落第騎士と鬼の英雄譚   作:難波01

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ゲスいWデートにはトラブルがつき物です

経験則で分かるのもどうかと思うのだが、和真は部屋で目が覚めた。

 

「大丈夫?生きてる?」

 

覗き込むエルフェルトは心配してくれたようで、多少申し訳なくなった。

 

「生きてるよ・・・一つ聞いていい?」

 

「何?」

 

「近くないですかね!?」

 

そう、一介の十八歳男子に我が侭ボディ少女の添い寝とか厳しすぎる。主に理性が。

いくら親公認とは言え、節度があると思う和真である。

 

「私は・・・和君なら良いんだよ?」

 

「あのな、そう言うのは・・・・」

 

二段ベッドの下を利用する和真は、エルフェルトを引き剥がして言葉を失う。

 

「んっ!・・・・・元気そうで何よりです。和真君」

 

阿修羅すら凌駕する存在だ!とは誰の台詞だったか?とあるフラッグファイターも真っ

青な阿修羅が其処にいた。

 

「と、刀華さん?いらしてたの??」

 

「私の不始末と部屋を訪ねてみれば、なんしよるんんやか!?」

 

「いやっ!コレはぁぁぁぁ!!?」

 

和真はその日、二度目の“雷斬り”を目の当たりにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日、学生にとっても社会人にとっても有意義に過ごしたい休日。一輝から買い物に行こうと誘われて和真とエルフェルトは校門前に居た。

 

発案者は黒鉄珠雫(くろがねしずく)、兄との親睦を深める為にショッピングに誘った所、ステラが二人っきりにすると危険だと自分も行くと言いだし、和真とエルフェルトに声をかけた。

 

部屋を訪れたら一閃の瞬間を目の当たりにして唖然としていたのは記憶に新しく、刀華が生徒会の仕事さえと悔しがっていたのは印象的だった。

 

「少し・・・・遅いわね!」

 

と御洒落に決めたステラが言う。

 

出かけるに当たってステラもエルフェルトも制服ではなく普段着、当然なのだが・・・ステラはピンクを基調としたブラウスに黒いミニスカート、ハイヒールを履いてお嬢様感を出している。

 

対してエルフェルトもステラとは色違いの白基調のブラウスと紺のミニスカート、こちらは黒いブーツだ。

 

「ま、女の身支度は時間が掛るもんだ。ヴァーミリオンも分かってやれ」

 

「・・・そう言うアンタはコスプレ?」

 

「いや、昨日ぶった斬られてね?」

 

左目を眼帯で覆った和真にツッコミを入れるステラ。

 

一輝はまさに今時のメンズファッション、和真も左目の眼帯を除けば今時のメンズファッションだ。

 

「和真も大変だね?」

 

「おう、助けてくれ」

 

「ソレは無理かなぁ?」

 

と申し訳なそうに一輝がおどけて言うと「ですよねー!」と和真。

 

「良いのぉ。青春じゃのぉ」

 

脇でノブが羨ましそうにしているが無視しよう。

 

「・・・・・」

 

「?・・・どうしたの一輝」

 

「いや。ステラ、今日の格好似合ってるよ」

 

「~~ッ!」

 

褒めてくれた一輝に、更に顔を赤くするステラ。

 

「こっちも出来取るようじゃし。ワシはイッちょサプライズを・・・」

 

「するなノブ」

 

一輝が急にステラを褒め、ステラが赤面するとノブは生暖かい視線を送りながら何かを画策する。それに間髪居れずに釘を刺す和真。

 

「和君、どうかな?」

 

和真の前でひらりとゆっくり一回転してみせるエルフェルトにノブは察したのか「こっちもかのぉ」と呟く。

 

「ああ、似合ってるよ。」

 

「何じゃ!?愛想無いのぅ!!」

 

驚く魔王、断じて口下手なわけじゃない。転生前でも友達といえば男ばかり、女子とショッピング?しかもだ、後々カップルとなる一輝とステラがいる・・・余計な原作知識はこれってWデートでは?と邪念を挟み、剣術ばかりに生きてきた男からすれば耐性の無さと相俟ってパニック一歩手前だ。

 

ぶっきら棒を装うのが精一杯なのである。

 

「あ、そう言う事か。お主もシャイじゃのぉ」

 

「よし、後で幻魔界に殴り込みしてやるからな?覚えとけノブ!」

 

「?」

 

首を傾げるエルフェルト、目の前で裏拳を繰り出しつつ虚空に吐き捨てるなんてぶっちゃ毛変人か狂人に見えるだろう。

 

「エルフェルトさん、気にしたら負けだよ。和真の持病だから」

 

そんな光景に一輝はフォローを入れた。

 

「お兄様~!」

 

「うわ!?し、珠雫!?」

 

「会いたかった、会いたかったですお兄様」

 

ゴスロリ衣装に身を包んだ珠雫が飛び込んできた。

 

どこぞのフラッグファイター、或いは砲弾にも見えるその行動はノブの坪に入ったらしい、中年特有の野太い笑い声が煩い。

 

「ちょっとシズクッ!離れなさいよ!」

 

「変ですね?・・・何処からか声が・・・・」

 

「私の存在を消すなァァ!」

 

またもやステラと珠雫が言い合いを始める。

 

恒例となった?言い合いを苦笑いを浮かべながら、エルフェルトが仲裁に入る中一人の青年が走って来た。

 

「もう~、珠雫ったら早すぎよ」

 

「は?」

 

「「誰?」」

 

その口調に和真は思わず呟き、一輝とステラが首を傾げる。

 

少し声が高めの青年が息を切らしていた。そこまでは普通だ――だが。

 

「あらあら、そちらの二人が珠雫の言ってた黒鉄一輝クンと明智和真クンね」

 

「えと・・・・・君は?」

 

一輝が尋ねると青年はくるっと回り、再び二人に視線を合わせた。

 

「初めまして。珠雫のルームメイトの有栖院 凪よ。アリスって呼んでくれると嬉しいわ。ニッコニコニ~!なんちゃって」

 

うん、特殊なのが来た。それもか~な~り特殊だ、とある仮面戦士風に言っても控えめに聞こえると思うのは和真だけだろうか?

