今回から2章の始まりとなります
1/23 誤字報告ありがとうございます( _ _)
vsサンドパン 『不穏な旅立ち』
「"はなびらのまい"!」
ナゾノクサがくるりとその場で回ると、幾つもの巨大な花弁がナゾノクサから放たれる。花弁達は相手のカイロスを囲い込み、動きを制限した。
「花を"きりさく"んだ!」
相手のトレーナーは花弁を"きりさく"ように指示。しかし、攻撃と対象の数が釣り合っていないようで、処理が追いつかないカイロスは続けざまにダメージを受けてしまった。
「カイロス!!」
カイロスが片膝を着いたところで花弁が斬られたり焼け焦げたりして勝負は強制終了される。カイロスを使ったトレーナーは、相手トレーナーの元へ走りアドバイスを求めた。求められたトレーナーは、自分の考えを相手に伝え、ナゾノクサをボールへと戻し休ませる。
「ライ、ネギ、ありがと」
勝負を終わらせたポケモンを褒めたのはマイ。前回のポケモンリーグで予選敗退したが、実力はトップレベルだったポケモントレーナーだ。
彼女は今、ジムリーダー無き町トキワシティでポケモンバトルをしている。
━━━━━━━━力量は全体的に上がってきたけど、街を守れるほどじゃないな...
勝負を終え、ベンチに腰を掛けながらそう感じたマイ。彼女がこの街でポケモンバトルをしている理由は、街のポケモントレーナーの力量を上げるためだ。2年前、トキワの森に凶暴なポケモン達が溢れかえった際にこの街の人間は処理を渋っていたらしい。聞けば凶暴なポケモンに対抗できるほどの力量を持ったトレーナーがいなかったそうだ。それを聞いたマイは、1年半程前からトキワシティを拠点として活動するようになったのだ。
「ん?どうしたライ」
ぼぉっとしていると、彼女の新たな手持ち、ライチュウことライがマイの元へ歩み寄ってきた。ライの後ろにはポケモントレーナーが立っている。マイに挑戦するつもりのようだ。
マイはベンチから立ち上がり、ライチュウと共に開けた場所へと挑戦者を誘導する。ライチュウは移動中に軽く体を動かしており、戦闘する気満々だった。開けた場所へやってくると、ライチュウはスグに戦闘の構えを取る。選択肢を無くしたマイは、挑戦者に話し掛ける。
「私はこのライチュウで戦うけど、貴方は?」
「でんきタイプ相手ならじめんタイプ!行けっ!サンドパン!!」
挑戦者はサンドパンを繰り出した。トレーナーもサンドパンもやる気満々、準備万端のようだった。マイの方も勿論準備万端のようで、勝負を開始する。
「先攻どうぞ。」
「うし、じゃあ"じしん"!」
挑戦者の先制攻撃で勝負が幕を開ける。攻撃は"じしん"、ライチュウには効果抜群で尚且つ高威力の技だ。しかし、マイは落ち着いて対処する。
「"でんこうせっか"」
ライチュウは電光石火の速さでサンドパンの懐へと突っ込んだ。"じしん"のダメージは多少受けてしまったが、それと同等以下のダメージをサンドパンは受け、後ろへと吹っ飛びかける。しかし、ライチュウがそれを許さず、その細長い尻尾でサンドパンの体を掴んだ。
「"みだれひっかき"で隙作って逃げろ!!」
「"メガトンパンチ"...って、早い」
挑戦者が指示を飛ばす、よりも先にライチュウは"メガトンパンチ"を連続でサンドパンに叩き込んでいた。マイの指示の「メ」という単語を聞いただけで行動に移し、相手に次の行動を悟られる前に攻めたのだ。
━━━━━━━━一方的な勝負は避けたいんだけどな...
