元勇者と元魔王の気ままな旅路   作:鬱ケロ

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久しぶりの投稿。書いてたら文字数がいつもより多くなった。
あと駄文。いつもだけどね。


終戦

 時は遡り、シナナが戦闘を始めた頃。

 俺、桜木 空は妹である桜木 桃花と向かい合っていた。

 桃花は自分の武器であろう刀をこちらに構え、敵意を向けてきはするが、その場から動く気配はない。

 

「はぁ。なぁ、桃花よ」

「……なに?」

「お前、やる気が無いなら下がってろよ。俺もそんな奴とやりたくないし」

 

 俺が呆れながらそう言うと桃花は苦しそうな顔をする。

 ……俺と戦うことに対する迷い。向こうの世界での俺との記憶が偽物かもしれないという不安。最もその胸の内を占めているのはその二つって所か。だからなのかむけられる敵意も薄い。

 

「……甘いなぁ」

「え?」

「いや、なんでも」

 

 無意識で漏れた俺の声は小さく桃花に聞こえる事はなかった。

 ……本当に甘い。今のだってそうだ。本人は疑っているが、まだ桃花の中で俺は家族なのだろう。だからなのか俺の小声に反応した時、一瞬だが敵意が消えた。戦場で、一応とはいえ敵の前でだ。そんなのは殺してくださいと言っているようなものだろう。まだまともな戦闘訓練をしていないにしても甘すぎる。

 

「……兄さんは」

「ん?」

 

 俺が少し黙っていたからか今度は桃花が話しかけてくる。

 

「兄さんは敵なの?私の中にある記憶は本当に偽物なの?」

 

 桃花は俺に否定してほしそうにそう聞いてきた。俺と桃花は本当に家族だと。敵なんかじゃないと。俺の口からその言葉を聞いて安心したいのだろう。

 でも……。

 

「敵だ。と言ったらどうする?」

 

 そんな甘えは許さない。

 

「俺たちは本当の家族じゃない。その記憶は偽りだ。と言ったらお前はどうする?」

「にい、さん?な、なにを、言って」

 

 俺の口から発せられた言葉に眼を見開き、喉を震わせながらそれだけを口にする桃花。自分の望んだ答えと真逆の事を言われ、その言葉を理解したくないとあいつの頭が拒んでいるのだろう。

 その姿を見るのは心苦しい。でも、この世界で生きていくのならなんでもかんでも答えを聞くだけじゃあ駄目なんだ。自分で考え、行動し、そして自分の力で解を得なくてならない。だからこそ、俺は桃花の望む答えを与えない。

 代わりに俺は手を前に出しその名を口に出す。

 

「『影狼(かげろう)』」

 

 その言葉に呼応するかのように俺の影が手の中に集まり出し刀の形を作る。そして影が晴れると俺の手に一本の黒い刀が握られていた。

 俺はその剣先を桃花へと向ける。

 

「……元から、ちゃんと話をしようとしていたのが間違ってたのかもな」

 

 俺はそう言って口元に笑みを浮かべる。

 本当に俺らしくない。そもそも、俺も桃花もどっちも口下手だしな。

 

「その、刀は……」

「さぁな。それより」

 

 俺はそこまで言ったところで少しだけ殺気を放つ。

 その殺気に当てられて桃花は数歩後退る。

 

「そろそろ本気で来い。でないと、死ぬぞ」

「わた、私、は」

「戦いたくない、か?それじゃあ、駄目なんだよ。これから先、親しくなった奴と敵対するかもしれない。殺し合うことになるかもしれない。そんな時、その甘さは邪魔だ。いつかその甘さによって死ぬ事になる」

「そんなことっ!」

「あるんだよ。この世界。いいや。どの世界でも戦争をするなら少なからず起こり得ることなんだ」

 

 そして俺は、お前に死んでほしくないから敵になる。恨まれようと構わない。それでも俺は、

 

「行くぞ、桃花。兄として、先立として、お前に教えてやる。世界の理不尽を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして現在。俺は白の笑い声を耳にしながら、地面に片膝をつける桃花を見下ろしていた。

