マイちゃんの義手についてですが、今は長袖シャツと手袋で誤魔化しています。このことを知っているのはその場に居合わせた人間とポケモン達のみです。
今回から段落下げを導入しました。以前よりも見やすくなっていると思います。
「タマムシシティ...来たのは2年ぶりかな」
夜の蒼が深く染まった頃、マイはタマムシシティへとやって来ていた。カツラ曰く、レッドが見つかったそうで、マイはカツラとは別ルートでタマムシシティへと移動してきたのだ。といっても、カツラが連絡するよりも早く、マイはグレンタウンを後にしていたのだが。
やって来たのはいいものも、辺りには誰もおらずレッドがどこにいるのか分からない。
「ライ、人が多いとこ分かる?」
スリーパーの"テレポート"で探すことも考えたが、それよりもライチュウの尻尾のレーダーで人が多い場所を探す方が早いと考えた。ライチュウは尻尾の先をプラグのように地面に挿し、タマムシシティで人口密度が多い場所を特定する。
ライチュウは尻尾を地面から離すと、街の方を指差した。
「リッパー"テレポート"、街中にね。」
ライチュウをボールへと戻すと、スリーパーの肩に跨ってマイは瞬間移動する。転移先は街中だ。
街中へと移動すると、誰かと誰かが戦闘をしているところのようだった。ビルの屋上から見た限りでは、片方はあのイエローのようだった。
「押されてるな...コラッタとドードーがボロボロだ。ネギ、ビーを連れて相手を見つけて、ビーは"いとをはいて"拘束。GO!」
カモネギと、進化したコクーンを上から送ったマイは、イエローが今手を焼いている"ほねブーメラン"を止めるべくカイリキーと共に地上へと飛び降りた。
下へ行くにつれて"いやなおと"が耳を刺激する。ライチュウをボールから出して"10万ボルト"の電撃を誰もいない場所へと放ち音を相殺した。
「受け止めて」
カイリキーはイエローの前に立ち塞がると、綺麗な曲線を描いている"ほねブーメラン"を片手でキャッチした。
イエローは突然の助っ人に驚きを見せたが、誰だかが分かると緊張の糸が途切れたように足の力が抜け倒れてしまった。
「っと、大丈夫?」
「すいません...」
イエローの腕を掴み、肩を貸してなんとか立たせた。マイはイエローのポケモン達をボールへと戻させ、カモネギとコクーンを待つことにした。フラフラのイエローをどこで休ませようかと場所を探していると、カモネギが一人の男と三匹のポケモンを引き摺ってやってきた。ポケモンはペルシアン、パラス、カラカラだ。
「ん、ピカ」
さらにもう一匹、イエローが預かっているというレッドのピカチュウがこちらへと走ってきた。ピカチュウは拘束された男を見ると、放電を始める。さらに、ボールに入れたばかりのドードーとコラッタが出せと暴れ始めた。
「...ネギ、気絶させた?」
その問いにカモネギは首を横に振って答えた。ならいいか、とマイは2匹を外へと解放する。
解放された2匹は、ピカチュウから離れた廃ビルの元へと駆け寄り、コラッタはビルを削り、ドードーはそのビル片を蹴り上げる。
「ピカの電撃が理科系の男にダメージを与えてないってことは、絶縁スーツ辺りか。ビー、糸を離して」
コクーンに糸を離させると、マイは彼らの行動を見送った。イエローを傍の芝生に寝かせると、遠くから岩を引き摺る音が聞こえてきた。
そちらの方角を見ると、イワークがのそのそと移動してきた。イワークの背には誰か乗っているようだった。
「久し振りだな、マイ。」
「タケシ」
「私もいるわよ!」
「カスミ」
イワークに乗ってきたのは、ニビジムジムリーダータケシ。さらにハナダジムジムリーダーのカスミも、スターミーに乗ってやって来ていた。
さらに遅れてクサイハナを連れたタマムシジムジムリーダーのエリカも、そしてカツラもやって来た。
「初めまして、タマムシジムリーダーのエリカと言います。オーキド博士からお話は伺っております、私たち『正義のジムリーダーズ』と敵は同じ、仲間です。」
エリカはマイの緊張を解くように握手を求める。マイはそれを断わる理由などなく、握手に応じた。
マイは握手を終えると、地べたに座り込んでピカチュウ達の勝負を観ることにした。といっても、もう終わっていたようで幾つものビル片が磁石となって男に付いていた。あまりの重さに理科系の男は気絶したようだった。
ジムリーダー達は何やら話し込んでいるようだったが、マイは混ざらなかった。というより、混ざりにいけなかった。それよりもすべきことがあると、マイの体がそう言ったからだ。
「ネギ、カーリィ、構え」
マイはカモネギとカイリキーに戦闘態勢を取るよう指示した。何かがいる、それはカモネギも感じ取っているようで辺りを見回して警戒している。
「な、理科系の男の体が!?」
