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「...退院、ですか。」
「ええ、足の調子も良くなりましたから。一週間ぐらいは走れませんが、歩くことは可能だと思います。お大事に」
診察室を後にしたマイは、受け付けに座っていたオーキドに医師からの言葉を伝え、病院をあとにした。
ロケット団との激戦を繰り広げたマイは、足の怪我のため、しばらくの間トキワシティの病院に入院していたのだった。その間彼女のポケモン達は、オーキド博士の元へ預けられていた。オーキド曰く、キングラーの暴走とそれを抑えようとするカモネギは手に負えなかったらしい。
「ポケモンリーグ前に退院出来て良かったの。」
「ええ、わざわざありがとうございます。」
マイとオーキドは、マサラタウンへと移動するため、飛行ポケモンを出そうとボールを取り出すが、後ろから声を掛けられる。
声を掛けられたのはオーキドのようだった。声を掛けたこの伯父様曰く、最近トキワの森で今まで見たことの無い凶暴なポケモン達が現れて、住民達を困らせているらしい。
「で、ワシならなんとか出来るのではないか、とな。」
「ええ、こちらにあのポケモンの権威、マサラタウンのオーキド博士がいらしたのが幸運です...どうにか出来ませんでしょうか?」
ふむ、とオーキドは頷き、マイの顔を横目で見た。マイはオーキドの目線に気づき、顔を逸らすが時すでに遅し、肩を掴まれてしまった。
「彼女なら力になれるでしょう。マイ、行きなさい。」
保護者か、とマイはツッコミたくなったが、記憶喪失であると認知されている今、マイの実質的な保護者はオーキドであることを実感した。よくよく考えれば、入院費用等もオーキドに支払って貰っているため、マイは彼に頭が上がらないのだ。
「...分かりました」
オーキドは病院傍のベンチに腰を掛けマイを見送り、マイは伯父様のあとを追って、トキワの森へと向かうのだった。
「では、お願いします。」
トキワの森へと連れてこられたマイは、所々傷を負っている青年や成人男性達の間をくぐり抜け、奥へ奥へと進んでいく。これらの男性達は、恐らく凶暴なポケモン達を抑えきれずに反撃されたのだろう。力量もないのによくやるな、とマイは零しかけたが、なんとか喉で引き留めた。
━━━━━━━━一々倒すのは面倒だな...
「トリ、ラフを乗せて飛んで、ラフは上空から"ねむりごな"」
ボールから2体のポケモンをボールから放つと、2匹はマイの指示通りに動く。10秒も経てば、彼女等は上空からの攻撃を開始する。
広範囲の"ねむりごな"は空爆のようにして地上へと降り掛かる。この細かい爆弾は、地上にいるポケモン達殆どに命中した。
「さて、あとは捕獲かな。ネギ、先導お願い。」
ボールから放たれたネギは、久々のマイの指示に張り切っているようだ。任されたとでも言わんばかりに葱をくるっと回して応える。
ネギと共に奥へ奥へと進んでいくマイは、本来この森にいないポケモンや、寝ているのにも関わらず凶暴な雰囲気を醸し出しているポケモン達を捕獲していく。
捕獲の際には、ネギやカニミソの攻撃でダメージをある程度与えていく。ダメージを受けて目を覚ますか覚まさないかのところでマイがボールを投げる。
そうして捕まえたポケモンは10種類を超え、数は40匹を捕まえた時点で数えるのを諦めた。大量のモンスターボールを先生の体に埋め込む形で持たせ、森中を散策するマイ。
「トリ、ラフ、ネギ、どう?」
マイと共に、他にポケモンがいないかどうか散策している3匹に、取りこぼしはないか聞く。返事は3匹揃って無いらしい。これで充分だろう、とマイは3匹をボールに戻し、先生と共に森を後にした。
「一通り捕まえました。これで本来の生態系になると思います。」
