落第騎士と鬼の英雄譚   作:難波01

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プロローグ

己の魂を武器に変えて戦う時代。

 

現代の魔法使いと呼ばれている伐刀者(ブレイザー)

 

伐刀者を育成する養成学校『破軍学園』には落第騎士と呼ばられる少年と“鬼”を継承する少年がいる。

 

 

 

 

 

 

 

黒鉄一輝、それが落第騎士と周りから呼ばれる少年の名。

 

明智和真、現代の魔法使い伐刀者(ブレイザー)が存在する世の中で恐らくただ独りであろう“鬼”に魅入られ、只管に魔を狩る少年。

 

早朝、川原で二人は一定の間合いを取って互いの獲物を呼び出した。

 

「来い、陰鉄!」

 

一輝が日本刀を掌から引き抜く。

 

「起きろ、雷電」

 

和真の手首から肘に駆けて覆う生物気質な篭手、手の甲辺りには青い水晶が埋め込まれている。

 

バチバチと音を立て、放電(スパーク)する水晶。

 

その放電音を皮切りに和真は腰辺りから独特の装飾が施された日本刀を引き抜く。

 

固有霊装(デバイス)、正式名称を唱えないと現れない己の魂を具現化した武器。

 

和真の固有霊装、雷電・・・正式には“雷斬刀”と伝え聞く雷を司る鬼の宝刀が、和真本来の固有霊装と溶け合って生まれた一振りだ。

 

互いに誰かに習うわけではない、見て盗み、自分の物にしてきた剣術。

 

「やるな、相変らず見てからの反応が早い!」

 

「和真こそ、未来予知でもしているの?僕の狙いを見透かしてっ」

 

それは、傍か言えば猿真似と言われるだろう。時には贋作、偽者とも。

 

体を低くし、胴薙ぎの一閃を避ける一輝に振り上げた雷電を振り下ろす和真。

 

それを僅かに重心をずらし、避ける一輝は重心をずらしながら突きを放った。

 

「その反射速度、可笑しくない?」

 

一輝の突き出した刃は、刃によって防がれていた。

 

それも刃同士をぶつけ合う形で。

 

「お前の洞察力には負けるさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明智和真、実の所を言うとこの世界の出身ではない。

 

所謂、転生者。

 

転生者は神によって特典を与えられると相場は決まっているが和真はチートのような特典を得たわけではない。

 

神は誤爆で殺してしまった詫びに「落第騎士の英雄譚」の世界へ転生を申し出た。

 

和真は断る道理は無く、むしろ繰り返される単調な毎日にから開放されると胸を躍らせていたほどだ。

 

神が和真と言う人間の能力を弄ったのはとても単純、身体能力とこの「落第騎士の英雄譚」と言う世界において魂を武器化する固有霊装(デバイス)だ。

 

日本と言う島国に残る数少ない神秘を融合させると言う物。

 

そう、多くの魔を封じてきた篭手を魂と同化させたのだ。

 

「・・・・・アンタ、そこにあった篭手は!?」

 

「落第騎士の英雄譚」その世界で聞く第一声は、山奥のお堂に響く少女特有の悲鳴に近い叫び声だった。

 

この世界で、ただ語り継がれていない武者の存在がある。

 

“鬼武者”

 

鬼に憑かれた人が幻魔と言う魑魅魍魎を討ち果たす姿をそう呼ぶ。

 

転生直後の和真は、固有霊装(デバイス)を頭に響く神の声どおりに展開してみると左手に篭手が現れ、遅れてきた白髪の青年が目を見開いて驚いたのを覚えている。

 

白髪の青年、歴史の教科書にも載る僧侶・天海は、12歳まで年齢・肉体退行を果していた和真をかつての友の協力の下保護。

 

その後、天海は二年掛けて鍛え上げた。

 

そして、世界を知ってもらうと旅をさせたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

二年前、小国・ヴァーミリオンの貴族が巻き込まれたテロ事件があった。

 

自動小銃で武装した二十人、五人の伐刀者(ブレイザー)で構成されたテログループはエッフェル塔付近のショッピングモールを占拠し、逃げ遅れた妬く50人前後の人質と供に篭城した。

 

要求は、フランスに服役している解放軍(リベリオン)の釈放及び身代金の要求。

 

巻き込まれた貴族の名はエルフェルト・ヴァレンタイン。

 

ヴァーミリオン王国、王族とも縁深いヴァレンタイン家の一人娘はそのテロに巻き込まれて運命的な(エルフェルト限定)出会いを果すことになる。

 

「良いか?お前等の命はフランス政府に掛っている。政府が応じて仲間を解放したら・・・そん時は逃がしてやる」

 

各ブースに分散された人質に脅かす伐刀者(ブレイザー)

 

