど………」

 

と其処で、グラパール・弾とファイナルダンクーガ(ティトリー)が、神谷とシャルの身を案じる。

 

「神谷は兎も角、シャルロットの方が心配ね………」

 

「この環境下でISが無い、となると………寒さでかなり衰弱している筈ですわ」

 

其れを聞いた鈴とセシリアが、そんな事を呟く。

 

「神谷の奴は“殺しても死なん奴”だから問題無いが、シャルロットは下手すれば凍死しかねんぞ」

 

「早く見付けないとね」

 

サラリと酷い事を言うラウラと、珍しく若干焦っている様子を見せている楯無。

 

流石に、彼女もこの事態に冷静では居られない様だ。

 

「心配すんなよ。アニキが付いてるんだ。きっと無事さ」

 

しかし神谷を信じている一夏は、笑みを浮かべながらそう言い放つ。

 

「頼むぞ、神谷………」

 

箒も、大雪山の山を見上げながら、虚空に向かってそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

その神谷とシャルはと言うと………

 

「チキショー! 何も見えねえ!!」

 

吹雪で視界がまるで啓けない中、只管低い方、低い方へと進んでいる神谷。

 

「ううう………」

 

その腕には、彼のマントと上着に包まれながらも、唇を紫色にしてガタガタと震えているシャルの姿が在る。

 

「シャル! しっかりしろ!!………ん?」

 

と其処で、吹雪の視界の中に、黒い大きな影が現れる。

 

「何だ?」

 

その影へと近付く神谷。

 

吹雪の中に浮かんだ影の正体は、登山者の休憩用の山小屋だった。

 

「山小屋か。助かったぜ」

 

直ぐにシャルを連れて、その山小屋へと避難する。

 

如何やら最近まで使われていたらしく、電気やガスは無いが、一通りの物が揃って居る。

 

「シャル! オイ、シャル!!」

 

「ううう………」

 

神谷は直ぐ様シャルを下ろすと、容態を確認する。

 

シャルの身体はすっかり冷え切っており、コレ以上冷えては危険な域まで来ていた。

 

「チッ、マズイな………ん? 暖炉か。其れに薪も………」

 

と其処で山小屋の中を見回した神谷は、暖炉と大量の薪が有る事に気付く。

 

コレを使えば、暖を取る事は出来る。

 

しかし、火を焚けば当然煙が出る。

 

現在この辺りには、ロージェノム軍が彷徨いている。

 

煙なぞ立てたら、“見付けてくれ”と言っている様なものである。

 

シャルを助ける為に火を起こすか、其れとも無事に下山する為に耐えるか………

 

「良し! 待ってろ、シャル! 今火を起こしてやるからな!!」

 

神谷は迷わず、火を起こす事を選択する。

 

其れが神谷と言う男である………

 

山小屋の中を引っ繰り返し、適当な木の棒と板を見付ける。

 

「よ~し、コイツで………」

 

其れを使い、揉み(ぎり)式で火起こしを始める神谷。

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」

 

気合の叫びと共に、木の棒を高速回転させて木の板に擦り付ける。

 

すると、木の板の擦られている部分から煙が立ち上り始め………

 

一瞬で火が起こった!!

 

普通こういった火起こしの場合、先ずは火種を作る事が目的なのだが、何と神谷は()()()()を起こしてしまった様である。

 

「よっしゃあっ! 火が点いた!!」

 

直ぐ様その火を暖炉に放り込むと、薪を()べる神谷。

 

直ぐに火は薪へと燃え移り、暖炉の中を炎が埋め尽くす。

 

「シャル! 火が点いたぞ! さあ、コッチだ!!」

 

再びシャルを抱き上げると、暖炉の前に座り込み、暖を取らせる。

 

「ううう………」

 

炎の熱を感じ取るシャルだが、芯まで冷え切った身体を温めるまでには至らない。

 

「シャル! しっかりしろ! クッソー、部屋全体が温まるまで未だ時間が掛かる………」

 