見せびらかすように大量のボールを住民達へと差し出した。住民から讃えられ、少し居ずらくなったマイだが、ボールを置いてスグに離れるという訳にはいかなかった。住民曰く、凶暴なポケモン達を手にできる程の実力がある人間はこの街には居ないらしい。ということで、これらのポケモンはマイが所持することとなった。
「...と、いうわけなので博士、これお願いします」
「うむ、ちょっと待て。」
面倒事を押し付けて本人はその場から離れようとマイは考えたのだが、そうは問屋が卸さない。
「...私では扱えきれないのでお譲りします」
「無茶を言うな無茶を。ただでさえお前のキングラーで疲れておるんじゃ。これ以上は体が持たん。」
マイは差し出したボールを渋々戻し、これらのボールを覗き込んだ。ボールの中身は今にも暴れんとするポケモンが、こちらを睨んでいる。
「...悪に染まったポケモンは正しい主に育てられれば素直になるという研究結果がある。お前さんなら元に戻せると思うのじゃが。」
━━━━━━━━違う、面倒事は嫌なだけなんだ
マイの思いはオーキドには届いていないようで、オーキドはなんとかマイを説得しようとしている。マイはなんとか面倒事から逃れようとしているが、さらに追い討ちをかけられることとなった。腰のボールが勝手に開き、ネギが出てきたのだ。そしてネギはマイの足元へと歩み寄り、真っ直ぐとした目でマイを見つめる。
「...預かれと?」
何となくネギの真意に気づいたマイだったが、念の為確認する。ネギはマイの問いに頷いて答えた。マイはあまり気乗りしないが、ネギの気持ちに負けたようだ。
「分かった、預る...」
預かることにする、と言いかけたマイは、背後にいた先生を凝視してしまった。彼に預けていたボールの幾つかは、彼の身を離れ、ボトボトと地に落ちた。その際にあるボールの開閉スイッチが地面に当たり、その中に収められていたポケモンが解き放たれた。
「先生ぇ!?」
放たれたのはケンタロス。ケンタロスはボールから出た瞬間、ベトベトン目掛けて"たいあたり"を仕掛けた。しかし、その攻撃はベトベトンのヘドロで出来たどこか液体らしさのある固体の体に去なされる形で失敗した。
━━━━━━━━コイツ、何食わぬ顔してやがる...!
出会った時のマイペースさを感じながら、マイは腰のボールからカニミソを出す。カニミソはボールから放たれるやいなや、ケンタロスの角を左の鋏で掴んだ。カニミソの左手によって掴まれたケンタロスは、そのまま脚を地から離してしまう。
「そのまま"クラブハンマー"!」
空いた右手でケンタロスの顔を殴りつけるカニミソ。カニミソの攻撃に、空中で避けきれなかったケンタロスは大ダメージを負ってしまうが、すぐさま反撃の姿勢をとる。
「"みだれづき"」
しかし、ネギの速攻で追い討ちを掛けられ、ケンタロスはダウンした。地面に落ちたケンタロスのボールを拾い上げ、倒れたケンタロスをボールに戻すマイ。
さて、と呟いてマイは先生に預けているボールを引き取ろうとした。しかし、その瞬間、先生の持っていたモンスターボールは全て先生によって振り落とされた。その拍子に、またもや数匹ボールから放たれた。
「"あやしいひかり"...!」
先生を叱ろうと顔を上げたマイだったが、先生の様子を見てスグに何が起こったか察した。ケンタロスがボールから出た時に出たポケモンは、ケンタロスだけではなかったのだ、と。正解だと言うように、ゴルバットが空中を泳ぐように浮遊している。
オーキドの身を案じたマイはオーキドの方を振り向くが、余計なお世話だったようで、自分のポケモンで対処していた。
先生をボールに戻したマイは、目の前にいる凶暴なポケモン達との戦闘、もとい教育を始める。
「ネギ、カニミソ...いくよ」