ソードアート・オンライン~剣の世界の魔法使い~   作:神話語り

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 デュエルは原作では《初撃決着》でしたが、本作では《半減決着》としています。


神聖剣VS二刀流(後編)

 まず先に動いたのはキリトである。ソードスキルを使わず、二刀を恐るべきスピードで振るってヒースクリフに攻撃する。しかしヒースクリフは全く表情を動かすことなく、的確に左手の《神聖十字盾(Holy cross shield)》を動かし、キリトの攻撃をはじいていく。

 

「どうしたのかねキリト君。こんなものかい?」

「それは……どうか、なっ!!」

 

 キリトが弾かれた右手の黒い片手剣、《エリュシデータ》を肩に担ぐ。そして次の瞬間、《エリュシデータ》の漆黒の刀身を、真紅のエフェクトライトが包む。

 

「ヴォーパル……ストライクッ!!」

 

 《片手剣》のスキル熟練度が950になった時に出現する、単発重突攻撃、《ヴォーパル・ストライク》。片手剣用単発ソードスキル最強を誇る、非常に使いやすいスキルだ。ソードスキルの中には、その威力に比例して、《スキルチャージ》時間を課せられる物が少なからず存在する。しかし、この《ヴォーパル・ストライク》は並みの片手剣スキルの二倍近くの威力・射程距離を誇るにもかかわらず、チャージ時間はほとんどない。もちろんディレイ時間は少しばかり長めだが、《ヴォーパル・ストライク》はその威力で相手との距離をあけられるため、大した問題ではない。本来は対モンスター用のソードスキルではあるが、乱用さえしなければ対人戦(PvP)でも十分通じる強さである。その強さから、同系統のソードスキルが出現するのではと目されていたが、現在のところ《ヴォーパル》の名を冠するスキルは、シェリーナの知る限りこの技だけだ。

 

「ほぅ……やるじゃねぇかキリトの野郎」

「ええ。ソードスキルを使わないで戦い、ここぞという時に強攻撃をかける……さすがです」

 

 コクライとシェリーナが口々に感想を述べる。

 

 今回キリトとヒースクリフのデュエルで使われているルールは《半減決着》だ。どちらかのHPがイエローゾーンに陥ったその瞬間にデュエルは終了する。キリトとヒースクリフは、どちらも相当な実力者だ。レベルも両者ともに90を軽く超えているし…キリトのレベルは97、ヒースクリフのレベルは105とされている…どちらかの攻撃がクリーンヒットした瞬間に決着すると言っても過言ではないだろう。

 

 吹き飛んだヒースクリフをめがけて、キリトのラッシュが始まる。二刀にピンク色に近い鮮やかなレッドのエフェクトがかかる。弾丸のように打ち出されたキリトが、旋回しながらヒースクリフに斬りつける。一撃……二撃。

 

 《二刀流》二連撃ソードスキル、《ダブル・サーキュラー》。ヒースクリフの十字盾に激しいインパクトが発生し、わずかに聖騎士の体力が削られる。だが、赤衣の聖騎士は動じることはない。

 

「今度はこっちの番だよ」

「何っ……」

 

 ヒースクリフの盾が、水平に構えられる。その先が……純白のエフェクトライトを纏う。白く輝く盾が、神速で突きだされる。

 

「くっ!?」

 

 キリトが二刀をクロスして防御する。盾は弾かれたが、キリトにもダメージ。再び、HPはほとんど同じ量となった。

 

「盾でもソードスキルが使えるのかよ……ホント壊れてやがるなあのおっさんは」

「うわさには聞いていましたが……本当だったのですね……」

 

「全く……まるで《二刀流》だな」

「驚いたかね、キリト君。今のは《神聖剣》盾攻撃、《エスカーション・ストライク》さ……まぁ、君の二刀流ほどではないがね」

「はっ……!!」

 

 キリトがにやりと笑う。瞬間、再びヒースクリフに肉薄するキリト。しかし今度は、ヒースクリフの《神聖十字剣(Holy cross sword)》が突きこまれ、キリトに回避を余儀なくさせる。しかしキリトは瞬時に体をひねり、その攻撃を避ける。そしてその形態は、キリトがソードスキルを使える体制。今度は《ダークリパルサー》に青い光が宿る。

 

 上下に四連撃が叩き込まれる。そしてキリトを中心に四角形のエフェクト。《片手剣》四連撃、《バーチカル・スクエア》だ。《片手剣》のスキルの中では《ヴォーパル・ストライク》、姉妹技の《ホリゾンタル・スクエア》《スラント・スクエア》と並んで最優とされている汎用系ソードスキルだ。《片手剣》は決して、最上位ソードスキルが最強なわけではない。汎用的な強さしか持たないスキルが、個々のよさを生かしあっていくのが《片手剣》が優良スキルとされるゆえんなのだ。

 

「相変わらずの反射速度だね」

「そっちこそ硬すぎるぜ……!!」

 

 キリトの言葉通り、ヒースクリフのHPはほとんど減ってはいなかった。

 

「反撃させてもらおうか!!」

 

 ヒースクリフの十字剣が真紅のエフェクトを纏う。三連撃の斬撃がキリトへと叩きこまれる。

 

「くっ!」

 

 キリトはステップで回避。しかし、受けきれない。がりっ!という音と共に、キリトのHPが目に見えて減少した。どぉぉ!!と観客席がどよめく。

 

「キリトさん!!」

「まずいな、一撃喰らったか」

 

