朝田哲、現在13歳の中学二年生である、がその前世をいつ思い出したか、と聞かれたら初めからと答えるだろう。友と共に米軍基地の賭博場を荒らし、敬愛する師匠に麻雀士…玄人の極意、心意気を習い、オヒキを連れて新宿の雀荘で数々のコンビ技を魅せ、最高…そして最強のライバルと凌ぎを削った、あの人生を。各地方での博打の相手の名前を全員覚えているかは分からないが、どのような打ち手、どのようなイカサマであったかは完璧に覚えていると言い切れる自信がある。勿論、その後のペンネーム『阿佐田哲也』としての執筆活動を忘れた訳ではない。だが、坊や哲の玄人としての人生の色の濃さを知っている者ならば、どうしても作家時代が薄く感じられるだろう。
故に、彼女が3歳の、まだ言語すら覚束ない頃の誕生日プレゼントに望んだものは麻雀牌だった。
雀卓がないのに気がついたのは誕生日当日だった。
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新宿の繁華街から少し裏道に入るとその雀荘がある。
大通りの雀荘と比べると少し型落ちしたタイプの自動卓、外観、内装だが、それ故に近所の老年期の方々には評判が良かった。
「…ツモ。門前、嶺上開花…」
「なっ、嶺上開花?!だが、それじゃあ逆転が出来ねぇなぁ!」
だからこそ、その玄人にはいいカモに見えた。
新宿では、今時珍しい玄人が雀荘を荒らしているという噂が流れていた。
曰く、異様に聴牌速度か早い。
曰く、レートを少し上げた途端に早上がりを見せ、賞金を勝ち逃げしていく。
曰く…と悪評が山ほどあるので全てを記載することはないが、新宿の雀荘からすれば、厄介者の印を押されていた。
「…カンドラ捲りますよ。」
「……!!」
その玄人からすれば、(少々口が悪いが)ボケたおじさんどもなど屁でもないと思った。だからその雀荘へ首を突っ込んだ。
___________そこの常連である、『お嬢哲』の異名を持つ、一部では新宿最強とすら呼ばれている、1人の女子中学生のいる、その雀荘へ。
「なぁ…?!カンドラがモロ乗りだと…?!」
「…ドラ4。跳満、キッチリ逆転。これで勝負アリ、ですね。」
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その身が女性のそれになってしまったとしても、坊や哲…お嬢哲の『したい事』とは、強者との闘牌だった。印南、ドサ健といった強者と麻雀を打ちたいと彼女は何度も思った。肌のヒリつき、喉がカラカラになりつつも相手の技を見抜き、返し技で応戦するあの独特の感覚がどうしようもなく、好きだった。しかし、彼女が身を置く環境では裏にはいけない、かといって表の雀荘に彼ら程の強者がいるはずもなく。
彼女は燻っていた。
「貴女、麻雀部に入ってみない?!」
後に、『お嬢哲』のライバルとなる、地元の中学校の同級生、そしてその麻雀部トップである、大星淡に勧誘を受けるまでは。
—————————————時代は1年後へ…
白糸台高校、女子麻雀部の部長の弘前菫の指揮による、新入生の自己紹介会が開かれていた。白糸台は全国トップのため、退部者も数多く存在してしまうが、それでも顔合わせぐらいならするべきだろうと配慮された結果、その重荷は部長へと回った。
「____あー、ありがとう。次、頼んだ。」
人数が多い為か、菫の顔は少し怪訝としている。が、次の者の台詞によって血管が浮き出ているかのような、キレた顔になった。
「はーい!高校100年生の大星淡でーっす☆!よろしく!えっと、私、私よりも弱い人の言うことは聞きたくないから、そのつもりでいてね!」
勿論、菫も彼女の強さは知っている。何せ、去年の中学全国大会優勝者だ。その強さも含めて、今の台詞を勝手に総評した。
____コレは、ないな。
淡のブランドヘアーを無言で叩く。
「痛ったー?!部長ー!?いきなり何するんですか?!」
「……次、頼んだ。」
「幾ら何でもスルーはナシですよ!!」
菫は視点を横にそらし、次に並んでいる新入生を見た。
身長は自分よりも低め、恐らく165センチメートルぐらいか。肩幅は小さめ、おもちも小さめ、良い言い方をすれば、女性らしい。悪く言えば全体的にちっちゃい。そんな感じだった。
だが、彼女の自信に満ちた顔は、となりの大星となんら遜色なかった。
「○○中学から来ました、朝田哲です。」
______ここに、白糸台過去最強とも揶揄される、チーム虎姫のメンバーが揃った。
ここのお嬢哲は勿論能力を持ってます。でも、使わなくても基本天運を持ってるので関係ないかも…。続編あったら能力の話でも書いてみようかね。