ソードアート・オンライン~剣の世界の魔法使い~   作:神話語り

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 一週間以上お待たせして申し訳ありませんでした!!お待たせしました、『剣の世界の魔法使い』最新話です。

 この話を書き始めた日に初めて、字数制限の数字を間違えていることに気が付いた……どーりで少ないなぁと思ってたんだ……。

 ですが文字数自体はあまり変わらないと思います。ご了承ください。


《魔法》

 シェリーナが目をあけると、明るい光が目を刺した。眩んだ視界を元に戻すべく、何度か眼をぱちぱちさせると、周りの様子が見えてくる。シェリーナは、どうやら長テーブルの上に仰臥していたようだった。あたりを見渡すと、木々の葉が日の光を反射して、明るくあたりを照らしていた。どうやら《エネマリア》でそのまま眠ってしまったようだった。

 

 ふと肩の上にわずかな重みを感じて、それを見ると、そこには赤銅色の魔導服(ウィザードローブ)がかけられていた。ドレイクのふだん着ている魔導服(ウィザードローブ)だ。ということは、今彼はローブを羽織っていないことになる。現実世界の季節を比較的投影しやすい構造になっているアインクラッド第七十四層の空気は、極寒とは言わずともかなり肌寒い。アインクラッドには《風邪》のバッドステータスはないが、ドレイクが寒い思いをしているのではないかと心配になってしまったのだ。

 

「大変!返さなくちゃ……」

 

 シェリーナはあたりを見回した。しかし、見える範囲には酔いつぶれていまだに寝転がったままの《エネマリア》の住民達(NPCモンスター)だけ。黒龍王もいまだにその巨体…とは言っても二メートルくらいだが…を倒して熟睡しているが、ドレイクの姿は見当たらない。

 

 シェリーナは視界右端に、簡易マップが表示されていないことに気が付いた。そういえば、アインクラッド第三層を始めとする《索敵ジャミング属性》を持ったステージがこの世界にはいくつか存在する。それと似たようなものなのだろうか、と一瞬思ってから、シェリーナは否と思い直した。

 

 そもそも、データに記録されていないのだ。《エネマリア》が存在するのはプレイヤーが立ち入ることを禁止されている《不可侵エリア》。シェリーナは住民たちの特別な許可を得てここに入っているわけであって、本来ならば立ち入ることは出来無いのだ。そもそも、スキルを必要とする存在(プレイヤー)が居ないため、スキルに対応する必要がないのだ。

 

 シェリーナは索敵スキルも機能しないことを確かめると、道しるべなしでドレイクを見つけるべく彷徨い始めた。思えば、《エネマリア》の中を一人で散策するのは初めてだ。普通のプレイヤーは立ち入ることを許されない、《不可侵エリア》を歩くことができるという不思議な快感がシェリーナの心を満たす。

 

 《エネマリア》の領域は、基本的に外――――《仄暗き森》と似通っていた。しかし、最大の相違点は、『仄暗くない』というところだ。《仄暗き森》では木々が空を天蓋の様に覆っていたが、《エネマリア》にはそれがない。朝の太陽光がきちんと降り注いでいる。――――太陽が空に無いのにどうやって太陽光が降り注いでいるのかは不明だが。

 

 シェリーナが歩いているのは、木々が曲がってゲートのようになっている道だ。地面は岩で舗装され、現実世界の京都のような観光都市の、寺院などがあるあたりによく似ていた。太陽光が肌に良い感じに沁みこんで気持ちがいい。

 

 道の先に、大きな洞窟が見えてくる。灰色の岩でできた洞窟は、子どもの頃社会科見学で行った鍾乳洞の様にも見えた。

 

 シェリーナは恐る恐る、といった感じで、洞窟の中に足を踏み入れた。

 

 

 洞窟の中は意外に暖かく、明るかった。明るい理由はすぐに分かった。洞窟の天井に中くらいの大きさの穴が開き、そこから光が降り注いでいるのだ。洞窟内部は思ったより狭かった。横穴とか洞穴、といった雰囲気が強い。そして、温かい理由は、この内部にいるシェリーナを除いた唯一の人物が、中心で薪をたいているからだ。

 

