「お前は━━━━━━━━」
最下階に降り立ったマイ。最下階の部屋の扉を開けると、そこには大きなバトルフィールドと彼女が以前見たことある人物が待ち構えるように立っていた。
黒いスーツに身を包む、この男の名は━━━━━━━━
「サカキ...」
自分の名前を知られていることに、この男、サカキは少し驚いたが、その驚きは彼のカリスマ性をただただ引き立てるだけになってしまった。
しかし、マイはソレに怖気ずに部屋の中へと進んでいく。勿論、ラフとネギも同じだ。
「さて、と。キミのことは耳に入っている。サンダー捕獲作戦の時に入った邪魔者...あの後一度はサンダーを逃してしまったが、つい先日捕まえたところだ。」
「...聞いてないんだけど?」
マイの言葉と共に、ネギは"みだれづき"をサカキ目掛けて仕掛ける。しかし、ネギの攻撃はあっさりと受け止められた。片手で受け止められたネギは空中へと放り投げられ、"れいとうビーム"を喰らってしまい呆気なく倒れてしまった。
「っ、戻れネギ!」
「あっさりやられてしまったな。たしかに素早い攻撃だが威力が足りなかったかな?カモネギの耐久ではこの"れいとうビーム"は受けきれないようだったな。」
余裕のあるサカキは不敵な笑みを浮かべ、今フィールドに出ている彼のポケモン、サイドンをボールへと戻す。
部屋に入った時にはサカキ以外誰もいなかったはずだが、あの会話から攻撃への一瞬でポケモンを出したということだろうか。
「さて、君は知っているようだが改めて自己紹介をしよう。君が知っているのはトキワジムジムリーダーとしての私だろうが、今の私はロケット団
彼の言葉を耳に入れつつ、ネギをボールに戻したマイは、相手をしっかりと見定めながら次のポケモンを選ぶのだった。落ち着く為に深呼吸をしながら。
━━━━━━━━地面使いのジムリーダー...弱点を突けるタイプならいるけど
「ラフ、いける?」
この離れた距離、ボールに収めてある2匹の水ポケモンでは素早さで劣ってしまう可能性がある。それよりは、今出ているラフの方が素早さという点で見れば2匹より勝っているので、勝ち筋はあると考えた。
しかし、ラフからは返事が来ない。横を見ると、いつの間にかラフは倒れていた。否、氷漬けにされていた。
いつの間に、と呟く前に、マイは背後の殺気に背中を撫でられる感覚に襲われ、咄嗟にその場から地面に飛び込むようにして離れた。
「っ、パルシェン...」
マイの背後にいたのはパルシェンだった。彼女の目の隅に確認できるサカキの表情から察するに、このパルシェンは彼のものだろう。
マイは咄嗟にこのパルシェンに弱点を突ける技を覚えてるポケモンを出した。というより、本能的に一番
「先生"かみなり"!」
先生がボールから放たれると同時に、"かみなり"を撃った。空中から真下に向けて放たれたその攻撃に、出処が分からないパルシェンは焦っていた。
「篭れ」
しかし、やはり最強のジムリーダーが主であるということはアドバンテージであったようだ。彼の咄嗟の判断によってパルシェンは大ダメージを受けずにすんだのだった。しかし、効果は抜群。ダメージは受けている。マイは攻撃の手を緩めずに更に指示を飛ばす。
「休ませずに"かみなり"!」
「"れいとうビーム"で相殺しろ!」
空中で2つの技が衝突する。高威力の2つの技はお互いのエネルギーを打ち消し合い、互いに消滅した。
マイはそんなことには目もくれず、パルシェンを倒すために連続で"かみなり"を指示する。サカキも先刻と同じく"れいとうビーム"で相殺するよう指示をする。この攻撃もまた先刻と同じように相殺されてしまった。
この流れを壊すべく、マイは指示を変更、否、増援を出すことにした。
「トリ、"ドリルくちばし"をパルシェンに」
"かみなり"を指示した後に、呟くようにしてボールの中のトリに指示を出す。''かみなり"と"れいとうビーム"がぶつかり合うその直前、トリをフィールドへと送り込んだ。予めその構えを取っていたトリは、カゴの外へと放たれた瞬間真っ直ぐにパルシェン目掛けて飛んで行く。
"ドリルくちばし"はパルシェンに見事命中、したのだが、あまり効いていないようだった。
「殻で挟んで"れいとうビーム"」
「先生"かみなり"!」
トリはパルシェンの殻によって捕えられてしまったが、その隙にマイは"かみなり"を指示。その攻撃は命中し、パルシェンに大ダメージを負わせることに成功した。だが、パルシェンの"れいとうビーム"を至近距離で喰らってしまったトリはここで戦闘不能になってしまう。
「オニドリルを犠牲に大ダメージを与えたか。そんな調子で進んでいては、私の手持ちを全て倒すことは出来ないぞ?」
余裕の笑みを見せるサカキに、少し焦り始めているマイ。しかし、動かずにいることが危険だと思ったマイはまたもや"かみなり"を指示、サカキも先刻と同じ指示を出す。しかし、"かみなり"は外れ、サカキの足元へと落ちてしまい、"れいとうビーム"は天井の一部を凍らせて終わった。
「っ、」
"かみなり"が落ちた振動でサカキはよろけて地面に手を着いてしまった。この隙にマイは"かみなり"を指示。その攻撃は命中し、パルシェンを瀕死へと追い込んだのだった。
「まずは一匹...」
サカキのポケモンをとりあえず一匹倒して安心していたマイ。だが、ソレは慢心だった。
「なっ━━━━━━━━」
安心したのもつかの間、先生の体が宙に浮く。先生が元いた位置にはダグトリオが地面から顔を出している。恐らく、コイツが犯人だろう。
━━━━━━━━いつの間に?
「目の前に集中するあまり、こちらに気づいていなかったようだな。」
そう言うサカキの足元には彼のハイパーボールが埋まっている。恐らく、先程手を着いた時にボールを埋めて地中へと出したのだろう。
そんなことどうでもいい、と思った瞬間、部屋全体が、否、建物全体が揺れた。その犯人はサイドン、サカキのサイドンだった。
サイドンの"じしん"によって建物が揺れ、マイは体勢を崩してしまった。さらに、先刻の"れいとうビーム"で凍らされ、脆くなっていた天井の一部が先生の頭上へと崩れ落ちてきた。
なんとか状況を打破しようとマイが指示を出そうとした時、彼女の足元が揺れ、彼女もまた先生と同じように宙に浮かされてしまった。宙に浮かされた時にマイの体には響くように痛みが染み渡った。恐らく、"あなをほる"攻撃を食らってしまったのだろう。先生も同じく。
「かはっ...」
地面に叩きつけられると同時に、肺の中の空気が一気に外へと放出された。横に目をやると、先生は二体同時"じしん"をリンチ状態で喰らっていた。アレではこれ以上の戦闘は望めないだろう。マイは先生をボールに戻し、立ち上がろうとした。のだが、足が動かない。
━━━━━━━━折れたか
この最悪的な状況に対して、他人事のように思っている彼女は残っているボールに手をかける。
一体は自分の足にするため、もう一体は戦闘用として出すために。
戦闘可能ポケモン残り二体━━━━━━━━