ソードアート・オンライン~剣の世界の魔法使い~   作:神話語り

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 調べた結果、キリトのレベルは92であったことが明らかに。

 ……まぁ、キリトのレベルはオリジナル要素としてください。


オレンジ・プレイヤー

「な、なんじゃこりゃぁ!?」

 

 キリトが叫んだ。

 

 ここはエギルの店の二階。客間としても使っているこの部屋だが、キリトがアルゲードの自室に詰めかけた情報屋達を回避するために緊急避難的居候先として定住してしまったため、本来此処で生活していた店主は、哀れにも一階のカウンターの隅に簡素なベッドをしつらえて眠っている。それでも追い出されないのは、アスナが二日とあけずにやってきて店の手伝いをしているからだろう。宣伝効果は抜群だ。もちろん、シェリーナも手伝ってはいるのだが、いかんせん顔を隠しているためアスナほどの宣伝効果にはならない。

 

 因みにベッドなどの家具などは、《日曜大工》という奇妙なスキルによって作成することができる。このスキルで作った家具を売って生活費を養っているプレイヤーもいるほどなので、邪険にはできないところが恐ろしい。

 

 さて、当のキリトだが、ヒースクリフとのデュエルに敗北した彼は約束通り《血盟騎士団(Knight of Blood)》に加入した。あきらめの悪いキリトの事だから悪あがきをするのではないかと思ったが、以外にもすんなりと受け入れた。ソロプレイにも限界が来ていたのだろうか―――――。

 

 そして、キリトは二日間の準備期間を終え、今日から正式にギルド団員としての活動が始まった。集合時間の前に、普及された制服(特注品)を装備したキリトだったが、それは……

 

「……地味な奴って言わなかったっけ」

「これでも結構地味な方よ」

「似合ってますよ、キリトさん」

 

 目のいたくなるような純白のコートだった。普段キリトが使用しているモノと形状的には大して変わらない。シェリーナは大規模なギルドに所属したことがないのでよくわからないが、ギルドを創るにあたって、ギルドマスターに与えられるアイテム、《盟約のスクロール》によって与えられる特権の中に、《制服作成》という物があるらしい。これは、設定した性能を記した《アイテムレシピ》を作成する機能であり、これによって作られたレシピを《裁縫》などのスキルをもった者に渡し、その通りに作成することによって、本来ランダムパラメーターになるはずの作成アイテムのパラメーターを一定に出来るという物だ。もちろん、壊れ性能をもった制服は作れないし、規模や全体のレベルなどによって算出される『ギルドレベル』によっても性能上限が左右されるらしい。もっとも、《血盟騎士団》は《最強》の称号を冠するギルドなだけあってギルドレベルも相当な高さらしい。そのため、キリトのもともと使っていたコートとほとんど遜色のないアイテムが作られたのだが……

 

 ……普段黒ずくめのキリトには、白いコートは似合ってはいるのだが、何というか……違和感がある。純白のコートには真紅で襟に小さな、背中に大きな十字模様が染め抜かれており、《血盟騎士団》の一員であることを示している。

 

 はぁ~っと大きなため息をついたキリトは、観念したようにどっかりと揺り椅子に座りこんだ。そんなキリトをニコニコと眺めていたアスナは、あ、と何かに気付いたような声をあげると、

 

「そういえば、まだきちんと挨拶してなかったね。これから同じギルドのメンバーとしてよろしくお願いします」

 

 姿勢を正し、右手を差し出した。

 

「……ああ、よろしく」

 

 キリトもその右手を握る。

 

「……とはいってもなぁ……俺はヒラでアスナは副団長様だからなぁ……」

 

 キリトはアスナの背中に人指しを置くと、そのまま腰までつーっと指を這わせた。

 

「きゃぁ!?」

「こんなこともできなくなっちゃったよなぁ」

「アスナさん、なんてうらやま……じゃなくて、なんてことしてるんですかキリトさん!」

 

 なんだか前にもあったようなセリフを叫ぶシェリーナ。アスナはキリトの頭をぽかりと叩くと、ぷくーっと頬を膨らませ――――また何かに気が付いた表情を浮かべた。

 

「あ、キリト君、言うの忘れてた」

「何だ?まだなんかあるのかよ」

「うん。あのね。キリト君、ヒラじゃなくて副団長権限持ってるからね」

「「え?」」

 

 アスナの言葉に信じがたいものが含まれていたのを聞きつけたキリトとシェリーナが同様の声を上げる。

 

 フクダンチョウケンゲン?

