Xeno // SSSS.GRIDMAN   作:アチスキー

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#3

 照明も乏しく、薄暗い室内。

 

 床を埋め尽くすのみならず、そこに幾重にも堆積しているのはゴミの詰まったビニール袋である。

 そんな中に、まるで壁の様にして幾つも立ち並ぶのは、大きなショーケースの姿だった。

 

 ショーケースの内部……小さな照明にライトアップされたその棚に並ぶのは、物言わぬ怪獣達の群れ──かつて歴代のヒーロー達と雌雄を決してきたモノ達の人形である。

 

 その殆どがどういう形であれ。

 

 最後には敗れ去ってきた事を考えると、その棚はさながら怪獣の墓場の様にも見えるだろうか。

──そんな陰気さ極まる場所こそが、彼女の自室だった。

 

「ただいまぁ。アレクシスー」

 

 堆積したゴミ袋を踏みつけながら。

 パソコンの前へと座ったアカネは、デスクの上に置いてあった(ひび)割れた眼鏡をかける。

 彼女の呼び声に応え、パソコンの画面に蒼い炎が揺らいだ。

 

「──お帰り、アカネ君。その様子だと……どうやら元気になったみたいだねぇ」

 

 現れたのは黒い甲冑を纏ったかの様な人物──アレクシスと呼ばれる、アカネにとっては秘密の『同居人』だ。

 アレクシスはアカネの顔を見るなり、安堵した様子で鷹揚に頷いてみせる。

 

「うん。今の私はヤル気いっぱいだよー」

 

「はっはっは。それはなにより」

 

 椅子の上で胡座をかき、満面の笑みを見せるアカネ。

 

「……そうそう、アレクシス。あの『お客様』の名前、これからはグリッドマンって呼ぶ事にしようと思うの。いいでしょ?」

 

 まるで、それが素敵な思い付きの様に。

 アカネは笑顔で、アレクシスに同意を求める。

 

「ほう、グリッドマン! 格好良い名前じゃないか」

 

「でしょー?」

 

 もちろん、アレクシスは否定したりはしない。

 当然の事だ。

 なぜなら、自身の言葉は何よりも優先されるし正しいからだ──アカネは自尊心を満足させながら、ヘッドホンを頭につける。

 

「……どこで聞いたんだい?」

 

「クラスメイトの男の子が考えたヒーローの名前。やっぱり名前が無いとさ、張り合いがないじゃん?」

 

 倒すべき相手が名無しの巨人では、どうにも味気無い。

 自分で付けてもいいけれど、それではいまいち興が削がれる……そんなアカネにとって、内海の考えたというヒーローの名前はうってつけだった。

 

「なるほど、クラスメイトの男の子がね。──ああ、もちろんアカネ君の言う通りだ。ヒーローには名前が無くてはね」

 

 反芻するように、アカネの言葉を口にするアレクシス。紅いバイザーの奥にある彼の目は、何時だって喜色を帯びている様に見えた。

 

「……私、グリッドマンには絶対に負けない」

 

 針金で組んだ『骨格』を見下ろしながら、アカネは底冷えするような声を溢す。

 

「ユータ君は……この世界は私が守るんだ……!」

 

 裕太の名を口にするだけで力が湧いて来る様だった。

 あの二人の時間を守る為だったら何でも出来る。──そんな少女らしい温かな愛情と敵への冷たい憎悪が『血肉』となり、骨へとまとわり付いて歪んだ形を産み出していく。

 

 そんな光景を、アレクシスはただただ満足そうに見つめていた。

 

 

◇◆◇◆

 静かな店内に、コーヒーミルの豆を挽く音だけが響く。

 六花がゆっくりと取っ手を回すたび、高くなっていく豆の香り。

 いつもであれば、その馥郁(ふくいく)たる香りにほんのりと顔を綻ばせるところなのだが……今日に至ってはどうにもそう言う気分になれないのか、六花の表情はどこか伏し目がちに物憂げだった。

 綺麗な黒い睫毛が、目許に幽かな陰を落としている。

 

 

──『ジャンクショップ絢』の店内には喫茶スペースが併設していた。

 いや……併設、と言うのは大仰な表現だろうか。

 そのスペースは、カウンターテーブルに椅子が何脚か置いてあるだけの簡単なもので、ジャンクに囲まれた中にある細々としたものだった。

 そんなものだから来店するお客も基本的には近所のお馴染みさんばっかりで、そして、六花の母親が店長をしていくにはそれで充分だった。

 

