元勇者と元魔王の気ままな旅路   作:鬱ケロ

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先に前話のことで訂正を
『陽の型』→『天の型』にします。すみません。

さて、今年最後の更新。とりあえず一章はこれにて終わりです!
後書きを見ない人へ向けて先に言っておきます。皆さまよいお年を!


旅立ち

 ……なんとか勝てたか。

 俺は白の言葉を聞きながらそう思う。その時、ふと左頰に違和感を覚えたのでその箇所に手を当て、その手を見てみると少しだけ血が付いていた。

 

「あーあ。また、負けちゃったかぁ」

 

 仰向けに倒れている桃花がそう呟く。その声は悔しそうな、しかし満足したようにも聞こえる。

 俺はそんな桃花に近付き声をかける。

 

「強くなったな」

「それ、勝った人が言うと嫌味に聞こえるよ」

「ばっか。これは素直な称賛だよ。嫌味でなんか言うわけねぇだろ」

「ふふっ。わかってるよ。でも、悔しいなぁ。最後くらい、勝ちたかった、なぁ」

 

 そう言う桃花の声は最後になるにつれて掠れ、時折鼻をすする音も聞こえる。

 

「本当に馬鹿だなぁ」

「……」

「最後じゃない」

「え?」

「悔しいなら、また俺に挑めばいい」

 

 その言葉を聞き桃花は視線を俺に向ける。

 

「無理、だよ。だって、兄さんはここを出ていくんでしょう?」

「何言ってんだお前は。別にもう一生会えないわけじゃないだろうが。会えたらいつでも受けて立ってやるさ。それに……」

 

 俺はそこまで言って、白に連れられてこちらに近づいてくる王女さまへと視線を向ける。

 

「お前は王女さまの側にいるんだろう?だったら恐らく、そう遠くないうちにまた会えるさ」

「それって、どういうこと?」

 

 桃花のその問いに俺は答えず、笑みを返すだけにとどめる。

 そこで白と王女さま、シナナが俺たちの側に到着する。

 

「お疲れ様です。お二人とも」

「うむ。お疲れじゃったのう。妹殿。それと空」

「それとって俺はついでかよ」

「ふっ。しっかりとわだかまりが解けたようでよかったではないか」

「……まぁな」

「ふふ。まったく。愛い奴よのう」

 

 白は俺にそう言って微笑みながら俺の頰についた傷を治す。なんとなくその雰囲気が居心地悪くて白から視線をずらすとシナナが視界に入る。

 

「お前もお疲れさん」

「……いや、そこまで大したことはしていない。相手もかなり弱かったしな。あれなら、そこらの少し頭の回る盗賊の方が手強い」

「これはまた手厳しい評価だな。……ところでお前が相手したあいつは?」

 

 俺たちの近くにはその姿は見当たらないし、いったいどこ行ったんだ?

 

「あぁ。少しうるさかったので意識を刈って隅っこに置いておいた」

「あ、そう。悪いな。何から何まで」

「気にしないでくれ」

 

 まぁ、特に興味を惹かれる奴でもなかったしどうでもいいや。

 俺はそこでシナナとの話を終わらせ、今度は話をしている桃花と王女さまに話しかける……と、その前に。

 

「白、悪いんだが桃花の傷治してくれないか。俺その手の魔法は苦手だし」

「構わんぞ。まだ魔力もかなり残っておるし」

 

 白はそう言って桃花に近づくとその体に触れる。すると触れた場所から淡い緑色の光が発生し、数秒後には桃花の体に無数にあった傷は綺麗に消えていた。

 

「うそ。もう傷が」

「私も先程かけてもらいましたが、本当に驚きました。我が国で最も回復魔法に長けているものでもこんなに早くは出来ません」

「この程度、ちょっとコツさえ掴めれば誰でも出来るものよ。そんな大したものでもない」

「と、言いながらも得意げな表情をする白なのであった」

「……黙れ、ハゲ」

「……ロリババア」

「「……ハハハ。死ね!」」

「……いい加減にしろ、お前たち」

 

 互いに殴ろうと拳を振り上げるが、間にシナナが入ってきたので拳を下ろす。

 

「「……チッ」」

「……はぁ」

 

 俺たちのそんな姿を見て深いため息を吐くシナナ。……なんか、ごめんね。

 

「あ、あの!」

「うん?」

 

 俺たちがそんな馬鹿をやっていると王女さまが声をかけてくる。その声に反応して王女さまを見ると、心なしか緊張しているようにも見えた。

 

「貴方たちは本当に何者なのですか?もう貴方たちが判定通り【村人】であるなどとは信じていません。白さんの異常なまでの魔力と卓越した魔法、そして恐らく彼女の眼は魔眼なのでしょう?」

