坊や哲がお嬢哲になった話   作:ユックリ殿

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哲っちゃんの過去編です。



3話目

ナルコレプシー、日常生活をおくっていると突然寝てしまうという難病…今は治療法が確立されているらしいが、当時の医療では対応出来なかった病気だ。その時の『俺』はその名前すら知らなかった。が、俺には運が無かったらしい。その難病にかかっちまった。

 

文庫本を書くのは嫌いではなかった。寧ろ、ある程度長生きした『俺』からしたら、作家だった時代の方が長かった。

しかし、『坊や哲』の原点は何処までいっても作家としての机上ではなく、玄人としての卓上だったらしい。

気がついたら、あの技はどういう仕組みだったか、あの玄人は今何処で食費代を稼いでるのか。考えてもどうしようもないことを考えてしまっていた。また、『阿佐田哲也』が始めて出版した本のタイトルは「麻雀放浪記」だ。コレをママのバーで書いてる時には、オヒキのダンチから「いい顔してるっスよぉ〜」と言われてしまった。拳骨で返すのは少し酷だと思ったから、あまり茶化すなよ、と釘を刺しておいた。まぁ、その次の日も戯言を述べていたので拳骨を叩き込んでいたが。

 

 

つまり、だ。

『俺』には、未練があった。

 

たとえ玄人人生の目標だった、ドサ健からの勝利を達成したとしても。難病で玄人人生に終止符が打たれたとしても。

 

まだ、麻雀で生きていたかった。と。

 

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俺は別に仏教徒だった訳じゃない。まぁ、飯を食う時には頂きます、やらご馳走さま程度なら言ってはいたが、毎日寺やら神社やらへ赴き、お祈りを続けていたかどうかと聞かれれば間違いなくしていなかったと言う。

 

故に、『私』が『私』を自覚するまで、輪廻転成を信じていなかった。

 

 

自分を自覚したとき、私はとてつもない歓喜に包まれた。

 

また牌を触れる。また卓を囲える。また肌のひりつく勝負が出来る。

 

また、麻雀を打てる。

 

幸いなことに、私の家庭は恵まれていた。私の3歳の誕生日の時に麻雀牌を買ってと強請り、4桁を超えてしまった牌を買ってこられた時は驚いた。…黒の練り牌だったことを、ここに記載しておく。

 

私は一人っ子だったので、基本的には三麻を家族で嗜んでいた。が、両親はそこまで麻雀に興味がなく、精々麻雀会日本チャンプの名前を知っている程度だった。強さを期待する方が酷というものだ。よって、私は両親に、雀荘に連れて行ってくれ、とせがんだ。この世界では、麻雀の人気はベースボール、サッカーと遜色ない程だった。だから、私のような当時7歳のガキンチョでも、雀荘は寛容にも入店させてくれた。

 

奇妙なことに、私の生まれた土地は新宿だった。

 

 

 

 

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学内では帰宅部のエースを貫いた。『自分』の原点はどうしようもなく麻雀であったが、やはり半生を作家に費やしたからだろう。私は本を読むのが好きだった。『俺』が死んだ後の、大人気と評される本を読破していくのは楽しかった。主人公がイギリスの魔法学校へと通う長編小説だったり、アメリカの小さな州に住む兄妹が不思議な小屋によって、本の世界へ入り込む小説など。それによってか、私は他人よりも勉強できた節があった。

 

思えば、私はこの頃、麻雀で食い扶持を繋ぐのを諦めていたと思う。玄人は自由気ままだ。勝つも負けるも、全てその本人の実力次第で決まる。負けが嵩むと当然のように有り金が底を尽き、焦りが生まれるかもしれない。だが、玄人は何にも縛られなかった。自分が打ちたい雀荘へ赴き、好きな時間にフラリと現れる。そこに自分の意思以外に介入するものはない。負けがこんだとしても、勝ちに勝ったとしても、それは自身の責任。そういう意味では、玄人は何者にも縛られない、自由なものだ。

だが、プロは違う。そのプロ活動に、チームの意思、はたまたその企業の意思が介入することが度々発生する。(決して公にはならないが。)それは、「勝たなければならない。」、「負けてはならない」

といった縛りではない。「このように発言してはならない」といった、自己が蔑ろにされてしまう縛られ方だ。

そうまでして、プロ業界に入りたいか、と聞かれると。正直首を縦に振ることはなかっただろう。

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『はやりんの!ハヤヤッ☆超分かりやすい麻雀の説明書☆』

 

中学三年生の半ばに差しかかる頃、私はその本を借りた。

 

 

正直、苦笑いを浮かべるしかなかった。表紙に胸の膨らみが主張しすぎた女性(アイドルのような格好をしている。)がポーズを決めている。私は当時、テレビを見るような、というより、麻雀の大会を見るようなタイプではなかったので、この表紙の女性を知らなかった。

だがその理論的、且つ正確、更に分かりやすい説明に私は舌を巻いた。あぁ、この筆者はプロ擬き(木根崎)みたいなのではない、本当に麻雀が好きなのだろうな、と前置き、後書き、そして何よりも解説の仕方から感じ取れた。

 

 

席に座って黙々と熟読している私は、他の人から見れば奇怪なものだっただろう。事実、私の周りには誰も近寄ってこなかった。

 

 

「おっ!!その本ちょっと痛いはやりんのヤツだよね!貴女麻雀部に居ないよね?!今からでも麻雀部入部しても損はないよ!私は大星淡!貴女は?」

 

目の前でマシンガントークを広げた、強者の香りを漂わせる、ブロンドヘアーの輩が声を掛けてくるまでは。

 

 

 




次はぁ…どうしましょうねぇ…

淡ちゃんの話は番外編に回すとして…


気ままに書きます(思考停止)
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