 

「向こうは終わったらしいな」

「はぁっ、はぁっ」

 

 俺が声をかけても桃花は肩で息をしており、とても会話が出来そうな状態ではない。

 

「どうした?もう終わりか?まだ準備運動程度にしか動いてないんだが」

「はぁっ。くっ!『水の精よ!』」

 

 桃花がそう言うと桃花の後ろに水で出来た槍が現れ俺に向かって飛んでくる。

 

「効かねえよ」

 

 俺はそれを『影狼』を横薙ぎに振るい、切り落とす。

 その時魔法の方に視線を移した俺に、桃花はその手に刀を待って斬りかかる。

 

「それで隙をついたつもりかよ」

「こ、の!」

 

 俺はそんな桃花の攻撃を問題なく防いだことで鍔迫り合いになると、桃花は無理矢理力で押し切ろうとしてくる。

 

「はぁ。『影よ』」

「がっ!なに、が?」

 

 後ろから脇腹を貫かれた桃花が驚きの声を上げて後ろを振り返ると、桃花の後ろに伸びた桃花自身の影から槍のように先が尖った影が伸びていた。

 

「なに、これ」

「俺の魔法、のようなもんだ。影だったら大抵なものは操れる」

 

 脇腹を抑え苦しそうにする桃花にそう説明すると、その表情を更に苦しくさせる。

 

「なによ、それ。影の魔法なんて聞いたことないんだけど。ずるくない?」

「そうか?今のなんていつものお前だったら避けられただろ」

 

 さっきの桃花は焦っていたせいで注意力が散漫になっていた。だからあんな攻撃も避けられなかった。……どうせ王女さまが心配になったんだろうけど。それで、自分が危なくなってんだから本末転倒もいい所だ。

 俺は動かずに脇腹の傷を魔法で塞いでいる桃花を見つめる。そんな桃花の体には無数の切り傷があり、そこから血が流れている。

 

「他の傷も直していいぞ。待ってやるよ」

「どうせそんな魔力残ってないことわかってるでしょ。本当、そういう意地悪な所も記憶のまんま」

 

 そこで何故か桃花は少し笑う。

 

「……なんで笑う?今、笑う要素あったか?」

 

 困惑しながらも俺は桃花に問いかける。やばい。やりすぎて頭がおかしくなったか?だとしたら、え、どうしよう。

 

「ちょっと。なんか失礼なこと考えてない?」

「……いや、全く」

「せめて、目を逸らさずに言ってよ」

 

 そう言ってため息を吐く桃花からは先程までの敵意が無くなっており、落ち着いたような雰囲気を出している。

 

「……なんだよ。諦めて死ぬ覚悟でも出来たか」

「……はぁ」

 

 俺がそう言うと、桃花はもう一度ため息を吐いた後ジト目で俺を見てくる。

 

「あのさ、兄さん」

「なんだよ」

「似合わないよ。そういうの」

「……はぁ?」

 

 突然桃花から告げられた言葉に俺はそんな気の抜けた声を出してしまう。

 いや、突然どうしたんだ。自分の立場わかってないのか?

 

「お前、この状態でよくそんな事ほざけるな。俺の手によって死にそうになってんだぞ」

「そこもだよ。本当に似合ってない」

「……お前はさっきからなにを」

「だって……」

 

 俺の言葉に被せるようにそう言った後、一呼吸置いてその先を口にする。

 

「だって兄さん、私を殺す気ないでしょ」

「……」

 

 桃花のその言葉に俺は咄嗟になにも言い返す事ができなかった。

 そんな俺に構う事なく桃花は話し続ける。

 

「まったく。世界の理不尽を教えてやるーとか、私の考えは甘いーとか言うくせに甘いのは兄さんの方じゃん」

「……なんでそう思う」

「うん?だってさっきから兄さん、私に致命傷を与えてないでしょ?さっきの脇腹への一撃も、見た感じ致命傷っぽいけど、私の残りの魔力で直せるくらいの傷だったし」

「……たまたまだろ。そんな事で」

「それと」

 

