∀月♪日
やった。俺は自由だ。もう上官ガチ推し勢の人形の「はぁ…………尊い♥」も聞かなくていいし、「この前は指揮官の服選び手伝ってあげてさー」とか根も葉もない嘘を聞いて聴覚異常を疑う必要もない。俺は、自由だ。
――という訳でこの喜びを読み返して心の安寧を得るため、俺は逃亡しながら日記をつづることにした。俺が誰か? そんなものは俺がもし変死体が見つかった時、この日記でも証拠物件として押収しておけば良い。少なからず推し量ることが出来るさ、大事なのはこの自由を表現し、俺が自由である実感を最大効率で味わうことだぜ。
取り敢えず俺が警戒するべきは――――そうだな、盗聴器と盗聴カメラの存在だ。
俺は確かに一番危険なメンツをちゃんとジャックダニエルでデロデロに酔わせて、酔い潰れている内に荷物を持って出口へ直行した。これにはある人形の協力があったのだがそれはさておく。
恐れるべきはあの数少ない情報で、酔いが冷めた後に、的確に俺の位置を推察出来るであろう人形が一人いるということ。
奴の名はモーゼルカラビーナアハトウントノインツィヒクルツ。お嬢様っぽいフワフワした雰囲気とフワフワしたコート、ちょっと幼い女の子全開の言動は一部の指揮官――――というか俺の知り合いが大変惚気けていたが、うちのカラビーナは一味違うぜ。悪かったな俺は逃げる、あの女ほど計算づくと適当が混ざってキングボンビーみたいになってるやつ中々居ねえからな。
∀月∵日
カラビーナがもう特定してきやがった。クソッタレ、テメエはニュータイプかよ。
恐ろしいことに俺が逃げた理由を「労働環境のブラック」だとか思ってやがる、違うわどアホ。お前だよお前、確かに労働環境が良いかと言えばそりゃ違うがお前らの精神的ストレスの方が114514倍重いわ。
忙しいから詳しくは明日な。
そう言えばコイツ俺と一緒に逃げるとか言い出したんだけどヤバイよな、逃げなきゃならんぞい。
∀月’日
俺の腕に抱きついて寝るな。お前が俺に触れてるところだけがピンポイントで鳥肌立ってたわ。
それはそうと、朝からカラビーナがメソメソしていた。放って置くと面倒なことになったトラウマがフラッシュバックして話しかけたのだが、それが全ての敗因だったという言い切っていい。
野郎、「もしかして原因は私達にも有ったのかもしれません」とか言い出した。そうだよむしろ全部お前らだよ、寝ぼけてんのか。
――とはいっても、此処だけ見ても「え、カラビーナちゃん良い子じゃんお前幸せにしろよ?」なんてすっとぼけた感想を抱く馬鹿が出てくる。実体験で震えてもらおう。
俺はさ、その日珍しくカリーナの作戦報告書を手伝ってたんだ。そしたらさ、カラビーナがすぐに俺の隣りに座って手伝ってくれて、控えめに寄ってきた■■P■5も来てほのぼのデスマーチ作成レースをしてたのよね?
そしたらカラビーナがさあ、いやアイツさあホントさあ…………「指揮官さん、昨日のデートは楽しかったですね?」って言ったんだよ。■■P■5は即座に「あ、察し()」ってなって話を逸らそうとしてくれたんだけどまあ遅かったよね。
アイツはカリーナに得意げに俺がアイスのロッキーロードを頼んで、アイツがチョップドチョコレートを頼んだりして、お互いに一口ずつ食べさせ合っただとか、観覧車に一緒に乗って「いつかこの景色一杯に人の営みが溢れている世界に出来たら良いな」とか俺が言った、とかその後雨が降ったから俺がコートを掛けて庇いながら走ってくれただとか言ってたのよ。
さてさてもうお察しいただけたかな? 俺はカラビーナとデートなんかしてねえ。確かにロッキーロードは好きだ、だが俺は観覧車でそんなエモエモイケメンゼリフを口から吐き散らせる糖分含有量だった覚えはないし、コートを奪って腕を引っ張っていく側だ。だって俺が寒いし。
これがカラビーナの恐ろしい所だ。最初はホワホワしてる癖に仕事も出来るから、性分に合うと思っていい扱いをしていたがそれは大いなるミス。
俺を勝手に美化して尊みを感じた挙げ句、何故か自分と付き合ってると思ってるフシが在る。
コーヒーは奢ってやった、けど誰にでもするよそれは。
手と手が当たったら普通に謝るさ、女だから俺みたいなオッサンだと下手したら騒がれるし気まずい。
酒を飲んだらそりゃ愚痴も溢れるだろ、お前にだけじゃない。
でもそれでコイツは「私と指揮官さんは付き合ってるんですよね?」と真顔で言ってきた、だから俺は逃げたわけだ。
正直ドン引きだったが、「何か問題が有ったなら全部直します!(直すとは言っていない)」とか抜かすから、変に逆撫でしないように慰めてやる他なかった。
ちなみに料理は超上手い。
今食後に書いてるんだけど、何か食ってからというもののねむい。これじゃうしになっちまいそうだが、ねむくてたまらんのでもうねる。にっきはあしたにきたいして
何にも考えてないので勢いでメンヘラ人形と恐ろしい設定が生えてきます。