ソウル
「ここが、次の"ジュエルシード"の反応が確認された場所か?今回はずいぶんと町から離れた場所だな」
フェイト
「うん。まだ完全に発動されたわけじゃないから、微弱な反応だけど。このエリアにあるのは確か」
《BD》に映し出させれた反応と地図を照らし合わせると、場所は町郊外の温泉地のようだ。
ソウル
「場所も場所だ。なら、手近の宿を拠点にするのがいいんだろうが、一つ問題がある」
フェイト
「なに?」
ソウル
「さすがに俺たちだけで宿に泊まることはできない。保護者がいれば話は別だが。ただ、この中で一番保護者になり得るのは……」
【ソウル】と【フェイト】の2人だけで宿に泊まることはできない。そこで、この中で保護者となり得る人物といえば、彼の視線の先にいたのはソファに寝そべる【アルフ】。
アルフ
「んあ?」
彼女はソファに寝そべりながら、スナック代わりにドッグフードをつまみながらこちらを見る。
【アルフ】を保護者とした時の状況を【ソウル】は思い浮かべてみた。
ソウル
「ダメだ。【アルフ】を保護者にしたら、余計な騒動しか起こしかねない」
フェイト
「・・・そうだね……」
アルフ
「なぁ、いくらなんでもその扱いは酷くないかい?」
子供2人連れ+【アルフ】の見た目と性格=悪目立ちする未来しか見えなかった。
ソウル
「しかし、宿の手続きは【リニス】あたりにしてもらうにしても、【プレシア】さまの補佐で忙しい身だ。結局保護者の問題をどうするか……」
ソウル、フェイト
「「う〜〜〜ん」」
なにかいい方法がないか考え込む2人。
アルフ
「なぁ、【ソウル】ってさ、あんた……」
中居
「ようこそ当旅館へ。ご予約の【テスタロッサ】様ですね?たしか、事前の連絡でご家族が来れず、ご兄妹でのご宿泊で?」
青年
「はい。両親が急な仕事で……行こうか、【フェイト】、【アルフ】」
アルフ
「あいよ〜〜」
フェイト
「う、うん、お兄・・ちゃん……」
【フェイト】の呼び方に思わず青年が身震い。この青年、"変身魔法"の応用で年齢を偽装した【ソウル】。先日の【アルフ】からの提案で、その魔法を使える彼とで、なんとか使い物にしたのだ。
そして、3人はそのまま中居の案内で部屋へと向かう。
その入れ違いのように……
中居
「ご予約の、【高町】さま御一行ですね。ようこそ当旅館へ!」
なのは
「よろしくお願いしまーす!」
まるで運命のいたずらか。"ジュエルシード"を巡る者たちが同じ旅館を使っていることになるとは、当の本人たちが知る由もなかった。
ユーノ
『どうしよう……』
今ボクは窮地に立たされている。
アリサ
「ねぇ【なのは】、【ユーノ】も一緒に温泉に入れないの?」
すずか
「そうそう、ここって小動物くらいなら入れても大丈夫そうだし、関係ないんじゃない?」
なのは
「え⁉︎いや、【ユーノ】くんはオスだし……」
アリサ
「それこそ大丈夫じゃない。まさか、【ユーノ】が人間じゃあるまいし」
ユーノ
「きゅ、きゅ〜〜」
温泉に入ろうとした【なのは】の友人達がボクも入れようとしてきたのだ。さすがに魔法のことを知らない彼女達に、ボクの正体を明かすわけにもいかない。ボクの正体が人間であることを知る【なのは】も答えに困っている様子。すると、そこに【士郎】さん達が現れ、ボクを抱える。
士郎
「【ユーノ】くんのことは俺達に任せてもらおうか。ハハハ」ゴゴゴゴゴ
恭也
「まぁ、もし【ユーノ】が【なのは】達と入りたいって言うなら別だけどナ」ゴゴゴゴゴ
2人は笑っているけど、圧が。ボクは黙って何度も頷き、そのまま男湯の方に入る。
ユーノ
「ふ〜〜、公衆浴場なら入ったことがあるけど、こういった場所は初めてだから新鮮だなぁ」
初めての温泉の気持ちよさに、ついつい気が緩み声を漏らす。
???
「なぁ、お前は自分のやってることが本当に正しいと思っているか?」
ユーノ
「!?」
よかった声は聞かれてなかったようだ。湯気の先に誰かいるようだけど、声色から士郎さん達じゃない。いったい誰だろう?誰かと話してるようだけど。
???
