お待たせしました。
しかしまぁ何というか…短いな、相変わらず。
半荘が経過し、点棒が10000を切ってしまったが、難敵宮永照と弘瀬菫の『技』が読めず、得意のポーカーフェイスで顔に出さずにいたが哲は焦っていた。哲の『技』の弱点だが、最初に対局相手の『技』を観察し、見破る必要がある。それを言い換えるならば、『一度自身がその技を喰らわなければならない』。相手が役満を一度に叩き出せるタイプだったり、『技』が見極められ難いものには相性が悪いのはまぎれもない真実だ。
そういった意味では、宮永照、弘瀬菫の『技』は相性がそこまで良くない。
読者の皆さんは知っているだろうが、解説しておこう。宮永照の『技』は『連続和了する度に点数が高くなっていく』。彼女の持つ、天運とソレが加われば、その連続和了を止められる者は少ない。それに、天運と書いたが…それだけかと言われると間違いなく違う。彼女の海底すら見通せる程の深い読みが、他人の和了を止め、彼女の連続和了を促進している。
弘瀬菫に備わるのは『他家の不要牌で聴牌することが出来る。』それは必然的に他家よりも早い段階で聴牌しなくてはならないが、彼女の培った経験がものをいう。その和了は弓道の構えの様。狙った牌を確実に射止める。
南一局、半荘の為後半に差し掛かる。
(流れが悪い…振り込んじまった後だからだろうが、この感じ…淡か…)
哲の親番だったが、その手はバラバラ。字牌が5枚、いずれも対子はなし。混全帯幺九でも狙うかと思うが、萬子の順子が少しあるのでどうしようもない。
それもその筈、この場面で淡が温存していた『絶対安全圏』を使用していた。
「もう許さないからねー!センパイが強いのは分かったけど、私のは最強無敵だから!覚悟しときなよ!」
南風戦、1人を除く3人で、乱戦が始まろうとしていた。
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南2局13巡目。淡が親番である。
あいも変わらず良い配牌が来ずに四苦八苦している哲を尻目に、淡は断么清一色ドラ2の倍満手を聴牌していた。
哲に負けてから、淡は基本的に『ダブリーをする』力をつかわないようにしていた。理由としては、哲の前でそれを使うと手のひらで踊らされてしまうからだ。哲の『技』を理解してる淡からしたら、彼女の前で同じ技を使うのはカモと同じと悟っている。なので、普段は対策のしようがない『絶対安全圏』のみを使用している。また、真の強者はその力をひけらかさないと哲を見て思った。その姿は淡に少なからず影響を与えた。尚、東1局で『技』を使っていたのは、哲が他家2人の様子見をすることは分かっていたので使用出来ると踏んでいた為だ。
(もうこの巡目だし、2人はもう聴牌してるよねー…何とかこの手、上がりたいんだけどー、自摸れると楽だなー!)
そう楽観的に考えながら自摸ってきた牌は北、当然
それはまさに菫の狙い所。
「和了!白、混全帯幺九で、
「えっーーー?!」
「…どうしたんですか淡、まだその点数なら逆転も可能でしょうに。」
「そうじゃないんだってテツ!これ見てよ!倍満上がれると思ったのにー、3900で流されちゃったんだよ!不要牌で待ってるなんて菫のイジワル!」
「はぁ…。先輩に対する口調というものがあってだな…。それに、まだ対局中だ。他家に手牌を見せてはいけないだろうが。」
「礼儀は大事だよ、淡。」
「……ちぇー。」
後輩を指導しながら、先程から妙に口を開かないもう片方の後輩を眺める照。だが、その表情は焦りを感じなかった。照の『照魔鏡』をもってすれば、幾ら哲がポーカーフェイスが上手くてもその内面を覗き込むことが出来る。彼女が感じていたのは、どうしようもない焦りだった。が、それを今は感じない。
何かが起こる。照はその優れた勘で察知した。
(…そうか、淡が手牌を見せてくれたお陰で分かったぜ…菫先輩、アンタの『技』は…!)
(『不要牌で和了る』…だ!)
次回から逆転していきたいと思っています。
半年後ぐらいになっても、エタったりはさせたくないとは思ってます。