神谷は暖炉の炎とシャルの姿を見比べる。

 

「………コレっきゃねえか」

 

と、其処で何かを思い立ったのか、残っていた(サラシ)とズボンを脱ぎ始める神谷。

 

更に、シャルのISスーツにも手を掛け始める………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、一夏達は………

 

「吹雪いて来たな………」

 

相変わらず、簪を先頭に塹壕を掘りながら雪道を進んでいたが、徐々に吹雪が強くなってきて、一夏がそう声を挙げる。

 

「なあ、本当にコッチの方角で合ってるのか?」

 

「吹き飛ばされた時の方向から計算すれば間違い無いよ。神谷くん達は必ずこの方角に居る」

 

若干心配そうにグラパール・弾がそう言うが、楯無が絶対の自信を持った答えを返す。

 

「………!?」

 

と、その時!

 

先頭を進んでいた簪が、突然足を止めた。

 

「? 如何しました? 簪さん?」

 

「シッ………!」

 

不意に足を止めた簪に首を傾げながら尋ねるグラパール・蘭だったが、簪は“静かにしろ”とジェスチャーを交えて言う。

 

そして、塹壕から頭だけを覗かせると、ターレットレンズを赤外線カメラに切り替える。

 

すると、吹雪の中から向かって来る寒冷地仕様のガンメン部隊とレッドショルダー部隊を発見する。

 

「………敵襲よ」

 

「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

其れを聞くや否や、一夏達は自ら雪中へと埋没した。

 

「…………」

 

簪もアイスブロウワーで、更に雪の中深くへと潜行を始める。

 

「んん? 何だ? この溝は?」

 

「獣道にしちゃあデケェな………」

 

と、少ししてやって来たガンメン部隊とレッドショルダー部隊が、ココまで掘って来た塹壕を発見してそう言う。

 

「むんっ」

 

1体のメズーが、詳しく調べる為に、塹壕の中へと入り込む。

 

そして、その塹壕の中にアイスブロウワーの跡を発見する。

 

「!? コレは!?」

 

と、メズーがそう声を挙げた瞬間!!

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」

 

その背後の雪の壁の中から、左手の雪羅を輝かせた一夏が飛び出して来る!!

 

「!? 何っ!?」

 

「必殺っ! シャアアアアアァァァァァァイニングゥ! フィンガアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

そのまま、シャイニングフィンガーでメズーを鷲摑みにして握り潰す!!

 

「! 織斑 一夏!!」

 

「このぉっ!!」

 

驚きながらも、レッドショルダーの1人が一夏に向かってブラッディライフルを向ける。

 

だがその瞬間!!

 

そのレッドショルダーの足元から弾丸が飛び出して来て、蜂の巣にされる!!

 

「!? ギャアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

断末魔の叫びが挙がると、爆散するレッドショルダー。

 

その爆発に巻き込まれた数機のガンメンと他のレッドショルダーも爆散する。

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

何とか誘爆を避けたガンメン部隊とレッドショルダー達は、慌てて散開する様に動く。

 

「…………」

 

すると、先ず雪の中から飛び出して来たのは簪だった。

 

アイスブロウワーのお蔭で、雪上にも関わらず何時もと同じ機動を発揮する。

 

「クッソ! またお前か!!」

 

「喰らえぇっ!!」

 

「…………」

 

レッドショルダーの1人がブラッディライフルを、カノン・ガノンがガンポッドで攻撃してくるが、簪は余裕の様子で回避機動を取る。

 

と、簪の方に夢中になっていた為か、レッドショルダーとカノン・ガノンは、背後の雪の中に“光る物”が在る事に気付かなかった。

 

其れは、雪の中から上半身だけを覗かせて、スターライトmk-Ⅲを構えているセシリアである。

 

「貰いましたわ」

 

簪に夢中になっていたレッドショルダーとカノン・ガノンを、セシリアは容赦無く背中から撃ち抜く!!