 

「そうなんだ!私はエルフェルト・ヴァレンタインって言うの。よろしくね、アリスちゃん!」

 

早速エルフェルトが打ち解け、仲良くなっている。他人と壁を作るよりは遥かにマシである。そういう点はエルフェルトに見習いたい所だ。

 

「三人とも何か言いたげだけど、私は体が男で精神(なかみ)は女よ?」

 

「何が違うんじゃ?オカマじゃろ要するに」

 

ノブの疑問は和真達三人共通する物だった。が、何時までも立ち話という訳でもなく、目的地に向けて一行は歩を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングモールとは便利な物だ。大抵の物はそこに集合しているし、価格もお手頃な物が多い。

 

代表的なイ○ンやアウトレットショッピングモール等、あまりファッションや最新家電、調理器具に関心が無い和真も「ココに来れば大抵は揃う」と言う認識である。

 

(そう言えば、セールの度に阿古に荷物持ちさせられたな)

 

本日訪れたショッピングモールは生鮮食品と衣類が80%オフのセールが開催されていた。懐かしい記憶を思い出しつつ、一輝とステラ、アリスと珠雫に続く。

 

和真・エルフェルトペアと一輝・珠雫・アリス・ステラ組に別れ、買い物をすることになり、メインストリートを歩いていく。

 

「はぁ~・・・・・これじゃあイッキに近付けないわ」

 

「まあまあ。時間はたっぷりあるし諦めたらダメだよステラ!」

 

「そ、そうよね!エル、アタシ頑張るわ!」

 

「どうしたんだあの二人?」

 

「お買い物の話かな?」

 

最近、一輝に対する思いをエルフェルトに相談しているステラ、ステラにとって身近で恋を知る女子はエルフェルトなので当然といえば当然。だが、ステラはエルフェルトのように大胆なアクションは起せないなぁと思いつつも一輝へのアプローチチャンスを狙っている。

 

ソレを知るエルフェルトは、今日と言うイベントでステラと供に想い人を撃ち抜く為に作戦を練っていた。

 

ソレを知る良しも無い男二人は、他愛の無い相槌を打って別れた。

 

 

 

 

 

 

 

和真とエルフェルトはファッションブースに入る。

 

「似合ってるかどうか見て欲しいんだけど良いかな?」

 

「ん?ああ、構わないけど・・・・」

 

嬉しそうに陳列された衣類を見始めるエルフェルトとは対照的に、客の少なさと各ブースを繋ぐ業務員用通路の扉が半開きになっていることに和真は違和感を覚えた。

 

(店員が入っていって閉め忘れた?ってさっきから店員も見てないな・・・)

 

一年前、同じ様な状況を体験した事がある。解放軍と単身戦った時に体験したことだ。

 

(・・・・紛争地域付近じゃあるまいし、思い過ごしなら良いが)

 

「どうしたの?怖い顔して・・・っ!!」

 

「え、エルフェルト?どうしたんだ!?」

 

辺りを見回している和真に尋ねるエルフェルト。次の瞬間、彼女は表情を強張らせて座り込んで震えだした。

 

「あ・・・ああ、アレ!」

 

エルフェルトが座り込んだことで、視線を合わせるために膝をついた和真も棚に隠れる形になった。

 

彼女が指差したのは、覆面の男たちがARを担ぎ出した瞬間である。

 

「エルフェルト、悪いっ!」

 

和真はエルフェルトを抱き抱えるとそのまま業務員通路に飛び込んだ。間髪居れずに野太い叫び声と銃声がショッピングモールに響いた。

 

「動くんじゃねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、これ設計ミスだろ。何で各ブース直結じゃないんだよっ」

 

裏手に逃げ込んだことで和真と抱き抱えられ、子猫よろしく震えるエルフェルトは、先ほどのファッションブース会計裏で立ち往生を喰らった。

 

理由は台詞から推して知る事が出来る。和真は端から端まで直通だと思っていたから飛び込んだが、コレでは袋のネズミだ。

 

「和君!理事長先生から・・・きゃっ!?」

 

電子生徒手帳を翳すエルフェルトは、扉を荒々しく開けるテロリスト達を見て言葉をつまらせる。一瞬、フワッと浮遊感に襲われたかと思うと尻餅をついて痛みを感じた。

 

「ダイナミック入店ー!!」

 

「このがっ!?」

 

和真が滑るようにテロリストの一人の頭を壁に強打し、意識を刈り取った。二人目のテロリストは、和真を見るや否や数歩後ずさり銃口を向ける。

 

「テメェは“鬼”「取り合えず寝てようか?」っ!?」

 

撃たれる!とエルフェルトが目を瞑るより早く、縮地・・・剣術における高速の歩法で間合いを帳消しにした和真によってテロリスト達は鎮圧されたのだ。

 

唖然とするエルフェルトを再び抱き抱えて、和真は言う。

 

「今の内に移動しようか、直ぐにココはばれるだろうから。」

 

レジ裏に出ると、

 

「あら、どうやら無事だったみたいね」

 

「二人共大丈夫!?」

 

アリスと一輝がいた。

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