かつて背中合わせで戦った2人は道を違え、お互いのことを知らぬまま相対する。
???
『へぇ、こいつが《デバイス》ってやつか』
???
『そ、名前は《■■》。《インテリジェントデバイス》と言って、高度なAIを搭載していて、魔法の発動処理や調整を自己判断で行ってくれる反面、使い手を選ぶから逆にデバイスに振り回されることもあるんだ。ちなみに僕は後者……そもそも僕は攻撃系の魔法より、防御や補助の後方支援が得意なくらいなんだ』
???
『まぁ、人それぞれってやつか。それと、よろしくな《■■》』
■■
《
ソウル
「ん……なんだったんだ、今のは?」
目覚めた俺はベッドから起き上がる。どうやら夢を見ていたらしい。
顔こそ霧がかって誰かわからないが、妙に親しみを感じることができた。
ソウル
「あれはいったい……」
あの夢に出てきた人物は、俺が記憶を失う前に関係しているのか。
???
「【ソウル】起きてる?」
ソウル
「ん?【フェイト】か?ああ、起きてるぞ」
俺が見た夢のことを考えていると、【フェイト】が俺のことを呼びに来る。
フェイト
「よかった。実は《ジュエルシード》と思える反応を捉えたから、今からそこに向かおうと思ってるんだ」
ソウル
「そうか。だが、その前に……」
フェイト
「ん?」
ソウル
「朝食だ。すぐに支度するから待ってろ」
フェイト
「うん!」
この間は、食事なんてそっちのけで【プレシア】さまの命令を遂行することに躍起になってたのに、昨日の今日で俺の食事を楽しみにしてくれるようになってくれて、俺も作りがいがあるってものだ。
とりあえずあの夢については、今の俺ではわかるはずもない。今は目先のことに集中するとしよう。
ソウル
「あれが、《ジュエルシード》の発動体で間違いない・・のか?」
フェイト
「うん……間違いない・・と思う」
子猫?
「にゃあ〜〜」
2人が見上げた先には、ただただ巨大としか言いようがない子猫。
【フェイト】が言うには、大きくなりたいと願った子猫が《ジュエルシード》に触れ、単純にその身体を大きくしたのだと言う。
ソウル
「まぁ、暴走して襲いかかってこない分、すぐに済みそうだな」
フェイト
「そうだね。じゃあ早速《
BD
《yes sir》
【フェイト】は懐から彼女のデバイスである、《BD》という名の黄色い三角形の宝石を取り出す。
ソウル
「《インテリジェントデバイス》か」
フェイト
「うん、名前は《BD》。【リニス】が作ってくれたデバイスなんだ。でも【ソウル】、紹介してなかったのに《BD》が《インテリジェントデバイス》って知ってたんだね」
ソウル
「ん?あれ、なんか自然と口に出てたわ。まぁよろしくな《BD》」
BD
《yeah》
【ソウル】自身、《BD》を見て口走った言葉に自分でもよくわかっていなかったが、それは置いといて軽く《BD》と挨拶を交わす。
フェイト
「そういえば【ソウル】が顔に着けているのって?」
ソウル
「あ、ああ、なにぶん俺はデバイスの扱いが不得手でな。【プレシア】さまからせめて通信と解析を兼ねてこれを渡されたんだ」
彼が顔に装着していたのは、黒いゴーグルと赤と黒を基調にしたヘッドフォン。その際【ソウル】がやや歯切れが悪そうにしていたが。
(※閃の軌跡アタッチメント、ミッドナイトヘブン&ワールドエンド)
フェイト
「そっか。じゃあ、【ソウル】はフォローを。わたしはアレを倒して《ジュエルシード》を取り出す」
ソウル
「まてまて!【フェイト】、お前なにしようとしてんだ?」
フェイト
「なにって、あの猫へ魔法で攻撃を」
子猫(?)へ放電した状態の杖を向けながら、しれっとした態度の【フェイト】を慌てて止める。
ソウル
「よく見ろ。あの猫、首輪がしてある。それに、さっき周りを見てみたが向こうに民家らしき建物もあった」