 普段から、店の手伝いへと度々に駆り出される姿が見られる六花だが、今日の様に日曜日となるとそれはより顕著だった。むしろ、特に彼女に予定がない限りは、臨時店長の様に店を任せっきりにされている。おおらかな母親の経営形態に幾ばくかの不安を感じないでもないが、多少のアルバイト代が支給されることもあり、六花も半ば諦め気味にそれを受け入れていた。

 

 なにより六花自身、喫茶店での仕事が嫌いなわけではない。

 そんなに忙しい訳でもなく。こうして珈琲豆を擦っている時などは、とてものんびりとした心地で過ごす事ができた──そう、普段なら。

 

「……ふぅ」

 

 六花の唇から零れる小さな嘆息。

 豆を擦る手を止めると、六花は店の片隅に置かれた大きなパソコンを見つめた。

 いかにも前時代的な外見である。しかも、色んな所から部品をかき集めて来た様な感じが異様さに拍車をかけていた。

 

 その外観をじっくりと眺めてから、六花は再び小さなため息をつく。

 そして、何を考えたのか。

 カウンターを離れると、そのパソコンの前へと歩いていく。

……邪魔にならない様にと、頭の後ろで一つに纏めた六花の黒髪が、尻尾の様にゆらゆらと揺れた。

 

「あの……グリッドマン?」

 

 真っ暗なパソコンの画面。

 その画面へと、六花はおそるおそると言った感じで話しかけてみる。

 しかし、──

 

「もしもーし……聞こえてる?」

 

──しかし、パソコンの中にいる筈のグリッドマンは返事をくれはしない。

 かちかちとキーボードを叩いたり、軽くパソコンのディスプレイを叩いたりしてみたが結果は同じだった。

 

「……やっぱ、ダメか」

 

 そう呟きながら、六花は自身の腰に手を当てる。

 朝から何度か試してみた事だった。

 それだけに彼女も結果については予想もついていたのだろうが、それでも落胆の色は隠せないと言った様子である。

 

「あー、響君じゃないと声とか届かないのかな……」

 

 六花の脳裏に、のほほんとした笑顔を浮かべた裕太の姿が思い浮かぶ。今のところグリッドマンと交信出来たのは、あの少年しかいない。

 裕太が呼べば、きっとグリッドマンも出て来てくれるのだろうか。

……そんな事を考えながらパソコンから踵を返すと、六花は店の軒先へと出る。

 

 空には重たい灰色の雲が立ち込めていた。

 

「いきなり電源プラグを抜いたこと……もしかして根に持ってるのかも」

 

 曇り空眺めながら、ぽつりと零れる六花の呟き。

 こんなネガティブな思考になるのも、天気が悪いせいだろうか。せめて青空だったなら、幾らか気も晴れると言うのに。

 

「……ふぅ」

 

 もう朝から何度目になるか分からない嘆息。

 六花の整った顔立ちには、そんな憂いの色すらも魅力的な彩りになったが……本人に言えば「冗談じゃない」と睨まれるかもしれない。

 

──そんな表情のまま。

 六花が視線を下ろして、目の前の通りの向こうへ目をやると。

 丁度、裕太と内海が連れだって来るのが見えた。

 

「……やっと来た」

 

 安堵した様な、それでいて不満気な。

 複雑そうな顔をしながら、二人の姿を見据える六花。

 

「よう、宝多……」

 

「おはよう、宝多さん……」

 

 そんな六花とは対照的に、それぞれに緊迫感の無いだらりとした挨拶を六花へと送る二人。

 

 それでも、裕太は少しだけハッとした様に六花の顔を見直す。

 

「……『やっと』って、もしかして待ってた? 昨日のこと覚えてるの?」

 

「その『もしかして』……すっごい待ってた。もちろん、昨日の事も覚えてるから」

 

 腰に手を当てて、六花はちょっぴりムッとした様に見える表情を裕太に向ける。

 そこで、ふと何かに気づいた様子で。

 裕太と内海を交互に見やってから、六花は怪訝な表情を浮かべ直すと首を傾げて見せる。

 

「にしても……二人とも何かくたびれてない?」

 

 六花の言葉に、苦々しげな顔を見合わせる裕太と内海。

 

「いや、その──」

 

「まぁ、色々とあったんだよ」

 

 よもや、あんな下らない事で言い争っていたのだとは言える筈もなく。二人は口の端に引きつった笑みを浮かべながら、それぞれに明後日の方向を見やり──

 