 

撃ち抜かれたレッドショルダーとカノン・ガノンは、断末魔を挙げる間も無く爆散する。

 

「オノレェッ!!」

 

其れに気づいたゴズーが、セシリアが居る場所に向かってミサイルを放つ。

 

「!!」

 

セシリアは再び雪中へ潜る。

 

直後にミサイルが着弾し、辺りの雪が吹き飛ばされる。

 

「やったか?」

 

と、ゴズーがそう言い放った瞬間!

 

雪中から放たれてきた緑色のレーザーに撃ち抜かれた!!

 

「ですよねえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!?」

 

情け無い断末魔と共に爆散するゴズー。

 

「其処かぁ!!」

 

レッドショルダーの1人が、ビームが撃たれた地点にブラッディライフルを向けるが………

 

その瞬間に、背後の雪中から緑色のレーザーが発射されて命中する!!

 

「ぐああああっ!?」

 

クリーンヒットしたのか、一瞬でシールドエネルギーが無くなり、自爆装置が働いて爆散するレッドショルダー。

 

更に、此処彼処(そこかしこ)の雪中からレーザーが放たれて来る。

 

「うおおっ!? 如何なってるんだ!?」

 

アガーがそう声を挙げながら、手近な発射元の雪中目掛けてパンチを繰り出す。

 

すると、雪中からビットのブルー・ティアーズが飛び出す。

 

「野郎! ビットを雪中にばら撒きやがったのか!!」

 

カノン・ガノンがそう言い、飛び出して来たブルー・ティアーズを破壊しようとしたが………

 

正面に、鈴の双天牙月の刃の部分が出現。

 

まるでジョーズの様に、雪原を斬り裂きながらカノン・ガノンへ迫る双天牙月の刃。

 

そのまま、カノン・ガノンを縦に真っ二つにする。

 

「獣人に栄光有れえええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」

 

「やりぃっ!!」

 

カノン・ガノンの断末魔が挙がると、鈴が雪中から飛び出す。

 

「オノレェ!!」

 

ソリッドシューターを持ったレッドショルダーが、飛び出した鈴に狙いを定めるが………

 

その足元からワイヤーブレードが飛び出して来て、連続で斬り付けて来る。

 

「ぐおああっ!?」

 

「喰らえッ!!」

 

そして隙が出来たところでラウラが飛び出し、至近距離からレールカノンを発射する!!

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

レールカノンの砲弾に吹き飛ばされ、着弾すると同時に爆散するレッドショルダー。

 

「やあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーってやるニャッ!!」

 

気合の叫びと共にファイナルダンクーガが雪中から飛び出し、ングーに向かって鉄拳を振り下ろす。

 

「ガ、ガンメン死すとも、獣人は死なずだあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

押し潰される様に変形し、獣人の断末魔の叫びと共に、ングーは爆散する。

 

「クソがぁ!!」

 

ペンタトルーパーを持ったレッドショルダーが、ファイナルダンクーガに向かって発砲するが、銃弾はその堅牢な装甲の前に弾かれる。

 

「「貰ったっ!!」」

 

すると其処へ、別方向の雪中からグラパール・弾とグラパール・蘭が飛び出し、2人揃ってハンドガンを発砲する。

 

「チイッ! 舐めるなぁ!!」

 

しかしレッドショルダーは回避運動を取り、グラパール達からの攻撃を回避する。

 

そしてグラパール達に向き直ると、ペンタトルーパーにロケット弾を装填して見舞おうとする。

 

「やらせん!!」

 

だが、回避先の地点の雪中より箒が飛び出し、雨月と空裂で斬り付ける!!