 

「「えええ―――――っ!?!?」」

 

 

 ***

 

 

 《血盟騎士団》の本部に行ったとき。そういえば、ヒースクリフの隣に、アスナのものと思しき椅子の他にもう一つ同型の椅子があった。アスナによると、あれは「いつか現れるであろう新たなユニークスキル使いのための席」だったそうだ。つまりヒースクリフは、当初から自ら以外のユニークスキル使いが出現することを予測していたということだ。そしてその椅子が出来上がった時点では、既にキリトは《二刀流》を獲得していた。何という慧眼。

 

 そんなわけで、早速キリトは組織の立場からして優遇され、今日一日はアスナとパーティーを組んで攻略を行う……はずだったのだが。

 

「……なるほど。妨害された、と」

「そうなのよ……あーもうっ!ゴドフリーってばキリト君のこと本当に何もわかってないんだから……」

 

 そのゴドフリーという《血盟騎士団》幹部プレイヤーが、キリトの実力を確かめるという名目で、彼を連れ去ってしまったらしい。シェリーナはグランザム市内をうろついていたところをアスナに捕獲され、現在愚痴に付き合っているところなのだが……。

 

「なによ『本当にその力が使えるのかはわかりませんからなー』って!キリト君はあんたの何倍も強いわよ!」

 

 ここにはいない部下に向かって文句を言うアスナ。

 

「せっかく副団長権限があるのに使わなかったんですか?」

「使ったけど無視された」

「……」

「あーもうっ!思い出したらまたイライラして来ちゃったじゃない!」

 

 まぁまぁ、とシェリーナは彼女をなだめ、

 

「キリトさんがどの辺にいるのか見てみましょうよ。落ち着きますよ」

 

 少し昔、シェリーナ自身が試した方法をアスナにも教えることにした。好きな人が、今、どこで何をしているのか……それを見ていると…少々危ないのは理解しているが…どこか落ち着いた、温かい気持ちになるのだ。

 

 数日前のシェリーナなら、恋敵であるアスナにそんなことは教えなかったはずだ。けど、シェリーナは心のどこかで、もうすでにキリトの隣にはアスナがいるべきなのだ、と決めてしまっているのかもしれない……。

 

「うん……」

 

 アスナはメニューウィンドウからフレンドリストを呼び出すと…恐らくではあるが…【Kirito】の名前をクリックし、【Search】を選択した。直後、もう一枚ウィンドウが開く。キリトの現在位置を示した簡易マップだ。シェリーナも同じ行動をとる。

 

 マップに表示された光点の数は4。うち一つに【Kirito】のネームタグ。恐るべきスピードで第五十五層のフィールドを進んでいる。その後ろに追随する形で残り三つの光点。

 

「強いですねぇ、キリトさん」

「もうほとんど病気よね、あれ」

「はい」

 

 シェリーナとアスナはクスリと笑いあう。なんだかアスナとキリトの事を話していると、うれしくなってくる気がする。

 

「……パーティーメンバーは、誰なんですか?」

「たぶん3人の中で一番前にいるのがゴドフリー。次がハルゲンっていうゴドフリーの部下で、もう1人が……」

 

 その時、アスナが顔をゆがめた。なにか、嫌なものを思い出したような顔だった。

 

「もう1人が……?」

「……クラディール」

「――――っ!」

 

 クラディール。

 

 それは、先日キリトとアスナに絡んできた、アスナの元護衛プレイヤー。シェリーナとのデュエルに敗北し、ギラギラとした殺意を眼に浮かべて去って行った男。

 

「な、なんでまたそんな人を……誰がパーティーに同行させたんですか?」

「ゴドフリーよ。『これからは同じギルドのメンバーなんだから、過去の事は水に流すべきだ』って……」

「んな……」

 

 そんな身勝手な。クラディールがキリトとシェリーナに抱いている憎悪は、恐らくこんな短い間で消えるものではないはずだ。シェリーナの中で、そのゴドフリーという人物の評価が下がった。

 

「それに……」

「まだあるんですか?」

「うん。ゴドフリーが『限りなく実践に近い方法で戦闘を行う』とか言って、結晶アイテムを全部巻き上げちゃったの」

「全部……!?て、転移結晶もですか?」

 

 アスナがこくりとうなずく。

 

 あ、アホか……と柄にもなく思ってしまった。いくら実戦形式とはいえ、結晶アイテム使用不可という状況はあまりにも愚かだ。いつ何時凶悪な事態に陥るかはわからない。そう、たとえば――――

 

 パーティーメンバーによる裏切り行為。

 

 シェリーナの脳裏に、去り際のクラディールの言葉が思い出された。

 

『貴様ら……殺す……絶対に殺すぞ……!!』

 