フェイト
「そう、それで?」
ソウル
「つまり、あの猫はこの家の敷地内で飼われてる猫だってことだ。それも、一般家庭とは比べ物にならない上流家庭のな」
子猫の首には身につけていたものも一緒に、巨大化した首輪が巻かれている。さらに【ソウル】はゴーグルに備わっている望遠機能で周囲を見たところ、向こうに豪邸としか言いようがないが、民家と思しき建物。そして自分達がいるのは、その家の敷地内のほんの一部だったということだ。
ソウル
「そんな家の飼い猫を傷つけたとなれば、家の人間が黙ってないだろう。こんな家に住んでる人間なら、この街の有力者の可能性だってあるはずだ。この街に来たばかりの俺たちが下手にそんな人間に目をつけられれば、今後の活動に支障をきたしかねない」
フェイト
「うん、言われてみれば。すごいね、【ソウル】。この状況でそこまで考えられるなんて。でもアレをどうするの?」
ソウル
「さっきお前が言ってただろ。アレは発動こそしているが、比較的暴走の危険性は無いって。なら俺があの猫の注意を引いて宥めるから、その隙に【フェイト】が封印してくれ」
フェイト
「わかった」
2人の作戦が決まり、いざ行動を起こそうとした瞬間、空から猫に向け、一発の雷が落ちたのだ。
子猫
「ニャッ⁉︎」
それを皮切りに、雷が何発も子猫を襲う。子猫は驚きでその場に縮こまっていた。
フェイト
「なに⁉︎」
ソウル
「見ろ、あそこだ!」
その上空、そこには、
高笑いを上げる男子
「ハーハッハッハッ!さぁ!獣風情が、さっさと俺に《ジュエルシード》を捧げろ!」
止める少女
「やめて!なに言ってるの⁉︎その子がかわいそうだよ!」
鎧を着込んで高笑いを上げながら片手に持った剣から雷を落とし続ける男子と、白い衣装に杖を持って男子を止めようとしている少女の2人組がいた。
ソウル
「見たところ2人とも魔導師みたいだな。どっちみちあの2人をどうにかしないと《ジュエルシード》は手に入らない。俺は男の方、【フェイト】はあっちの女の子の方を頼む」
フェイト
「えっ⁉︎ちょっと!」
【フェイト】に白服の少女の方を任せ、【ソウル】は子猫へと雷撃を落としている相手の方へと向かう。
高笑いを上げる男子
「とっとと倒れろ獣風情が!じゃないと【フェイト】に会えないだろうが!」
男子を止める少女
「やめて【征騎】君!そもそも【フェイト】ってだれ⁉︎」
当然のことながら、子猫を一方的に襲っていたのは、転生者でありこの場面に積極的に介入しようとしている【征騎 王士】。そしてそれを止めようとしていたのは、ついこの間魔法を使えるようになったばかりの少女、【高町 なのは】だった。
征騎
「これで・・・トドメだ!」
【征騎】が剣を振り上げ、そこから極大な雷球が放たれるのを待ち放電していた。
ソウル
「させるか!」
征騎
「なっ⁉︎何者だ!」
子猫に雷撃が落とされようとした瞬間、【ソウル】が間一髪2人(匹)のあいだに滑り込む。
ソウル
「こいつはやらせるか、《シールド》!」
征騎
「ハッ!その程度の防御で俺の魔法を防げるか!2匹揃って消えるがいい!」
【征騎】が鼻で笑うのも無理ない。これは【ソウル】が最初から使えた数少ない魔法であり、その大きさも身体が隠れるほどもない小ぶりなものだ。
そして放たれた雷は、極太の矢のように【ソウル】と子猫へと一直線に落とされ、柱のような空へと伸びる雷と派手な爆音が辺りに響く。
征騎
「はんっ!一瞬俺以外の転生者かと思ったが、あの程度の魔力量で俺の前に現れるなんてありえんな。まぁ、今となっては消し飛んだ奴のことなんてどうでもいいが……」
【征騎】が完全に自分が勝利したと確信していた。
ソウル
「ふうぅぅ……」
征騎
「な、なにぃ⁉︎」
しかし予想に反し、2人はその場に踏みとどまっていたのだ。