勝負はほぼ決したようで、マイは反省点を感じる余裕が出来た。フィールドを見ると、ライチュウは既にサンドパンを離しており、サンドパンはヘトヘトの状態で座り込んでいた。
「戻れサンドパン...ありがとうございました。」
声を掛ける間もなく挑戦者はポケモンセンターへと走って行く。やってしまったという後悔に包まれるマイだったが、胸を張ってコチラへやってきた。あまりにも堂々としていて怒る気力も失せたマイは、遊びに出掛けた手持ちのポケモンを待つことにした。
「ビー、こっち」
数分もしないうちにマイの新たな手持ち、ビードルがマイの元へと寄ってきた。ビードルは眠たそうにしており、マイの膝に乗るとスグに寝てしまった。
━━━━━━━━いつもなら五月蝿いんだけどな
いつもより静かなビードルに寂しさを感じながら、マイは気紛れにオーキド研究所へと行くことにした。理由といえば、単純に暇だからである。
「オーキド研究所、行くよ。」
トレーナーの気紛れに付き合わされるポケモン達だったが、文句を言うものはいなかった。一匹を除いて、だが。
「リュウは残る?」
暴れるボールを抑え、マイは中に入っているポケモンに質問をした。中に入っているミニリュウは、その問いに首を縦に振って答えた。
━━━━━━━━研究所居たくないんだろなぁ
研究所に預けているポケモン達を思い出し、マイはミニリュウの意見に納得するのだった。そしてマイは、このミニリュウを預けられそうな場所へと頼みに行くのだった。
「そういうことなら構わないよ!マイさんの頼みならお易い御用さ!」
「それは良かった...お願いします」
マイはトキワシティ市長ナスタ宅へとやって来ていた。ミニリュウを預かってもらおうと交渉しに来たのだが、あっさり了承して貰えた。その後、彼の甥に当たるミツルと少し話してトキワシティを後にした。
トリに掴まれどのくらい経っただろうか、トリの全力疾走のお陰で案外早く着いた。研究所の敷地内へ入ると、真っ先にスリーパーがマイに抱きつこうと飛び交ってきた。マイはそれを片脚を後ろへズラして回避、ライチュウの"メガトンパンチ"を叩き込ませることで少しの間動きを封じた。
「ライ、遊んでていいよ。」
倒れたスリーパーを指差し、マイはライチュウにそう告げると研究所の中へと入った。入る際に、その他の手持ちも外へ放した。そのうちカモネギとビードル、ナゾノクサはマイに付いてきた。
研究所屋内に入ると、オーキド博士が机に突っ伏していた。何やら考え事をしているようだったが、マイの存在に気付くとスグに反応してくれた。
「ちょうど良かった。連絡しようと思っとったところじゃ。」
「どうかしたんですか?」
「実は、レッドが行方不明になっておっての...さっきピカだけが帰ってきたんじゃ。ボロボロでな。」
「っ、ピカはどこに?」
「レッドを探しに出たよ。麦わら帽子の少年が来ての、知り合いらしいから一緒にな。」
「麦わら帽子の少年...?と、とりあえず私も探しに行きます。先生とカニミソのボール用意しといてください」
「ん?ベトベトンならブルーに貸したんじゃないのか?」
へ?と素っ頓狂な声を出してしまうマイ。自分のポケモンを他人に貸した覚えなどない。ましてや自身のポケモンで最もレベルを、だ。
「じゃあ代わりにホーリルを...」
ブルーの行動に疑問を覚えたが、本人に問いただすより先にレッドの方が大事なことだ。次にレベルの高いサイドンを研究所の中から探してみると、外で巨大な爆発が起きた。急いで外へ出てみると敷地内の一部では大量のポケモンが倒れている。
その爆発の中心にはキングラーとライチュウがいがみ合っている。そしてその付近にはケンタロスを初めとしたマイの主力達が倒れている。恐らく、彼等2体の喧嘩を止めに入ったのだが返り討ちにあったのだろう。そしてゴローニャ達イシツブテ系統は自爆をして止めようとした...しかし、本人達には効かず、止めに入ったポケモンや野次馬していたポケモンにはダメージが入ってしまった、と。
「...最っ悪だ」
なぜこのタイミングで問題が起きるのか、マイはこの怒りを2体にぶつけたかったが仕方ない。早くレッドを見つけなければいけないのだ。
「倒れてないのは...!」
倒れていないポケモン、というよりダメージを受けていないポケモンを探してみると、マイと共に研究所に入った三体と喧嘩をしている2体と力量が低いのが数匹...ではなかった。敷地の隅で倒れているスリーパーもいた。
「...みんな、行くよ。」
状況を把握している三体は頷きボールへと入る。喧嘩している二体に関してはマイに一蹴りされ、オーキドから渡されたボールに入れられた。
「博士、レッドが最後にどこへ行ったか分かりますか?」
「わからん...この挑戦状には何も書かれておらん。」
そう言ってオーキドはレッド宛の挑戦状をマイに渡した。差出人は志覇。
━━━━━━━━志覇...シバ?
「シバ」というトレーナーの名前にマイは心当たりがあった。マイの前世、その記憶によればカントー地方の四天王の一人、ジムリーダーをも越える実力者の一人だ。
━━━━━━━━R団幹部の件もある...四天王が悪になりうる可能性も捨てきれない
「リッパー起きて、とりあえず北方面に"テレポート"して、今すぐ!」
挑戦状を博士に返したマイはスリーパーを蹴り起こした。起されたスリーパーは状況をよく飲み込めていなかったが、マイのどこか焦った表情に押され"テレポート"をする体勢に入った。
━━━━━━━━レッド...!
目を瞑り、しっかりとスリーパーに捕まったマイは力強く彼の名前を心の中で叫んだ。
しかし、彼には届かない━━━━━━━━