彼は平穏を守りたい 作:失踪常習犯
#1
気がつくと、少年は瓦礫の平原の上にポツンと立ち尽くしていた。辺りを見渡せば、ボロボロになったビル、崩れた民家が目に飛び込んできた。自分が何故ここにいるのか、何故このような惨状の上に立っているのか、記憶が曖昧だ。誰か居ないのか。そう思い、彼はどこへともなく歩き出す。
それは、前触れもなくやってきた。上空には黒い靄のようなものが現れ、中からは異形。街は破壊され、おびただしい程の叫び声の数がこだましていた。人も沢山殺された。恐らく両親も殺されてしまったのだろう、なんて、歩きながら記憶を整理する。
「一体なんなんだよ…これ…」
あちこちを破壊された街を宛もなく歩く。
自分が通っている学校も。
行きつけだったスーパーも。
何もかもがただのコンクリート片と化していた。
両親を殺された悲しみよりも、目の前の光景への絶望感が勝ってしまう。
歩き疲れた少年は、やがて倒れてしまう。
「くそっ…なんで…」
拳を握りしめ、何度も、何度も、地面を殴りつける。
そして、自分の無力さを痛感する。
「誰か…助けてよ…」
思考する程の力もなくなり、少年は涙を流しながら意識を失う。
次に少年が目を覚ましたのは、被害が落ち着いた頃だった。
*
うっすらと差し込んできた光に、ゆっくりと目を開ける。
ここはどこだ。何故ここにいる。
覚醒しきらぬ意識のなか、1人の男に声をかけられた。
「大丈夫だったか?」
身体がビクッ、と反応する。
声の方を向けば、1人の青年がいた。
「君、名前は言えるか?」
「
優しい声音で尋ねられ、答える。
「来栖霞くんか。年齢は?」
「えっと…じゅう…にさい…」
その人は、忍田と名乗った。
その人に聞いた。
貴方は一体何者か。
一体何が起きたのか。
あの黒い靄のようなものは何か。
そしてそこから現れたものはなんだったのか。
彼は答えた。
「私はボーダーという組織の一員だ。黒い靄のようなものは門、そして門から出てきたものを、我々は
更に彼はこう言った。
『奴らは我々が倒した』
倒した、確かにそう言った。
あれに倒す手段などあったのか?
そもそも近界民とはなんだ?
いや、違う。倒す手段などどうでもいい。あれが何だっていい。
もし倒せるなら。
もし日常を守れるなら。
「俺をボーダーに…入れてください」
何よりも力が欲しい。そう思った。
*
あの災害とも呼べる日から、早くも半年程が経った。
街は、驚く程の早さで復興が進んでいた。被害の中心となった地を拠点とし、ボーダー本部が建設された。
そして、晴れてボーダー加入を果たした俺は、今日も今日とて訓練を行っていた。内容は、隊員同士による一対一の戦闘。いち早くトリガーに慣れる事を目的とし、毎日のように行っている。
「ぬあ〜負けた〜!」
そう叫ぶのは、自分より3つ歳上の、太刀川慶という青年。彼も、自分と同じように志願してボーダーに入ったらしい。もっとも、彼の入隊動機は『戦うため』だそうだが。
「おい霞、お前やっぱつえーな!次は勝つからな!」
「悪いけど俺は次も勝つよ、太刀川さん」
模擬戦を終え、お互いに一息つく。
俺達の戦いを見ていた他の隊員も、そんな俺達に駆け寄ってくる。
「2人ともお疲れ様。いい戦いだったよ」
「次、どちらか俺と戦え」
東春秋と風間蒼也。どちらも年齢に差こそあれど、俺と太刀川さんと同時期に入隊した同期であり、大事な仲間である。
東さんは俺より8歳も歳上であり、明るく面倒見もよいので、とても話しやすく信頼している。
風間さんは俺より4つ歳上の、少しクールな性格をしている。少し取っ付き難い所もあるが、根は仲間思いで意外とノリがいい事が分かっている。もちろん風間さんも信頼している。
他にも同時期入隊の人物はいるが、今この場には俺達4人しか居なかった。
「2人ともありがとうございます。でももう12時過ぎてるんで昼ご飯にしませんか?模擬戦はその後ってことで」
「おっ、そうするか。時間はまだあるからな」
俺が提案すると、東さんが乗ってきてくれた。2人も特に異論は無いようだったので、俺達は本部の備え付けの食堂へと向かう。しかし、そこへ忍田さんが現れ、告げる。
「近くでゲートの発生を確認した。君達にはそこへ向かって欲しい。トリオン兵が出てくるようならばそれを撃破し、報告してくれ」
「了解、サクッといってやるか〜。ほら、行こうぜ霞」
「そうだね、行こうか太刀川さん」
太刀川さんはヘラヘラしながら言うが、先頭に於いては真面目である。それを俺は知っている。だから、俺は着いていく。
ここから、俺達の長い、長い戦いが始まった。
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます。
書いてて途中で分からなくなってきましたが、1話目を書き上げることができました。
不定期更新となりますが、何卒よろしくお願いします。
感想、評価も遠慮なくお願いします。お待ちしております。