「相手の言葉に甘えて、関係の無い人を巻き込んでまで、それで目的を果たせればそれでいいのか?何も知らなかった人達を、危険に巻き込んでまで……」
ユーノ
「ッ⁉︎」
彼の話してる内容は、まるでボクに問いかけているように感じてしまう。
【なのは】と出会う前に組んだ彼を、巻き込んだ末にボクは見捨ててしまった。
そして今も、これまで魔法のことなんて何も知らなかった彼女を、ボクの目的のためだけに巻き込んでしまっていることに。
ユーノ
「わかってる。これは、ボクが始めてしまったことだ。関係の無い人たちを巻き込み続けてまで果たそうとしているのは、ボク自身のただの自己満足かもしれない。けど、ここで投げ出せば、2度と彼に顔向けできなくなる。だから、ここで立ち止まるわけにはいかないんだ。彼とまた胸を張って会うためにも!」
???
「そうか……その気持ち、忘れるなよ」
決して僕に問いかけているわけじゃないと分かっていながらも、その問いかけに答える。声の主は一言そう言うと、湯気の先に消えていく。
ユーノ
「今の、ボクに聞いてたわけないよね?」
アルフ
「キミかね、うちの子をアレしてくれちゃってるのは…」
温泉から上がると、【アルフ】が何やら客に絡んでいた。恐れていたことが現実に。頭を抑えながら、彼女の背後に近づき、脳天に手刀を落とす。
アルフ
「ギャウン!な、なにすんだい⁉︎」
ソウル(青年)
「それはこっちのセリフだ。連れがとんだ失礼を。どうやら酔って、人違いをしてしまったようだ」
???
「あ、いえ……」
ソウル
「む、お前は……」
なのは
「あの、なにか?」
【アルフ】を半ば強引に、一緒に頭を下げる。まさかの彼女が威嚇していた相手は、こちらと敵対する魔導師の少女だ。その上、周りにいるのは先日やむを得ず接触した彼女の友人達までいる。俺としては余計な接触をしたと思い、横目で【アルフ】を睨む。彼女もバツが悪く縮こまる。
なのは
「あの変なことを聞くかもしれないんですけど、わたし、お兄さんとあったことがありますか?」
アリサ
「あ、それはあたし達も思ったんだけど?」
すずか
「うん……」
ソウル
「いや。俺と君たちとは初対面ですが?それでは自分達はこれで……。そうだ、夜は危険だからあまり出歩かないように」
変身しているとはいえ、3人のうち2人には素顔を見られているためどこでボロを出るかわからない。なんとか誤魔化し、【アルフ】を連れてそそくさと3人から離れる。
ソウル
「まったく、お前は余計なことをしてくれたな。不用意な接触で、【フェイト】にだって迷惑がかかるかもしれないだろ」
アルフ
「く〜ん。すまなかったって。あたしだって、【フェイト】の邪魔になりそうなアイツ等に、釘を刺しておきたかったんだよ〜」
ソウル
「たく……それはともかく、【フェイト】が"ジュエルシード"の反応を掴んで向かっている。お前は彼女と合流しておいてくれ」
アルフ
「ん?【ソウル】はどうするんだい?」
ソウル
「ああ、俺は……」
そう言いながら、旅館の外れの森を静かに睨む。
王士
「キヒヒ……【なのは】達の温泉旅行にはついて行けなかったが、こうして待ち伏せていれば、いずれ【フェイト】との決闘が始まる。そこで【なのは】を助けて、【フェイト】に俺の力を見せつければ、今度こそ2人は俺に夢中に……グフフ……」
漁夫の利を狙い、下卑た笑みを浮かべながら森の中を進む【征騎】。
ソウル
「やれやれ、無駄にでかい魔力と下品な気配をたどって来てみれば、やっぱりお前だったか」
坂を登った途中、【征騎】を見下ろすように、"白狼形態"の【ソウル】が待ち構えていた。そして、姿を人間形態に戻す。
王士
「貴様は、この間の犬っころ!しかもその姿は⁉︎そうか、お前さてはどこかの踏み台の使い魔だな。上手いこと【フェイト】に取り入りやがって!この間のように、返り討ちにしてやるよ!」
勝手に都合の良いように解釈をした【征騎】は、余裕の態度をとる。
ソウル
「この前のは俺も油断をしていた。けど、たとえ品のない格下相手だろうと気を抜いてはいけないって、いい教訓になったよ」
王士
「ッ!この野郎ナメやがって!