 シェリーナの背筋に、冷たいものが走った……気がした。一切の生理的現象はSAO内では起きないはずなのだが。あの時のクラディールの怨嗟は、本物だった。絶対に、何が何でも殺す、という決意が目に見えていた。

 

「……嫌な予感がします」

「え……?あ、ちょっと、シェリーナちゃん!」

 

 もうシェリーナは駆け出していた。

 

 

 ***

 

 

「!!!」

『どうしたのだ?ドレイク』

 

 突然弾かれたように顔をあげたドレイクに、黒龍王が問いかける。ドレイクの表情は、かつて見たことがないほどに険しかった。

 

「……王よ……私に、一時、《エネマリア》の外に出て、この階層を離れることをお許し下さいませんか」

『何!?……何か、あったのか』

「はい。このまま放っておけば……シェリーナが死んでしまいます。それだけではない。再びこの浮遊城に殺戮の宴が始まってしまう」

『何と!?……まさか』

 

 再びドレイクは険しい表情を作って、黒龍王に一つ頷く。

 

「《地獄の王子》が帰還しました。王よ。私にご許可を。シェリーナを救いに行かねば」

 

 

 ***

 

 

「ヒィィィィ!!」

「ヒャーハハハハハッッ!!」

 

 ハルゲンという名前のゴドフリーの部下が砕け散る。右手に両手剣を握ったクラディールが哄笑を上げる。シェリーナがマップに表示されたキリトの座標に辿り着いたとき、場面はちょうどその瞬間だった。

 

「よォ。おめぇみてーなガキ一人のためによぉ、関係無ぇ奴二人も殺しちまったよォ」

「……その割には随分嬉しそうだったじゃないか」

 

 そんな会話が聞こえてくる。クラディールは、地面に倒れたキリトに向かってひっひっひ、と笑いかける。なぜキリトは動かないのだろうか。キリトの実力なら、このまま体勢を立て直してクラディールを攻撃することは可能なはずだ。クラディールのカラーカーソルは犯罪者をしめす毒々しいオレンジ。攻撃してもキリトのカラーカーソルは緑のままだ。オレンジプレイヤーになることを恐れているのではない。そもそもキリトはそんなことで恐れない……

 

 キリトが反撃しない理由。それは、キリトのHPバーを見た時に解消された。

 

 普段はない、点滅する緑色の枠がキリトのHPバーを囲っていた。さらに、プレイヤーネーム、ギルドタグと並んで、小さな稲妻型の行動阻害(デバフ)アイコン……《麻痺状態》だ。アインクラッドに現時点で存在する状態異常(デバフ・ステータス)の中で、最悪と言われる状態異常。それが、キリトにかけられていた。

 

 麻痺が最悪と言われるゆえんは、VRMMOというジャンルに置いて『身動きが取れない』ということが重度のバッドステータスになりえることに有る。麻痺状態になると、目、口、頭、左腕の肘から下等の極限られた場所を除いた個所が動かなくなる。

 

 このままでは、なすすべなくキリトが殺されてしまう。

 

「キリトさん……!!」

 

 シェリーナが悲痛な声を上げる。悲しいかな、シェリーナが到達した場所は崖の上。キリト達ははるか下方、このまま飛び降りればシェリーナは高所落下ダメージで死んでしまう。

 

 かくなるうえは、どこかに有るであろう下り坂から降りて……シェリーナがそう考えたその時。

 

 突然、背中に衝撃が走った。それは、何かはもの上のアイテムで切り裂かれたときの衝撃。

 

「かっ……!?」

「よう、また会ったなGirl」

 

 シェリーナが素早く後ろを振り向くと、そこには、一人のプレイヤーが立っていた。

 

 闇夜に溶け込みそうなマッドブラックの雨合羽(ポンチョ)。フードから見える顔はエキゾチックな美貌で満ちている。右手にはその武器が含まれているカテゴリを疑いたくなるほど巨大な肉切り包丁……短剣(ダガー)カテゴリ最強クラスの《魔剣》、《友切り包丁(メイト・チョッパー)》。頭上に表示されたカラーカーソルは、毒々しいオレンジ色。

 

 かつて、アインクラッド最凶最悪の殺人(レッド)ギルドとして恐れられた、《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》。その当主である殺人鬼、《地獄の王子(Prince of Hell)》――――

 

PoH(プー)……!!」




 更新が遅くなりました。『剣の世界の魔法使い』、最新話いかがでしたでしょうか。

 次回はいよいよドレイク君の戦闘シーンになるかと思われます。更新は相変わらずの激遅ですが、気長にお待ちいただけると嬉しいです。

 感想・ご指摘等お待ちしています。
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