 

「グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

シールドエネルギーが無くなり、爆散するレッドショルダー。

 

「貴様ぁ!!」

 

直後に、シャクーが箒に噛み付こうとしてきたが………

 

またも雪中から飛び出した蒼流旋に口内を貫通される。

 

「天国へ行けるかなああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

「ふふふ~ん」

 

シャクーが爆散すると共に、楯無が不敵に笑いながら姿を見せる。

 

程無くして、遭遇したガンメン部隊とレッドショルダー部隊は壊滅した。

 

「良し、片付いたな」

 

「無駄に時間を取られてしまったわ。先を急ぎましょう」

 

一夏がそう呟くと、楯無がそう言い、一同は再び簪を先頭に大雪山の更に奥へと進んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

神谷とシャルが避難した山小屋では………

 

(………アレ?………何だろう?………凄く暖かい………)

 

何やら暖かさを感じ、朦朧としていたシャルの意識が回復し始める。

 

「おっ、 気が付いたか?シャル」

 

そして、視界が回復すると同時に飛び込んで来たのは、神谷のドアップの顔だった。

 

「!? か、神谷!?」

 

驚くシャル。

 

すると其処で、身体に違和感を感じる。

 

「?………!?」

 

そして自分の状態を見て、更に驚愕する。

 

現在のシャルは全裸で、同じく全裸の神谷に抱き寄せられており、その上からマントに(くる)まっている状態だった。

 

「キャアアアアアアアァァァァァァァァァーーーーーーーーーッ!!」

 

衝動に駆られるままに、神谷の顔面目掛けて頭突きを見舞うシャル。

 

「ブッ!?」

 

不意打ち気味に顔面に頭突きを受け、神谷は僅かに仰け反る。

 

「か、神谷! コココ、コレは一体、ど、どど、如何言う事!?」

 

顔どころか全身真っ赤になりながら、シャルは神谷にそう問い質す。

 

「イツツツ………何って、覚えて無えのか?」

 

鼻を押さえながら、神谷はシャルにそう問い返す。

 

「覚えてって………」

 

其処でシャルは周りを見回し、此処が山小屋の中である事に気付く。

 

「あ、そうか………僕達、吹雪に吹き飛ばされて………」

 

そして、段々と自分達が如何なったのかを思い出す。

 

「そうだ。そんでオメェが雪の中に埋まってたから、必死になって掘り出して、獣人達の目を掻い潜りながら漸く此処へ辿り着いたんだぜ。んで、寒い寒いつーから火まで焚いてこうしてやったんだろうが」

 

「そうだったっけ………ゴメン、神谷」

 

神谷は自分を助けようとやってくれていたのに、其れを忘れて暴力を振るってしまった事に自己嫌悪するシャル。

 

「何、気にすんな………コレはコレで()()だしよぉ」

 

と、神谷はそう言ってシャルを抱き寄せる。

 

「ちょっ!? か、神谷!?」

 

「フッフッフッ、シャル………昨日の続きと行くか?」

 

「!?!?」

 

その言葉にシャルは再び全身真っ赤になる。

 

「な、なななな………」

 

「ハハッ! 冗談だよ。流石に、んな事してる状況じゃねえからな」

 

呂律が回らなくなっているシャルを見て、神谷はそう言い放つ。

 

「! も、もう~! 神谷の馬鹿! エッチ!!」

 

「ハハハハハハッ!」

 

神谷をポカポカと殴るシャルと、其れが余り効いておらず、呵々大笑する神谷。

 

………お前等、もう少し緊迫感を持てよ。

 

 

 

 

 

その後2人は、暖炉近くに干しておいた制服とISスーツを着直す。

 

「神谷………上着とマント、ホントに着なくて良いの?」

 

神谷の制服の上着とトレードマークのマントを羽織ったシャルがそう尋ねる。

 

「大丈夫だって。南極や北極を旅してた頃に比べりゃ、コレぐらいの寒さ、何て事無えさ」

 

ズボンと上半身(サラシ)だけの神谷が、笑いながらそう返す。

 

(………どんなんだったんだろ? 神谷が世界を旅してた頃って?)

 

その言葉に、シャルはそんな思いを抱く。

 

「!?」

 

と、その時!