ジムリーダー達が何やら驚いている。咄嗟に振り向くと、理科系の男の体が浮き上がっていた。彼の周囲には黒い霧が漂っており、それが無理矢理男を宙へ持ち上げているようだった。さらに霧は男の首を締めるようにして動く。
ジムリーダー達は各々のポケモンで男を取り押さえようとするが、それよりも早くマイのカイリキーが動いた。しかし、黒い霧に阻まれ、男の体を逃してしまった。
「"みずでっぽう"!」
「"メガトンパンチ"!」
「"きりさく"!"メガトンパンチ"!」
しかし、カスミのオムナイトとタケシのゴローンは攻撃技を用いて霧を破り、男の体をがっちりと掴んだ。ワンテンポ遅れて、マイのカモネギとカイリキーも同じく男の体を掴む。引き下ろそうと4匹は試みるも、霧が正体を現してそれを阻止しようとする。
「あれは、ゴース!」
「ポケモンだと分かれば話は早い。熱風圧で吹き飛ばす!ガーディ!」
カツラは皆に下がるように指示し、ガーディに火炎攻撃を指示した。ガーディの火炎は曲線を描きつつゴース目掛けて飛んでいく。
曲線の描く通り道の傍、マイは街路樹の影にポケモンがいることに気づいた。しかしこの距離で、今動けるコクーンの"いとをはく"で間に合うのか、一瞬思考が止まってしまった。
「いけない!木の影にポケモンが!」
他のジムリーダーもスグに気づいたようだった。マイは気を持ち直して、カモネギに指示を出そうとする。しかしその必要は無かったようで、視界の端に動くトレーナーが見えた。
イエローだった。イエローは釣竿を巧みに操ってピカチュウを木のそばへと放ち、なんとか野生ポケモン、キャタピーを救出した。
「ナイスピカ!」
━━━━━━━━ボロボロの体でよく動けたな
マイはそう感じたが、それはジムリーダー達も同じ。各々感嘆の言葉を漏らすのだった。
マイはポケモン達をボールへと戻し、ふぅっと息を漏らした。イエローに話し掛けるジムリーダー達を横目に、マイはコクーンに"いとをはく"を指示。理科系の男にまた面倒事を起こされては面倒だからだ。
━━━━━━━━ゴースはどこだ?
先刻吹き飛ばされたゴースをマイは探し始める。ガス状なのだから遠くに吹き飛ばされていてもおかしくはないが、確実に倒しておいた方がいいだろう。辺りの草むらを捜索しようと戦闘をしていないポケモンをボールから出そうとする。
「なっ」
しかし、マイの体は浮いた。否、飛ばされた。"テレポート"をする時と似た感覚、恐らく念の力だろう。
「ホーリル!」
さっとサイドンをボールから出して、受け止めさせるマイ。正面を振り向くと、理科系の男がまたもやゴースに操られていた。吹き飛ばされたと思われたゴースは、実際は傍に隠れていたのだった。
マイはカモネギをボールから出し、ゴースに"つつく"を指示した。しかし、念の力で向かい風になっているカモネギは思うように進めない。それはジムリーダー達も同じことだった。
「相手は霧状のポケモンだ!核を打て!」
そんな時、どこからともなく声が飛んできた。さらに、それと同じくストライクも飛んできて、ゴースを"きりさ"いた。ゴースは綺麗に4等分され、力なく地面に倒れた。
「霧は吹き飛ばしたり引き裂くよりも、全体を統率している核を撃ち抜く。そうすれば復活を阻止できる。」
「「「グリーン!」」」
ゴースを倒したのはグリーンだった。グリーン曰く、このゴースは四天王の一人、霊使いのキクコの差し金らしい。グリーンは2年前、キクコと一戦交えているらしく、攻撃パターンが同じだったらしい。
この後マイは知ったことだが、この理科系の男はレッドを偽ってピカに近づいたらしい。ピカはレッドと同じ匂いのこの男にまんまと騙され、危うく連れ去られるところだったようだ。カツラのガーディの良く利く鼻を使ったところ、男がレッドの匂いを入手したのはオツキミ山だと目星がついたそうだ。
「...ネギ、どうした?」
隣にいたカモネギの不自然さにマイは気づいた。深い感銘を受けた様子だった。思い返す限り、そんな瞬間があったとすればストライクの"きりさく"だろうか。ポケモンリーグで一度打ち合ったはずだが何か違ったのだろうか、マイは頭を悩ませる。
━━━━━━━━ゴースに"きりさく"...?
答えは単純、初歩的な事だった。ゴーストタイプであるゴースにノーマルタイプの"きりさく"が効いている、それにカモネギは感慨に浸っているのだ。
マイはその絡繰りを聞こうとグリーンに歩み寄るが、グリーンはイエローと共にどこかへ飛び立とうとしているところだった。
「どこ行くの?」
「修行をつけてもらいます!グリーンさんに!」
イエローは元気に答えた。ボロボロな姿とは打って変わってやる気満々の姿だった。
マイはそっか、と答え、グリーンに同行の許可を貰おうとする。グリーンは素っ気なく許可を出し、リザードンに乗って高く飛び立った。
マイはカモネギの足に掴まり、淡い闇の広がる夜空へと飛び立つのだった。