 ドレイクだった。普段の赤銅色の魔導服(ウィザードローブ)は、現在シェリーナが持っているため着ていない。そのため、ドレイクが魔導服(ウィザードローブ)の下に着ている服を見ることができた。

 

 ドレイクが来ていたのは、銀色の短衣だった。その下に長袖の白いシャツを合わせている。灰色の頭が、来訪者を感知して揺れる。ゆっくりと顔をあげたドレイクは、赤銅色の眼でシェリーナを捉えると、目を細めて微笑んだ。

 

「おはようございます、シェリーナ」

「お、おはようございます……あの、これ……ありがとうございました」

 

 シェリーナはドレイクに赤銅色の魔導服(ウィザードローブ)を差し出す。ドレイクはそれを受け取ると、そのまま袖を通した。

 

「あの、ごめんなさい!寒かったですよね」

「いえいえ。私はこの洞窟で寝起きしているので、焚き木があります。なのでそこまで寒くはありません。けれどあの大広間は夜になるとこの時期かなり冷え込むんです。モンスターの皆さんは特に寒さとか気にしないので大丈夫なんですが、さすがにシェリーナをそのままにしておくわけにはいかずに。本当はどこか暖かい所に運ぶことができればよかったのですが、お恥ずかしいことに私の筋力値は非常に低いので……。さりとて、熟睡しているシェリーナさんを起こすわけにもいかず、モンスターの皆さんは一度寝たらなかなか起きないのを知っていますから」

 

 まだ寝てたでしょう?とドレイクはいたずらっぽい笑みを浮かべ、赤銅色の眼でシェリーナを見た。

 

「はい。黒龍王さんまで」

 

 シェリーナは黒龍王の熟睡姿を思い出してくすっと笑った。

 

「でしょう?あの人……いえ、あの龍は《エネマリア》で一番寝起きが悪いんですよ」

「へえ、そうなんですか!?」

「ええ。特にこの時期。古来伝承にもあるように、多くのドラゴンは寒さが苦手です。そのため、ドラゴンは冬眠をします。王は特殊な龍……というよりそもそも冬眠を必要としないモンスターなので、冬籠りをしたりとかはしないんですが……どうしてなかなか。茅場卿は随分そういうところに凝っているようで、黒龍王は冬になると眠気が増すんですよ。普段から寝起きは悪いんですが、この時期になると下手をすれば昼になっても起きてきません」

「へぇ……」

 

 なんだか厳格な上司のおちゃめな一面を見た部下の気持ちというのがわかった気がした。

 

「話がそれてしまいましたね。私が今、受け取ったローブをそのまま着たのは、ひとえにこれがないと落ち着かないからです。もちろん、生活に支障が出るとかそういうのではないんですが……私が持っている防具というのがこれしかないんですよ」

「え?」

「いや、ですから、私はこの魔導服(ウィザードローブ)以外に装備できる防具がないんです」

「え……えええええ!?」

 

 装備できる防具が無い!?そんなことが有りえるのだろうか。シェリーナはその疑問をドレイクに話した。

 

「はい。ありえます。まぁ、普通はあり得ないことなんですが……私のユニークスキル《魔法》は、特定状況以外で鎧などを装備することができません。なので必然的に、防具はローブなどになってくるんです。この魔導服(ウィザードローブ)は、《魔法使い専用アイテム》とでも言ったところです。基本的には外の世界(アインクラッド)で流通している同種のアイテムと変わりないのですが、このローブには多少ですが魔力を増強させる効果がありまして。武器スキルが使えない私からすれば、《魔法》は唯一の攻撃スキル。非常に便利です」

「武器スキルが使えないんですか?」

 

 本来ならば、それはあり得ないことだった。すべてのプレイヤーは、ログインしたその瞬間から戦闘の意欲がある/無しに関係なく、共通で基本スキル《片手剣》を所持する。このスキルは使用可能スキル欄から消去することはできず、シェリーナを含む全プレイヤーがこのスキルを使うことができる。それに、最低ランクの武器ですら、初期状態の筋力値があれば使えるのだ。実質、武器スキルが使えないということはありえない。

 