 

 王女さまのその言葉にチラッと白の方を見ると、舌を出しテヘッと漫画で見るような仕草をしていた。……とりあえず冷めた目で見ておこう。

 すぐに王女様の方へ視線を戻し言葉の続きを聞く。

 

「そして空さん。貴方もです。まだ訓練の日が浅いとは言え【剣姫】であり【賢者】である桃花さまを圧倒してみせました。こんな事は前例がありません」

「前例が無いだけで今回たまたまそうだったかもしれないですよ?【村人】が勇者を倒す!なんて、憧れる展開じゃないですか」

 

 俺が少し軽い調子でそう言うと、王女さまは目を細め俺に一歩近づいてくる。

 

「そうですか。……あぁ。それと、実は白さんが少し面白い話をして下さったんです」

「え、ちょ、カノン!?」

「先程白さんが自分のことをこう言ったんです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。これってどう言うことなんでしょうね?」

 

 王女さまのその言葉を聞き、今度は本気で白の方を睨む。俺に睨まれた白は両手を合わせ、目線で「すまん」と伝えている。

 俺はそんな白に対し、ため息を吐いて改めて王女さまを見る。

 

「……もしかしてなのですが、白さんは。だとしたらそんな白さんと対等に話をし、協力している貴方は、いえ、貴方さまは!」

「はい、ちょっとストップ」

 

 王女さまが少し興奮しながらそこまで言ったところで、俺は王女さまの口に手を当てて喋れなくする。

 

「申し訳ないんだけどそっから先は今は秘密だ。まぁ、ほぼほぼ答えを言ってるようなものなんだけど、あんたは俺や白のことを知らなさすぎる」

 

 そう言ってから俺が手を離すと王女さまは少し落ち着いたのだろう。目を閉じて一度深呼吸をした後俺の目を見つめる。

 

「……知らなさすぎる、とは?」

「言葉通りの意味だよ。あんたが『忘れられた英雄』に憧れのようなものを持ってるのは知ってるさ。でもな、そいつのやってきた事を細かくは知らないだろ」

「それは……」

「だからこそ、あんたは知るべきだと思う。もっと詳しく、その英雄のことを」

 

 そう言うと王女さまは期待するような目で俺を見てくる。

 

「も、もしや!貴方さまが私に真実を」

「落ち着きなさい」

「あう!」

 

 またもや興奮した様子で、今度は顔を近づけてきた王女さまの額にデコペンをして黙らせる。てか、興奮しすぎだろ王女さま。どんだけ好きなんだよあの英雄のこと。

 

「言っておくが、まだ俺たちは何も教えない」

「な、なぜですか?」

 

 額を抑え涙目になりながら王女さまはそう聞いてくる。

 

「あんたは世界を知らなさすぎるって言ったろう?だから、今から言うのは俺と白からの課題」

「その課題とはいったい?」

「あんた自身の足で、調べろ」

「私自身の足で?」

 

 そう言って首を傾げる王女さま。

 

「王女さまってこの城の外の世界を見たことある?」

「……いえ。それは止められていたので」

「だろ?王女さまがいつも図書館で話してくれたことを聞いてたらなんとなくわかる。だから、これを機に一度外の世界を見てくるといい」

 

 俺がそう言うと王女さまは顔を伏せ暗い声になる。

 

「……で、でも、お父さまがいいと言うかわかりません」

「そこをどうするかもあんた次第だ。本当にあの英雄について知りたいならなんとかするんだな」

 

 酷いかもしれないが、あの狸に従い続けてたら駄目だ。今回の嘘や、俺たちを捕らえようとしたことからもあの狸は何か企んでる。だからこそ、王女さまはなるべく早くあの狸から離れ、この世界のことを知るべきだ。

 未だに俯いて顔を上げない王女さまに再度言葉をかけようとしたが、先に口を開く者がいた。

 

「カノンよ」

「白、さん」

 

 白からの突然の言葉に王女さまはその顔を上げ白を見る。

 

「正直に言おう。私と空はお主の父を疑っておる。今回私たちを捕らえようとした事もあるが、召喚されたあの日から少なからず疑っておった」

「……」

「お主もおかしいと思ったことはないか?お主の父が何かそなたに隠し事をしていると思ったことはないか?」

「……それは」

 

 心当たりがあるのだろう。王女さまは白から視線を逸らし答えづらそうにする。

 

「だから、今回のこの課題はそなたとあの王を離すことも理由の一つなのじゃ」

「……はい」

「だが、それは一番の理由では無い。むしろあまりその事は考えておらんかったのだ」

「え?」

「一番の理由としてはな」

 