その時のエルフェルトは、ただ十四歳の少女でしかなかった。

 

「うっ、ママァー!!」

 

子供が泣き出すと途端にテロリスト達は機嫌が悪くなる。

 

「煩せぇガキだな・・・殺りますか?」

 

「駄目だ。」

 

リーダー格は頑なに下っ端の行動を柚須湖とは無かったが、自分の演説を邪魔された事への苛立ちは顔に出ていた。

 

「ママ!ママァー!!」

 

「黙れってんだろっ!このガキ!!」

 

独りが徐に銃を振り上げる。

 

「止めなさい!」

 

エルフェルトが声を張り上げてテロリストを制しする。

 

銃と言う鉄の塊が子供を殴打する事はなかったが、代わりにエルフェルトが殴られて気を失う事になる。

 

エルフェルトの正体に気がついたテロリストはエルフェルトを人質に逃走を図ろうとしたが、一人の少年に人質の奪還までされてしまった。

 

エルフェルトは少年に抱えられた状態で目隠しと猿轡から開放され、彼女が目にしたのは、伐刀者(ブレイザー)と言うより、魔導騎士と言うよりも侍と言う言葉がしっくり来る少年だった。

 

「大丈夫?良く頑張ったね」

 

彼女の王子様が現れた瞬間だった。

 

そして、エルフェルトは一目惚れして決心した。

 

彼を振り向かせよう。

 

両親を説き伏せ、彼女は動き出す。

 

そう、恋する乙女はターゲットを射止めんが為に。

 

 

 

 

 

 

二年後。

 

空港には記者たちが詰め掛けていた。

 

ヴァーミリオン王国の第二皇女と同国貴族が日本に留学する、その取材の為だ。

 

手を振るステラ・ヴァーミリオンとエルフェルト、記者たちのありきたりな質問を笑顔で回避した彼女たちは空港ロビーを抜けた先にスタンバイしていた黒いリムジンに乗り込んだ。

 

「ようこそ、ステラ第二皇女。エルフェルト嬢」

 

待っていた黒いスーツ姿の女性、黒乃理事長。

 

新たな破軍学園の理事長だ。

 

「よろしくお願いします。理事長先生」

 

「理事長先生、例の件は大丈夫ですか?」

 

皇女ですら条件を出さなかった部屋割り、エルフェルトは“お願い”と言う形で理事長に無理を承知で頼んだのだ。

 

「ええ、ヴァレンタイン嬢。鬼とのルームシェアですよ」

 

その言葉を聞いた時、ステラは首を傾げるが直ぐにステラも理解する。

 

新理事長による新たな部屋割りの基準を。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り、和真は一輝とのトレーニングを終えて破軍学園の学生寮・自室のドアノブに手をかける。

 

「おい和真!誰じゃあのべっぴんさんは!?」

 

ドアを貫通して現れたのは、魔王と名高い織田信長。

 

色々事情が在って、和真の固有霊装(デバイス)の片割れである鬼の篭手に封印されていたノブ(以後織田信長の愛称)は、長い年月で封印が弱まったか何かで幽霊のように波長の合う人間にしか認識されない存在でいる。

端的に言うと和真に憑いた幽霊だ。

 

「は?何を寝ぼけていらっしゃるノブ。アレか?戦国ジョークか?男女が同室な分けないだろ」

 

相手にしたら疲れるだけなので相手にせず、和真がドアを開けると、

 

「やっと会えたね!明智様!!」

 

飛び出してきた一級品の美少女、出るところは出て、絞まる所は絞まる。一言で言えば我が侭ボディの少女が飛びついてきた。

 

男なら喜ぶ展開、つうか喜ばん奴は男じゃない。だがしかし早朝と訓練後の疲労と空腹から満足に頭が回らないこの男。

 

「ふべらばっ!?」

 

流れるまま後頭部を廊下に強打し、意識を手放す。と同時に隣室から少女の甲高い叫び声が響いた。

 

 

 

 

 

和真が床に頭を強打して意識を手放す数分前、一輝もまた危機に遭遇していた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・」

 

(なんで・・・・・なんで僕の部屋に女の子がァァ!?)

 

部屋の扉を開けると、紅い髪をした少女が制服に着替えようとしていた。

 

生まれたままの姿をさらけだし、ワガママボディーの持ち主の少女は次第に顔を赤らめていく。

 

「いや・・・・や」

 

「待って!・・・・・このまま叫ぶのはまだ待ってほしいんだ!確かに君の気持ちは分かる・・・・見られたら恥ずかしいよね」

 

さわやな笑顔で語る一輝。

 

「だから!僕も脱ぐから!これでフェアに・・・・・」

 

「いやあああァァァァ!!」

 

 

 

 

―――――パチン!

 

 

 

 

部屋中に、綺麗な乾いた音が響いた。

 

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