〜ニビシティ〜
ニビシティへと着いたマイ達は、早速ジムへと挑戦しにニビジムへと向かう。彼女のポケモン、ネギとラフはやる気満々のようだ。
「人多っ...」
ニビジムの中へと入ったマイは驚いた。人の多さに。ゲームとの形式の違いに。
マイはジムの壁に貼ってあるジムのルールについての紙を見つけて読み上げた。
「4つのブロックに分けられて、そのブロックでバトルを行いジムリーダーへの挑戦権を手に入れる。対戦相手はジムトレーナー達。」
なるほど、とマイは呟いて受付を済ませた。
「Cブロック...まだまだ先『次、24番 マイさん』うっそーん...」
予想外にもスグに順番が回ってきた。ソレはジムトレーナーが強いからなのか、それとも挑戦者が弱いからなのか...
ともかく、マイはリングの上へと上がっていった。
『開始!』
開始の合図が出される。相手トレーナーは筋肉質の男性、使うポケモンは岩タイプのゴローンだった。対して、マイが使うのは新入りのラフ。
「初陣、行くよ」
その言葉に体を縦に振って頷くラフだったが、相手のゴローンを見て後退りしてしまった。無理もないか、とマイは感じた。ラフを捕まえた道路には、そこまでポケモンは見かけられなかった。恐らくポケモン自体少なかったのだろう。さらに、こんな大きなポケモンも見たことがなかったのだろう。
だけど、とマイは口を開ける。
「この程度でビビってたら、コレからの旅はやってらんない。」
これからの旅━━━━━━━━マイは、いや男はゲームの知識しかない。しかし、この世界がそのゲーム通りに進む訳では無い。現に、ジムの形式が違うのだ。R団が活動しているという確証もないし、ミュウツーが作られているとも限らない。それならば大きな事件は起こらないだろう。だが、それ以上の事件が起きる可能性もあるのだ。
そんな中、自分が、自分たちが己の身すら守れないようなのは、癪だ。と、思ったのだ。マイは。
「この程度、だと?」
さっきのマイの言葉を聞いて頭に血が上ったのか、相手トレーナーは顔が真っ赤になっている。先制は相手が奪った。
「ゴローン!"たいあたり"!」
相手のゴローンがその巨体をラフの小さな体目掛けてぶつかってくる。しかし、マイは落ち着いて指示を出した。
「"しびれごな"、"すいとる"」
マイの落ち着きがラフにも伝わったか、ラフは落ち着いてしっかりと"しびれごな"を当てた。ラフの"しびれごな"によって動きが鈍ったところを、"すいとる"攻撃で集中攻撃。ラフの元へ辿り着く前にゴローンはダウンした。
『終了!勝者、マイ!』
わぁぁっと歓声が上がる。慣れないことに少し顔を赤らめるマイだったが、ふと現実に戻って呟いた。
「次」
『終了!勝者、マイ!ジムリーダーへの挑戦権を得ました!』
やっとか、と安心したマイは、ふとラフに目をやる。疲れているのではないかと思ったのだが、ラフはマイの足元に擦り寄って、目を輝かせていた。
仕方ないな、とマイはラフを抱き上げた。ラフはとても嬉しそうにしていたが、すぐに眠ってしまった。
そう、リハーサルを終えてこれから本番という時に寝てしまったのだ。
「...起きて。ねぇ、起きて。ねぇ、ねぇ。」
しかし、全く起きる気配がない。
無理もない、ここまで1匹で、連戦連勝してきたのだから疲労が溜まっていてもおかしくない。ラフも生き物なのだから。
ラフをボールに戻してネギのボールに手をかけるマイ。
「...ネギ。出番。」
ネギをボールから出してネギを確認するマイ。ネギは準備万端とでも言わんばかりに、自身の葱を高々と掲げる。おぉ、と感嘆の声を漏らすマイだったが、ズシンと大きな音が聞こえてそちらを見る。
「ナゾノクサは使わないのか?」
マイに問いかけるのはジムリーダーのタケシ。彼の後ろにはイワークが佇んでいる。上半身裸で腕を前で組んでいるその貫禄は、彼がジムリーダーであることを示しているようで、そのオーラに屈しそうになる。
「...秘密兵器の登場」