「……なにそれ」

 

 六花のひんやりとした視線から顔を背けるのだった。

 

 

◇◆◇◆

「──……どうぞ」

 

「お、サンキュー」

 

「ありがとう、宝多さん」

 

 店内のカウンターテーブルへ内海と共に着いた裕太。

 そんな二人へ。

 六花はコーヒーミルから粉を取り出すと、手慣れた様子でコーヒーを用意する。

 そして、カップを傾ける二人を前に、頬杖をつきながら遠い目をして朝からの事を振り返った。

 

「……昨日、あれだけ大騒ぎしてたのに。朝になったらママは何にも覚えてないし。なみことはっすに聞いても、寝ぼけてるのかって笑われるし……──」

 

 なみこ、はっす──六花の話に出てきた名前に、裕太はカップから口を離すと、その顔を思い浮かべる。六花とよく一緒にいる二人で、裕太にとってもクラスメイトの女の子達だ。

 

「──グリッドマンのいるパソコンは、響君が帰った後はずっと消えたまんまだし。響君や内海君に連絡とろうとしたけど、電話の番号なんかもちろん知らないから。……私、自分だけおかしくなっちゃったのかと思った」

 

 どことなく疲れた表情で笑みを浮かべながら、六花は前髪をかきあげた。

 記憶を失わなかった彼女もまた、裕太や内海と同じ状況に陥っていたらしい。

 その混乱がどれほどのものかはよく分かる。裕太自身、内海からの連絡がなければ、それはさらに度合いを深めていた事だろう──そこまで考えたところで、裕太は隣に座る内海を肘でつつくと、六花に聞こえるのをはばかる様に小声で話しかけた。

 

「内海。お前、宝多さんに連絡しなかったのか?」

 

「仕方ないだろ……オレだって宝多の番号なんか知らないんだから」

 

 裕太に顔を寄せる様にして、内海も小声でそれに応じる。その顔は、いかにも決まりの悪そうな表情を見せていた。

 もちろん、裕太に内海を責める事など出来はしないが……しかし、自分達からの連絡がなくとも表面上は平静を保っている様に見える六花に、裕太は彼女の強さを感じた様な気がした。

 

「……どうせ来るんなら、もう少し早く来てくれればよかったのに」

 

──そんな二人の話が聞こえたかどうかは定かではないが。

 頬杖をついたまま、六花がジトッとした目で二人を見やる。

 

「いやぁ、それは……」

 

「繰り返すけど、色々とあったんだよ」

 

 またも、それぞれに明後日の方向へ視線を投げやる二人。

 まさかそんな女の子を前にして。他の女の子と朝御飯を食べていたとか、男二人で不毛な争いを繰り広げていたとか……そんな事は絶対に言える筈もなかった。

 

 

「──でも、これでハッキリしたな。オレ達以外の人間は昨日の事を覚えていない。そして、記憶が残ってるオレ達の共通点と言えば『グリッドマン』だ」

 

 六花のジリジリとした視線に堪えかねた様に、内海はわざとらしい咳払いをひとつ。

 真面目な表情を浮かべなおすと、話を本題へと引き戻す。

 なにか誤魔化された様な気もするけど──そう言いたげな顔をした六花も、気を取り直したように頬杖をやめ、顔を上げると胸の前で腕を組む。

 

「……あのさ。グリッドマンなら何か分からないかな? 私が声かけても聞こえないみたいだし……響君なら大丈夫でしょ?」

 

「案外、街を直してくれたのもグリッドマンかもしれないしな」

 

 そもそもがグリッドマンに会いに来たと言う事もあって。

 六花の提案に、内海もこっくりと頷く。

 そして、二人の視線が裕太に集中した。

 

「えっと……わ、分かったよ」

 

 大きな期待のこもった二人の視線に思わずたじろぐと、裕太は口の端を引き吊った様な笑みに歪ませた。

 思い返せば今までの人生で、これほど期待を寄せられた事があっただろうか。……正確に言えば期待を寄せられているのはグリッドマンで、自身は通訳みたいなものだけども。

 

 二人の視線に押される様にして、裕太はパソコンの前へと立つ。六花の言う通り、画面は電源が切れた様にして真っ暗だった。

 

「えっと、グリッドマン?」

 

「──やぁ。おはよう、裕太」

 

 裕太が声をかけた瞬間。

 ブラウン管のディスプレイに光が入り、グリッドマンの姿が映し出される。

 爽やかな朝の挨拶もおまけ付きだった。

 

