パラレル・ゲート 作:小鳥大軍
俺とタツは、森の中にいた。
なぜって?宝石ウサギを見つけるためだ。二人でそれぞれ別のところを探す。
たとえ乱獲者を捕まえるために探していると言っても、側から見たら宝石ウサギを捕まえるために探しているようにみえるだろうが……
とにかく、宝石ウサギを驚かせないように、静かに探す。探し出した後は、そいつの住処までついて行って、その近くで待機するのだ。その方法をとれば乱獲者を捕まえやすい・・・・・・らしい。
探し始めてはや1時間。俺は、一匹のウサギを見つけた。
宝石ウサギは、瞳以外はただの白うさぎだ。ゆっくりと怖がらせずに近づいていき、スッと拾い上げる。
幸い、宝石ウサギが怖がる事はなく、大人しく持たれていた。
さて、瞳は宝石。間違いない、コイツは宝石ウサギだ。
俺は、宝石ウサギを地面に降ろした後
「わっ!!!」
驚かせた。
宝石ウサギは、直ぐに走り去っていく。ここからが重要だ。俺は、なんとか見失わないようについて行った。
約1分後、宝石ウサギは穴に、自分の巣に帰って行った。俺は、その場所を見つけた後近くに隠れることができる場所がないか探し
「ちょっといいかな君」
ビクッと体が跳ねた。
なに、悪い事をしているわけではない。だから堂々としておけばいいんだ。
「君はここが宝石ウサギの巣だと知りながら来たね?」
背後からかけられる声と連動しているように冷や汗が垂れる。
おかしいな、なんでこんなにドキドキするんだろう。
「君は、宝石ウサギが保護中の魔獣だと知りながらここに来たのかい?」
「違うんです!俺は乱獲者を捕まえるために!」
振り向きながら言った。そして、思わず押し黙ってしまった。
そこにいたのは、一人の男だった。シムのように派手ではないが、確かに鍛えられてる筋肉。何よりも1番衝撃を受けたのが、歴戦の英雄の様な傷を負っている顔。服があるからわからないが、おそらく体もそうなのだろう。
目測40歳くらいのその男を見上げる様な形で固まっていると、その男は
「君の様な人を私は何人も見て来たよ。さて、とりあえず一緒に来てくれるかな?」
やばい。これはあれだ、警察とかの少年犯罪者に対する対応とおんなじだ。・・・別に、体験したことがあるわけではないが。
「いや、俺一緒に来てる人がいるんで」
「なに?ならばその人も連れて来てくれるかい?」
優しい口調で微笑んでいるが、目が笑っていない。
どうしよう。タツを呼ぼうにもその手段がないし、そもそもココにあいつを呼んだら乱獲者が来た時に対処が出来なくなる。
どうしようか悩んでいると、男が段々と雰囲気を剣呑にして来た。
ますます怖い。さっきまでも怖かったが、今はもっと怖い。やばい、俺今日死ぬかも。
ゴリラゴの時とは違うタイプの恐怖に思考すらも止められる。
やばい。やばいやばいやばいやばい。やばい。
かんがえがまとまらない。たつはなにをしてるんだろう。らんかくしゃをつかまえてたらいいなー。
「おお、なにやってんだ?」
タツがやって来た。え、なんで!?
「ナツ、犯人?つうか犯罪者捕まえたからあっちに縛ってるぞ」
「一組だけじゃないかも知んないだろ?」
それを聞いたタツは、あー、と言って帰ろうとしたが、男に気づき
「おお、ドボルグ。なにやってんだ?」
タツは、この男と知り合いの様だ。男は、ドボルグは、タツが来たのと同時に先程までの雰囲気をだんだんと消し、代わりに申し訳なさそうにし始めた。
「……すまなかったな少年。どうやら勘違いだったみたいだ」
と、頭を下げて謝るドボルグ。それに対して俺は
「いいですいいです。そういう風に見えてしまうのは仕方がないですし」
しっかりと謝ってくれる人だ。自分が悪かったらこれを認める。これがどこかの誰かさんだったらこうは行かなかっただろうな。そう思いながらタツを見ると、タツは全く察することなく手を振ってくる。
ドボルグは、ようやく頭を挙げた。本当に関心できる大人だ。この一ヶ月間一緒に過ごして来たのがタツだからなのか、昔では感じれなかったことに感動する様になって来た。これに関してはタツに感謝しなくてはいけないな。主に反面教師的な感じで。
「そうか。すまなかったな」
ドボルグは、まだ申し訳なさそうにしている。
そんなに謝らなくてもいいのに。そう言おうとしたが、確かに誤解であそこまで怖がらせてしまったら、まあこれくらいは謝るよな、と思ったので言わなかった。
俺たちが話している間に縄を抜けたのか、それとも新しく来たのか、男が一人茂みから飛び出して来て宝石ウサギを捕まえたかと思うと魔道具を使ってどこかに行ってしまった。
瞬間移動、という類のものだろう。
「へー、光属性の魔道具か。めっずらしい物持ってんな」
なんて呑気なんだろう。
「ちょ、タツ!なんでそんなに呑気なんだよ!」
だってなぁ、と言いながらドボルグを見るタツ。
まぁ見とけ。そういうと、そのまま帰る準備をし始めた。
タツがこの調子なので、自分がなんとかしなくては。そう思うのだが、方法が思いつかない。
結果として何もできないでいた。
俺がそうしている時に、ドボルグは腰にかけてあったハンマーを取り出し
「土魔法・クウェイク」
地面が、大地が大きく揺れた。地震だ。
激しい揺れに、思わず体勢を崩す。
「なっこれは!!!」
俺は、平然としているタツに向かって聞いた。それを聞いたタツはなんでもない様に
「ん?言ってなかったか。あいつ、土の神器の保持者なんだよ」
初耳だ。そして納得する。先程の雰囲気は、常人では発せないだろう。
「うおわぁぁ!!!」
「あっちか」
と言い、ドボルグは声がした方に走っていった。
その間にタツは
「よし。帰るぞ」
「は?」
マジで帰ろうとしていた。
「なんで?」
タツは、不機嫌そうに口パクで、
め・ん・ど・く・さ・い・か・ら
めんどくさい?ドボルグが?なんとも納得いかない。あの人は誠実そうだし、良い人ではないか。
それをめんどくさいとは、堕ちたな、タツ。
「いいから早く来い!!!」
「どこに行くんだ?」
いつのまにかドボルグが帰って来ていた。その手には、一人のチンピラをつかんで。
「ド、ドボルグ」
「そういえば、お前に貸した魔道具35個、いまだに帰ってきていない様な気がするのだが」
き、気のせいじゃないか?と言いながら、ジリジリと後ろに下がるタツ。
ドボルグは、魔法を使って地面を隆起させ、タツの退路を塞いだ。
「タツ?」
「は、ははは……」
この後めちゃくちゃ説教された。