飛ばされた世界で彼は、自分を助けた【テスタロッサ】家にそのまま身を寄せることに。
物心ついた時から両親の記憶が無い【一夏】だが、そこで彼は自分の心の奥底で欲していたものを得る。
〜〜プレシア視点〜〜
プレシア
「ただいま〜!」
アリシア
「おっかえり〜!」
リニス
「にゃにゃ〜ん!」
仕事ですっかり遅くなったにも関わらず、私の帰りを待っていてくれていた【アリシア】と【リニス】が出迎えてくれた。
どんなに仕事が忙しくて、疲れても、この子達の顔を見れば疲れなんて吹き飛ぶわ。
一夏
「おかえりなさい、【プレシア】さん」
プレシア
「ただいま、【一夏】君」
【アリシア】と【リニス】に遅れて、先日に私達の家にやって来てくれた、管理外世界から突然飛ばされてやって来た、【織斑 一夏】君が現れる。
一夏
「夕飯、できてますよ」
【一夏】君の案内でリビングへ行くと、そこには、湯気を立てている夕飯が並べられていた。
それも、私の作り置きした出来合いのものではなく、明らかに作り立てのもの。
プレシア
「美味しい……」
アリシア
「うん!ほんとほんと。【一夏】のご飯、美味しくって、たくさん食べれちゃうね!」
リニス
「にゃふにゃふにゃは!」
【アリシア】も【リニス】も、彼の作った食事に舌鼓を打っている。
誰かが作ったものなんて、久しく食べてなかった気がするわ。
アリシア
「あのね、あのねママ!わたしも作るの手伝ったんだよ!」
一夏
「って、お前はつまみ食いしてただけだろうが?」
アリシア
「ぶ〜〜味見だって立派な手伝いですよ〜だ!」
【アリシア】も【一夏】と兄妹のように打ち解けているようでなにより。
まぁ、彼を引き取るって言った時もすぐに受け入れてくれたから問題はなさそうだったけど。
プレシア
「・・・・・」
でも、こうして【アリシア】が楽しそうにしているのを見ると、本来なら私がそうしなくてはいけないはずなのに、仕事を理由にして、彼を元いた世界に帰すという条件を餌にすることで、その役目を彼に押し付けてしまっているのでは無いかと。
一夏
「【プレシア】さん……」
プレシア
「え⁉︎な、なにかしら?」
そんなことを思っていたとき、突然【一夏】君から呼びかけられ、動揺してしまう。
一夏
「俺は、今のこの暮らしを重荷と感じたことなんて、まったくありませんよ」
プレシア
「・・・え?」
私が感じていたことが顔に出ていたのか、あっさり【一夏】君に気付かれていた。
しかし、彼からの返事に私は拍子抜けしてしまう。
一夏
「この世界にいきなり飛ばされて、行く場所も、身寄りの無い俺に手を差し伸べてくれた。それに……」
プレシア
「それに?」
一夏
「俺には生まれついて両親との思い出がありません。もし、俺に両親の記憶があったなら、こういう当たり前の日常があったのかなって。
だから、俺にこの日常を送らせてくれた【プレシア】さんには恩しかないんです」
プレシア
「【一夏】君……」
彼がここまで思ってくれてるなんて。なら私は、少しでも《管理局》との渡りをつけて、彼を無事に地球へ返すために尽力するのが私がやるべきことよね。
☆☆☆
〜〜一夏視点〜〜
週末の休みに、【プレシア】さんと【アリシア】、【リニス】と俺の3人(+1匹)で近くの山へピクニックに出かけた。
もともと俺がこっちに飛ばされる前から2人と1匹の行事であったようだが、最近は、【プレシア】さんの仕事が忙しくて滅多に行くことができていなかったようだが。
アリシア
「本当、【一夏】が来てから、毎日が楽しくって仕方がないよ!」
一夏
「別に俺はなにもしていないんだが?」
アリシア
「ううん。【一夏】が来てくれただけでも、前よりも賑やかになったんだよ。ね、【リニス】?」
リニス
「にゃあ〜ん!」
改めてそう言われると、なんだか照れるな。
アリシア
「もうすぐわたしの誕生日だったんだけど、その前にわたしに弟とも言える新しい家族ができた気分だよ。本当は……」
一夏
「って、お前と俺、どっちが年上だと思ってんだ?」
俺の年齢は、元々の年齢もそうだが、今の見た目は9〜10歳くらい。対して、【アリシア】はまだ4歳。明らかに俺の方が年上。
アリシア
「ぶ〜〜後からうちに来たんだから、【一夏】は弟だよ。
それに、わたしだってそのうちママみたいな、ばいんばいんのナイスバディになるんだからね〜〜!」
いったい何年先の話やら。っと、話の引き合いに出された【プレシア】さんの方を見ると、酷く疲れを見せた表情をしていた。
一夏
「あの、大丈夫ですか、【プレシア】さん?」
プレシア
「あ!ご、ごめんね。だいぶ開発が佳境に入ってきたせいか、忙しさが増して……って、私ったら、こんな日に仕事の話をするなんて……」
一夏
「【プレシア】さん……」
【プレシア】さんはあまり家では仕事の話はしないが、研究者として開発のかなり上の立場の人間らしい。
そのせいか、徐々に家に帰ってくる時間が遅くなっているのだ。それこそ、【アリシア】が寝静まってから帰ってくることもしばしば。
まったく、ブラック企業ではないのかと疑ってしまう。
プレシア
「でも、このプロジェクトが成功すれば、長期休暇が取れるから、そうすれば、地球へ君を送ることができるから」
一夏
「本当に、ありがとうございます……」
こんな素性の知らない俺にここまでしてくれるなんて、【プレシア】さんにはまったく、足を向けて寝れない。