【ソウル】のあからさまな挑発に対し、もとからない冷静さをさらに欠き、【征騎】が二刀を抜きながら突撃。
しかし、相変わらずの、お世辞にも二刀流とは言い難きただの振り回しに対し、【ソウル】は徒手空拳で捌きながら、カウンターを入れる。
ソウル
「フッ……ハッ!」
王士
「コノォッ!ナメんじゃねぇ!暴風雷……」
ソウル
「その技……地上では放たせねえよ」
【征騎】は決めにかかるためか、二刀にそれぞれ雷と旋風を巻き起こる。
しかしその技は、【征騎】が逆上して彼との距離を見誤っていたことに加え、【ソウル】が直感でその技が最大の威力を発揮できる距離を見極めたことで技のタイミングを外し、上に晒すことで、【征騎】の技はあらぬ方向へと放たれてしまう。
ソウル
「そこだっ!ハアァァァ!」
王士
「なっ⁉︎ガッ!ゲッ⁉︎ゴッ!」
そのまま【征騎】の腕から剣を叩き落とし、そこへ間髪入れず、身体を浮き上がらせるほどの拳を叩き込む。【征騎】は一時的に意識を飛ばしかけるが、そこへ地に着く暇のない連続のラッシュ。
王士
「デメェ・・ヤッバリ・・マエノゴト・・ネニ・・モッデ……」
ソウル
「言ったはずだ。あれは俺が未熟だっただけ。お前にはなにも感じてなんて・・・無い!」
トドメに顔面へと渾身の一撃を入れる。
【征騎】は痙攣しながら、足だけ残すように地面にめり込む。
それと同時に、向こうで巨大な雷が打ち上がるのだった。
【ソウル】と【征騎】との決着がついた頃、【なのは】と【フェイト】の決着もつき、【フェイト】が彼女にデバイスを突きつけ、【なのは】のデバイスが降参の証にと自ら《ジュエルシード》を【フェイト】へと渡す。
フェイト
「いい子だね。主を守ったんだ」
アルフ
「さっすがアタシのご主人様!」
2人に遅れて、【征騎】を肩に担いだ【ソウル】が現れた。
フェイト
「【ソウル】、なにがあったの?」
ソウル
「なぁに、裏でコソコソしてる奴がいたもんで、ちょっとお灸をな」
遅れた事情を【フェイト】に話しながら、そのまま【征騎】を【なのは】達の方へ放り投げる。
アルフ
「へーーずいぶんと小狡いことを。まぁ、アタシ等にかかれば正面から食い破るだけだがねぇ」
【アルフ】は不敵に笑いながら、目的を果たした3人はそのまま【なのは】達に背を向け去ろうとする。
ユーノ
「待ってくれ!君達はなぜ "ジュエルシード"を集めている⁉︎それは、危険な物なんだぞ!」
【ユーノ】は"ジュエルシード"の危険性を3人へ問う。
アルフ
「おやおや、アタシ等に勝てもしないってのにかい?言ったはずだよ、邪魔するってならガブリっていくよってサ。大方そこに転がってる奴もアンタ達の差金だったりしてね?」
ユーノ
「違う!僕たちは決してそんなことはしない!」
【アルフ】の挑発に食い下がる【ユーノ】。そこへ【ソウル】が割って入る。
ソウル
「まぁ、どうでもいいが、今回はあの温泉でのお前の言葉に免じておいてやるさ」
ユーノ
「温泉?まさか、あの時の……!」
【ユーノ】は温泉で会話をした謎の人物を思い出す。そして今度こそ3人はその場を後にしようとする。
なのは
「待って!名前……名前を教えてほしいの!わたし、【なのは】……【高町 なのは】!」
フェイト
「・・・・・」
【フェイト】は馴れ合いはしないという意思を表して、名乗らず背を向ける。
ソウル
「【なのは】って言ったか?ひとつ忠告しておいてやる。お前に力があっても、やるべきことに対してココロが迷っているようなら俺たちには勝てない。それじゃあな……」
そう言い残し、3人は夜の闇に溶けるように飛び去る。
なのは
「わたしが迷ってる……」
ユーノ
「【なのは】、気にすることないよ。どうせ僕たちを混乱させようとしてるだけさ」
【ユーノ】は深く考えないようにしていたが、あとに残された【なのは】は、【ソウル】の言葉が頭から離れなかった。
To be continude
それは時に避けられない戦い。男は決戦に赴く。
『MagicianHousehusband決戦』
長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。なんとかこれからも応援したくださる方々を楽しませられるように投稿頑張らせてもらいます。これからも応援の方よろしくお願いしますm(_ _)m