柱島泊地、現在では瀬戸内海西部の
停泊地だが実質鎮守府となんら変わらない、本部の必死さが伺える。ここの主な任務は警備と敵本隊からはぐれた駆逐などを倒すだけ、横須賀鎮守府からみれば羨ましいという状況。
だが腐っても停泊地、遠征途中の艦隊を迎えたりしなければならない。そして場所が場所なため民間人の船を護衛しなければならない、それに出撃もあまりしないため練度も上がらないやるのは週五回の鎮守府同士の演習だけ。
しかし一つ言いたいことがある、ここは鎮守府でもあり停泊地でもあるのだ。そのため過剰な戦力は置くことはできないはずだ、はずなのに。
「艦娘が多いんだ」
「提督、無駄口を叩くのなら手を動かしてください。ここの鎮守府は出撃が少ない分、泊地としての業務が多いのですから。こちら追加の書類です」
執務室の両開きのドアが開き、正規空母の加賀が追加の書類と共に辛辣な言葉を投げてくる。確かに出撃が少ない分泊地としての仕事が多い、俺自身仕事は嫌いというわけでもない。しかしそれを踏まえても明らかに艦娘の数が多いのだ。
まず理由として、こちらに停泊した別鎮守府の艦娘からおすそわけで開発資材などをくれたり、本部から支給された使うことがないであろう資源が多くなるのだ、なぜだか。せいぜい使うとしても燃料や弾薬程度なためボーキサイトや鋼材は倉庫に貯まる一方。
どうせこのまま肥やしにするなら建造か開発して減らしたほうがいいなと思い、俺が着任した前からいる艦娘に建造か開発の任務を命じた。いつも護衛などをしている彼女たちにはいい息抜きでもあるから、丁度良かった…はずなのに。
「初めての建造で一航戦であるお前が出てくるとは思わなかったぞ」
「そうですか、ありがとうございます。さっさと手を動かしてください、そちらの書類が終わりましたら此方の停泊許可書に判子を」
冷たい、加賀ってこんな冷たいのか?以前演習で他の鎮守府に居た加賀はこんな性格じゃなかったぞ…
「はいはい停泊許可書ね、どこの艦娘だ?」
「舞鶴鎮守府からです」
「舞鶴?随分遠いな、目的地は?」
「仙台への艦娘の輸送のようです、大規模作戦に向けて戦力を集中することらしいです」
「ふ~ん、滞在期間は三日ね」
内容を軽く見て許可の判子を押す。停泊許可書を加賀に渡し残りの書類を終わらせるため手を動かす。
「よし、これで今日の分は終わり」
「お疲れ様です」
最後の書類にサインを付け、背伸びをする。長い間同じ作業ですっかり固まっていた体からポキポキと小気味のいい音がする。
加賀が書類をまとめ、脇に抱える。
「ん"ん"~加賀、今何時?」
「
「そんな時間か食堂開いてるかな」
執務室から出て食堂へ向かう、窓から外を見ると艦娘たちが散歩をしたり談笑をしたりして過ごしている。
「ホント、戦闘は殆どないのに数は多いな」
もちろんここには居ない艦娘もいるがそれに比べても数が多い、駆逐はともかく軽空母もいるのはどう言うことなのか。
「総督の意向です、文句を言っても仕方ないかと」
「そうだけど、お陰でウチは無駄飯ぐらいの役立たずだぞ」
「では提督が前線に出てみては?」
「嫌だ、誰がでるもんか面倒くさい」
とりとめのない会話を加賀としながら食堂へと足を向ける俺、港の方からは訓練を行っているであろう砲声が聞こえてくる。
戦闘こそ無いが海域の警備は我が泊地の主な任務である、艦隊からはぐれた深海棲艦がふらりとこんな所に現れる、なんてこともある。時たま戦艦が一隻はぐれる事もあるらしい、あくまで噂だが。
そういうイレギュラーのため訓練や演習は欠かせない、確か今日は主に駆逐艦達の訓練だっけか。
「提督~!」
おっと前の通路をこっちに走ってくるのは吹雪!
「磯波です!」
間違えた。吹雪型、特に吹雪と磯波は正面から見ると完全に見分けがつかない。
そんなことよりも。
「どうした?確か磯波は今日は特になかったが」
「いえ、今からお食事ですか?私も今からお昼に行こうと思ってましたので」
「おお、そうか。加賀も別にいいよな」
「はい」
「おし、じゃあ行くか」
「やったぁ!有難うございます!」
磯波を加えた三人で食堂に向かう。中には他の艦娘達が暇を潰している。
「ん~何もないって素敵」「けど何していいかわからないよね」「ここ最近少し冷えてきたからもう一枚着ようかしら」「うむ、儂は脚が寒くてたまらん」「いや一枚どうこうの問題じゃないんじゃ...」「ね~今度街いかない?新しいネイルが欲しいの」「いいですわよ」
さて、なににしようかなっと
「加賀は何にする?」
「ではカツ丼で」
「ヘヴィーだね...磯波は?」
「え~と、きつねうどん!」
「俺は...生姜焼定食にするか」
それぞれ注文する、因みに我が鎮守府に間宮はいない。間宮はいないのである。
「悲しいなぁ」
ひとり呟く、どうやら二人に聞かれたようで
「どうしたんですか?」
「提督、気持ち悪いですよ」
「ああいや、っておい加賀!ひどくないかそれ!」
つづく?