前世は真田幸村で御座る   作:賀楽多屋

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石田三成の章 死後のあれこれ

 

 

俺は茶坊主から身を立てた身であるからか、この世の不思議にはとんと疎い。正則の馬鹿が好きな怪談話も、清正が一時期嵌りそうになっていた占いも俺は信じていない。

 

 

だからこそ、輪廻転生など誰かが都合良く考えた理の一つなのだと思っていた。この身にいざ起こるまで、そんなものは信じたことがなかったのだ。

 

 

 

俺が石田三成であったことを思い出したのは齢三つの時であっただろうか。母と父、姉の四人家族の長男として産まれたらしい自分に俺は身が凍る思いをした。

 

 

血の繋がった家族と懇意にしていたとは言えない身だ。私にとっての家族と言えば、不遜なことであるが、秀吉様に寧々様、あとはまぁ、飼い犬程度で正則と清正も入れてやっても良いくらいなものだ。

 

家族団欒という言葉には、とんと縁がなかった。

 

 

だからこそ、俺はこの今生の父上と母上、それから姉上との接し方に齢三つでありながら、苦悩した。

 

 

 

今ではなんとか、あの三人との接し方も様になったと思う。一時期は大層苦労したものだ。

 

 

ーーーーー嗚呼、こんな毒にも薬にもならない話をしたかった訳ではない。

 

 

今は、雪也のことを考えなくてはならなんだ。

 

 

 

俺は雪也と別れてから、未だにしつこく肩を組んでくる兼人に「雪也をどう思う?」と問いかけた。

 

兼人は、前世の時もそうであったが「雪也?」と鈍い声を出す。

 

 

「そうだ。彼奴、今日様子が可笑しかっただろう。まさか、本当に幸村ってことはないだろうな」

 

「確かに、今日は一段と幸村らしかったな」

 

 

「しかし、そうなるとだ。俺と貴様だけでも平成の世に転生したと言うのが信じられぬ話なのに、幸村もとなればいよいよ気味が悪くなってくるな」

 

 

「いや! そう怯えることはないぞ!! 三成!!」

 

 

「貴様、俺の名を何度間違えたら気が済むのだ。今の俺は三輝だと何度言えばその鳥頭は覚える」

 

「良いか、三成。これは愛だ! 愛なのだ!! 私と三成、幸村のあの三人の誓いが絆となって三人共に今生に生を受けた。固い絆が成し得た愛の所業なのだ!」

 

 

「俺の話を聞け! なんで貴様は四百年経った今でも人の話を聞かないのだよ!」

 

 

俺は頭痛を訴えてくる頭に手をやって、隣でべらべらと普段通りに愛と義について語る兼人を忌々しそうに見上げた。

 

 

 

今は浅越兼人と名乗っているこの男は四百年前、戦乱の世として有名であった織豊時代に直江兼続として生きていた。軍神と名高い上杉謙信公とその息子、重勝の二代に仕え、数多の戦場で愛と義を訴え続けた大変暑苦しい男なのだ。

 

 

流石に四百年も経てば、少しくらいは落ち着いているかと思えばそんなことは毛程にもなかった。

 

 

俺と雪也、そして兼人が出会うことになった保育園で、沢山の園児に囲まれて愛と義を説くこの男を見た時の俺の心境が分かる奴は居るだろうか。

 

 

恐らく、前世で何度も兼続とぶつかり合った奥州の独眼竜とその家臣、正則や清正も分かってくれるだろう。

 

 

ある意味、全く変わる様子がないこの男に感心してしまった俺がいた。

 

 

 

「幸村であったら良いな。また三人で今生の誓いを立て、歳を取っていきたいものだ」

 

「兼人・・・」

 

「今度こそは、共に歳を取り、老後を迎えて、句でも嗜もうではないか。嗚呼、幸村は老いても鍛錬をしてそうだな。私もその隣で鍛錬でもするか」

 

 

