まだ四月の中旬、肌寒い気温が観測されている中、照と菫はチーム虎姫に加入した期待の新人の2人の打ち筋について、語り合っていた。
たった半荘1回だけだったが、そこは昨年度全国優勝者。少ない情報でもそこから推測する能力は2人とも身につけていた。
「それで、どっちの方が脅威に見えた?」
麻雀の団体戦は、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の5人がそれぞれ半荘を2回ずつ行う。何となくではあるが役割も決まっており、先鋒はこれより続く戦いの勢いをつけるため、火力の高い選手が、次鋒と副将は先鋒、中堅で稼いだ点を大将に繋げられる選手が、中堅は真ん中であるが故に悪い流れの場合はそれを断ち切り、良い流れの場合はそれを助長するために、守備が硬く、点を稼げる選手を。そして、大将は負けている時はドカンと稼げ、勝ってる時は手堅く、つまりエースが入る。
チーム虎姫内での役割としては、まず宮永照が大将。そして弘瀬菫が次鋒。これは2人が入部した時からコレのため、あまりズラしたくはないなと思っていた。つまりは『慣れてる』からだった。
次に、中堅に渋谷尭深が入る。彼女の能力である『一巡目で捨てた牌がオーラスに配牌時に戻ってくる』というものだった。つまり、一巡目で捨てる牌を字牌のみにすれば字一色や大三元、大四喜和といった役満が狙える強烈な能力。それまでは降りたり、自風のみで上がったりして場を流し、オーラスで一気に役満で上がる。そのため、彼女は点数を稼ぎやすい選手だった…というより、負けが混みにくいといった方がいいだろうか。
彼女はオーラスに役満を和了れるので流れを作りやすい。だから、彼女は中堅という役割がよくあっていた。
そして最後に、先鋒と副将が残る。
菫の「どちらが脅威か」という質問には、淡と哲、どちらの方が先鋒に相応しいか。という意味が込められていた。
「んー…単純に面倒くさかったのは、淡かなぁ。」
「やはりか…確かに、あのダブリーと5向聴は強い。なす術がなく、うまくツモれない間にさっさとツモってしまう。あれの対処法は未だに思いつかないぞ、私は。」
「…うん、やっぱり淡が先鋒かな。」
「まぁそうなるか…でも、私は哲のヤツからお前のような気配を感じたぞ。」
「えっ?私みたいって?」
「あぁ、お前の照魔鏡で覗かれている時の気配だったよ、アレは。」
菫は、哲から淡とは違う、言わば『不気味さ』を感じ取った。また、それは照も同じこと。だが、照の感想は少し違った。
「…覗かれてる、というよりも…観察されてる、の方が感覚的にあってる気がする…。」
「そうか?私には、違いが分からなかったが…」
______________________
東一局9巡目、ダブリーを仕掛けてきた淡への安牌である一筒を切り出した。照はその能力故に和了ることを半ば諦めていた。彼女は一局目を捨てることで、相手の特性を理解出来る。なので、彼女は一局目は和了り牌を確保しつつ相手の観察につとめ、二局目から怒涛の攻めを繰り広げていく。それは、彼女の必勝法だ。
その局は、淡が軽く満貫をツモ和了りを決め、1000点棒を2本差し出すと、その『照魔鏡』で、淡と哲の打ち筋を覗き込んだ。
この時、淡と哲は後ろから見られている感覚を味わった。少し酷な表現をするが、全身を舐め回されてるかのような、そんな感じだ。
淡は思わず後ろを振り返ってしまうが、気のせいか…と流してしまう。
が、哲。これは気のせいではないと勘と経験で看破した。手早く未知の対戦相手の特性を掴まなくてはならないため、この視線は菫と照、どちらかの能力によるものだと断定した。そして、先程の捨て牌を鑑みるに、照のものだと思った。菫の捨て牌は、淡の『絶対安全圏』により、手作りに四苦八苦しているように見えた。だが、照の捨て牌は右往左往しているように感じだ。序盤にしては中張牌が多く見受けられたのと、それでチャンタ狙いかと思うとキーとなる么九牌の1筒の対子落とし。淡がツモ和了り、この視線が感じられて、その行動の意味を悟った。
そこからは全日本チャンプ、宮永照の独壇場だった。断么を4巡目にして哲から和了り、そのまま東四局の2本場まで照が3連続でツモ和了った。
そして、その2本場。
(…読めねぇ。この宮永照の能力は、『相手を覗く』のと、『連続でツモ和了れる』か?まだ情報が足りねぇ…だが、点棒が…!)
現在、哲の点棒は15000を少し下回る程。この調子で行くと、いつか跳満や倍満をツモられた時にどうしようもなくなる。早いとこ見切りをつけねば、彼女の未来はない。
そして、8巡目
(張った…平和、断么、一盃口、ドラ1、赤ドラ1の満貫手。既に満貫は確定している。リーチはしない…ん?)
哲は、上家に座ってまだ一度も和了っていない菫が、やけに此方を見ているように感じた。冷静で少し冷たくもあるがその目の奥は勝気に溢れた、熱意の視線だった。
(…聴牌に気づいたのか?中々いい勘してるじゃねぇか…)
そう思いつつも、手牌に余った不要牌を強打する。
「ロン!平和、一通、ドラ1!7700!」
「なっ?!」
哲は遂に4桁となった点棒を眺め、焦りを感じた。
まず、自分の小説に赤バー付いてるのをみてビックリしました。
皆さんありがとうございます。
未だに哲ちゃん和了れてないという衝撃の真実。でもイメージ的な話だけど哲ちゃんは初めはどんな技使ってるか分からずに負けるイメージがあります。その後、「そういうことか!」つって返し技を見せつけるのがカッコいいんですよねぇ。
あと、ここの哲ちゃんの運は大体池田ァ!ぐらいを想定してます。低すぎるかな…
そして、なによりも誤字報告ホント有り難いです…