 

神谷が何かに気付いた様に窓の傍に寄る。

 

「? 神谷? 如何したの?」

 

「…………」

 

シャルの問いにも答えず、神谷はジッと窓の外を見据える。

 

外では相変わらず吹雪が吹いており、視界が全く効かなかった。

 

しかしその吹雪の中にハッキリと、動く影が在る。

 

しかも、段々とコチラへと近付いて来ている。

 

近付くに連れて、その姿がハッキリとし出す。

 

其れは、寒冷地仕様のガンメン部隊とレッドショルダー部隊だった。

 

「あの小屋から煙が出てるぞ!」

 

「誰か居やがるな!!」

 

小屋の煙突から暖炉の煙が出ているのを見て、直ぐにガンメン部隊とレッドショルダー部隊は、小屋を包囲する様に展開して行く。

 

「チッ! 勘付かれたか………」

 

「如何しよう………ISも無いのに………」

 

苦い顔をする神谷とシャル。

 

その間にも、ガンメン部隊とレッドショルダー部隊は小屋の包囲を完成させ、徐々にその輪を縮めて行く。

 

「………しゃあ無え。シャル、俺が飛び出して奴等を惹き付ける。その間にオメェは下山しろ」

 

「!? 何言ってるの神谷!?」

 

「一夏達が必ず近くまで来てる筈だ。アイツ等を連れて来れさえすれば如何にでもなる」

 

「でも!」

 

「心配すんな。俺が“簡単に死なねえ男”なのは、オメェが一番良く知ってんだろ?」

 

神谷はそう言うと、小屋の中に有った薪割り用の斧を手に取る。

 

「………気を付けてね、神谷」

 

やがてシャルは、意を決したかの様な顔となると、神谷に向かってそう言う。

 

「任せておけって」

 

そんなシャルに、神谷は力強い笑みを浮かべてそう返すのだった。

 

 

 

 

 

山小屋の外………

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

徐々に包囲の輪を縮め、山小屋を完全に囲い込むガンメン部隊とレッドショルダー部隊。

 

「へへへ………燻り出してやるぜ!」

 

と其処で、火炎放射器を持ったレッドショルダーが山小屋に銃口を向ける。

 

そして、引き金を引こうとしたところ………

 

「オラァッ!!」

 

威勢の良い声と共に、山小屋の扉が内側から蹴破られて宙に舞う!

 

「!? グアアッ!?」

 

そのブッ飛んだドアが直撃し、火炎放射器を持ったレッドショルダーが倒れる。

 

「! 天上 神谷!!」

 

「オラァッ!!」

 

驚くゴズーに向かって跳躍し、持っていた斧を振り下ろす神谷。

 

「ぐああっ!?」

 

倒す事は出来なかったが、装甲から火花を挙げさせ、怯ませる事に成功する。

 

「コッチだ、獣人に赤肩共! 追い付いてみやがれ!!」

 

そう煽り立てると、神谷はガンメン部隊とレッドショルダー部隊の包囲網を強行突破する。

 

「ああ! 逃がすな!!」

 

「追えぇっ!!」

 

直ぐ様、ガンメン部隊とレッドショルダー部隊は全員で包囲網を突破した神谷を追って行く。

 

そして、ガンメン部隊とレッドショルダー部隊が山小屋から離れて少しすると………

 

「………よっし! 今だ!!」

 

隠れていたシャルが飛び出し、吹雪の中を下山し始める。

 

しかしその途端に、まるでシャルを阻むかの様に、吹雪が強まり始める。

 

「ううっ!?………神谷………待ってて………必ず………一夏達を連れて行くから………」

 

寒さに身震いしながらも、シャルは一夏達と合流すべく、山を下りて行くのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

大雪山編第3話。
遭難した神谷とシャルは山小屋へと避難。
お約束でムフフな展開もありつつも、追撃部隊に見つかりピンチに。
囮となった神谷に後ろ髪引かれつつも逃げるシャル。
果たして、無事一夏達と合流出来るのか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

新作『新サクラ大戦・光』の投稿日は

  • 天元突破ISと同時
  • 土曜午前7時
  • 別の日時(後日再アンケート)

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