 桃花はそう言ってから俺に背を向けて数歩下がった後、俺の方へ振り返る。

 

「殺そうと思えば殺せたでしょ?最初の段階で」

「……そんなこと」

「……流石にわかるよ。今の私と兄さんの間にな力量差があることくらい」

 

 桃花はそう言って悲しそうに微笑む。

 

「それともう一つわかった事があるの。兄さんは敵じゃない。向こうの世界の記憶も全部本物だって。だって変わらなさすぎるもん。向こうにいた頃の兄さんと。だから、嘘をついてるのは王さまの方なんでしょ?」

「……」

「やっぱり。そうなんだね」

 

 今の戦いの中でそこまで考えてたのか。やっぱりこいつは凄いな。俺が桃花の立場だったらそこまで考えてる暇はなかっただろう。

 

「でもね。王女さまは、多分なにも知らないと思うの。あの人は汚い嘘をつけるような人じゃないから」

 

 真剣な顔でそう言う桃花の姿に俺は口を挟む事ができない。その顔は桃花と過ごしてきた今までで見た事のない顔だった。

 そして桃花はその手に持つ刀を俺に向けて構える。

 

「だから、私は王女さまの側にいようと思う。兄さん達について行きたいって気持ちもあるけど、王女さまが心配だから」

「……そうか」

「うん。だから、これが最後の()()。兄さんとの決別の一戦。

 約束。まだ守ってもらってないからね」

 

 そう言われて思い出す、転移した日の朝の出来事。……そう言えば、そうだったな。

 俺は約束の事を思い出し、笑みを浮かべる。

 

「わかった。いいぜ。今度は俺の本気で相手してやる」

「うん。ありがとう」

「ルールはどうする?」

「もう私の体力も無いし、一撃。互いに一撃を放って立っていた方の勝ち。それで、どう?」

「オーケー。単純でわかりやすい」

「うん。それじゃあ開始の合図は……」

「私がやってやろう」

 

 突然聞こえてきた声に俺も桃花も声のした方に視線を向ける。

 そこにはこちらに近づいてくる白の姿があった。

 

「なんだ、白か」

「なんだとはなんじゃ。失礼な奴じゃのう」

「王女さまは?」

「カノンの奴は休ませておる。だいぶ魔力を使っておったからな」

 

 そう言って後ろを向く白の視線の先を見ると座ってこちらを見ている王女さまがいた。その側にはシナナも立っている。

 

「カノン、ねぇ。仲良くなったもんだな」

「まぁの。それよりも今はこちらのことだろう?始めの合図は私がやってやるから、存分にやるがよい」

「あぁ。ありがとよ」

 

 そうしてもう一度桃花の方を向く。

 

「んじゃあ、改めて」

「うん」

「よいな。では」

 

 そう言って白は片腕を上げる。

 

「兄さん」

「ん?」

「……ありがとう」

 

 桃花がそう言い終わったと同時に白が腕を振り下ろす。

 

「始め!」

 

桜花流剣術(おうかりゅうけんじゅつ)、奥義!」

 

 桃花がそう言う姿を見ながら俺は刀を鞘に納め、居合の構えを取る。

 

「……星竜剣術(せいりゅうけんじゅつ)。天の型、居合」

 

 俺と桃花の視線が交差する。

 

佐久夜(さくや)!」

 

極夜(きょくや)!」

 

 

 

 そして振るわれる互いの刀。一方は桜が舞い、一方は世界が黒く塗りつぶされる光景を幻視する。

その一戦の勝敗は……。

 

 

 

 

 

「そこまで!この勝負、空の勝ちじゃ!」

 

俺の勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 




注)ここから先は作品に関わりのない作者の愚痴です。見なくてもいいよ!

最近ブイチューバー?の配信ばっか見てて寝不足な作者です。違うの!秘密のR城が面白すぎたの!それで火がついちゃったの!
あとゲームのイベントも重なってまったくこの作品に手を出せなかったっていうね。
あと数日で年を越します。それまでにもう一回投稿したいと思うので見ていただければ幸いです。

以上!
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