 そこまで言って白は微笑み、王女さまの頭に手を乗せる。

 

「あの英雄に憧れる者にもっとあやつの事を知ってもらいたいと思ったからなのだ」

「……そ、それなら」

「うむ。だったらここで言えと言う話なのだかな。まぁ、ぶっちゃけ私と空はまだそなたの事を認めておらん!」

「え、あの、それは」

「なにもかも幼稚なそなたに、かの英雄の事を話すなどありえんなぁ。それでは英雄の凄さの一割も理解できん」

「そ、そんな事!」

「だからこそ!」

 

 そう言って一度チラリと俺の方へ視線を向けた白だったが、すぐに王女さまへ視線を戻す。

 

「自分自身で英雄の事を知ってもらいたいのだ」

「なんで……」

「あれじゃよ。人が育てた野菜と自分が育てた野菜だと自分が育てたやつの方が美味しく感じる、みたいな」

 

 まぁ、つまりはじゃ。そう言って王女さまから手を離し、俺の隣へとやってくる白。

 

「世界を知れ。それが英雄を知る一番の近道じゃ」

「……」

 

 黙りながらも俺たちの方をまっすぐに見つめる王女さまの瞳からは先程の迷いや不安は感じられなかった。

 

「……大丈夫そうじゃな。それでは行く場所のヒントをやろうかの」

「ヒント、ですか?」

「あぁ。ではヒントじゃ。あの絵本に名を書かれた国へ行け。恐らく、なんらかの情報はある筈じゃ。……さて」

 

 そう言って白は百八十度体を回転させ出口の方へ体を向ける。

 

「そろそろ行こうかのう。兵士たちが来るかもしれんし」

「あぁ、そうだな。シナナは」

「……もちろんついて行くさ」

 

 その言葉を聞いて俺とシナナも出口の方へ体を向け、既に歩き始めていた白の後を追う。

 

「兄さん!」

 

 しかし、俺を呼ぶその声に俺は足を止め振り返り、声の主、桃花を見る。

 桃花は涙を流しながら、しかし笑顔で、言葉を紡ぐ。

 

「またね。今度は勝つから、それまで死なないでよ」

「怖いこと言うなよ。……あぁ。俺は死なないよ。だから、お前も死ぬなよ」

「うん」

 

 そう言って、今度こそ立ち止まることなく俺はその場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秘密の通路を出るとそこは森の中だった。

夜空には星が輝いており、辺りからは川のせせらぎが聞こえるのみで、人の気配は感じられない。

 

「ここはいったい?」

「……ここはあの城から少し離れた森の中だ。周りに兵士の姿は無いな。よかった」

 

 ナイフを持ち、辺りを警戒しながらそう答えるシナナ。

 白の方を見ると大きく伸びをしていた。

 

「ふぅ。やっとあの穴から出てこれたのう。さて、これからどうする?」

「うーん。特に急ぐ事も無いし。今のこの世界を見て回ろうと思ってるんだが。シナナはどうするんだ?」

 

 俺がそう問いかけるとシナナはナイフをしまいながらこちらに近づいて来る。

 

「……そう、だな」

 

 少しの間考えるそぶりを見せた後こちらに顔を向ける。

 

「……お前たちに頼みたい事があるのだが、いいだろうか?」

「いいぞ」

「うむ。よいぞ。して、何をすればいい?」

 

 俺たちが即答するとシナナは驚いたような仕草を取る。

 

「……そ、即答。頼もうとする身で失礼かもしれないが、もう少し迷ったり、せめて内容を聞いたりしないのか?」

「別に。お前には助けてもらった借りがあるしな」

「そうじゃのう。私たちは基本貸し借りを作りたく無いからのう」

「……し、しかし、お前たちはこの世界を見て回ろうと思っているのでは」

「そんなの後でも出来る。それよりも貸し借りを無くす方が大切だ。なぁ?」

「うむ。ほれ、遠慮なく申してみよ」

「……そ、そうか。わかった。それで納得しよう」

 

 そう言って一度咳払いをした後シナナは俺たちに告げた。

 

 

 

 

「人類の最終防衛ライン。人族の大国、『アスタリスク』。そこへ私と共に来てはいただけないだろうか?」

 

 

 

 

 

 




注)ここから先は作品にあまり関係のない作者の愚痴です。見なくてもいいよ!

コミケに行きたかったよぉ〜!お金なくて行けない。あっても用事があって行けない。やだ。どっちにしろ行けない?
会場限定グッズとか欲しかったよお。にじさんじのブース行ってにじさんじのメンバーのグッズ買いたかったよお!……来年行ってやる!!

以上!改めて、皆様よいお年を!
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