「お、おはよう。──画面、真っ暗だったけど……どうかしたの?」

 

「すまない。……前回の戦いでの消耗が激しく、回復に専念していたんだ」

 

 どういう会話が行われているのか、周囲からは何となくの想像しかできないのだが。

 グリッドマンへ頭をペコリと下げて、朝の挨拶をしている裕太を眺めながら。

 六花はちょっぴり納得いかなさそうに、口を尖らせる。

 

「……本当に、裕太君だとすぐに出てきた。私の時は全然だったのに」

 

 そんな彼女の姿を見て、内海がからかう様にして笑みを向けた。

 

「お前、なんかグリッドマンの気に障ることやったんじゃないか?」

 

「そんなこと…………ない、と思う」

 

「いやいや、心当たりあんのかよ……」

 

 冗談のつもりだったはずが。

 何故か微妙な表情で言い澱むクラスメイトに、内海は呆れ顔になる。どことなく冷めた感じのする女の子だと思っていたのだが、案外にむちゃくちゃな事をするヤツなのかもしれない──そんな風に、内海は六花に対する認識を少しだけ改めた。

 

 内海と六花がそんな話をしている一方で。

 裕太は今朝になってからの異変をグリッドマンへと説明していた。

 話を聞き終えたグリッドマンは、裕太へと静かに頷いてみせる。

 

「──なるほど。それは確かに不可解な話だ……一晩の内に何者かが人々の記憶を改竄した可能性がある」

 

「街を直してくれたのはグリッドマンなのか?」

 

 内海の言葉を思い出し、そう訊ねてみると。

 グリッドマンは、ハッキリと首を横に振った。

 

「……いや、私ではない。それについても現状は全くの不明だが、これ程の影響を街に及ぼすと言う点において……街を修復した者は、記憶を改竄した者と同じ存在である可能性は高い」

 

「なんだか……よく分からない話だな」

 

 グリッドマンの言葉に、裕太は首を傾げる。

 どうやら目の前の超人をして、この街を包んでいると言う脅威は強大に過ぎるらしく、敵の正体をまだ掴めていないらしい。

 

「裕太、グリッドマンは何だって?」

 

「いや、実は──」

 

 話が終わる頃合いを見計っていたのか。

 少しだけ急かす様な調子で、内海が裕太へと声をかける。

 裕太は二人の方へ振り返ると、グリッドマンとの会話の内容を伝えた。 

 

「──なるほど。確かにそう考える方が自然だよな……そして、その『何者か』は怪獣を呼び出したヤツかもしれないって事だ」

 

 裕太の話を聞き終えると、思案顔で頷く内海。

 

「怪獣も?」

 

「ああ。こんな事が出来るヤツが、この街にそう何人もいられてたまるかよ」

 

 首を傾げる裕太へと、どこか自嘲気味な笑みを内海は向ける。そうは自分で口にしながらも、心のどこかで無茶苦茶な話だと言う自覚が、きっと本人にもあるのだろう。

 

「……でも、それっておかしくない? 怪獣で街を壊した後に、わざわざ自分で街を直して、皆の記憶も消して無かった事にって……矛盾してるって言うか、意味ないと思うんだけど」

 

 控えめに手を挙げながら。

 おずおずと言った調子で、六花が自身の考えを口にする。

 

 確かに彼女の言う通り、それはひどく矛盾した話の様に裕太にも思われた。

 怪獣で街を壊すと言う行為は、人々を力で捩じ伏せて街を支配する為……そんな理由もこじつけられそうだが。それを自分でまた直し、人々の記憶まで元に戻す……そうなってくると、前段階の怪獣が暴れた意味が無い様に思われるし、それでは何が目的なのかさっぱり分からない。

 

 しかし、──

 

「……そりゃあ、オレ達の方から考えればってだけだろ。相手にとっては、きっと理由があるんだ。……全部無かった事にして、ツツジ台の人間に何時もと変わらない生活をしてもらわなきゃならない理由ってやつが。……それが分かった時、相手がどんなヤツか分かるんだと思う」

 

──しかし、内海だけは二人よりも少しだけ高い視野から、物事を俯瞰しようとしているようだった。顎先に手を当てて思案する横顔は、普段よりも凛々しくて頼もしい。

 

 そんな内海の姿を、裕太と六花は驚いた様子で見つめていた。

 その視線に気がつくと、内海も目を少しだけ丸くしながら二人の顔を交互に見やる。

 

「な……なんだよ、二人とも」

 