 しかしドレイクはシェリーナの問いにひとつ小さくうなずくと、見てください、といってメニューウィンドウを開いた。ウィンドウは半透明の紫色で、シェリーナにはそこには何も書いていないように見える。しかしドレイクがメニューウィンドウの端に有るボタンを押すと、ウィンドウは《可視モード》となり、シェリーナにもその内容が見えるようになった。

 

 様々な情報が書かれたメイン画面。右端には【Draak(ドレイク)】というプレイヤーネーム。たしかオランダ語で『龍』を意味する言葉だったはずだ。その横にレベル。しかし、レベル表記はドレイクの手に隠れてよく見えない。HPゲージ、装備アイテム欄と続いて、スキル欄。一番最初は彼の誇るユニークスキル、【魔法】。その後に、【索敵】【隠蔽】などの戦闘系から、【料理】【焚き木】といった生活系が続く。様々なスキルが取得されている。

 

 ドレイクはウィンドウの右側にあるメニュー欄に手を動かした。その時……一瞬だけ、ドレイクのレベル表記が見えた。

 

 

 ―――――【Lv:200】

 

 

「(え……!?)」

 

 150越え。ありえない。SAOだけではないが、普通ゲームという物はレベルが高くなれば高くなるほど次のレベルに到達するのは難しくなるらしい(と言うのも、シェリーナはゲームという物をあまり知らない。そのため、これはキリトに聞いたことである)。現状最強と言われているヒースクリフでさえレベルは105。確かコクライですら104どまりだったはずだ。それに、現在最前線のモンスターを、一日中狩り続けてもレベルはほとんど上がらない。そんな状況下で、200などという数字はあまりにも非現実的であり、あり得ない話なのだ。

 

 見間違いかと思いもう一度レベル表記を見ようとしたときには、ウィンドウの画面が切り替わってしまい、既にそれを見ることはできなくなっていた。代わりに出現していたのは、ドレイクの使用可能スキル一覧だった。

 

「これを見てください」

 

 ドレイクが拡大したその欄には、【Weapon skill(武器スキル)】と書いてあった。そしてその下、取得可能スキル欄には……

 

「嘘……」

 

 何も、書かれていなかった。

 

 絶句するシェリーナに、ドレイクが苦い顔をして語る。

 

「信じられないかもしれませんが、本当なんですよね、これ……。《魔法》のスキルを取得した時に、全部消えてしまったんです」

「スキルが消滅することなんてあるんですか?」

「無い……と思いますが……これもこのスキルの効果か何かなんでしょうかね」

「スキルの効果――――あ」

 

 そしてシェリーナは、丸一日ほどすっかり忘れていたここに訪れた理由を思い出した。

 

 そうだった。そうであった。シェリーナはただ単に《エネマリア》に遊びに来たわけではないのだ。シェリーナは、ドレイクにこの間のキリトとヒースクリフの試合の時に感じた違和感について聞きに来たのだった。

 

「す、すみませんドレイクさん。私、ドレイクさんに質問があってここに来たのに、丸一日近く忘れてました……」

「おやおや。いえ、私たちが突然あんな歓迎をしたせいで忘れさせてしまったんです。こちらこそすみませんでした」

「い、いえ……それで――――」

 

 

 その日は、《エネマリア》で過ごした。明日からキリトの《血盟騎士団(Knight of Blood)》団員としての活動が始まる。シェリーナはその日の夜、ドレイクや昼過ぎに起きだしてきたモンスターたちに別れを告げ、外の世界(アインクラッド)へと戻って行った。

 

 結局、ヒースクリフの謎の現象については、ドレイクをもってしても詳しく分からなかった。しかし、彼は一つ思い当たることが有ると聞かせてくれた。

 

『私の《魔法》スキルの術式の中に、《オーバードライヴ》という術があります。対象となった者に、システムの強大な加護(オーバーアシスト)を与える技です。ソードスキルの威力をあげたり、防御力を強化したり、()()()()()()()()()()()()()することができます』




 ドレイクのレベルについてはやりすぎた感が少しありますが、彼については今後謎がどんどん明らかになっていくので、その時に納得していただけると助かります。ただ、『あまりにもやりすぎだ』という考えが有られましたら、感想やメッセージなどでお知らせください。

 次回更新もまた遅れると思いますが、気長にお待ちしていただけると助かります。
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