 シェリーナの横でクラインが呟く。隣ではエギルが真剣な目つきでキリトを見ている。

 

「動くか……?」

 

 シェリーナの右隣では、コクライが戦況を予想する。

 

「どうかな。キリト君も反撃するよ。ほら」

 

 ヒバナが指をさす。すると、まるで予知でもしたかのようにキリトが反撃を始めるところだった。《二刀流》のスキルだが、シェリーナは名前を知らない。六連撃のソードスキルが、ヒースクリフをたたいていく。そして、最後の七撃目が、遂にヒースクリフのガードを破った。がっ!と今度はヒースクリフのHPが減る。再び観客がわく。

 

「……《ホーリー・スマイト》を受けても即座に反撃ができるとは」

「おいおい、あんた硬すぎだろ、《アイソン・ストリーム》を食らってもそれだけしか減らせねぇのかよ……」

 

 にやり。

 

 そうとしか形容できない獰猛な笑みが二人の顔に浮かぶ。

 

 そこからは、高速の技の応酬だった。

 

 キリトが連撃を叩き込むが。ヒースクリフの盾をなかなか突破できない。対するヒースクリフが剣戟を放っても、キリトにすぐ避けられてしまう。それでも、お互いにインパクトダメージや、時々抜けてくる、または避け損ねた剣によって、HPにダメージが与えられる。

 

 ヒースクリフの十字剣が八連撃をうつ。キリトの二刀が十一連撃を放つ。高速の応酬。遅くはあるが、減る時には恐ろしい速さで減っていく両者のHP。

 

「すごい……」

 

 我知らず、シェリーナは呟いていた。

 

 すごい。これが、ユニークスキル所持者(ホルダー)の……《本物の強者》の戦い。これだけの境地へと、自分は辿り着くことができるだろうか。いや、きっと無理だ。あきらめることは決していいことだとは言い難いが、しかしそれでもあきらめさせてしまうほど、この二人の戦いは凄まじかった。

 

「俺達も参加すればよかったかな」

「それはそれで面白かったかもね」

 

 シェリーナの隣では、コクライとヒバナがそんなことを漏らしていた。

 

「うおおお―――――――ッッ!!!」

 

 キリトが裂ぱくの気合いを放つ。両手の二刀が、それぞれ(まばゆ)いばかりの白銀のエフェクトライトを纏う。目もくらむような速さで放たれる剣戟。

 

「スターバースト……ストリームッッ!!」

 

 キリトの《二刀流》が誇る、上位剣技。全十六連撃《スターバースト・ストリーム》。流星のごとく降り注ぐ斬撃が、ヒースクリフのHPを確実に減らしていく。あとすこし。あと少し……。

 

「……?」

 

 その瞬間、シェリーナはヒースクリフの顔に、何か表情が浮かんだような気がした。キリトならもっとよく分かったのであろうが……。

 

「――――焦り?」

 

 シェリーナがそう感じた、次の瞬間。

 

 

 世界が、ぶれた。

 

 

 なんと言ったらよいのか。時間を盗まれた、とでもいうのか。妙に遅く感じる空間の中で、純白のエフェクトライトを纏った《神聖十字盾(Holy cross shield)》だけが速く動いているように見える。そして、それはキリトの剣を弾き飛ばし……。

 

 世界が元に戻る。

 

「っ!コクライさん!」

「ああ……今のは……」

 

 コクライも感じたようだ。

 

 超次元的なスピードで剣を弾き返されたキリトは、大技の後の硬直時間をいやおうなく課せられる。絶望的な一瞬を、ヒースクリフが見逃すわけもなく。

 

 《神聖十字剣(Holy cross sword)》による一撃が、キリトに叩き込まれた。

 

【Winner,Heathcliff!!】

 

 ピィ―――――!というエフェクトサウンドと共に、上空にデュエルの決着を伝えるウィンドウが開く。

 

 わぁああああああ!!と会場全体がどよめきに包まれた。

 

 

 ***

 

「いやー、惜しかったな、キリトの野郎」

「……クラインさん、ヒースクリフさんの動き、おかしくありませんでしたか?」

「は?そりゃぁ何で」

 

 シェリーナはコクライとの約束通り…なぜかエギルとクラインにも…夕食をおごっていた。そこで、先ほどのヒースクリフの圧倒的なスピードについて二人にも質問をしてみたのだが。

 

「確かに《神聖剣》は速かったけどよぅ」

「その……何か、時間が止まるような感覚は受けませんでしたか」

「いや……受けてねぇぞ?」

 

 おかしい。キリトは確かに時間が遅くなるのを感じたという。ということは、ヒースクリフを除けばキリトとシェリーナ、そしてコクライとヒバナの四人しか、あの不思議な感覚を体験していないことになる。

 

「そうですか……すみません」

「いやいや」

「今日はごちそうさん」

「あ、はい。また機会があれば」

 

 エギルとクラインが店を出ていく。

 

「俺達もそろそろ行くぜ」

「じゃぁね、シェリーナちゃん、またごはん一緒にしようね~」

 

 コクライとヒバナも帰っていく。

 

 彼らに手を振りながら、シェリーナはこの謎を聞けそうな人物を探していた。まさかヒースクリフ本人に聞くわけにもいくまい。誰かシステムに詳しい人はいないだろうか……

 

「……!!」

 

 そうだ。丁度最近知り合ったばかりではないか。不思議なスキルを使う、裏世界の住人を。

 

「……ドレイクさん」




 お待たせしました。後編です。

 次回は久々のドレイク君の登場です。
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