『この本によれば、転生者である織斑秋十により、正史とは異なる未来になり破壊者ディケイドの力を得た織斑一夏、いや、門矢一夏。彼は黒き破壊者の力をもつ門矢零と共に世界と世界を股にかける。門矢一夏の所属する1-Aにまたもや転校生が。おっと、皆さんにはまだ先の話、でしたね』
◇◇◇
「あーなんだ、今日は転校生を紹介する。毎回なんでこのクラスかは各自で勝手に考えとけ」
零のめんどくさそうな言葉にクラス中が唖然とする。
「失礼します」
「…………」
教室の扉が開き、全員が黙る。
それもそのはず、片方が男だからだ。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。みなさんよろしくお願いします」
シャルルは笑顔で自己紹介をし、一礼する。これが、王子様系というのだろうか。一夏はこの笑みを胡散臭いと思いながら見ていた。
「お、男…?」
どこからかそんな声が聞こえる。
「はい。こちらに同じ境遇の方がいると聞いて転入しました」
シャルルの仕草はまるで王子様のように芝居掛かっていて、それが一夏の不信感を募らせる。しかしながら、クラスの女子たちはそれに興奮し、席を立ち上がる始末だ。
一向に冷めない興奮に千冬が喝を入れ黙らせ、銀色の髪をした少女の挨拶の番になったが、
「………」
黙りこくるばかり。仕方なく千冬が口を開く。
「…挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
「ここではそう呼ぶな。もはや、私は教官ではない。私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました」
ラウラは手を身体の横につけ、足と踵を軍人のように伸ばす。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
それ以降は言葉が続かず、ラウラは口を開かなかった。
「あの、以上ですか?」
「以上だ」
真耶が優しく聞くものの、取り付く暇がない。
零も一夏も興味をなくしたのか、視線を本に向けている。そんな中、
バシンーーーー
音が鳴り響いた。ラウラが秋十に平手打ちをしたのだ。まともな訓練を受けておらず、学園に来てからも特になにもしてない秋十は、ラウラの平手打ちで吹っ飛ばされ、一夏の方向に。一夏はそれを冷静にはたき落した。
「ぶへっ」
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
「その前に人がいる方向に飛ばすんじゃねぇ」
一夏の訴えは無視された。
◇◇◇
男子更衣室。ISを纏うためのスーツを着るための場所だ。いつも女子がここにいくまでに足止めをしてくるので、この部屋にいるのは1分も満たない。しかし、今回は一夏が秋十をガードベンドに使ったので、女子はそちらに行っている。
さて、この部屋にいるのは一夏とシャルルだけ。一夏としては薄っぺらい笑みを浮かべていたシャルルと一緒に居たくないものの、着替えをいつものように早着替えをしてさっさと出るという気でもない。
そんな中、
「シャルル・デュノアはいるか?」
更衣室の扉を開けたのは零。
「いますけど…」
シャルルがおずおずと出てくる。まだ、着替えを始めておらず、制服のままだ。
「ちょっと話がある。一夏、先に出てろ。デュノアが遅れたら俺が呼び止めたことを言え」
「わかった」
一夏とて、この場に残る理由はゆっくりするぐらいなので外にでる。
そこで、零はシャルルに向き直る。
「お前、なんで男装してるんだ?」
「ッ!?だ、男装って…僕は男、ですよ」
「嘘をつくな。歩き方、重心、癖は女のものだ」
「…たまたまですよ。癖なんて人それぞれですし」
「大方、篠ノ之は気づいてるぞ。授業に出たら、凰も気づくだろうな。…今のうちに話しておけ」
「………」
零の言葉に無言のまま、応じるシャルル。痺れを切らした零は一枚の資料をシャルルの前にだす。
「IS学園は生徒の身代調査をきちんとする。ただ、お前の身代調査だけ不自然のように抜けてる部分があったり、関係がおかしいところがある。これが通るはずはない。
インターネットって便利だよな。知りたい情報がすぐでてくる。なあ、教えてくれよ、本当のお前を。お前自身の口で。そうじゃないと全部失うぞ」
「ッ!全部、お見通しなんですね…」
そこからシャルルは真実を話し出した。
自分が女であり、本名がシャルロット・デュノアであること。自らの出生、学園に来た理由etc…
「はあ、まあ、出来るだけのことはやってやる。今日は体調が悪いということで休んでおけ」
「わかりました…」
シャルロットを保健室で休ませ、零はこれからの算段を考えながら、デュノア社の電話番号をスマホに打ち込んだ。
その頃、一夏は真耶に叩きのめされていた。
「強すぎ…」
「これでも、元国家代表ですからね。最近は織斑先生と門矢先生と訓練してますからねぇ」
遠い目をした真耶に一夏は単純にすげぇと思った。
◇◇◇
デュノア社との交渉は五時間以上に渡った。デュノア社の社長、アルベール・デュノアはシャルロットを守るため、IS学園に専用機の情報収集という建前で送り込んだらしい。そのまま、本国にいたら自身の後妻が放った暗殺者に殺されるところだった。男として入れたのは、そちらのほうがすぐに入学できるからだ。
さらにデュノア社自身も業績が落ちており、シャルロットの学費は確保している。その後、どうなるか分からないと。零としては思っていたより大ごとで頭を抱えた。
考えた末、デュノア社を倒産させ、アルベールは雲隠れし、その間だけシャルロットを門矢の一時的な養女にする。ほとぼりが冷めた後に、シャルロットをアルベールの娘の戸籍に戻すということにした。
いくら、世界の破壊者とはいえ、役割としての立場はしっかりとしている。IS学園の教師となれば、これほどしっかりしている立場はない。
◇◇◇
「ありがとね、先生」
「礼はいらん」
シャルロット・デュノア、否、門矢シャルロットになった彼女は零に向日葵のような笑みを浮かべる。
「ふふ、これからよろしくね、お父さん♪」
「…勘弁してくれ」
シャルロットの獲物を狙い定める目に零は額に手を当てた。
「あら♪面白そうなことになってるじゃない♪」
二人の頭を飛ぶ、小さな蝙蝠。零はうげ、という顔でそれを見る。
「…久しぶりだな、キバーラ」
「久しぶりね♪面白そうだから来ちゃったわ♪よろしく、お嬢さん♪」
「う、うん。よろしく…」
いきなり人の言葉を話す蝙蝠にシャルロットはたどたどしく返事をする。
「もう、終わっただろ、さっさと帰れ」
「い〜や〜よ。この子面白そうだし、この子についていくわ♪」
「勝手にしろ」
さらにめんどくさいな、と思いながら零は目を背けた。
…作者が好きなヒロインはシャルロットと楯無さんと本音です。
さて、ディケイドといえばキバーラ。登場させてみました。