「……意外」

 

 六花がぽつりと呟く。

 裕太の言葉がそれに続いた。

 

「二言目には『ウルトラシリーズでは~』ってのがお約束だと思ってたけど、色々と考えてるんだな内海って」

 

「お前らな……」

 

 あまりにもあんまりなクラスメイト達の言葉に、内海は厭世とした表情になる。二人が普段から自分の事をどう思っているか、垣間見えた気がした。

 しかし、そこは現代に生きる特撮オタク。

 すぐに気を取り直した様に、かけている眼鏡を指先で押し上げると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「……だが、これでオレの推測はかなり正しい事が分かってきたわけだ。──敵はやっぱり悪質な宇宙人に違いないぜ、裕太!」

 

「えぇ……?」

 

 ただでさえ突拍子もない現状なのに。

 さらにそこへ突拍子もない要素を追加してくる内海へ、六花は冷めた半眼を向ける。……やっぱりこの男の子は、何を言っているのかよく分からない事が多い。

 

 裕太はと言えば。

 

「うーん……宇宙人かぁ」

 

──六花ほど、内海の説に拒絶反応を示してはいなかった。

 おそらく、小さい頃からアカネと一緒に死ぬほど見てきたウルトラシリーズのお陰で、こういうシチュエーションに免疫の様なものがついていたのかもしれない。

……なにより、内海の説を一笑するには不可解な事が多すぎるし、むしろ宇宙人のせいとした方がしっくりと来る部分もある。

 腕を組み、唸りながら。

 今までの日常の中で、宇宙人らしいものを見なかったか記憶の糸を辿る裕太。無論、そんな怪しげな人物などいなかった──そう結論付けかけた瞬間、裕太の脳内にフラッシュバックした光景があった。

 

 昨日の昼間。

 怪獣が現れる直前に見た、あの黒いドレスを着た女性の姿である。

 その時の周囲の人々の反応を含め、宇宙人かどうかはともかくとしても、すこぶるつきで怪しいのは間違いなかった。

 

「そう言えば、昨日の昼間なんだけど──」

 

 関係あるかもしれないし、ないかもしれない。

 それでも二人には伝えておこうと口を開く裕太。

 

──しかし、その言葉を遮る様にして。店のドアベルが鳴り、来客を告げる。

 

「あっ、いらっしゃい……ま、せ」

 

 すぐさま六花が反応し、そちらへと顔を向けるが……その表情がピシリと音を立てた様にして硬直した。

 つられるようにして。

 同じく店の入り口へと顔を向ける裕太と内海だったが、二人の反応もまた同様だった。

 

「…………」

 

 店の入り口に立っていたのは、着崩れた黒いスーツを身に纏った痩せぎすな男だった。

 ひどく猫背で、その両手はぞんざいにズボンのポケットに突っ込まれている。腰の後ろの辺りに、何本も棒切れの様なものを負っているのも見えた。

 ほったらかしでぐちゃぐちゃした黒い髪。顔色も悪そうで何とも生気に乏しい感じがするのだが──その眼光だけは冷たく冴えた刃の様な輝きを帯びている。

 その男を総評するなら、色々とネガティブな言葉が並ぶのだが──裕太達の脳内へ最初に浮かび上がった言葉は一つだった。

 

「……宇宙人?」

 

 ウルトラシリーズも馬鹿にできない、と。

 そんな事を考えながら、裕太は自身の口の端が引き吊るのを感じていた。

 

 

 

 




◇今回の幕間◇
~SNS(円谷INE)にて~
なみこ「── よーし。そこまで言うならその怪獣がどんなヤツだったか、絵に描いて発表してもらおうじゃんか!(`・◇・´)」

六花「えぇ……めんどくさ」

はっす「本当に見たんなら、それなりに描けるでしょうよ?( ´,_ゝ`)」

六花「もう……(ややあって、画像アップ)──こんな感じ……だった」

なみこ「……直立するウーパールーパー?(;´・◇・)」

六花「怪獣だってば」

はっす「こえーーーwwww 怪獣こえーーーwwww( ´,_ゝ`)」

六花「……月曜日、マスクむしるわ」

はっす「すいませんでした」


◆今回のあとがき◆
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
三人組は書いてて楽しいんですけど、まだ上手く動かせてないですなぁ。
六花ちゃんを可愛く書きてぇ……ふともものムチムチ感を出していきてぇ……。_(´ཀ`」 ∠)_


次回もお付き合いいただければ幸いでございます!
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