「━━━━━ッ」
地面が崩れ、川へと流れ落ちると共に、マイも川へと落ちていく。空へと逃げようと取り出したボールは既に手を離れた。幸い、ボールは共に下へと流れ落ちる木に引っかかったようだが、マイのピンチは変わらない。
落ちる━━━━━━━━と、マイは恐怖した。だがしかし、ここで諦める程彼女は馬鹿では無かった。下は川。即ち水上。すぐさま捕まえたばかりの"ボール"に手を伸ばして、下へと投げ出した。
「アズマさん!!」
そう呼ばれた アズマオウ は川へと飛び込み、マイを背中で受け止めた。アズマオウに飛び乗ったマイは流れ落ちた木へと飛び乗り、ネギのボールを手に戻した。
「さて、と。」
地上へと戻ったマイは、崩れ落ちたソコを見つめ、顎に手を当てている。ネギもマイと同じく、崩れ落ちた地盤を見ている。ただ違うのは、マイは地上から見ているのに対して、ネギは空中から見て回っていることだ。
「ディグダか、イワークか...」
マイはこの件の犯人をディグダかイワークだと予想する。いや、ディグダでないにしても、その進化系のダグドリオの可能性もあるのだが、とにかくこの3匹だとマイは考える。
「地面から出た拍子に崩れ落ちたか...だとしたら下に埋もれているはず。アズマさん。」
埋もれているのであればそれを見捨てるのは忍びない、道徳的に。マイはアズマさんに"ちょうおんぱ"を流れ落ちた地面に指示。
"ちょうおんぱ"は地面をすり抜けて埋もれているポケモンに効果があるはず、当たれば混乱状態になって、暴れる筈だ。という考えだった。
「暴れれば場所が分かる...」
埋もれているはずのポケモンに"ちょうおんぱ"が当たるのを待っているが、いくら待っても、当たる気がしない。
と、待っていると、その積み上がった小さな山が吹き飛ばされた。
やっと来た━━━━━━と、アズマさんをボールに戻そうとした瞬間、
「なっ、アズマさん!?」
アズマさんが吹き飛ばされた。その出てきたポケモンによって。
それを見ていたネギはすぐさまマイを空中へと持ち上げた。その瞬間、マイの立っていた場所は崩れ落ちた。
「危な...!」
感情が昂っているのか、少しばかり声が大きいマイ。それを睨むが如く、下から殺気が飛んできた。下を覗けば、そこには はさみポケモン のキングラーがいた。
キングラーはマイ達目掛けて"あわ"攻撃を仕掛ける。
「ネギ回避!」
マイはネギに回避を指示するも、この"あわ"攻撃は光線系やビーム系とは違って威力が落ちる分攻撃範囲が広いのである。つまり、回避しにくいのである。
マイはそれを理解し、水中にいるはずのアズマさんに声をかける。しかし、アズマさんは反応しない。
「倒された...?」
マイの記憶では、かなり耐久力に優れたアズマオウだったはずなのだが━━━━━━━━それほどまでにあのキングラーの攻撃力が高いということなのだろうか。
「アイツが懸賞首...」
なるほど、そう仮定すれば納得だ。というか、なぜ聞くのを忘れたのだろう...
マイは腰のボールに手をかけ、ラフを崩れ落ちた地面の上へと放り投げる。
しかし、ここで問題が発生した。ネギが"あわ"攻撃を避けられず、被弾してしまったのだ。フラフラと飛行が安定せず、飛ぶことに精一杯になっているネギ。対して、マイは特に慌てることもなく、ラフに"ねむりごな"を指示する。
その"ねむりごな"は命中し、キングラーは眠ってしまった。
「ネギ"みだれづき"、ラフは"すいとる"攻撃。」
すぐさまラフとネギの総攻撃でダメージを与え、ボールを投げる。
1、2、3と揺れて捕獲完了。
「懸賞金、確保。」
...マイには金としか目に映ってないようだ。倒れているアズマさんをボールに戻し、地上へと戻ったのだった。
「夕方...野宿の準備しなきゃ。」
〜ハナダシティ〜
外で一泊してからハナダシティへと戻ってきたマイ。出迎えられ、懸賞首と思われるキングラーを見せると見事に当たっており、またもや称えられた。
ここで、昨日の代表から礼として"あるチケット"を入手した。
「...なにこれ」
「君がジムに挑みたいらしいのでな、紹介状じゃよ。ジムリーダーは忙しいらしいのでな。」
金ではないのか、と残念そうにするマイだったが、ジムと聞けばその考えを改めるしかない。すぐさまポケモンセンターへ行き、ポケモンを回復させた後、ジムのあるという町外れへと走るのだった。