お豆腐メンタルのアイドルマスターシンデレラガールズ 作:冬月雪乃
本日は晴天なり。
心は曇ってるけど。
そんなどうでもいい独白を溢しながら支度を済ませる。
机に並んだ市販薬と、カッターのうちいくつかをポーチに放り込み、それも通学鞄に。
睡眠時間は一時間もない。
やっていたことは自分の勉強も兼ねた次のテストの範囲を簡単に解説するノート作りだ。
友達--というか超絶陽キャのアイドルが同級生であり、彼女の依頼によって作られている。
基本的に寝たくない私としては実益も兼ねた趣味となっていたし、誰かの役に立つのは嫌いじゃない。
「さて、行きますか」
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学校に着くと、既にアイドルの友達--本田さんは談笑しており、私の姿を確認するや、満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた。
「おはよう夢見!」
「おはようございます本田さん。こちら例のブツです」
「未央でいーのに……ってすごい怪しい!?」
「怪しいとは失礼な」
渡そうとしたノート--の入ったかばんをそのまま引っ込める。
あぁっ、とか言ってるが知らない。
「……」
「どうしました? 私の顔が可愛いのは知ってますが」
「いや可愛いけど! 可愛いけど自分で言うんだ!」
「否定しても私が可愛い事は変わりませんからね」
「実際可愛いから許される言葉だよねそれ」
そんなことは無いけれど。
口には出さず、しかし笑みで返して会話を終わらせる。
とりあえず渡すのはノートだ。
わーいとよろこぶ本田さんの横をすり抜け、席に。
座り、授業道具を机に。
外は晴天。
日差しは眩しく、蝉の声がよく聞こえ始め、草の香る風が少しの涼しさを与えてくれた。
冷房は授業中のみである。
財源が税金といえ、少し不便ではあるなぁ。
始まるホームルームを聞きつつ、そんな益体のない考えを巡らせて遊ぶことにした。
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放課後。
私は本田さんに呼ばれて玄関で待っていた。
一緒に帰りたいらしい。
「待ったー?」
「いえ。ところで校門付近に不審者が居るそうなのですが、裏からでますか?」
不審者? と校門を遠目から眺め、あっ、と小さな声をあげて苦笑い。
「知り合いですか?」
「うぅ……プロデューサーだ……あれほど来ないでって言ったのに……」
ちょっと行ってくる。と本田さんは駆け出し、教師たちに囲まれてわたわたしている男性の元に。
しばらくすると教師たちは解散。どうやら誤解は解けたようだ。
「夢見ー! プロデューサーが送ってくれるってー!」
満面の笑みで駆け寄ってきた本田さんは開口一番そんなことを言った。
「良いのですか?」
「うん! いつもお世話になってる御礼!」
「分かりました。そういうことなら」
男性に近寄る。
体格は良く、がっしりとしていて高身長。
強面ではあるものの、気弱さを少し感じる男性だ。
その瞳には強い芯が見える。
「いつも本田さんががお世話になってるみたいですね。美城プロの武内です」
「はぁ、ご丁寧に……。私は篠原夢見です。今日はよろしくお願いします」
差し出された名刺を思わず受け取り、さらに自分の、と動きかけてそんなものはないことに気付く。
武内さんは怪訝な顔をしたものの、掘り下げては来なかった。
「ところでアイドルに興味はありますか?」
「今のところはあまり」
そうですかと残念そうな武内さん。
本田さんは車の中、後部座席の整理をしている。
「まあ、もし自分を変える手伝いをさせてくれるなら、いつでもいいから連絡してください」
「はぁ……」
リスカしてるアイドルとか問答無用でアウトでは。とは口にしなかった。
視線が既に左袖口に向いていたし、多分気付いているから。