まだお互いに十六歳であるのに、兼人は老後についてあれこれと楽しそうに語った。何時も無駄に楽しそうな奴だが、この時は通常よりも殊更楽しそうであった。

 

 

 

俺が関ヶ原で潰えてから、次にそう長い年月を経ずに幸村が大阪で生を全うしたということを俺は兼人と再会してから聞いた。兼人は未だに幸村の味方となってやれなかったことが凝りになっているようだが、幸村はそのようなことは気にせんだろう。

 

 

そう言ってやると兼人はそうなのだと言って笑い、少し羨望を混じえた顔で語った。

 

 

武士としての魂を抱いたまま、生を全う出来た幸村が少しばかり羨ましいのだと兼人は微笑んでいた。

 

 

俺は兼続から二度の大坂の陣が開戦されたことを聞いて、驚く程に衝撃を受けた。

 

 

幸村は俺の後を継いで、秀頼様を守ったらしい。大阪城に陣を敷き、あの家康の本陣に鉄砲玉のように突っ込んで幸村はそこで生涯を閉じた。

 

 

そのことは例えようもない程に嬉しい。幸村が俺の志を引き継いでくれたことが、言葉にならない程に嬉しい。

 

 

だが、俺の死後にまたあの真田兄弟でやりあったのだと兼人から聞いた。関ヶ原で袂を分かたせてしまったあの兄弟を、俺は死んでからも離れさせてしまった。

 

 

そのことが、俺は気に入らなかった。

 

 

兄の信之は俺の数少ない友人であった。弟の幸村も俺の数少ない友人だ。

 

 

俺の死後は、あの二人がまた揃って戦地を駆け抜け、互いの背を守り合っていると信じたかった。その望みは、二人を引き離した俺には過ぎたものだったのだろうか。

 

 

 

「フン。私はまだ第一線を引く気はないぞ。老いても、気になって仕方がないだろうからな」

 

 

「もうあの世ではないのだぞ、三成。そうだ、今生では三人で旅に出ないか? 日本から出て、世界中を旅するのだ。アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、アフリカ、エジプト。中国も忘れてはいけないな、ロシアにも行ってみたい」

 

 

「・・・そう言えばそうだったな。世界中の旅か。姦しい旅になるだろうが、確かに貴様にしては名案かもしれぬな」

 

 

 

「三成! お前は何処へ行きたいか?」

 

 

 

次々と日本の外にある国名を上げていって、何処へ行きたいかと尋ねる兼人に俺は「そうだな」と間を持たせて答えた。

 

 

 

「三人ならば、何処でも良い。日本から一等遠く離れた場所であっても、反りが合わない輩が蔓延る地域であっても、だ」

 

 

「そうか! ならば、幸村にも聞いてみよう!! 幸村は何処へ行きたいと答えるだろうな」

 

 

 

俺達三人の中で、一番長く乱世を過ごした兼人は俺達が居なくなった前世で何を見、何を感じたか等は一つも語らなかった。

 

兼人がいつも口にするのは、俺と幸村がいた時ばかり。

 

 

俺は俺が居なくなったそれからのことを何度か調べたことがある。

 

 

今の時代は大層便利で、インターネットや図書館があり、情報を収集するのにこれ程時間を取られないことが今生で最も気に入っている事柄だ。

 

 

俺が居なくなった豊臣軍、関ヶ原の後に家康が開いた江戸幕府、幸村と兼続が対峙した二度の大坂の陣。

 

 

俺は未だに石田三成であり続ける。四百年経った今でも俺はこの平成の世に居ながら、思いを馳せるのは乱世の世だ。

 

 

 

だが、もし。

 

 

 

また、あの三人で出会えるのであれば俺はこの平成の世を自分の時代だと思えるかもしれない。

 

 

 

 

 






石田三成とその家族の仲については、悪くはなかったとこの間、友人から聞く機会がありました

私自身、歴史上の人物を扱っているので出来るだけ、史実を織り交ぜたいと考えていますが、戦国無双のキャラ像にも忠実にありたいので、ゴニョニョしながら書いていきたいと思います

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