無論、嘘だ。虚言だ。だが、彼女マイは、彼のオーラに負けまいと虚言を張ったのだ。タケシはその言葉の真意をすぐに汲み取ったが、そんなことはどうでもいいと、マイにバトルを始めようと声をかける。マイはそれに応えて、ネギを抱きかかえ彼と向き合った。
『それではバトル開始!』
「飛翔、"つるぎのまい"」
先制したのはマイ。ネギの攻撃ではイワークには通じないと思っての技の選択だった。しかし、タケシは対策済みのようだ。
「"いわおとし"!」
イワークの"いわおとし"はネギ目掛けて飛んでくる。ネギはなんとか躱しているが、そこでネギに指示が飛んでくる。
「その高さで飛び回って、"つるぎのまい"」
指示は現状維持だった。観客は動揺の声をあげる。もちろん、タケシもだった。
「避けてばかりじゃ勝てないぞ!」
だがしかし、マイは指示を変えない。その状況を打破しようと思ったのか、先に指示を変えたのはタケシだった。
「残念だが終わらせるぞ!とどめの"ロケットずつき"!!」
イワークが体を竜巻の様に回転させて、空中にいるネギ目掛けて飛び上がる。
誰もが決まった。と思ったが、マイは違った。
「急降下」
ネギの急降下、それによってイワークは攻撃を外した。しかし、それでも状況は変わらない。飛び上がったイワークは首をネギの方へと曲げようとする。
「"かまいたち"」
ここでマイは"かまいたち"を指示する。しかし、"かまいたち"とは溜めを必要とする技だ。それを知っているタケシは再度"ロケットずつき"を指示する。だが━━━━━━━━
「なっ」
かまいたちを指示すると、すぐさま技が発動した。風の刃がイワークの体めがけて飛んでいく。だが、ジムリーダーであるタケシの実力は半端なものではない。すぐさま避けるように指示したが、それでも体の側面を削るような形で攻撃は命中。イワークは大ダメージを負ってしまった。
ここでタケシはレフェリーに判定の指示を出す。
『ジムリーダーにより、戦闘終了。この勝負、チャレンジャー マイの勝ち!』
「ふぅ...やれやれだぜ」
歓声が上がる中、危なかったと冷や汗を拭うマイ。上空から降りてきたネギを褒めてボールに戻した。
「なぁ、さっきのいつ指示したんだ?」
と、声をかけてきたのはジムリーダーのタケシ。周囲のトレーナーも勿論のこととして、気になることだった。
「バトル前、抱き上げた時。一筋縄じゃいかないと分かってたから。」
「なるほど、タイプ相性が不利だから予め作戦を立てておいたと...すごいな、全く気づかなかったぞ。」
「空中で尚且つ動いていれば見えにくいかと。イワークが気づかないほど攻撃を集中させたコイツのスピードのおかげ。」
流石だな、とタケシは感嘆し、彼女にニビジムのジムバッチ[グレーバッチ]を渡したのだった。
「バッチ、ゲット。」
バッチを受け取ったマイは特に鑑賞に浸るわけでもなく、そそくさとジムを後にした。
「人多いの無理...」
人混みはやはり苦手のようだ。声をかけられるのも嫌なので、マイはニビシティを後にしたのだった。
〜3番道路〜
ニビシティとオツキミ山を結ぶ3番道路。ニビシティ側は木々が生えていて、傾斜や段差の多い地域。オツキミ山側は山岳地帯となっている。
「夕方、か」
オツキミ山麓のポケモンセンターに着いたマイは、空を見てポツリと呟いた。マイの傍には肩で息をしているネギが、建物に寄りかかっている。
「お疲れ様。」
慣れないことをさせてしまったな、とマイは思った。実はニビシティを後にした後、マイはネギの足に掴まってネギに空を飛ばせてここまで飛んできたのだ。
別に楽をしたかった為ではない。今後、この飛行能力によって救われる場面があるかもしれない、という考えの元だ。
━━━━━━━━多分、使えない。
その試しの結果は、バツ。
ネギの重さに対して、マイの重さは割に合わないようだった。
建物内に入ったマイは、ジョーイさんにポケモン達を預けて傍の椅子に腰を掛け、目を瞑るのだった。