アリシア
「ねえねえ……」
一夏
「ん?どうした、【アリシア】?」
すると、【アリシア】が俺を呼ぶ。
アリシア
「あのね、その時はさ、わたしも【一夏】のいた地球に行ってみたい!」
一夏
「・・・は?」
突然【アリシア】が、自分も地球に行きたいと言い出す。
アリシア
「だって、【一夏】はもう、わたし達の家族なんだからだから。だから、見てみたいんだ、【一夏】の世界をさ。
ね、いいでしょ、ママ?」
プレシア
「ええ、そうね。私も、見てみたいわね」
一夏
「あ……」
家族……。生まれついて両親の記憶の無い俺にとって、元いた世界での家族は【千冬】姉だけ。
もし、俺に【千冬】姉以外の家族がいたのなら、この日常こそが……
なら俺は、この世界での俺の家族を守りたい。
それが、この世界で俺がやるべきことなんだ。
そう思えた。
☆☆☆
あのピクニックから数日後。いつものように、【プレシア】は仕事。【アリシア】と【リニス】はリビングで遊び、【一夏】は現在、掃除をしていた。
一夏
「さて、この部屋か……」
【一夏】はある一室の掃除に取り掛かる。それは、【プレシア】の私室。基本彼女は【一夏】達に仕事の話はせず、職場か私室のみで行う。
一夏
「【プレシア】さん、朝出る時の様子がおかしかったから、少し気になっちまったんだよな」
【プレシア】は自宅を出る時も浮かない顔に、『日程が……』、『安全基準が……』と呟きながら仕事に出て行った様子に、【一夏】は気になっていたのだ。
一夏
「ま、当然か。重要なデータ類は持って帰るはずないしな」
部屋は散らかっておらず、パソコン一台と、数枚の書類のみ。
置かれているパソコンを調べようにも、パスワードが必要なため、開くことが出来ない。
一夏
「ん?気のせいか?一瞬、ブレスレットが光ったような……」
【一夏】が不意に腕を見る。それは、彼の腕にはめられていたブレスレットが光ったように見えたからだ。
アリシア
「【一夏】!」
一夏
「おわっ!どうしたんだ、【アリシア】?」
すると、突然部屋に、【アリシア】が酷く慌てた様子で飛び込んできた。
アリシア
「いいからすぐに来て!」
【アリシア】は、そのまま【一夏】をリビングへと引っ張って行く。
リビングに入ると、【アリシア】は窓の外を指差す。
一夏
「なんだよ、あの光?それに、あの方角は、【プレシア】さんの……」
【アリシア】が指した方角は【プレシア】の職場がある場所。そして、そこから金色の光が溢れ出し、こちらまで迫って来ていたのだ。
アリシア
「【一夏】……」
リニス
『にゃ〜』
一夏
「【アリシア】!俺から離れるな!」
【一夏】は【アリシア】を庇うように抱き寄せる。【リニス】も不安そうな鳴き声をあげながら2人へ歩み寄ろうとした。
一夏
(頼む!せめて、家族だけでも守ってくれ!)
【一夏】はそう強く願う。
次の瞬間、【一夏】の腕にはめられているブレスレットがひときわ強く輝く。
それと同時に、金色の爆発が包み込んだ。
☆☆☆
〜〜プレシア視点〜〜
プレシア
「【アリシア】!【一夏】!」
前任者の杜撰な資料管理。安全基準を完全無視した意図的な改ざんなど言い出せばキリが無い。
そんな中で行われた、依頼元の命令による、一月も早められ実施された、新型駆動炉の実験。
案の定事故が起こり、その規模は、2人のいた場所まで及んでいた。
すぐに自宅に戻り、すぐに2人の姿を探す。
しかし、2人がいた形跡はあれど、2人の姿は無く、 リビングで事切れた【リニス】だけしかいなかった。
プレシア
「ああ……ああああぁ!」
この仕事がひと段落したら【アリシア】に母親らしいことをしようとしていたのに。彼を必ず元の世界に帰すと約束していたのにも関わらず、その約束を果たせず、2人をこんな形で巻き込んでしまった自分の無力さに、ただただ声が枯れるまで涙を流した。
☆☆☆
〜〜一夏視点〜〜
一夏
「ん…ここ・・は……?」
俺が目を覚ますと、見知らぬ町の公園。
たしか、【プレシア】さんの職場で起こった爆発が俺達を襲ったところまでは覚えているが、そこからの記憶が無い。
一夏
「そうだ、【アリシア】は⁉︎」
俺は慌てて【アリシア】を探すが、見つからない。
すると、向こうから通行人らしき人がやって来た。
一夏
「あ、すいません!ここら辺で、金髪の女の子を見かけませんでしたか?」
通行人
「・・・・・」
一夏
「あ、ちょっと!」
しかし、通行人の肩を掴もうとしたが、掴み損なったのか、手はすり抜け、通行人はこちらに目もくれず行ってしまう。
だが、さっきの通行人。こちらを明らかに無視していた訳ではなく、まるで、最初からこっちに気づいていないような様子だった。
不意に自分の身体に違和感を感じ、通行人に伸ばしていた自分の手を見る。
その手は、向こうの道が透けて見えていたのだ。
一夏
「もしかして、周りの人に俺って見えてないのか?」
それは、手だけでなく、全身が透けていた。
まるで、幽霊のように。
To be continude
まさかの本編前の2話目にして、主人公幽霊?
※死んだわけではないかもよ。
次回はいよいよ原典主人公との邂逅。
この作品でも転移者(主人公)と転生者という2つの立場の人間を出そうと思っておりますので、ハーメルンでも応援よろしくお願いします
m(_ _)m
ps.pixivでの投稿が解決したので、こちらも執筆再開しました。