そもそも【ソウル】は記憶を失っていようと、【一夏】だった時に身体に染み付いていた戦闘技能が彼を動かす。【征騎】は魔力量だけが一人前で巨大なだけの攻撃だったこともあり、【ソウル】は盾の形状を傘のように展開。さらに受け流せる角度を見極め受けることで【征騎】の魔法の威力を分散させ防ぐことができたのだ。
征騎
「な、なんで?なんで俺の魔法を受けて無事でいる⁉︎」
ソウル
「それを態々お前に教えてやる義理はない」
征騎
「なっ⁉︎しまっ……ガフッ!」
自分の攻撃を格下と思っていた相手に防がれ、呆然としていた隙をついた【ソウル】が【征騎】の懐へ入り掌底を叩き込み、地面に倒れ伏す。
フェイト
「【ソウル】無事?」
ソウル
「ああ……そっちは?」
フェイト
「うん問題ない。相手の方もさほど驚異に感じなかったから」
【フェイト】も【なのは】との戦闘を終え、無事【ソウル】と合流を果たす。
その瞬間、
子猫
「ナァン!」
ソウル
「ゴフッ!」
猛スピードの車がぶつかってきたような衝撃が【ソウル】を襲い、彼は地面を跳ねるように転がる。先ほど助けた子猫が【ソウル】目掛け突進してきたのだ。
フェイト
「ソ、【ソウル】!大丈夫⁉︎」
ソウル
「あぁ、問題ない。大丈夫だ(ガクガクガク)」
フェイト
「【ソウル】、セリフと状態が合ってないよ」
明らかに【征騎】と戦った時よりボロボロの状態で、突進による衝撃が足にきている様子の【ソウル】。
そんな状態をよそに、子猫はその巨体を【ソウル】に擦り寄せる。
ソウル
「なんだ?助けてくれた礼のつもりか?たまたま俺たちに必要なものをお前が持っていただけだ」
【ソウル】は子猫の顎を撫でながら、子猫はゴロゴロと喉を鳴らしゆっくりと眠りにつく。
ソウル
「【フェイト】、今のうちに封印を」
フェイト
「あ、わかった。《ジュエルシード》封印!」
子猫が眠ったすきに《ジュエルシード》を封印。元の大きさに戻った子猫は眠ったまま下におろし、その場を後にしようとする。
なのは
「待って!」
ソウル
「ん?」
フェイト
「あの子……」
すると、先の【フェイト】と戦いで敗北を期した【なのは】がボロボロの身体を引きずりながら追いつく。
ユーノ
「君たちは何者だ⁉︎なぜ《ジュエルシード》を集める⁉︎答えてくれ!」
【なのは】の肩に乗っていた【ユーノ】も2人へ問いただす。
ソウル
「あの2人は……ッ⁉︎」
フェイト
「【ソウル】⁉︎」
【なのは】と【ユーノ】の姿を見た瞬間、突然の頭痛で頭を抱える。
フェイト
「あなた達には関係ない。ただ、このまま《ジュエルシード》を集め続けるならわたし達の敵。それだけ……」
そして、【フェイト】は【ソウル】に肩を貸しながら、その場から飛び去っていく。
ユーノ
「いったい何者だったんだ、あの2人は?」
なのは
「うん。でも魔導師としては確実にあの子が上。わたし、手も足も出なかった」
ユーノ
「そうだね。それにあの顔を隠していた方、【なのは】や【征騎】と比べれば魔力こそ低いはずなのに、それを補うほどの戦闘技能を持っていた」
わたしの前に現れたあの金髪の子。同じ魔導師なのにあの子の方が強かった。今のわたしじゃ比べものにならないくらい。ただあの子わたしに向かって言ったあの一言がわたしの中にいまだに引っかかっていた。
なのは
「ごめんね……って、なんであの子あんなことを?それに、あの人……」
あの金髪の子と一緒にいた男の子。
なのは
「どうしてあの人を見た瞬間懐かしいって思ったんだろう?」
あの人を見た瞬間、わたしが感じたことはそんな気持ちたったひとつだった。
To be continude
白い毛並みを靡かせて狼は街を駆ける。
次回
『男は狼なのよ』
更新遅くて本当にすみませんm(_ _)m